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Thrombotic microangiopathy
執筆者: 飯島 一誠
血栓性微小血管症 (Thrombotic microangiopathy:TMA)とは、種々の臓器の微小血管に血栓を生じる臨床病理学的な症候群である。TMAに属する代表的な疾患として、溶血性尿毒症症候群 (Hemolytic uremic syndrome:HUS)及び血栓性血小板減少性紫斑病 (Thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)があげられる。しかし、HUSとTTPは臨床的に明確に区別することは困難であり、本稿では一括してTMAと記載する。
臨床症状としては、血小板減少症、溶血性貧血、腎機能障害が主であり、さらに発熱や動揺性神経症状なども認められるが、必ずしもこれらのすべての症状がそろっているわけではなく、少なくとも血小板減少症と溶血性貧血の二つの症状があれば、TMAを疑うべきである。近年では、その一部で病因が明らかにされたことにより、病因による分類がなされることが多くなってきた(Table 1)[1]。
このなかで最も頻度が高いのは、感染症に続発するTMAである。その代表として、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌 (Shiga toxin-producing E. coli, STEC) 感染症に続発するTMAがある。また、補体調節機能の異常も原因となる。補体調節機構の先天的な異常や後天的な抗Factor H抗体などの形成が知られている。さらに、von Willebrand proteinaseであるADAMTS13の先天的、後天的な異常が原因となることもある。そのほか、悪性腫瘍や薬剤、移植や妊娠、コバラミン代謝異常などがTMAを引き起こすことが知られている。
STEC感染症における抗生剤の投与が、TMAの発症を減少させうるのか否かは明らかではないが、少なくとも欧米ではSTEC感染症発症時に抗生剤を投与することは禁忌であるとされている。現時点では、STEC感染症に続発するTMAに対する特異的な治療法はなく、支持療法(対症療法)を行い、自然回復を待つべきである。一方、補体調節蛋白異常症やADAMTS13異常症によるTMAに対しては、血漿輸注や血漿交換療法などが有効であるとされている。
STEC感染症に続発するTMAの大半は自然に完全回復するが、一部に死亡や腎機能障害、中枢神経障害を残す予後不良例が認められる。また、完全回復例でも長期フォロー中に尿異常や腎機能障害が再び出現することがあり注意が必要である。補体調節蛋白異常症やADAMTS13異常症によるTMAはSTEC感染症に続発するTMAに比して予後不良である。
感染症に続発するTMAとしては、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌(Shiga toxin-producing E. coli, STEC)感染症などに続発するものが最も頻度が高い[2]。TMAを続発するSTECとして最も頻度の高いのは、O157:H7であるが[3-6]、O26, O111, O103, O145といった他の血清型のSTECが病因として増加傾向にある[7-9]。最近、日本小児腎臓病学会学術委員会が行った全国調査では、下痢などの消化器症状を伴ったTMA発症患者のうち75%でその病因と思われる病原体が同定されたが、その91.5%はSTEC O157でありO111が3.2%、O26が2.1%, その他 (O1, O103, O165)が2.1%であった[10]。腸管出血性大腸菌以外でTMAを起こしうる細菌として、Shigella dysenteriaen type 1, Citrobactoer, Streptococcus pneumoniaeなどがあげられる[11-14]。
消化器症状を伴わないTMAの病因として、補体調節系の異常が重要である。Factor H[15, 16], factor I[17, 18], membrane co-factor protein (MCP: CD46) [19, 20]などの遺伝子変異が病因となりうることが知られている。また、Factor Hに対する自己抗体が病因となることも知られている[21]。
