嚢胞性腎疾患 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

嚢胞性腎疾患(のうほうせいじんしっかん)

執筆者: 金森 豊

多嚢胞腎

(polycystic kidney disease)

常染色体劣性多発性嚢胞腎

(autosomal recessive polycystic kidney disease: ARPKD)
 様々な程度の両側腎集合管の拡張ないしは嚢胞形成を特徴とする腎嚢胞性疾患であるが、胆管系の拡張・奇形や肝の繊維化を合併する。1万人から4万人に1人の発生頻度といわれている。発症に性差はないが、両親の発症はなく同胞内発症があり得る、常染色体劣性遺伝の形式をとる。本疾患の責任遺伝子として、polyductin/fibrocystin蛋白をコードするPKHD1(polycystic kidney and hepatic disease 1)が同定されている。

 本疾患の診断基準は、まず両親の腎が超音波検査で異常がないことが必須である。さらに、死亡した同胞がある場合にその病理学的検索で腎集合管の拡張、胆管の形成不全、門脈系の繊維化などがあれば、その所見に加えて、本人の腎の形態異常、腎機能低下、肝繊維化のいずれかを合併していれば確定診断となる。同胞の死亡例がなければ、腎形態異常、腎機能低下、肝繊維化がそろえば診断とする。胎児期に両側腎が超音波検査で高輝度を呈していることで診断される例もある。

 腎機能低下から羊水減少を伴う場合には重篤な肺低形成を合併してPotter症候群を呈し予後不良である。軽症例では腎機能低下の程度により生後数年から数十年後に腎不全となる。このような症例では肝繊維化が問題となることがある。肝繊維化の結果門脈圧亢進症の症状(食道静脈瘤、血小板減少など)が出現する。

 腎機能低下については高血圧の治療をおこないながら、透析や腎移植を考慮する。Cyclic AMPが嚢胞形成に関係することから、V2レセプター拮抗薬を用いた治験がおこなわれている。肝機能低下を合併した場合には門脈圧亢進症の治療をしながら、腎肝同時移植の適応を検討する。 

常染色体優性多嚢胞腎

(autosomal dominant polycystic kidney disease: ADPKD)
 常染色体優性遺伝形式で両側腎に多発性嚢胞が生じ、次第にその数と大きさが増大して腎機能が低下する疾患である。進行した病期では腎間質の繊維化が著明となる。小児期から腎嚢胞が存在することが明らかとなり、従来考えられていた成人型の嚢胞腎という概念は捨てられた。学校検尿で蛋白尿や微少血尿で発見されることが多くなっている。 

 本疾患の原因遺伝子には多様性がある。もっとも多いのは、polycystin 1蛋白をコードするPKD1遺伝子異常によるもので、約85%がこのタイプである。polycystin 2蛋白をコードするPKD2遺伝子異常に起因するものや、これら両方のいずれにも異常がないタイプがある。本疾患は、これらの遺伝子異常を両親から受け継ぎ、さらにその対立遺伝子に変異が生じることで発症する。

 家族内発生が確認されている場合には、超音波検査で両側腎に各々3個以上の嚢胞が確認されるか、CT検査で両側腎に5個以上の嚢胞が確認される場合に診断される。家族内発生が確認されない場合には、15歳以下の年齢では、CTや超音波検査で両側腎にそれぞれ3個以上の嚢胞が確認され、他の嚢胞性腎疾患が否定されたときに診断される。
我が国では年間、100万人に4人ほどが発症し、60歳までに36-55%の人が腎不全に至る。初期には腎濃縮力障害が生じる。高血圧や頭蓋内出血の合併があるので注意が必要である。また他にも、肝・膵・脾などに嚢胞を合併したり、心肥大、腎結石、腎感染、大腸憩室なども合併する。 

 治療は、対症療法が主体となる。 

多嚢胞性異形成腎

(multicystic dysplastic kidney)
 胎生10週以前の腎尿細管膨大部の発生異常により同部が嚢状を呈し多数の嚢胞を形成する疾患である。実験的には、尿管芽と後腎芽細胞の相互作用に異常がおこると発症するということが示されている。実際には病理所見も多様であり、本疾患の原因は単一ではないことが考えられる。大小の嚢胞が不規則に存在する。一般的に遺伝性はないとされているが、一部遺伝性を示唆する発症があり、また近年hepatocyte nuclear factor-1遺伝子の異常を持つ本症が報告されている。 

