気道異物 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.19

気道異物(きどういぶつ)

foreign body of the airway

執筆者: 五藤 周

概要

 気道にとどまってしまった外来性の固形物を気道異物と呼ぶ。気道異物はその存在部位により、上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)異物と下気道(気管、気管支)異物に分けられる。臨床上は、異物の存在部位、種類、形態、大きさ、時間経過により、急速に呼吸困難を生じるものから症状に乏しいものまで、様々な経過をとりうる。本稿では、しばしば診断が困難で、長期の経過をとることもある下気道異物を中心に述べる。

病因

年齢

 生後6か月から3歳頃の小児は、身の回りの興味があるものをすぐに口に持っていく特徴をもっており、これらが気道へ入り込んでしまうと、気道異物となる。通常、異物が喉頭に達すると咳嗽反射など喉頭の防御反射が起こり、異物の誤嚥が防がれるが、喉頭の知覚終末は6歳頃になって著しく発達するといわれ、その発達以前は喉頭の防御反射が弱く、喉頭や下気道への異物誤嚥を引き起こしやすい。小児の気道異物を年齢別にみると、3歳未満の児が全体の約80%を占め、とりわけ1歳児が全体の約60%と最も多い。なお性別は、男女比およそ2:1と男児に多い。

異物の種類

 気道異物の種類は、異物の存在部位により差異がみられる。鼻腔ではBB弾などの球状のプラスチック製玩具が最も多く、その他に紙片、ナッツ・豆類、ビーズ、ボタン型電池などがみられる。ほとんどは異物を自分で鼻腔に入れたものであるが、兄姉にいたずらで入れられて異物となることもある。咽頭では、扁桃や舌根に刺入した魚骨が多い。喉頭や下気道異物は、食物が全体の約80%を占め、その中でもピーナッツをはじめとするナッツ・豆類が全体の約70%と最も多い。食物以外では玩具やマチ針・ピンなどの針類、ビーズ、鉛筆・ペンのキャップ、歯牙、ビニールなどがあらゆるものが認められる。口にものを入れているときに泣く、笑う、驚く、走る、立つなどの急激な動作が異物誤嚥の契機となることが多い。

病態生理

 気道異物は異物自体による刺激、閉塞症状のほかに、時間の経過とともに異物の腐敗、化学的変化や組織反応性によって、種々の組織障害を起こしうる。一般に、プラスチック製玩具など非生物由来の異物は比較的組織反応が少なく、症状に乏しいことが多い。しかし例外として、ボタン型電池は3時間程度の早期から組織障害を生じることが知られており、注意を要する。下気道異物で多くみられるピーナッツなどのナッツ・豆類では、時間の経過と共に浸軟膨張して、気管支の閉塞を生じることが多い。さらにピーナッツでは、その成分である油脂が分解されて生じる遊離脂肪酸により、血管内皮細胞を傷害するので、化学性肺炎をきたすとされる。また下気道異物の多くは気管支異物となっており、気管支の不完全閉塞からcheck valve mechanismをきたすことにより呼気が障害され、末梢肺野の透過性亢進、気腫像を呈することが多いが、完全閉塞に至れば、無気肺像を呈する。

臨床症状

 異物の存在部位、種類、形態、大きさ、時間経過により、異なる。

自覚症状

 鼻腔異物では、悪臭を訴えてくるものが多い。経過が長くなると、鼻閉、膿血性鼻漏、疼痛、頭重感、発熱など副鼻腔炎様の症状を呈することもある。異物を入れたことを自分で訴える例はまれである。咽頭異物では、異物の存在部位に応じた疼痛をほとんどの例で認める。魚骨が口蓋扁桃に刺入している場合、舌骨大角付近がチクチク痛むと訴え、大きな骨が深く刺入した場合は嚥下痛が強い。また甲状軟骨を動かして疼痛が強くなる場合、食道入口部に刺入していることが多い。年長児では、疼痛の部位と異物の存在部位は、高率に一致する。喉頭から下気道の異物では、誤嚥の直後に異物の刺激により、激しい発作性咳嗽、喘鳴、チアノーゼといった初期痙攣症状を呈する。その後完全な気道閉塞を免れれば、一時的に症状の軽減をみることが多いが、咳嗽や喘鳴、発熱、嗄声、呼吸困難といった症状が持続することが多い。一方、喉頭から声門下腔に大きな異物が陥入すれば、完全に換気困難となり窒息するので、直ちに処置が必要となる。

