心室中隔欠損症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.26

心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)

執筆者: 小野 博

概要

 左右心室の間に存在する中隔に欠損孔が存在する疾患。様々な心奇形に合併することが多いがここでは単独で存在する場合について述べる。先天性心疾患の約20%を占める。心室間の欠損孔を通過する血流量と欠損孔の位置により、症状を呈する。

病態生理

 左室、右室間の欠損孔を介し、通常は左室から右室へ血液が流れる。病態はその部位、短絡量により異なる。膜様部の欠損では、左室から右室へ血液が流れ、それが肺動脈へ流入する。短絡量が少ないと、心雑音が聴取されるのみで、心室への負荷所見は出現しない。短絡量が多いと、右室に容量負荷がかかり、肺動脈、左房、左室に順を追って負荷がかかる。漏斗部欠損では、右室負荷はほとんどみられず、短絡量に応じて、肺動脈、左房、左室に負荷がかかる。筋性部欠損は、欠損孔が大きいことは稀で、ほとんどは雑音のみで、容量ふかがかかることは稀である。大血管下部漏斗部欠損では、大動脈冠尖が逸脱し、右室側へ落ち込むことがある。早期治療により近年ではあまり見なくなったが、valsalva洞動脈瘤を形成することもある。

臨床症状

 欠損孔を介したシャント量によって症状が規定される。生直後は、肺血管抵抗が高く、左室右室間の圧差がないため、症状は呈さず、雑音も聴取されないことがある。肺血管抵抗の低下に伴い、肺動脈圧、右室圧が低下し、左右シャント(左室から右室への血流)が増加し、雑音が聴取される。
 欠損孔が大きいと、心不全症状を呈する。肺血流が増加することにより、肺のコンプライアンスが低下し、多呼吸、陥没呼吸を認める。肺静脈、左房、左室への血流も増加し、心拡大を呈し、僧帽弁の逆流を認めることがある。一方、左室から大動脈へ駆出される血流が減少するため、頻脈、哺乳不良、体重増加不良、皮膚蒼白(相対的に黄疸が目立つ)、末梢冷感、冷汗、多汗を認める。ダウン症は肺血管抵抗が低下せず、欠損孔は大きいが、明らかな心不全症状は呈さないこともあり、注意を要する。
 欠損孔が小さいときは、シャント量が少ないため、前述のような心不全症状は呈さず、はっきりとした高調な収縮期雑音を呈するのみである。筋性部欠損では典型的な汎収縮期雑音を呈さず、収縮前期雑音のみを呈し、しかも心拍数が速いと雑音を聴取しにくいため注意を要する。

検査成績

 聴診上、胸骨左縁下部で汎収縮期雑音を聴取する。しかし新生児期で欠損孔が大きいと雑音が目立たないこともある。雑音が目立たない場合もⅡ音の亢進が存在するので注意深く聴診をする。特にダウン症の児は肺血管に不可逆性の変化が起こり易く、見逃すと手術時期を逸するので注意を要する(Eisenmenger症候群)。聴診上心室中隔欠損症が疑われたら、心不全症状の有無をチェックする。
 胸部レントゲンを撮影し心拡大および肺うっ血の有無をチェックする。
 心電図で右室肥大または両室肥大の有無をチェックする。
 心エコー検査を施行する。このとき、

①欠損孔の大きさ
②欠損孔の位置
③合併奇形の有無(動脈管開存はないか、大動脈離断や縮窄は合併していないかなど)
④心室中隔欠損孔を通過する血流の方向とその流速(右室圧の推定=(肺動脈に狭窄がないとき)肺動脈圧の推定)
⑤三尖弁逆流の有無とその流速(右室圧の推定)
⑥大動脈弁の変形や逆流の有無(特に大血管下部漏斗部欠損の場合:エコー上 肺動脈弁、大動脈弁直下に欠損孔を有する)をチェックする。

 大血管下部漏斗部欠損の場合、大動脈右冠尖が欠損孔に落ちこみ、大動脈弁逆流を生じる。成人期になるとValsalva動脈瘤を形成し、破裂する危険性を有する。逸脱しているとあたかも小欠損に見えるが、大動脈弁逆流を認めると手術適応であり、見逃してはいけない。心臓カテーテル検査は、肺血管抵抗や肺体血流比の測定が必要なときに施行する。

治療

 心不全症状が存在しないときは経過観察でよい。しかし感染性心内膜炎のリスクがあり、歯科治療時の抗生物質内服についての指導が必要である。心不全症状が存在するとき通常利尿剤、強心剤の内服から開始する。強い心不全症状を有するときは入院管理となるが、現在はすぐに外科的治療が選択される。乳児期は心不全症状の強い場合(多呼吸、哺乳不良、体重増加不良など)手術適応になる。
 小児期では容量負荷があり閉鎖傾向にない場合(通常Qp/Qs1.5以上)、大動脈弁の変形や逆流が存在するときに手術適応になる。現在では心カテーテル検査を施行した上で手術となる場合が多い。基本的には心内修復術を施行する。全身状態、合併症次第では、まず肺動脈絞扼術を施行し、その後心内修復術を施行することがある。

予後

 おおむね良好である。健診や検査技術の向上により、Eisenmenger症候群となり手術適応がなくなる例は、近年では稀である。手術成績も満足のいくものである。 

(MyMedより)推薦図書

1) 中澤誠 編集:先天性心疾患 (新目でみる循環器病シリーズ) ,メジカルビュー社 2005

2) 寺島裕夫 監修:手術術式の完全解説 2010-11年版,医学通信社 2010

3) 水野杏一・安武正弘・平山悦之 編集:循環器内科学 (医学スーパーラーニングシリーズ),シュプリンガー・ジャパン株式会社 2010

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