パルボウイルスB19感染症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

パルボウイルスB19感染症(ぱるぼういるすびーじゅうきゅうかんせんしょう)

執筆者: 滝田 順子

概要

 ヒトパルボウイルスhuman parvovirus B19 (B19)の感染により、伝染性紅斑、関節炎、紫斑病などを呈する。
 感染経路は経気道的な飛沫感染である。ただし、ウイルスが排泄されるのは(免疫が正常の患者では)特徴的な発疹が出現するよりも1週間程度前までなので、伝染性紅斑の患者を隔離しても他者への感染予防にはならない。
遺伝性溶血性貧血に併発した場合、無形成発作を引き起こす。

病因

 B19の感染が発症原因である。B19は、パルボウイルスルス科のうちパルボウイルス亜科のエリスロウイルス属に分類される。
 2つの構造蛋白VP1(82kDa)、VP2(58kDa)と1つの非構造蛋白NS1(77kDa)を有し、NS1に細胞障害性があることが判明している。
 分裂中の細胞でのみ複製すことが可能で、ヒトをはじめとした様々な種の動物に感染する。イヌ、ネコなどに汎血球減少症をひき起こし、ラットでは胎児に先天性奇形をもたらす。

病態生理

 B19感染の病態は赤芽球への感染による赤血球減少とその後の免疫反応である。
前者としては遺伝性溶血性貧血に認められる無形成発作(aplastic crisis)、胎児水腫などで、後者は伝染性紅斑、関節炎、紫斑病、virus associated hemophagocytic syndrome (VAHS)、脳炎、心筋炎などである。
 B19は赤血球系の細胞、特に赤芽球前駆細胞に感染し、感染細胞のアポト−シスを起こす。その結果、一過性に赤血球産生が抑制される。
 感染が赤血球系細胞に限られているのは、赤血球のP式血液型のP抗原がB19レセプターとして働くためである。内皮細胞、心筋細胞、胎児組織もP抗原を有している。
 B19における感染経過としては、まず感染後7〜11日でウイルス血症と発熱、倦怠感、鼻汁などの上気道症状が認められる。
 ウイルス血症の時期にIgMの産生が始まる。感染後19日〜21日頃からIgGの産生が始まる。
 B19の感染は4〜10歳の学童が好発年齢で、流行性あるいは散発性に発症する。不顕性感染が多いが、感染後は終生免疫を獲得する。
 免疫不全の宿主ではウイルスを排除できないため活動性持続感染が続き、数カ月〜数年間ウイルスを排泄し続ける。

臨床症状

 潜伏期は13〜18日で、前駆症状は微熱、頭痛や軽度の上気道症状であるが、ごく軽度であることが多く、気付かれないこともある。
 頬部に紅い斑状丘疹出現し、やがて発疹は融合し、両頬部は蝶形、平手打ち様、リンゴ様のびまん性紅斑の状態になる。その後、上肢と大腿に多型性紅斑が出現し、次第に大理石紋様、レースの編み目様紅斑となり1〜2日で消退する。
 発疹は痒痒感を伴うことがあり、日光、温熱により増悪することがある。発疹出現時には既に抗体が産生され、ウイルス血症は改善されている。
 感染力は発疹出現前にあり、発疹出現後は消失している。
 関節炎は本症の主要な合併症の一つであるが、年長児以降に多く、女子に多い。手、肘、足関節に両側性にみられる。症状は一過性で2〜4週間で軽快する。
 慢性溶血性貧血の患者では無形成発作(aplastic crisis)を起こし、重篤な貧血をきたす。5〜7日で自然回復するが、場合によっては輸血も必要となる。また母体の感染により血行感染を受け胎児水腫や胎児死亡を起こす。胎児における主な病態はB19感染によるaplastic crisisと心筋炎である。

検査成績

 本症は典型的な症状がみられれば診断は容易である。流行状況の情報収集も診断に有用である。
 B19のIgM抗体価の上昇、PCR法によるウイルスDNAの検出により診断は確定となる。
 慢性溶血性貧血の患者が急激に顔色不良、衰弱、発熱などの症状を来したら、本症によるaplastic crisisを疑い血液検査と必要に応じて骨髄検査を施行する。
 ヘモグロビン値の急激な低下、網状赤血球の消失、骨髄中の赤血球前駆細胞の消失などから診断する。

治療

 本症に特異的な治療法はない。
 対症療法として、発疹の掻痒感に対しては抗ヒスタミンン剤(ペリアクチン0.1〜0.2mg/kg/日、分2〜3、アタラックスP 1〜1.5mg/kg/日、分2〜3)、発熱や関節痛に対しては非ステロイド系の抗炎症剤(アセトアミノフェン10mg/kg/回、頓用)を用いる。
 aplastic crisisには重篤なら赤血球輸血を行う。また免疫不全による持続感染にγグロブリン製剤が有効なこともある。

予後

 本症は予後良好な疾患であるが、稀に脳炎、脳症、心筋炎などの合併症があることを説明する。但し、こういった重篤な合併症は稀なので過度に心配する必要ないことも十分説明する。
 基礎疾患として慢性溶血性貧血を持っている患者には、aplastic crisisの危険性があるが、適切な治療を行えば予後良好である。

参考文献

Kellermayer R, Faden H, Grossi M. Clinical presentation of parvovirus B19 infection in children with aplastic crisis. Pediatr Infect Dis J. 2003 Dec;22:1100-1.  

(MyMedより)推薦図書

1) 岡部信彦 編集:小児感染症学,診断と治療社 2007

2) 日本小児感染症学会 編集:日常診療に役立つ小児感染症マニュアル〈2007〉,東京医学社 2006

3) 馬場直子 著:こどもの皮疹診療アップデイト (CBRアップデイト・シリーズ 2) ,シービーアール 2009
 

免責事項

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