Bartter症候群/Gitelman症候群 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

Bartter症候群/Gitelman症候群(ばーたーしょうこうぐん ぎてるまんしょうこうぐん)

bartter syndrome / gitelman syndrome

執筆者: 譜久山 滋

概要

Bartter症候群

 1962年、Bartterらは成長障害のある黒人男性に高アルドステロン血症、低K血症とアルカローシス、腎組織において傍糸球体装置の過形成を認め、これを報告した。以降、Bartter症候群は低K性代謝性アルカローシスを呈する疾患の一般的な呼称となった。しかし、長年に渡りその一元的原因は不明であった。アンギオテンシン受容体異常説、プロスタグランディン(prostaglandin; PG)産生過剰説などが考えられたが、症状がフロセミド投与の副作用に類似している事から、その作用点であるヘンレ(Henle)上行脚のイオンチャネルであるNKCC2(NaK2Cl共輸送体)の障害が推定されていた。

Gitelman症候群

 1966年、Gitelmanらは低K血症に低Mg血症を伴う家族性の疾患を報告し、Bartter症候群の亜型と考えられた。低Mg血症、低Ca尿がその特徴とされ、サイアザイド系利尿薬投与の際と類似している事から、その作用点である遠位尿細管のNa-Cl共輸送体(NCCT)の異常と推定されてきた。

病因

 常染色体劣性形式をとる遺伝性疾患である。1996年、SimonらはBartter症候群の家系を連鎖解析する事により、原因遺伝子がNKCC2であると報告し、推測が正しかった事を示した(I型)。その後もROMK(腎Kチャネル), ClC-Kb(ClチャネルKb)の異常によるタイプを明らかにした(それぞれII型、III型)。II型ではROMKの異常により管腔内のKが欠乏するため、III型では細胞内のCl濃度が保たれないため、二次的にNKCC2の機能異常をもたらすと考えられている。また、本症候に感音性難聴を伴う例も知られてきたが、これはClC-Kbのサブユニットであるbarttinの異常による事がわかった(IV型)。

 Barttinは腎・内耳に存在するClチャネルKaの機能発現にも必要であるために、この異常は難聴を呈し、一般的にIII型より重症で腎不全を呈する事もある。一方で、基底膜側に存在するCa-Sencing receptor(CaSR)の活性型変異で本症と類似した病態を呈する例も報告されている。活性化されたCaSRがNKCC2,ROMKの働きを抑制するためと考えられている(V型)。

 Gitelman症候群に関しても1996年、Simonらによる連鎖解析により、NCCTが原因遺伝子だと報告された。

 現在ではBartter症候群の本態はヘンレ上行脚のNKCC2の機能不全(一次的ないし続発的)によるClの再吸収障害であると考えられている。Gitelman症候群では遠位尿細管のNCCTにおける塩類(Na,Cl)の再吸収障害と考えられている。

病態生理

 塩類の再吸収障害によるlossで多尿・循環血漿量減少となりレニン-アンギオテンシンは亢進する。代償的に集合管ではアルドステロン依存的にNa再吸収亢進がおこるが、交換でK+・H+は尿中に排泄されてしまうために低K血症・アルカローシスとなる。低KはPGの産生も刺激する。Bartter症候群ではPGもその症状発現に強く関連している。レニン高値にもかかわらず、血圧正常なのは循環血漿減少傾向とPG作用のためと考えられている。

 Gitelman症候群は機能障害部位が緻密斑(macula densa)より遠位で尿細管全体からみてNa, Clの再吸収を担う割合も比較的少ない事から、より軽症であると考えられる。 

 このようにたて続けに原因遺伝子の発見があり、その後は遺伝子解析例の報告が多くされた。その蓄積により、単一遺伝子異常だけでは症状のすべてを説明できない例も多い事もわかってきている。これは尿細管において電解質がじつに様々な因子の影響を受けて代謝されているためと考えられる。

臨床症状

 上記のように遺伝子解析例では原因遺伝子からタイプを決めるが、症状からは以下のように分類される事が多い。

新生児型Bartter症候群

胎児多尿の為に羊水過多・早産などの周産期異常が見られる。出生後も高度の多尿が続き、重篤な水・電解質異常を引き起こす。また、著明な高Ca尿から腎石灰化を引き起こし小児期に末期腎不全に至る例もみられる。外観上で三角顔などの特徴を呈する事がある。

