顎関節症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

顎関節症(がくかんせつしょう)

temporomandibular disorder

執筆者: 依田 哲也

概要

 顎関節症とは「顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包、靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれている。」と疾患概念が定義されている(日本顎関節学会)。 すなわち顎関節または咀嚼筋に異常がみられない耳鳴り、肩こり、不定愁訴、神経痛性疼痛や血管性疼痛または交合異常感だけの場合は顎関節症に含めるべきではない。また総括的診断名であることも忘れてはならない。

日本顎関節学会編 顎関節疾患および顎関節症の分類 日本顎関節学会雑誌 113-117 1996

病因

 米国のNIDR(National Institute of Dental Research)がEBMに基づいて作った患者向けパンフレットでは、明らかな原因として下顎や顎関節への急性・慢性外傷を記載している。
さらには明らかではないが関連が高い原因として、精神的ストレスと歯軋りなどのパラファンクションをあげているが、従来考えられていた不正咬合の直接的関与については低いとの見解である。 Pullingerら、McNamara、Okesonらも同様に、咬合異常を顎関節症の発症の直接的原因とする科学的根拠は得られていないと報告している。ただし全く関係ないわけではなく、筋痛によって下顎位が偏位し、咬合も変化することは実験やレヴューで示されているObrezらSvenssonら)。またその筋痛は心理社会的因子によって助長されることも明らかにされたLobbezooら McCrearyら)。
 
Temporomandibular Disorders (TMD) Patient education brochure. National Oral Health Information Clearinghouse, 1995 Pullinger AG, Seligman DA, Gornbein JA. A multiple logistic regression analysis of the risk and relative odds of temporomandibular disorders as a function of common occlusal features. J.Dent. Res.72:6:968-979 1993 McNamara JA Jr, Seligman DA, Okeson JP Occlusion, Orthodontic treatment, and temporomandibular disorders: a review. J.Orofacial Pain 9:1:73-90 1995 American Academy of Orofacial Pain. OkesonJ.p.,editor,Orofacial pain, Guidelines for assessment,diagnosis and management,pp.1-285, Chicago:Quintessence, 1996 Obrez A, Stohler CS Jaw muscle pain and its effect on gothic arch tracings. J Prosthet Dent. 1996;75(4):393-8. Svensson P, Graven-Nielsen T Craniofacial muscle pain: review of mechanisms and clinical manifestations. J Orofac Pain. 2001 Spring;15(2):117-45 . Lobbezoo F, Trulsson M,et,al Topical review: modulation of trigeminal sensory input in humans: mechanisms and clinical implications.J Orofac Pain. 2002 Winter;16(1):9-21. McCreary CP, Clark GT, Merril RL, Flack V, Oakley ME Psychological distress and diagnostic subgroups of temporomandibular disorder patients. Pain. 1991 Jan;44(1):29-34.

病態生理

 臨床症状に含む

臨床症状

病態生理と臨床症状

 日本顎関節学会により表1のように5つに分類されている。主たる病態の部位からみた分類と考えると良い。表層から関節の内部へと症型番号がついている。

日本顎関節学会編 顎関節症診療に関するガイドライン 第1版 2001

1、顎関節症Ⅰ型 :咀嚼筋障害  
 咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4咀嚼筋に、顎二腹筋と胸鎖乳突筋を加えた筋に運動痛や開口障害を呈するタイプである。例えば 大きく口を開けると咬筋部に痛みがあるといった症状を訴える。後頚筋群や僧帽筋の障害は顎関節症とは別の疾患である。疼痛の発現には外傷性筋炎による遅発性筋痛(硬固物や長時間にわたる食事の翌日に発症)や、不安や抑うつのためにおこる交感神経の持続的緊張による筋血流量の低下、長期間の開口制限による筋拘縮などが考えられる  

2、顎関節症Ⅱ型:関節包
 靭帯障害関節包とその外側の靭帯に外傷性の炎症がおこり、関節部に疼痛がみられる。朝食を食べようとしたら急に顎関節に痛みを感じ、特に臼歯部で噛みこむと痛いとか、痛くて臼歯部で噛みこめないというのが典型例である。顎関節症Ⅰ型とは疼痛の部位で区別できる。顎関節部の痛みの主体は、Quinnらが報告しているように関節腔内面の滑膜炎であり、その他にも関節包や靭帯の痛みもある。

