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pyriform sinus fistula
執筆者: 森川信行
下咽頭梨状窩に開口部を有する鰓原性の瘻孔で、瘻管は下咽頭収縮筋を貫通し、甲状腺上極周囲に達する。反復する側頚部膿瘍、急性甲状腺炎の原因の大部分は梨状窩瘻によることが明らかになり、疾患概念が確立した。発生学的には、将来、下上皮小体と胸腺を形成する第3鰓嚢、上上皮小体、甲状腺の一部となる第4鰓嚢から発生すると考えられている。瘻管の内腔は重層扁平上皮または線毛円柱上皮で被われ、時に異所性胸腺、上皮小体組織を認めることがある。瘻管と甲状腺との位置関係は甲状腺を貫くもの、甲状腺の外側を通るもの、内側を通るものがある。
男女比に差はないが、左右差では大部分が左側に発症する。左に多い理由は原始大動脈弓の退行と関連があるとされているが詳細は不明である。発症年齢は新生児期から壮年期にみられるが、初発は10歳以下に多く再発を繰り返すのが特徴である。
症状は幼児期以降では発熱、前頚部の有痛性腫脹、嚥下痛で、新生児では呼吸困難、チアノーゼを認めることもある。最近では出生前に頚部の嚢胞性疾患として胎児期に梨状窩瘻が描出される症例もみられる。有痛性の腫脹は甲状腺片葉に一致しており、膿瘍形成から自壊することで軽快する。
診断は甲状腺の部位に腫脹、圧痛、波動がみられることで急性化膿性甲状腺炎と診断できる。画像診断では単純X線で頚部の異常ガス像や鏡面像、甲状腺に一致した石灰化がみられることがあり、気管の圧排も確認できる。エコー、CTでは甲状腺に一致して膿瘍を認め、甲状腺シンチグラムでは患側上極に陰影欠損を認める。瘻孔の確認には食道造影、内視鏡が用いられる。食道造影で梨状窩から下方に伸びる瘻孔が確認されれば確定診断となるが、瘻孔は極めて細いため炎症の強い時期には描出されないことが多い。炎症の消退を待って繰り返して造影検査を行う必要がある。内視鏡では瘻孔開口部から膿汁の排出を認められることがある。
炎症の急性期には抗生剤投与、切開排膿により炎症が完全に消退するのを待って根治術を行う。根治術は瘻管の完全切除であるが、決して容易ではなく、術後に再発することも少なくない。手術を困難にしている要因は先行する炎症による強い癒着と梨状窩付近で瘻管自体が不明瞭になることである。瘻管を確実に切除する目的で、手術に先立ち、瘻孔にゾンデやFogarty catheterを挿入したり、内視鏡下に瘻孔に色素を注入することが報告されている。
手術は梨状窩で瘻孔の入口部を先に処理して末梢に向かう方法と、先に甲状腺左葉上極に到達し、これに続く索状物を頭側に追っていく方法がある。著者らはまず甲状腺左葉に至り、甲状腺左葉上極を部分切除した後に瘻管の内側を走る反回神経を損傷しないように梨状窩に向かって剥離を進め、下咽頭収縮筋に瘻孔が入るのを確認してできるだけ梨状窩の開口部まで追求して結紮切離する方法を採っている。
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