古典型Bartter症候群

 一般的に新生児型よりは軽症であるが、乳児期から幼児期にかけて体重増加不良、成長障害などを伴う。腎における水分の保持能が十分でなく感冒や胃腸炎の際には脱水症状を呈しやすく、Kは2meq/lを下回る重篤な低K血症をとる事もまれではない。その際、代謝性アルカローシスからくるテタニーや脱力に加え、嘔吐などの消化器症状も伴いやすい。

Gitelman症候群

 学童期から成人にかけてテタニー・筋力の低下などで発症するが、偶然の検診などで発見される事もある。基本的には成長・発達は正常である。

 古典型Bartter症候群とGitelman症候群は特に症状・所見がオーバーラップする事が多い。

検査成績

 一般的、かつ特徴的な所見は低K血症(通常K 2.5mEq/L以下)と代謝性アルカローシス-(通常HCO3- 30mmol/L以上)である。血中のレニン、アルドステロンも高値をとる。

 尿中Caは簡易だが有用な所見である。Bartter症候群では尿中Caは正常上限の2倍以上程度の事が多い。腎エコーで石灰化の有無をみる。また尿中PG排泄増加も診断の一助となる。

 Gitelman症候群の診断で低Mg血症はその特徴的所見の一つとされるが、遺伝子解析でNCCT変異が証明された例から回帰的にみると必須ではない。

 家族歴も詳細に調査する。

診断・鑑別診断

 1977年の厚生省におけるホルモン受容体異常症調査研究班が示したBartter症候群の診断基準を以下にしるす。

 ・血漿レニン活性の高値

 ・血漿アルドステロンの増加

 ・低カリウム血症

 ・代謝性アルカローシス

 ・正常ないし低血圧

 ・アンギオテンシンⅡに対する昇圧反応の低下

 ・神経性食思不振症、慢性の下痢、嘔吐や下痢、利尿薬の長期投与がない

 ・腎糸球体で傍糸球体装置の過形成を証明する事が望ましい(小児では不要)

 Bartter症候群/Gitelman症候群はrare diseaseであり、偶然の検査や筋力低下・しびれ脱力感などで低K血症・代謝性アルカローシスが認められた際、現実的には診断基準の7.であげたような疾患をまず念頭に置くのが一般的であろう。しかしそれらを検討してなお原因が不明の場合は遺伝子検索を含めた更なる検索を検討する。

治療

 急性期の治療は低K血症の補正が最も重要であるが、本症の患者は通常より比較的低K血症の傾向があり、いわゆる標準値への補正を必ずしも要しない事もある。

 維持療法としては経口カリウム製剤の他、特にBartter症候群では、インドメタシンの投与は症状改善に有効と考えられ、多くの症例に用いられている。これは本症の病態にPGが強く関与している為である。PGは炎症に関与する他、様々な生理活性を持つ物質であり、ヘンレ上行脚ではNaClの分泌を促進する作用がある。インドメタシンはシクロオキシゲナーゼを阻害する事によりアラキドン酸からのPG産生を抑制し、結果的にCl喪失の悪循環を抑えると考えられる。しかし副作用の腎障害には留意を要する。他に抗アルドステロン剤、ACE阻害剤も検討される事がある。

予後

 Bartter症候群には、新生児期からの症状の重篤度・治療介入により成長・発達はさまざまな程度をとりうる。基本的には成長障害はある例が多い。生涯、補充療法を要する。原疾患による腎不全への進展の他に、治療で用いるインドメタシンも腎障害があり腎予後に関しては慎重な経過観察を要する。

 またGitelman症候群はこれまで良性疾患と考えられてきた。通常の社会生活を営んでいる方が多い。しかしQOL低下や、心電図でQT延長がある例も多いことがわかってきており、より慎重な経過観察・加療を必要とする。

(MyMedより)推薦図書

1) Scott D.C.Stern・Adam S.Cifu・Diane Altkorn 著、日経メディカル 編集、竹本毅 翻訳:考える技術―臨床的思考を分析する,日経BP社 2007

2) 越山裕行 著:最新内分泌代謝学ハンドブック,三原医学社; 第3版版 2006
 

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