Quinn, J. H., Bazan, N. G.: Identification of prostaglandin E2 and leukotriene B4 in the synovial fluid of painful, dysfunctional temporomandibular joints. J Oral Maxillofac Surg 48:968, 1990  

3、顎関節症Ⅲ型 :関節円板障害 
 典型的な病態は関節円板(図1)が下顎頭の前にずれ落ちてしまうもので、関節円板前方転位という。開口途中で正常な位置に戻るもの(復位)と戻らないもの(非復位)に分けられている。 ただし円板障害は前方転位だけではなく、咬頭嵌合位では関節円板の位置は正常だが、開口途中で円板が後方転位、すなわち下顎頭が円板の前方肥厚部を越えて前方に移動してしまうためにクリックが発生するものや、関節円板の内側のみへの転位、外側転位、後方転位もある 依田)。

依田哲也 塚原宏泰 他:顎関節雑音に関する臨床的検討 −円板整位下顎位の得られない関節雑音について− 日本顎関節学会雑誌 8巻3号 1996 554-565  

図1

1)復位性円板前方転位(Ⅲa型)口を開けると下顎頭が前方に滑走移動する。その際に前方転位していた関節円板が正常な位置に戻る。戻る瞬間に下顎頭と関節円板の下面が擦れて関節雑音が発生する。この音はカクンとかポキンという音で、クリック音という。口を閉じる時には、関節円板が再び前方に転位するのでまた下顎頭と円板が擦れてクリック音が生ずる(図2)。   

図2      

2)非復位性円板前方転位(Ⅲb型) 復位性円板前方転位によるクリックの状態が進行すると、それまでは開口時に下顎頭上に復位していた関節円板が戻らなくなる。これを非復位性円板前方転位という。前方転位した関節円板が下顎頭の前方滑走を妨げてしまうので口が大きく開かない。クローズド・ロックとも呼ばれている(図3)。

図3

クローズド・ロックの患者は、開口できなくなる直前までクリック音がしていたが、ある日突然開かなくなって、クリックも消失する。その時の最大開口量は上下の切歯間距離で25~30mm程度であり、5~10mmのような強い開口制限を示すことはない。クローズド・ロックは下顎頭の滑走運動のみが制限され、回転運動は妨げられないからである。  

4、顎関節症Ⅳ型 :変形性顎関節症(下顎頭の変形) 
 下顎頭や関節結節に骨変形を起こしたものである。ガリガリ、ジャリジャリといったクレピタス音を伴うこともあるが、あくまでも画像で骨に異常が見られることが診断基準であるため、症状は様々である。 復位のない関節円板前方転位(クローズドロック)が長期経過すると、荷重が関節円板後部組織に直接加わり、やがて同部に穿孔、断裂などが生じ、下顎窩と下顎頭の関節表面が直接こすれあうようになり、骨の異常がX線的にも現れるようになるFarrar and McCarty)。しかしこのような下顎頭の骨形態変化は全体の約80%であり 坂本、甲斐)。その他の原因としては、歯の欠損や咬耗Oberg)、性ホルモンなどの内分泌杉崎)、加齢変化Blackwood)などさまざまなものがいわれている。

Farrar, W. B. and McCarty, W. L. : Inferior joint space arthrography and characteristics of condylar paths in internal derangement of the TMJ. J Prosthet Dent 41: 548-555, 1979. 坂本一郎、依田哲也、 他、顎関節症における下顎頭骨形態変化の臨床的意義の検討 第1報:顎関節内障との関係日本顎関節学会雑誌8巻:182−193,1996甲斐裕之, 甲斐貞子, 他:顎関節症IV型の臨床的観察ー顎関節円板前方転位との関係ー. 日口外誌 37:118-126, 1991. Oberg, T., Carlsson, G., et al. : The temporomandibular joint . Amorphorogic study on a human autopsy materials. Acta Odont. Scand. 29: 349-384, 1971. 杉崎正志, 鈴木久仁子, 他:日本人晒浄頭蓋骨における顎関節の観察. 第1報:咀嚼機構の性差および年齢差について. 日口科誌 39:52-63, 1990.  Blackwood, H. J. J. : Arthritis of the mandibular joint. Brit. Dent. J. 115: 317-326, 1963.  