Multimeric Von Willebrand factor (VWF)を分解する酵素であるVWFCPの活性欠損や減少がTMA(特に慢性再発性TTP)の原因となる。この酵素はmetalloproteinase familyのADAMTS13であることが明らかになっている[22-26]。ADAMTS13遺伝子変異が原因となる[27-31]。また、また、後天的な原因として、ADAMTS13に対するIgG自己抗体産生が重要である[25, 26]。成人の非家族性TTPの48-80%は自己抗体産生が原因とされている。血小板阻害薬であるticlopidineやclopidogrelも後天性のADAMTS13欠損の原因となりうる[32-35]。Ticlopidine関連TTPは1600-5000人に1人の頻度で発症するとされている。
STEC感染症に続発するTMAの発症機序は依然解明されていないため、以下に述べるTMA発症機序はあくまで仮説にすぎないが、経口摂取されたSTECが腸管内で増殖し産生するShiga toxin (Stx) が重要な役割を担っていることは明らかである。しかし、STEC感染症後のTMA患者の大半にLipopolysaccharide (LPS)に対する血清抗体が認められること[36]、TMA合併例では血中のLPS結合蛋白が高値を示すことなどから[37]、LPSもTMAの発症に重要であると考えられている。
Stxは腸管上皮細胞からIL-8などのサイトカイン産生を促し、末梢血白血球の活性化や増加に関与する一方、腸管内皮細胞を傷害し、出血性腸炎を引き起こす。腸管粘膜が損傷を受けた結果、StxやLPSは容易に循環血中に入り込み、Stxは好中球、単球、血小板などに結合し、LPSとともにこれらの血球細胞を活性化する。好中球は標的臓器である腎、脳などのGb3 (Stx受容体) に富んだ血管内皮細胞にSTxを運ぶ役割を果たしていると考えられている[38]。受容体に結合したStxは血管内皮細胞などの標的細胞に取り込まれると局所にTNF-α, IL-1βやIL-6などの炎症性サイトカインを放出するが、これらのサイトカインにより炎症細胞浸潤が生じ、さらに大量のサイトカインが局所で産生され、StxやLPSの直接作用と相まって細胞障害から細胞死を引き起こす[39]。活性化した血小板は傷害された血管内皮細胞とともに微小血栓形成、血小板減少に関与するが、微小血栓形成には凝固能亢進や線溶系抑制も大きな役割を担っていることが最近明らかにされた[40]。糸球体毛細血管での微小血栓形成や糸球体内皮細胞および尿細管上皮細胞の機能障害や細胞死[41]が急性腎不全の原因と考えられる。一方、微小血栓が形成されることにより、機械的な赤血球破壊が生じ、さらに酸化ストレスが加わることによって、溶血性貧血が起こると考えられる。
なお、非常に頻度は低いが肺炎球菌感染症に続発するTMAでは、肺炎球菌が産生するニューラミニダーゼによって赤血球、血小板、糸球体内皮細胞からN-アセチルニューラミン酸が剥離し、その結果、細胞膜表面にT抗原が露出する。通常、血漿中には、抗T-IgM抗体が存在するため、これが細胞表面のT抗原と反応し溶血、血小板減少、糸球体障害等が生じると考えられている[42]。
補体調節蛋白の遺伝的異常によるTMAでは、補体の活性化による微小血管内皮細胞障害が病態生理の本質である。
先天的あるいは後天的なADAMTS13の欠失によるTMAは、非常に大きなVWF multimerが形成されることにより、血小板凝集が促進され、その結果、微小血管の血栓形成が生じることが病態生理の本質である。
臨床症状としては、血小板減少症、溶血性貧血、腎機能障害が主であり、さらに発熱や動揺性神経症状なども認められるが、必ずしもこれらのすべての症状がそろっているわけではなく、少なくとも血小板減少症と溶血性貧血の二つの症状があれば、TMAを疑うべきである。
STEC感染症に続発するTMAは3歳以下の小児に多く見られ、腸管出血性大腸菌感染者の約1-10数%に発症する。下痢あるいは発熱出現後4-10日に発症することが多い。下痢が軽快した後も、乏尿、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠、不穏、痙攣、血尿、蛋白尿などのTMAを疑わせる症候の出現に注意して経過観察する必要がある。
