MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。


Tricuspid Atresia
執筆者: 北川 哲也
三尖弁閉鎖は三尖弁口が閉鎖し、心房と右室の交通が遮断された奇形で、全先天性心疾患の1-3%を占め、比較的頻度の少ない疾患である。必ずASDを伴い、多くの例ではVSD, 右室低形成、PS/PAを伴う。動脈管開存、大血管転換、大動脈弓の異常などを伴うこともある。
病型分類ではKeith-Edwards分類がよく用いられる。三尖弁口が心室中隔で閉ざされた筋性閉鎖と、弁自体の異常により弁膜閉鎖を来した膜性閉鎖がある。筋性閉鎖が多く、その直下には心室腔は存在しない。膜性閉鎖では右室腔を認め、しばしば心室壁のUhl化、肺動脈弁欠如を伴う。
通常の正常大血管関係の三尖弁閉鎖では、体静脈血は、右房から心房間交通を経由して左房に至り、ここで肺静脈血と混合し、僧帽弁を経由して左室に至る。左室からの血液の大部分は大動脈から全身に至るが、一部はVSD・右室漏斗部または動脈管を経て肺動脈に至る。
肺血流量が減少する型では、新生児期より著明なチアノーゼを呈する。一方、肺血流量が増加している型では、チアノーゼは軽度であるが、心不全や肺高血圧を呈し、加齢とともに肺血管閉塞性病変が進行する。
やがて、体循環、肺循環への拍出量全てを左室が負担することによる慢性的な容量負荷のために、左室機能低下や僧帽弁閉鎖不全を生じることが危惧される。
チアノーゼは生後1日目に気付かれることが多い。肺血流量減少群ではVSDの狭小化、漏斗部狭窄の進行により低酸素発作を生じることがある。
チアノーゼが長く続くと、多血症、鉄欠乏性貧血、バチ指などが出現し、脳血栓、脳塞栓を生じることもある。さらに、感染症やう歯が原因となり、脳膿瘍や感染性心内膜炎などの重篤な合併症を引き起こすことがある。聴診では、胸骨左縁にVSDやPSによる収縮期雑音を聴取する。
1)心電図所見
通常は、左軸変異、左室肥大、右房負荷が特徴的である。左側胸部誘導では高いR波がみられ、T波は陰性化することもある。右側胸部誘導では低いr波がみられる。
2)胸部X線
肺血流量減少群では心陰影は小さいか軽度の拡大にとどまる。肺血流量増加群では肺うっ血と心拡大を認める。
3)心エコー図所見
心尖部四腔断面で右房から右室への房室接合が閉鎖し、心房中隔は右房から左房へ凸を呈する。筋性閉鎖では心房中隔と心室中隔はmalalignmentを示しており、心室中隔は閉鎖した心房底の中央付近に位置し、膜様閉鎖では心房中隔と心室中隔にずれはなく、心周期にあわせて、フラップ上の三尖弁の動きが観察される。大血管短軸像では大血管転換の有無を観察する。
4)心臓カテーテル・造影検査
右房造影で、造影剤は心房間交通を経て左房に流入するが、一部は肝静脈や下大静脈に逆流する。正面像では右室影が欠損し(right ventricular window)、本症に特徴的である。肺動脈圧、肺血流量、肺血管抵抗の評価は手術方針の決定に不可欠である。
上記により診断を確定するが、手術適応の決定には心臓カテーテル検査が必要である。新生児期チアノーゼ心疾患では、ファロー四徴症、純型肺動脈閉鎖、重症肺動脈狭窄、Ⅲ型大血管転換、肺動脈狭窄を伴う単心室などが鑑別疾患である。軽度のチアノーゼと心不全を伴う例では、Ⅱ型大血管転換、単心室、総動脈幹との鑑別が必要である。
治療の最終目標は、1心室修復としての機能的根治であるFontan手術を施行し、よりよい単式循環を確立することである1)。この循環がいい状態で成立するには、洞調律であること、肺血管抵抗が低いこと、いい体心室機能を有することなど、種々の条件が必要であり、その条件を獲得するため、生下時より的確な診断のもとに個々の段階的治療プランをたてて進めていくことが必要である2, 3)。
重症のチアノーゼを有し、動脈管依存型の新生児ではprostaglandin E1の持続点滴を、心房間交通が小さく右心不全の強いときにはBASを施行する。肺血流増加群で心不全を有する例では、利尿薬、強心薬を投与する。
姑息手術として、肺血流減少群ではBlalock-Taussig短絡術を、肺血流増多群では肺動脈絞扼術を施行する。Fontan手術は体静脈を直接肺動脈と吻合し、体循環と肺循環を独立させるものであり、種々の変法がある4-7)。
三尖弁閉鎖は先天性心疾患の中でも自然経過の不良な疾患の一つで、10歳以上の生存は約10%にすぎない。とくにPAを有する者は、通常、生後10カ月以内に死亡する。Fontan手術後の急性期には体静脈圧が上昇し、右心不全と低心拍出量があいまった状態となり、胸腹水が貯留し、肝機能障害、消化器症状などがでやすい。
遠隔期の運動耐用能としては正常心の約70%と理解され、心房性不整脈や蛋白漏出性胃腸症などの合併症がみられることがあるが、日常生活ではチアノーゼは消失し、ほとんどの症例でNYHAⅠ~Ⅱ度の生活が可能である。
1) Fontan F, Baudet E: Surgical repair of tricuspid atresia. Thorax 26: 240-248, 1971.
2) Choussat A, et al. Selective criteria for Fontan’s procedure. Pediatric Cardiology 559-566, 1978.
3) Kitagawa T: Evolving Fontan strategy; hemi-Fontan procedure and its clinical application. Ann Thorac Cardiovasc Surg 6(4): 213-215, 2000.
4) Bridges ND, et al. Bidirectional cavopulmonary anastomosis as interim palliation for high-risk Fontan candidates: early results. Circulation 82(suppl IV): 170-176, 1990.
5) De Leval MR, et al. Total cavopulmonary connection; a logical alternative to atriopulmonary connection for complex Fontan operations. J Thorac Cardiovasc Surg 96: 682-695, 1988.
6) Jacobs ML, et al: Early reduction of the volume work of the single ventricle : the hemi-Fontan operation. Ann Thorac Surg 62: 456-462, 1996.
7) Castaneda AR, et al. The Fontan operation with a fenestrated patch; rationale and results. Cardiol Young 3: 202-206, 1993.
1) 高本眞一 監修,角秀秋 編集:小児心臓外科の要点と盲点,文光堂 2006
2) 龍野勝彦 他 編著:心臓血管外科テキスト,中外医学社 2007
3) 日本胸部外科学会卒後教育委員会 編著:胸部外科において何が標準術式となりうるか,日本胸部外科学会
4) 寺本滋 他 監修,内田發三 他 編集:四肢動脈疾患のすべて,へるす出版
5) 前田肇 監修,今脇節朗 編集代表:静脈およびリンパ管疾患と外科 メデイカルトリビューンブックス,日本アクセル・シュプリンガー出版 1997
1) 宮田哲郎 編集:一般外科医のための血管外科の要点と盲点 (Knack & Pitfalls),文光堂 2010
2) 高橋長裕 著:図解 先天性心疾患―血行動態の理解と外科治療,医学書院 2007
3) 国立循環器病センター心臓血管部門 編:新心臓血管外科管理ハンドブック,南江堂 2005
情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。