総動脈幹 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

総動脈幹(そうどうみゃくかん)

Persistent Truncus Arteriosus

執筆者: 北川 哲也

概要

 新生児期に重篤な心不全症状を呈し、この時期に治療を必要とする心疾患の1-4%で死亡率も高いが、全先天性心疾患でみると0.7-0.82%と発生頻度は比較的少ない。左右両心室から、単一の半月弁(総動脈幹弁)を介して、単一大血管である総動脈幹に血液が流入し、それから大動脈と肺動脈に別れる心奇形である。
 総動脈幹弁の下にはVSDが存在する。総動脈幹から肺動脈が分岐する様式で分類したCollet-Edwards分類1)がよく用いられるが、第6弓大動脈の全欠損あるいは近位側の欠如を示す例がはいっており、これらを別の疾患として除外したVan Praagh分類2)も有用である。総動脈幹弁は異常を示すことが多く、予後に大きく影響する。VSDは通常subarterial typeで、三尖弁との間に筋性組織を認め、刺激伝導系から隔てられている。

病態生理

 総動脈幹とVSDの左右短絡による肺血流量増多および総動脈幹弁異常による負荷が相まって、新生児にうっ血性心不全がおこる。日齢を経るにつれて生理的肺血管抵抗の低下に伴って前者の負荷は増大する。

臨床症状

 発症は早く、肺血流量増加を伴う先天性心疾患に特有な多呼吸、哺乳力低下、体重増加不良、呼吸器感染の易罹患性などの症状がみられる。通常、視診ではチアノーゼに気付かない。これらに加えて総動脈幹弁の狭窄や閉鎖不全により心不全症状はさらに程度を増す。四肢末梢でbounding pulseを触知し、聴診では心基部に単一Ⅱ音の亢進を認める。

検査成績

検査所見

1)心電図所見

 Ⅰ、Ⅱ誘導のP波は尖鋭で幅広く、左房負荷を示す。1歳以下例では、左側胸部誘導にq波がなく、右室肥大を示すことが多い。

2)胸部X線

 中等度から高度の心拡大と肺血管影の増強を示す。しかし、肺血管閉塞性病変が不可逆的な変化を起こしてしまうと心胸郭比の縮小および末梢肺血管影が減少する。

3)心エコー図所見

 長軸像で心室中隔に騎乗した大血管が描出されれば本症か、ファロー四徴症である。2-6尖からなる総動脈幹弁が観察され、弁上部に冠動脈起始や肺動脈の分岐をみる。

4)心臓カテーテル・造影検査

 総動脈幹基部で造影すると、上行大動脈、肺動脈、冠動脈が同時に造影される。上行大動脈と肺動脈の酸素飽和度を比較すると、上行大動脈のそれがやや高く、総動脈幹内にfavorable streamingが存在する。

診断・鑑別診断

 上記により診断を確定するが、ファロー四徴症、大動脈肺動脈中隔欠損症、動脈管開存症、肺動脈閉鎖を伴う心室中隔欠損症との鑑別が必要である。

治療

 内科的治療には限界があり、診断即外科治療が基本である。根治手術としては、心外導管を用いるRastelli手術と、肺動脈を直接あるいは自己組織を介して右室流出路とつなげる手術が施行されている。手術危険因子は2.5 kg以下の低体重、術前状態不良、総動脈幹弁逆流、その人工弁置換、冠動脈異常、合併する大動脈弓離断等がある3-6)。総動脈幹弁の異常に対しては、可能なら自己弁修復術が望ましいが、場合によっては同種弁移植も考慮すべきである。
 総じて早期の一期的根治手術が推奨されているが、新生児期の左右肺動脈絞扼術により2-3カ月まで根治手術を待機させることが可能であり、手術に伴う危険性を減少させるとの報告もある。

予後

 年長の生存例もあるが、手術を行わない限り予後不良であり、剖検例によると生後3歳5カ月以内に多くが死亡し、うち50%は1カ月以内に死亡している。2004年の本邦における根治術成績は、新生児を含めた乳児期病院死亡率33.3%と不良で、早期の改善が望まれている。一方姑息術成績は新生児を含めた乳児期病院死亡率14.3%であった。
 乳児期を乗り越えた幼児から年長児では肺血管閉塞性病変の不可逆的変化が予後を悪化させる。個々の病態、危険因子を考慮した治療戦略を考慮すべきである。

参考文献

1) Collet RW, et al. Persistent truncus arteriosus; A classification according to anatomic types. Surg Clin North America 29: 1245-1270, 1949.

2) Van Praagh R, Van Praagh S. The anatomy of aorticopulmonary trunk (truncus arteriosus communis) and its embryologic implication. Am J Cardiol 16: 406-425, 1965.

3) Thompson LD, et al. Neonatal repair of truncus arteriosus; continuing improvement in outcomes. Ann Thorac Surg 72: 391-395, 2001.

4) Urban AE, et al. Truncus arteriosus; ten-year experience with homograft repair in neonates and infants. Ann Thorac Surg 66 (6 suppl): S183-188, 1998.

5) Brown JW, et al. Truncus arteriosus repair; outcomes, risk factors, reoperation and management. Eur J Cardiothorac Surg 20: 221-227, 2001.

6) Schreiber C, et al. Single centre experience on primary correction of common arterial trunk; overall survival and freedom from reoperation after more than 15 years. Eur J Cardiothorac Surg 18: 68-73, 2000.

執筆者による主な図書

1) 高本眞一 監修,角秀秋 編集:小児心臓外科の要点と盲点,文光堂 2006
  
2) 龍野勝彦 他 編著:心臓血管外科テキスト,中外医学社 2007 

3) 日本胸部外科学会卒後教育委員会 編著:胸部外科において何が標準術式となりうるか,日本胸部外科学会
 
4) 寺本滋 他 監修,内田發三 他 編集:四肢動脈疾患のすべて,へるす出版

5) 前田肇 監修,今脇節朗 編集代表:静脈およびリンパ管疾患と外科 メデイカルトリビューンブックス,日本アクセル・シュプリンガー出版 1997

(MyMedより)推薦図書

1) 宮田哲郎 編集:一般外科医のための血管外科の要点と盲点 (Knack & Pitfalls),文光堂 2010

2) 高橋長裕 著:図解 先天性心疾患―血行動態の理解と外科治療,医学書院 2007

3) 国立循環器病センター心臓血管部門 編:新心臓血管外科管理ハンドブック,南江堂 2005

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