患者の約1/4—1/3は何らかの中枢神経症状がみられるが脳内の微小血栓症あるいはStxのニューロンへの直接的な障害作用によると考えられる。
STEC感染の確定診断は、糞便からの直接分離培養や増菌培養による大腸菌の検出とStx産生試験によってなされるが、迅速診断としての菌体抗原やStxの免疫学的な検出、あるいは遺伝子診断としてのPCR法によるStx遺伝子の検出も有用である。また、病原菌が分離される時期を過ぎてしまった場合には、菌体抗原であるO抗原(LPS)やStxに対する血清抗体価の測定が診断の一助となる。
STEC感染症後のTMAの診断に関しては、平成8年9月に日本小児腎臓病学会からガイドライン(http://www.jspn.jp/gakujyutsu.html#a1)が発表された(平成12年6月改訂)。
その診断基準では、TMAは以下の3主徴をもって診断する。
1) 溶血性貧血:破砕赤血球を伴う貧血でHb 10g/dl以下、
2) 血小板減少:血小板数10x104/l以下、
3) 急性腎機能障害:血清クレアチニン濃度が、年齢別基準値の97.5%以上で、各個人の健常時の値の1.5倍以上の上昇。
意識障害、痙攣、頭痛などの中枢神経障害及び肝機能障害や膵炎を随伴症状としてあげている。
1993年の米国ワシントン州でのSTEC感染症集団発生では、腸炎発症早期の抗生剤投与はTMA発症予防に効果はなかったとされている[43]。また、米国で行われた前向き研究では、O157:H7に感染した小児で抗生剤治療を受けた患者のほうがTMAの発症頻度が高かったとの報告がある[44]。成人でも抗生剤投与がTMA発症のリスクを高めるとの報告がある[45]。抗生剤投与がTMA発症を増加させる機序は不明であるが、抗生剤による溶菌によりStxが一気に放出される可能性[46]やStxを持つバクテリオファージを誘導する可能性[47]が示唆されている。
2002年にJAMAに掲載されたメタアナリシスで、O157:H7感染症に対する抗生剤使用は有害ではないとの見解が示されたが[48]、この解析では、日本で行われた“ホスホマイシンを早期に使用したほうがTMAの発症リスクは減る”という研究[49]が大きく結果に反映している。しかし、この研究ではホスホマイシン使用群と他の抗生剤使用群の比較をしているのであり、ホスホマイシン使用郡と抗生剤非使用群を比較しているのではなく、メタアナリシスの方法そのものに大きな問題があると後に批判されている[50]。このような経緯から、西欧諸国では、STEC感染症には抗生剤は使うべきではないとされている[51]。一方、日本では、依然として、多くの医師がSTEC感染症に抗生剤を投与しているのが現状であり、EBMの観点から、STEC感染症に対する抗生剤投与の是非を再考すべきであると考える。
現時点では、STEC感染を防ぐことがTMA発症予防の唯一の方法である。
STEC感染症に続発するTMAに対する治療に関しては、日本小児腎臓病学会のガイドライン(http://www.jspn.jp/gakujyutsu.html#a1)に準じて述べる。
TMAの治療には支持療法と特異的治療法があるが、STEC感染症後のTMAは大半が自然治癒すると考えられ、治療法の基本は支持療法である。
体重、血圧、心胸比(CTR)などを測定し容量負荷がないことを確認した上で、輸液による脱水の補正を行うとともにフロセミドの静注による利尿を試みる。この治療のみで十分な利尿が得られ透析に至らず軽快する例もしばしば認めるが、経過中の容量負荷、高血圧、低ナトリウム血症に十分注意する必要があり、乏尿や無尿を呈する場合には、すみやかに透析療法に移行することが望ましい。
一般的な小児の急性腎不全における透析療法の適応基準は、1)BUN>80 mg/dl、2)血清K>6.5 mEq/l、3)治療に反応しない心不全、肺水腫、4)重篤な代謝性アシドーシス(HCO3<12-15 mEq/l)、5)治療困難な高血圧などであるが、TMAでは、上記の基準に満たない場合でも、乏尿(10 ml/m2/hr以下)や無尿を呈する場合や、重篤な痙攣や意識障害などの中枢神経症状を合併するような場合には積極的に透析導入すべきであろう。