 最近では、胎児期に多発性嚢胞として診断される症例が増加している。腎盂尿管移行部狭窄症による水腎症との鑑別が問題になる。本症では腎盂にあたる腎内側の拡張が目立たず、不規則に嚢胞が多発していることが特徴であるが、形態のみでは必ずしも鑑別は容易ではなく、生後の腎機能検査によって始めて確定診断がつくこともある。両側性の場合はPotter症候群となり生命予後は不良である。片側の場合には対側腎の異常について検索する必要がある。 

 従来は診断がつけば摘出手術が行われていたが、最近ではその必要がないとする意見が優勢である。腹部膨満が著しい場合や、高血圧や感染症の合併がある場合を除いて経過観察をすることが一般的になってきている。 

孤立性多胞性嚢胞

(solitary multilocular renal cyst)
 稀ではあるが腎の一部に多発性、孤立性に嚢胞が多発する疾患がある。小児期に診断される症例と成人期に診断されるものとがある。

 1951年にPowellらが提唱した診断基準が有名である。それによると、嚢胞は片側性、孤立性、多発しており、腎盂と交通がなく、お互いにつながりをもたず、上皮細胞で裏打ちされており、腎実質はみられず、病変以外は正常腎組織である。 

 超音波検査やCT検査などを用いて診断するが、確定診断は病理学的になされる。

 治療法は単純核出術が考えられるが、病理学的にWilms腫瘍や、partially differentiated nephroblastomaの成分が見いだされることもあり、腎摘出術を勧める考えもある。核出術をおこなった場合には詳細な病理学的検討と共に慎重な経過観察が必要である。 

腎髄質嚢胞性疾患

(renal medullary cystic disorders)

髄質海綿腎

(medullary sponge kidney)
 集合管が嚢胞状に拡張する先天性の腎疾患で、腎結石、血尿、尿路感染症で発見されることが多い。成人例が多く小児例は稀である。80%は両側性に発症する。 

 乳頭部の集合管が拡張するために、IVPで造影剤静注後30分以上経過すると乳頭部の拡張した集合管に造影剤が残存した、いわゆるblush-like patternがみられる。進行すると遠位尿細管アシドーシスを呈する。本疾患は、片側肥大症、副甲状腺機能亢進症、異所性腎、馬蹄腎、ダウン症候群、Marfan症候群などに合併することが多い。 

 高カルシウム尿症や尿路感染症をコントロールする。 

髄質嚢胞腎

(medullary cystic kidney disease: MCKD)
 常染色体優性遺伝形式で発症する疾患で、腎髄質や皮質髄質移行部に大小さまざまの嚢胞を認める。尿細管基底膜の肥厚、尿細管の萎縮、間質の繊維化を呈する。

 多飲、多尿、貧血、成長障害などの症状から精査されて診断される。60歳台で腎不全となるMCKD1と、若年で腎不全となるMCDK2とが存在する。 

遺伝性症候群に合併する腎嚢胞

 結節性硬化症は知能障害、けいれん、皮膚症状を呈する常染色体優性遺伝疾患であるが、腎においてはangiolipomaや嚢胞を合併する。 

 Von Hippel-Lindau病は、常染色体優性遺伝の疾患で、小脳の血管芽腫と網脈の動脈増生を初発症状とする。両側性腎嚢胞や腎細胞癌を合併する。 

 口顔指症候群(oral-facial-digital(OFD) syndrome)の1型はX染色体連鎖優性遺伝の疾患で、女性に発症し、精神発達遅延、水頭症、孔脳症、脳梁欠損などがあり、口蓋裂、小顎、合指症など多彩な異常を呈する。患者の15%に多発性の腎嚢胞を合併する。

(MyMedより)推薦図書

1) 五十嵐隆 著:小児腎疾患の臨床 改訂第3版,診断と治療社 2008

2) 高梨昇 著:コンパクト超音波αシリーズ 腎・泌尿器アトラス (コンパクト超音波αシリ-ズ),ベクトル・コア 2009
 

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