他覚症状

 鼻腔異物では、親が異物挿入を目撃して受診する例も多い。目撃されなければ、経過が長くなり、悪臭のある鼻漏、鼻閉、疼痛、頭重感、頬部腫脹、発熱など副鼻腔炎様の症状を認めるようになる。咽頭異物では疼痛のため、食べようとしない、唾液を飲み込もうとせずによだれを垂らすといった嚥下を嫌がる様子がみられることがある。喉頭異物、下気道異物では、誤嚥直後には激しい発作性咳嗽などの初期痙攣症状が認められるが、初期に気道異物を疑われなければ、咳嗽、喘鳴、咳嗽、喘息様症状、発熱などの非特異的な気道症状を呈することが多いため、しばしば気管支喘息、肺炎、上気道炎などとして治療され、発見が遅れることがある。

診断・鑑別診断

病歴聴取

 病歴聴取は気道異物の診断上、非常に重要である。鼻腔異物の挿入や食事中の発作性咳嗽を目撃されていれば、異物を疑うことは容易である。特に下気道異物では、食物性の異物が大半であるため、親や本人が異物として認識しておらず、自発的に気道異物を疑わせる病歴を必ずしも言わないため、繰り返して病歴を聴取することが気道異物の診断につながることが多い。

身体所見

 下気道異物の多くを占める気管支異物では、その患側の呼吸音減弱を認めることが多く、注意深く観察すれば患側の吸気時の運動低下を認める。また打診では、異物のcheck valve mechanismによる末梢肺野の気腫性変化による鼓音を認めるが、完全閉塞で無気肺に陥っている場合には濁音化する。気管異物や喉頭異物では閉塞の程度が軽ければ、身体所見の異常は軽微であることが多い。

単純X線撮影・X線透視

 X線非透過性異物では、異物の存在部位の単純X線撮影にて異物が描出される。気管異物と食道異物の鑑別には、側面像が有効である。 X線透過性異物では直接描出されないが、気管支異物ではそのcheck valve mechanismにより、胸部単純X線撮影で患側末梢肺の透過性亢進、気腫性変化、血管陰影減弱が認められる。また呼気相と吸気相の適切な撮影ができれば、縦隔陰影が吸気時に患側に、呼気時に健側に移動するHolzknecht徴候が認められ、診断はより確実になる(図1)。単純撮影で診断が困難な場合には、X線透視下に患側の横隔膜運動低下や縦隔の呼吸性移動を観察することで、診断に有用なことがある。異物の末梢肺野は、経過によっては肺炎像や無気肺像を呈することもある。

CT

 胸部単純X線で撮影に比べ異物陰影や末梢肺野の変化を描出できることが期待がされる。しかし、睡眠下でかつ呼吸運動に影響され、必ずしも期待する所見が得られないこともある。下気道異物を疑うが、胸部単純X線にて異物の診断が困難な時に、考慮される検査である。

MRI

 特に下気道異物の多くを占めるピーナッツを疑う場合、ピーナッツに含まれる油脂がT1強調画像で高信号を呈し、ピーナッツを同定できることがある(図2)

肺血流シンチグラフィー

 気管支異物を疑うが、胸部単純X線で異物の診断ができない場合に考慮する検査である。気管支異物により末梢肺野の換気低下がある場合、同部位の血流が低下するが、肺血流シンチグラフィーはその血流低下を鋭敏に描出可能である(図3)。しかし、肺血流の低下は異物以外による無気肺などでもみられる、非特異的所見であることは注意を要する。

内視鏡検査

 気道異物の疑いがあるが確定できない場合には、最終的に直接異物を観察する試みが必要である。異物が確認されたときには、引き続き摘出できるように準備をしておく。鼻腔異物では、前鼻鏡での観察で容易に観察される場合もあるが、後鼻腔にある例や痂皮・肉芽形成などにより観察困難なことも多く、こうした場合には鼻咽腔ファイバースコープで詳細に観察する必要がある。咽頭異物では、まず舌圧子で舌を押さえて、咽頭を観察する。刺入部位は返答が多いので、口蓋弓鉤を用いて口蓋弓や扁桃の裏側もよく観察する。次いで舌根が多いので、喉頭鏡を用いて喉頭蓋谷までよく観察する。喉頭異物では、喉頭ファイバースコープで観察する。異物による喉頭浮腫や肉芽増生がある場合や声門下異物などでは、1回の観察で必ずしも発見されない場合が多いため、頻回のファイバースコピーの施行が推奨される。下気道異物では、全身麻酔下に換気を確保した上で、硬性気管支鏡または気管支ファイバースコープで観察を行う。下気道異物については、治療の項で詳述する。