5、顎関節症Ⅴ型 
 Ⅰ~Ⅳ型のどれにも分類できないタイプである。関節円板の位置は、開口時閉口時を通じて正常であるが、関節結節下を円板が通過する際に、関節円板上面と結節下面とが擦れて音が発生する結節性雑音(エミネンスクリック)や、滑液性音等などが含まれる。

検査成績

検査と診断 
      

1、下顎頭の変形の検査
 下顎頭の変形の有無と言う点だけを診察するのであれば、パノラマX線撮影で十分である Kobayashi覚道)。しかし詳細な検査にはMRIやCTが必要である。

Kobayashi,K.,Komdoh,T.,et al,:Image diagnosis for internal derangements of the temporomandibular joint : The advantages and limitations of imaging techniques, Oral Radiol.,7:13-24,1991 覚道健治:顎関節症Ⅳ型におけるスクリーニング法としての回転パノラマX線撮影法の診断的位置とその問題点 日本歯科医学会誌14 43ー47 1995 

2、開口制限の検査  
 開口制限の診断には上下切歯間距離で40mm以下であるとか38mm以下といった数値基準を用いることもある。しかし最大開口量には個人差がある塚原)。クローズド・ロックではある日突然開かなくなるので、以前よりも開く量が少ないという自覚を患者自身が持っている。森田らの調査では40mm以下を基準とした場合のクローズド・ロックの診断制度が76.9%、患者自身の開口制限の自覚を基準とした場合は88.0%であった )。つまり40mm開口できていても、患者が以前よりも開いていないと思っていれば、開口制限があると診断するのである。  

塚原宏泰、依田哲也 他:日本人成人顎関節健常者における最大開口量についての統計学的検討 日口外誌 44 159-168 1998 森田 伸、依田哲也、他:関節円板の復位が可能なクローズド・ロックの1次診断に関する臨床的検討 日本顎関節学会雑誌 10(1) : 1-12, 1998.  

3、関節雑音の検査
 両手の示指と中指を顎関節の外側に、下顎頭の運動路とほぼ並行に軽くあてる。患者に大きくゆっくりと開閉口させ、異常な音、ひっかかり感がないか診査する。術者にも聞こえる可聴音だけでなく振動だけの可触音も雑音ありとする。ポキッ、カクン、ガクッ、ガリガリなど様々なものがある。(図4)  

図4

4、関節円板の位置、形態の検査  
 MRIが有用である。またMRIは下顎頭の病状やjoint effusionといった関節液の状態についても情報を得ることができる。 復位性円板前方転位の有無については臨床症状からも検査できる。1.大開口させると、クリック音とともに関節円板は復位する。2.下顎を突き出したまま前方限界運動路で閉口させると、円板は復位したままなので閉口時のクリック音はしない。最前方位で閉口した状態から開口しても円板は復位したままなのでクリックは発現しない。3.最前方位で閉口したら、そこから後方へ運動させて咬頭嵌合位に戻す。このときクリック音とともに関節円板は前方に転位する。クリック音の発生した咬合位をチェックする。4.もう一度今の1、2を繰り替えして、今度は3で確認した咬合位の直前まで後方運動させ、止める。この咬合位では円板は整位されたままなので、この咬合位から開口してもクリック音は発生しない。この咬合位が円板整位下顎位である。5.円板整位下顎位からの開閉口でクリック音がしないことを確認する。  

5、関節包・咀嚼筋の検査  
 問診および触診で運動痛または圧痛の部位を確認する。その範囲が関節包の範囲であれば、関節包・靭帯障害と診断する。

治療

治療
 歯の位置や形を変える治療法だけでは治せない疾患であることを念頭に置くべきであるGreene)。さらには顎関節症は総括的診断名であるから、症型別に治療法を選択しなければならない。
 
Greene C S and Laskin D M  Temporomandibular Disorders: Moving from a Dentally Based to a Medically Based Model J Dent Res 79(10) 1736- 1739, 2000     

1、顎関節症Ⅰ型 :咀嚼筋障害

1)開口練習と薬物療法
 
 まず強制開口訓練を中心に行いは薬物療法を併用する。強制開口訓練は単純に大開口する訓練で、器具を用いても良いし、簡便に手指でこじ開けても良い(図5)。どれも効果的であるがエビデンスは確立されていない。薬物療法として筋炎に関しては消炎鎮痛剤、筋拘縮に対しては筋弛緩薬が考えられる。しかし筋弛緩薬については、顎関節症ではプラセーボ以上の効果が得られていない。そのため副作用等を考えると積極的には薦められない。また筋痛の原因として心因性の場合があることから、消炎鎮痛剤にマイナートランキライザー(抗不安剤)を併用した処方も効果的であった坂本)。

