舌炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

舌炎(ぜつえん)

執筆者: 飯野 光喜

概要

 舌には様々な炎症性変化が生じる。全身疾患とのかかわりを持つものと局所の限局性炎症によるものとがある。本稿では舌の主な炎症性疾患を便宜的に3つに分けて記載した。

形成異常を主とする疾患

1.溝状舌(写真1)


概要
 多数の深い溝が舌背に認められる状態。

病因
 不明である。先天性に認められる場合もある。また、遺伝の関与を示唆する症例もある。

臨床症状
 舌背に多数の溝が認められる。中年以降に多く発生し男女差はない。溝の数・形はさまざまである。鏡を見ているうち偶然に気付いたり、歯科治療中に指摘され気になって医療機関を受診することが多い。多くは無症状であるが、溝が不潔になり二次的な炎症が生じると疼痛や味覚異常を訴えることがある。

治療
 病的意義は少なく溝に対する治療は不要である。患者が疼痛や違和感などを訴える場合は溝が不潔にならないよう口腔清掃指導を行なう。

写真1

2.正中菱形舌炎


概要
 舌背中央部に見られる境界明瞭な赤色斑をいう。

病因
 舌の形成不全の一種で真の炎症ではない。舌の形成過程で、不対結節が残存することにより生ずるという説もある。

臨床症状
 
赤色斑の形は菱形または類円形で、舌乳頭が欠損しているため表面は平滑で光沢がある。成人での発生率は0.2~3%と言われており、小児ではきわめて稀である。

治療
 病的意義は少なく治療は不要である。

 3.地図状舌(写真2)


概要
 舌に境界明瞭な赤色斑が複数発生し地図状を呈した状態を言う。

病因
 不明であるが、ビタミンB2欠乏、内分泌障害などがあげられている。糸状乳頭の萎縮・消失により舌背に赤色斑が生じ、さらに拡大や癒合によって、舌背があたかも地図のような所見を呈することによる。

臨床症状
 日によって赤色斑の形・大きさ・位置が変化する。自覚症状はほとんどの症例で認められないが、疼痛や違和感を訴える場合もある。小児に多く見られる。

治療
 病的意義は少なく多くの場合治療は不要である。疼痛などの症状がある場合は含嗽剤や軟膏の使用を勧める。

写真2
 

舌苔・黒毛舌

1.舌苔


概要
 舌背に生ずる灰白色または帯黄白色の被苔。

病因
 増殖した糸状乳頭に、剥離上皮・食物残渣・微生物などが堆積して形成された被苔で舌の自浄作用の低下によって生ずる。舌の機能障害のあるときや全身の熱性疾患・上部消化管疾患の際に見られることもある。

臨床症状
 舌背は灰白色や帯黄白色に変化する。

治療
 含嗽剤やブラシによる口腔清掃指導を行なう。基礎疾患に続発した場合は、当該疾患の治療も重要である。

2.黒毛舌(写真3)


概要
 糸状乳頭の著明な伸長と着色により、舌背に毛の生えたような状態を言う。

病因
 詳細な成因は不明であるが、長期に渡る喫煙や化学物質などの慢性刺激によって生ずる過角化症と考えられている。また、本症が抗菌剤の投与により生ずることはよく知られており、口腔内細菌叢の変化も重要な役割を果たしていると考えられている。

臨床症状
 黒色に変色し隆起した糸状乳頭により舌背中央部が黒色に隆起する。時に白色の場合もある。誘因の除去によりほとんどが数週間以内に消失するが、特発性の場合長期に渡り再発を繰り返す場合もある。

治療
 含嗽や口腔清掃は対症療法として有効である。  

写真3

全身疾患の部分症状としての舌炎

1.Plummer-Vinson症候群(写真4)


概要
 鉄欠乏性貧血に伴って生じる萎縮性舌炎・嚥下困難・匙状爪・口角炎などを伴った病態。

病因
 長期に及ぶ鉄欠乏性貧血により、皮膚・粘膜・爪などの上皮系組織萎縮によって生じると考えられている。鉄欠乏の原因としては鉄の摂取不足、慢性胃腸疾患、月経過多あるいは消化管潰瘍による慢性失血などがある。

臨床症状
 舌は糸状乳頭の萎縮により平滑で赤味を帯び口角炎を伴う。咽頭、食道などの上部消化管粘膜にも萎縮性変化が生ずるため、患者は嚥下困難を訴えることが多い。また、40%程度に匙状爪(爪の光沢が消失してスプーン状に陥凹する)が認められる。皮膚は貧血を呈し、結膜炎、角膜炎などの眼症状も見られることがある。女性に多く見られる。

検査成績
 血液検査で低色素性小球性貧血、血清鉄の減少が認められる。

治療
 
治療の第一は、鉄欠乏貧血の原因に対する処置と鉄剤の投与である。舌、口腔の疼痛が強い場合は軟膏塗布や含嗽が有効である。

写真4

2.Hunter舌炎


概要
 ビタミンB12欠乏または吸収障害によって生ずる悪性貧血の粘膜症状のひとつで、舌粘膜は萎縮し、疼痛・味覚障害などが生じる。

病因
 悪性貧血が原因。腸管からのビタミンB12の吸収障害の原因として自己免疫性病変との関連も示唆されている。胃全摘を受けた患者にも発生することがある。

臨床症状
 舌の臨床症状としては、平滑舌に伴って、発赤、灼熱感、疼痛、味覚障害などが発現する。これらの症状は口唇や頬粘膜にも発生する。

検査成績
 血液検査では大球性貧血があり、組織学的には骨髄中に巨赤芽球が認められる。

治療
 ビタミンB12の投与が有効で口腔粘膜は比較的早期に改善する。局所症状が強い場合は軟膏塗布や含嗽も有効である。    

(MyMedより)推薦図書

1) 日本鉄バイオサイエンス学会ガイドライン作成委員会 編集:鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の予防と治療のための指針,響文社 2004

2) 矢野晴美 著:絶対わかる抗菌薬はじめの一歩―一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター,羊土社 2010
 

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