治療

 まず急激な呼吸困難、いわゆる窒息を呈する場合には、声門下腔より口側の異物の疑いが濃厚で、放置すれば致死的となるため、直ちにHeimlich法(1歳以上)や背部叩打法・胸部圧迫法による異物除去が必要である。異物が見えたときは直ちに摘出するが、盲目的な用手摘出は異物をさらに押し込む危険があるため、禁忌である。また医療機関では、直ちに気管内挿管を行う。その際には声門下腔に嵌入した異物を、換気を確保するために、あえて気管支内に押し込んでも構わない。

 鼻腔異物は、鼻腔粘膜に血管収縮剤とリドカインを噴霧後に、鉗子や鑷子を用いて1回で確実に摘出する。摘出の際に号泣し、強い吸気によって気道に異物が吸い込まれることもあるので、注意を要する。また鼻腔異物は、片側、1個のみとは限らないことも注意を要する。咽頭異物は、舌圧子や間接喉頭鏡などを用いて、異物をよく見ながら鉗子で摘出する。全身麻酔下に開口器や直達鏡を用いて摘出する必要がある場合もある。喉頭異物は、全身麻酔下に喉頭直達鏡で異物を直視下におき、鉗子で摘出する。喉頭異物摘出後の合併症として、喉頭浮腫、出血、喉頭痙攣などがある。喉頭浮腫や出血は迅速かつ丁寧な手技でほぼ予防可能であるが、緊急的な気管内挿管や気管切開が必要となる場合もありうる。喉頭痙攣の予防としては、リドカインによる咽頭喉頭粘膜の表面麻酔や迅速かつ愛護的な異物摘出が重要である。

 下気道異物では、全身麻酔下に硬性気管支鏡または気管支ファイバースコープの観察下に摘出を行う。硬性気管支鏡は操作中の換気が容易であり、摘出も慣れれば比較的容易であることから、好んで用いる施設が多いが、操作にはある程度の熟練が必要で、また右上葉支は比較的観察の盲点となりやすい。気管支ファイバースコープは、硬性気管支鏡に比べ、ファイバースコープの操作自体は容易で盲点も少ないが、使用できるファイバー径によっては、摘出に用いる器具が限られる。また気管支ファイバースコープには換気孔がないが、気管内挿管下に吸引用アダプター(サクションセーフ)を使用して行えば、換気は可能である。選択可能な状況下では、術者がより慣れている方法を用いるのがよい。

 下気道異物は異物の種類に応じた摘出器具や方法がある。固い異物は、その大きさに応じた把持鉗子で摘出する。豆類など脆い異物は鉗子で把持すると粉砕されてしまうため、Fogartyカテーテルやバスケット型カテーテルを用いて摘出するとよい。脆い異物が粉砕された場合には、異物除去後に気管内洗浄・吸引を行う。鋭利で声門などの損傷の恐れがある異物では、小さいものなら硬性気管支鏡の外筒や気管チューブ内に収めて摘出可能であるが、大きいものでは一時的気管切開が必要な場合もある。誤嚥から長期間経過するなどして、内視鏡的な異物摘出が不可能な場合もあり、開胸手術や肺切除が必要となる。下気道異物摘出後に喉頭や気道粘膜の浮腫が予想される場合には、術後にステロイドやエピネフリンの吸入やステロイドの全身投与が予防に有効である。また肺炎や無気肺に対しては、抗生剤や去痰剤などで治療を行うが、肺炎が治療抵抗性の場合には、異物残存の可能性も考慮する。

予後

 短期的には、異物そのものによる粘膜の損傷や肺炎・無気肺などの肺合併症、摘出時の気道粘膜損傷、摘出後の気道粘膜浮腫などの有無により、治療期間がやや長くなることもある。一般に、異物が完全に摘出された場合の長期予後は良好であるが、急性期に窒息をきたした場合には、呼吸回復までの経過時間によって、低酸素状態による不可逆的な脳障害などの後遺症をのこすことや死亡することもありうる。

(MyMedより)推薦図書

1) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004

2) 川瀬昌宏 著:臨床医のための小児診療ハンドブック,日経メディカル開発 2008

3) 市川光太郎 編集:プライマリ・ケア救急 小児編―即座の判断が必要なとき,プリメド社 2008
 

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