坂本一郎、他:顎関節症症型別Amfenac SodiumとEthyl Loflazepateの併用効果について 日本口腔外科学会雑誌41巻3号46-54 1995  

図5

2)スタビリゼイションスプリント
 

 薬物療法で改善傾向がみられない症例は、スタビリゼイションスプリント療法(図6)へ変更する。薬物療法と併用しても良い。
 スタビリゼイションスプリント(全歯列接触型スプリント)は、最もポピュラーなスプリントである。材質は加熱重合レジン、即時重合レジン、光重合レジン等がある。咬合位については、諸説あるが習慣位で良いと考えている。テーブル面がフラットで、下顎各歯牙は1点で接触し、下顎側方運動時に臼歯部の干渉が起こらないように調整する。作用機序は、咬合の早期接触や咬頭干渉による筋肉への異常な刺激を遮断することにより筋の緊張が緩和されるとされ、有効度は70~90%との報告がある 日本学関節学会編 顎関節症)。しかしDaoら8)は筋痛に対するスタビリゼーションスプリントの効果を3群間の比較試験で検討した。
すなわち第1群;口蓋部のみ被覆し咬合面は開放したスプリントを24時間装着させた。すなわち患者は治療装置が装着されているという意識はあるが、下顎位は変化していない。第2群;スタビリゼーションスプリントを1週間に30分間だけ装着させた。第3群;スタビリゼーションスプリントを24時間装着させたtreatment group の3群である。
 その結果、全ての群で疼痛軽減,生活支障度改善し、3群間で統計的有意差はなかった。この研究からスプリントは咀嚼筋痛の患者に有効な治療であることは改めて証明されたが、その作用について、従来言われてきた咬合関係の改善が関係するかは非常に疑わしいことがわかった。少なくともプラセーボ効果が大きな要因であると考えざるをえない。スタビリゼイションスプリントを2カ月装着しても症状不変の症例は、腫瘍のような顎関節症以外の症例の可能性があったり、クローズドロックが隠れていたり、精神的な要因の強い症例の場合もあるので、精査を行い。それぞれの治療を行う。

日本学関節学会編 顎関節症 永末書店 京都 2003 Dao TTT,LavigneGJ, et al. The efficacy of oral splints in the treatment of myofacial pain of the jaw muscles:   a controlled clinical trial. Pain 56 85-94 1994
  
図6

2、顎関節症Ⅱ型 :関節包・靭帯障害 

1)薬物療法

 滑膜炎または靭帯損傷であるから、まず薬物療法による消炎を第1とする。その際同時に安静を指示する。具体的には、硬固物の摂取や大開口を避けるようにしてもらう。完治までには大抵1ー2週間を要し、3ー4日で完治することは少ない。消炎には、消炎鎮痛剤が用いられる。  症状発現から2週間以上経過し、急性期を過ぎた症例は、Ⅰ型と同様に開口練習をする。  

3、顎関節症Ⅲa型復位性円板前方転位
1)円板整位運動療法
 治療の基本は、前方転位した関節円板を整位させる目的で行う円板整位運動療法である(図7)。毎食後数分間繰り返し行わせる。そして、練習をしていない時間はできる限り長時間、常に関節円板が整位した状態(円板整位下顎位)を保つように心がけてもらうことにより、下顎頭と関節円板の位置関係を安定化させるものである。多施設での無作為割り付けによる未治療群との比較検討では、3ヶ月後のクリック消失率が61.9%と有意に効果がみられた(P=0.0001)。ただしMRIで円板整位がみられたのは23.1%と課題は残っている Yoda )。
 
YodaT, Sakamoto I,et al. A randomized controlled trial of therapeutic exercise for clicking due to disk anterior displacement with reduction in the temporomandibular joint.  CRANIOJ Craniomand Pract 21(1)  2003 10-16  