透析の方法は施設によって血液透析、腹膜透析のうち、習熟した方法を用いればよいが、体重が20 kg以下の乳幼児では、腹膜透析を第一選択とすべきとの意見が多い。血小板減少の強い時期に腹膜透析用カテーテルの留置手術を行うことに抵抗を感じる場合もあろうが、実際には、術中も術後も出血が止まらずに困った例はほとんどなく、TMAの極期でも安全に腹膜透析に導入できると考えている。ただし、腸管浮腫が高度で腹膜透析を試みてもうまくいかない場合には血液透析をせざるを得ない。 STEC感染症に続発するTMAでは、通常、発症後2-3週間以内に血小板の増加傾向、LDHの低下傾向とともに利尿も認められ、腎機能も改善することが多く、このような状態になれば、透析療法は中止してよい。
貧血の急激な進行、血小板の急激な減少に注意し、急性期には1日2回程度の血球算定を行う。赤血球輸血はヘモグロビンが6 g/dl未満に減少した場合が適応となるが、輸血中あるいは輸血後の高血圧に注意しつつ、ゆっくりと時間をかけて施行する必要がある。輸血による貧血の是正はヘモグロビン7-8 g/dlを目標とし、それ以上の是正は通常必要ない。血小板輸血を施行することはまれであるが、明らかな出血を認める場合や外科的な処置を行う際には必要となる。
なお、病態生理の項でも述べたが、肺炎球菌感染症に続発するTMAでは、赤血球、血小板、糸球体内皮細胞の細胞膜表面にT抗原が露出する。通常、血漿中には、抗T-IgM抗体が存在するため、これが細胞表面のT抗原と反応し溶血、血小板減少、糸球体障害等が生じると考えられている。したがって、肺炎球菌感染症に続発するTMAでは赤血球輸血の際には、洗浄赤血球輸血を行うべきである[42]。
HUSに伴う高血圧は容量負荷によることが多く、フロセミドの静注による容量負荷の軽減を試みるが、フロセミドに反応しない場合には透析療法への移行を考慮すべきである。緊急に血圧を下げる必要のあるときにはニフェジピンなどのカルシム拮抗剤を使用する。
痙攣に対しては、ジアゼパムあるいはジフェニールヒダントインを静注する。上記の薬剤を使用してもコントロール不能な場合には、呼吸管理下にチオペンタールなどの麻酔薬を使用し痙攣の抑制をはかる。
脳浮腫に対しては、フロセミドの静注や透析療法による除水、グリセオール投与などを行うが、透析療法などによる除水を行わずにグリセオール投与する際には容量負荷を悪化させる可能性があるので注意を要する。
DICの基準を満たす場合には、メシル酸ナファモスタット、メシル酸ガベキセート、ウリナスタチン、アンチトロンビンIII製剤等を使用する。また、1週間以上の絶食例には中心静脈栄養も考慮する。
STEC感染症に続発するTMAに対して、様々な特異的治療法が試みられてきたが、そのいずれもが現時点では有効性は確立されていない。
STEC感染症に続発するTMAに対して、新鮮凍結血漿輸注や血漿交換療法が試みられてきたが、その有効性に関しては議論の多いところである。
新鮮凍結血漿輸注は、TMAで認められるPGI2の産生阻害を改善するために、PGI2産生刺激因子を有する血漿を補充するという理論的背景に基づいて考えられた治療法である。我々も、以前はしばしば新鮮凍結血漿の輸注を行ってきた。しかし、容量負荷をきたす可能性や未知の感染症を引き起こす可能性、さらに蛋白負荷がかえって腎障害を遷延させるという報告もあり、現在では、その適応をさらに慎重に検討すべきであると考えており、最近は、新鮮凍結血漿の輸注は行っていない。
血漿交換療法は、StxやPGI2阻害因子の除去を目的として施行されているが、Stxの多くはTMA発症時には既にレセプターに結合していて循環血液中にはほとんどないと考えられ、また、 PGI2阻害因子はSTEC感染症に続発するTMAでは認められないとの考え方もあり、その有効性には疑問が残る。中枢神経症状のある場合に用いるとの意見もあるが、血漿交換療法は補体調節蛋白欠損症などに伴うTMA(いわゆる非典型的HUS)に有効であるとの報告はあるが、STEC感染症に続発するTMAの中枢神経症状を改善するという証拠はなく、前述したように血漿輸注による容量負荷をきたす可能性や未知の感染症を引き起こす可能性を考慮すると、安易に選択すべき治療法ではない。
