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最終更新日:2008.06.17

伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)

impetigo contagiosa

執筆者: 澤田雅子

概要

細菌による皮膚の感染症であり、原因菌が直接表皮に感染して膿痂疹の状態を生じたものを伝染性膿痂疹という。季節的には皮膚が汗や汚れ、虫刺され、強い直射日光といったさまざまなストレスを受けやすい夏季に好発し、乳幼児に多い皮膚疾患である。あせも、虫刺され、湿疹などを引っ掻いて掻き壊したり、転んでできたりした傷に二次感染を起こし、さらに接触によって、火事のときの飛び火のようにあっという間に周囲および遠隔部位の皮膚に広がるため、俗名とびひと呼ばれる。

病因

伝染性の原因菌は黄色ブドウ球菌のことが多いが、A群β溶血性連鎖球菌のこともある。あせも、虫刺され、湿疹などを掻き壊して二次感染を起こす。鼻を掻いたりほじる癖のある子どもは鼻孔の入り口に傷をつけるのでそれが鼻の常在菌により感染を起こすことが多い。また、もともとアトピー性皮膚炎など皮膚の状態があまりよくない場合に伝染性膿痂疹は感染しやすい。

病態生理

原因菌が黄色ブドウ球菌である場合、表皮剥脱性毒素exfoliative toxin(ET)を産生する株がある。表皮に付着した黄色ブドウ球菌が擦り傷や掻き壊しによって表皮角質層細胞間に入り込んで増殖し、産生されたETが表皮顆粒層に作用して細胞を破壊し、炎症性浮腫を生じさせ、角質層下に水疱を形成させる。このため、黄色ブドウ球菌が原因菌である場合は水疱性膿痂疹となる。A群β溶血性連鎖球菌が原因菌の場合は、炎症が強く、痂皮(かさぶた)が厚く付く痂皮性膿痂疹となるが、発生機序はよくわかっていない。

臨床症状

ブドウ球菌性伝染性膿痂疹は、多くは夏季、虫さされ、擦り傷、引っかき傷などから始まることが多く、掻き壊したびらんの周りに小さな水疱(水ぶくれ)ができてさらにその周囲が赤くかゆくなる。はじめは透明な水疱内は次第に混濁、膿疱化し、びらん面からの滲出液が広がることにより、周囲へ広がっていく。数日のうちに、円形状の水疱、膿疱、赤色びらん面が散在するようになる。通常全身症状はなく、血液検査の異常もみとめない。一方、溶血性連鎖球菌性伝染性膿痂疹は、最初は小水疱であるが次第に大きくなり、一気に多発する濃い紅斑を伴う膿疱が破れてびらんとなり、厚い痂皮で覆われる。季節性は乏しく、発熱、所属リンパ節の有痛性腫脹、時に咽頭痛などの全身症状を呈することもあり、重症になると菌が産生する毒素によって全身真っ赤になることもある。血液検査で炎症反応陽性をみることもある。

検査成績

初期投与の抗生剤による治療効果が不十分な場合に備え、病変部位の細菌培養検査を実施しておく。治療効果、培養結果および薬剤感受性の結果を見て、場合によっては抗生剤の再選択を行なうことになる。最近MRSA(methicilin resistant Staphylococcus aureus)によるものが増加している。

診断・鑑別診断

とびひかどうかは皮疹の状態で診断するが、元来、湿疹体質やアトピー性皮膚炎である場合、その症状の悪化との鑑別が必要である。細菌培養検査、薬剤感受性の結果は、診断と適確な治療を行ううえで有用である。

治療

長引く場合は薬剤感受性の結果をみて治療薬の選択をすることになるが、初期治療としては、セフジニルやセフジトレンピボキシルといった第一世代セフェム系抗生物質内服と、フシジン酸ナトリウム軟膏やテトラサイクリン系抗生物質の軟膏を併用する。内服はブドウ球菌性伝染性膿痂疹では約1週間、溶血性連鎖球菌性伝染性膿痂疹では約2週間。最近、ゲンタマイシン軟膏には抵抗するものが増えている。かゆみが強い場合はかきむしって広げるのを防ぐため抗ヒスタミン薬の内服をさせる場合もある。皮膚局所の清潔を保つことはもっとも重要なので、シャワー浴は積極的に行い、患部は石鹸を泡立てて傷つけないように気をつけながらよく洗う。スキンケア、爪を切っておくことも大事である。兄弟や他の子どもへの感染を防ぐため、タオルの共用は止め、膿痂疹が乾くまでプール参加は禁止である。

予後

掻かずに局所を清潔にし、きちんと治療していれば数日で乾いてくるが、必要以上に局所を覆い絆創膏で固定したためにかえってかぶれたり、中途半端なケアをしていると、長引くこともある。細菌性であるため免疫は成立せず、ひと夏に何回もかかる場合もある。合併症として、ブドウ球菌性伝染性膿痂疹の場合は原因菌が産生する毒素によって生じるSSSS(ブドウ球菌性熱傷用皮膚症候群)、溶血性連鎖球菌性伝染性膿痂疹の場合はまれに腎障害、を併発することがあり、注意が必要である。アトピー性皮膚炎に溶血性連鎖球菌性伝染性膿痂疹が合併した場合、敗血症を起こすこともある。

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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