図7

2)前方整位型スプリント

 運動療法でクリックが消えない症例は、前方整位型スプリント療法(図8)を加える。昼間は運動療法をし、夜間のみスプリントで補助するのである。ただし18歳以下のものはスプリント療法には進まない。運動療法と習癖除去で長期観察する。18歳以下の症例ではクリックの自然消失率が高いし、またスプリント装着による顎成長への影響も考慮したいからである。前方整位型スプリント療法で咬頭嵌合位からの開閉口ではクリックが残存してしまう症例は、咬頭嵌合位からずれの少ない顎位、すなわち咬合再建の可能な程度のずれであれば、咬合再建が可能な症例と考え、この時点での円板整位咬合位を最終治療咬合位として矯正または補綴的に咬合再建する。咬合再建が可能な位置まで円板が整復されない場合は、精査の後、上関節腔洗浄療法で円板の可動性を増加させる。
   
図8

3)円板前方転位性雑音の治療の必要性
 
 復位性円板前方転位によるクリックを有する患者の自然経過を検討したわれわれの調査 依田)では、クリックからクローズドロックへ移行したものは、5年間で19.4%であり、逆に自然にクリックが消失したものが、5年間で25.8%みられた。すなわち円板前方転位性雑音を放置しても必ずしもクローズドロックに移行するわけではない。しかし20%は確実にクローズドロックに移行する危険性を含んでいるのである。この数値が低いから放置しても良いと考えるか、そうなる前に治療すべきかは議論の分かれるところではあるが、患者にはこの情報を必ず伝え、その上で治療に進むべきであろう。  

依田哲也、秋元規子、他 復位を伴う顎関節円板前方転位症例の自然経過に関するアンケート調査 日本顎関節学会雑誌 8巻3号 1996 486-494   

4、顎関節症
復位性円板前方転位クローズド・ロック)

1)徒手的円板整位術 
 
 初診日にすぐ徒手的円板整位術(マニピュレーション)を試みる図9)。ロックが解除され、関節円板が復位すると、典型的にはクリックの発現とともに一気に正常開口域まで回復する。ロックが解除された症例は、その場で即重レジンのみで簡易的に前方整位型スプリントを製作する。その後はそのままスプリントを使用しても良いし、再製作しても良い。スプリントは食事中も含め24時間はずさないように指示する。翌日来院させ、歯磨き時等はスプリントをはずしても良いと指示する。ただしその際円板整位咬合位または開口状態を保持できるよう指導する。約3日後にスプリントは夜間のみにして、その後は復位性円板前方転位と同様に治療すればよい。 徒手的円板整位術でロックを解除できない場合は、消炎目的で消炎鎮痛剤を1−2週間分処方し、スプリント用の印象をして帰す。1ー2週後に来院してもらい、ロックが解除されていたら、前述の如く前方整位型スプリントを装着する。ここまでの治療法でのロックの解除率は33.3%である。 
 
塚原宏泰、依田哲也、他: 顎関節クローズド・ロックの保存療法の治療評価に関する臨床的検討日顎誌8(2)453-464、1996

図9

2)パンピングマニピュレーションと下顎頭可動化訓練
 
 消炎後もロックが解除されていない症例はパンピングマニピュレーション(図5)を施行する。癒着や円板変形が強くなければ、パンピングマニピュレーションでほとんどが解除可能となる。 ロック期間が長くなると、関節円板は癒着および変形が強くなり、ロックの解除は不可能で、無理矢理下顎頭上に復位させても、かえって機能障害をひきおこす可能性がある。このような陳旧症例では転位させたまま、円板後部組織の偽円板化を期待し、機能を回復させる治療法を選択することになる。下顎頭可動化訓練 榎本)を中心として、それに上関節腔洗浄療法を組み合わせた治療を行う。関節円板は転位したままでも十分な下顎頭の滑走が得られ、症状は改善する。榎本昭二、依田哲也:チャートでわかる顎関節症の診断と治療 医歯薬出版 東京 1998  

5、顎関節症Ⅳ
:下顎頭変形    
 前述の如く多くが陳旧性のクローズド・ロックであるので、それに準じて治療を行う。

執筆者による主な図書

榎本昭二、依田哲也 著:チャートでわかる顎関節症の診断と治療,医歯薬出版 東京 1998

(MyMedより)推薦図書

1) 疋田渉 著:顎関節症・頭痛・腰痛「なぜ私たちは治ったのか!」,講談社出版サービスセンター 2005

2) 木野孔司・和気裕之・杉崎正志 著:顎関節症で困ったら―専門医がおしえるセルフケア,砂書房 2001

3) 和嶋浩一 監修、NHK出版 編集:あごが痛い、口が開かない―顎関節症 (NHKきょうの健康Qブック) ,日本放送出版協会 2000
 

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