また、かりに、これら治療法を用いる場合には、容量負荷を考慮して透析療法を併用することが望ましい。
輸血の項で述べたが、肺炎球菌感染症に続発するTMAでは赤血球、血小板、糸球体内皮細胞表面にT抗原が露出する。したがって、通常抗T-IgM抗体を含む新鮮凍結血漿輸注は一般には禁忌である[42]。
VTの中和抗体として使用する考えがある。しかし、Stx 1に対する抗体は含まれているがStx 2に対する抗体は含まれておらず、さらに、前述のごとくVTの多くはTMA発症時には既にレセプターに結合していて循環血液中にはほとんどないと考えられ、その有効性は確立していない。
ヘモグロビン尿による尿細管障害に対して防御的に働く可能性はあるが、TMAでの腎障害は糸球体内皮細胞を含めた血管内皮細胞障害による微小血管障害が原因と考えられ、ハプトグロビンの投与が有効であるという証拠はない。
抗生物質は、TMAを発症している時期には、一般的には使用する必要はない。5)その他 ヘパリン、ウロキナーゼ、抗血小板剤、プロスタグランデインI2などは無効であり、かえって病態を悪化させる可能性もあるので使用すべきではない。また、ビタミンEも有効性は確立していない。
Factor H, factor I, MCPなどの穂体調節蛋白の異常によるTMAに対しては、血漿輸注あるいは血漿交換療法が行われることが多い。
ADAMTS13遺伝子変異によるADAMTS13活性低下・消失が原因である場合には、2-3週ごとのFFP輸注が有効である。また、自己抗体産生によるADAMTS13活性減少・消失には、FFPを用いた血漿交換療法が有用であるが、加えて免疫抑制剤や脾摘が必要となることがある[52]。B細胞表面抗原であるCD20に対するモノクローナル抗体(Rituximab)も有効とされている[53-55]。血小板阻害薬であるticlopidineやclopidogrelによる後天性ADAMTS13欠損の場合も血漿交換療法が有効であるとされている[33]。
SETC感染症に続発するTMAでは、たとえ急性期に透析を必要とするような急性腎不全となっても、大半の症例では、腎機能は正常に回復する。しかし、予後不良な症例も存在する。日本小児腎臓病学会学術委員会が行った全国調査では、下痢を伴うTMA(D+HUS)発症患者のうち127人のうち2例(1.6 %)が死亡し、11例(8.7 %)に蛋白尿・血尿などの尿異常が認められ、1例(0.8 %)に腎機能障害、3例(2.4 %)にてんかんなどの中枢神経障害が残ったと報告されている[10]。また、長期フォロー症例の30-50 %に腎障害の兆候や高血圧が認められるとの報告があることから[56, 57]、たとえ、尿所見や腎機能が完全に正常化したとしても、長期の定期的なフォローアップが必要と考えられる。
補体調説蛋白異常症などによるTMAの予後は不良である。50%程度が末期腎不全や非可逆的な脳障害を呈し、25%が急性期に死亡するとされている[58-60]。ただ、その予後は、変異遺伝子により違うとの報告がある[61]。MCP変異症例は、Factor H変異症例より予後は良好で、MCP変異の場合には、90%が寛解を得られるが、Factor H変異では、再発を繰り返すために予後不良であるとされている。Factor I変異症例に関しては、症例数も少なく長期予後を推測することは困難である。
ADAMTS13欠損によるTMA(いわゆるTTP)に関しては、無治療の場合には90%以上が死亡するが、血漿交換療法により死亡率を20%にまで減少させることができると報告されている[62]。
腸管内でStxに結合して血中への吸収を阻害する目的でSynsorbが開発され、臨床試験が行われたが、残念ながら、Synsorbは、STEC感染症に続発するTMA発症を減少させなかった[63]。
Ake, Tarrらは、TMA発症前の経静脈輸液による循環血液量の増加とTMA発症時の腎障害に関連があることから、STEC感染症時の腎保護策として、十分な輸液を行うことを推奨している[64]。輸液としては当張液の使用を推奨している[65]。
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