月状骨軟化症、キーンベック病 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

月状骨軟化症、キーンベック病(げつじょうこつなんかしょう、きーんべっくびょう)

Lunatemalacia, Kienböck Disease

執筆者: 三浦 俊樹

概要

 手首を構成する骨(8つの手根骨)の一つである月状骨が血流障害のため壊死に陥って手関節が破壊され手の機能が障害される疾患です。体の中でこのような阻血性壊死(無腐性壊死)をおこしやすい部位は他に大腿骨頭も有名です(大腿骨頭壊死)。月状骨軟化症は1910年にこの病気を初めて記載した Kienböck(キーンベック)にちなんでキーンベック病とも呼ばれます。壮年期(20、30歳台)の男性に多く発症します。

病因

 根本的な原因は不明です。前腕には橈骨と尺骨という2本の骨があり手根骨と向かい合っていますが、この橈骨と尺骨の相対的な長さには個人差があります。1928年にHulténが月状骨軟化症の患者では月状骨と相対している橈骨が相対的に長い場合が多いと報告しました。橈骨が長いために月状骨に圧がかかりやすいことが原因と推測されたのです。その後、日本人では月状骨軟化症の方で尺骨の方が長い場合も比較的多いことも報告されているため病因は骨の長さの差だけではないと考えられます。

病態生理

 小さい怪我を含めて手首への負担を繰り返すうちに月状骨に損傷が生じます。血行障害となった骨では修復能力が乏しいため次第に圧潰をひきおこし、圧潰した月状骨を覆っている軟骨に力学的な負担が加わり軟骨の損傷である変形性関節症へつながっていくと考えられます。

臨床症状

 手首を動かしたり力を入れたときの痛み、握力の低下、手首の動き(可動域)の制限が主な症状です。

検査成績

 X線とMRIが診断および進行度の評価に有用です。進行度はLichtman分類(IからIV期)がよく用いられます。I期ではMRIでの異常はあるもののX線は正常。II期ではMRIのみでなくX線でも骨硬化像がみられますが、月状骨の圧潰はありません。III期では月状骨の圧潰があります。この時期はさらにIIIa期とIIIb期に分けられ、圧潰が進行し月状骨の隣の舟状骨の向きの変化もきたした状態がIIIb期です。III期まではX線上で軟骨破壊をしめす変形性関節症変化は明らかではありません。関節軟骨の破壊像まで生じるとIV期とされます。



X線像(月状骨の硬化)

MRI(T1強調像)

治療

 10代前半で発症した場合などは自然治癒も期待できますが、成人例では完全な治癒は期待しにくく、X線上の進行度は進むことが予想されます。しかし、疼痛が必ずしもX線所見と比例するわけではなく、長期的には痛みは手首の動きの減少とともに落ち着いてくることも報告されています。そのため、手術以外の治療としては、装具などで固定を行い、手首をしばらく安静にします。手術は病気の進行度等によって色々な方法が行われています。血流を再獲得することを期待して、手首のそばから血管や血管をつけた骨を月状骨内に移植する方法があります。月状骨にかかる力を減らして疼痛を緩和させるために、橈骨の骨切り術(橈骨短縮術など)や部分手関節固定術(舟状骨-大菱形骨-小菱形骨間の固定)も行われます。また、IIIb期では破壊された月状骨を隣の舟状骨・三角骨とともに切除する近位手根列切除術もあります。変形性関節症が生じた IV期では手首が動かないように固める全手関節固定術が行われます。

予後

 X線から判断する進行度は徐々に進むと考えられており、病気自体が自然治癒することはあまり期待できません。一方で、手術を行わず保存療法で治療しても長期的には疼痛が改善している場合も少なくありません。

最近の動向

 月状骨の血流改善を期待して積極的に血管柄付き骨移植が行われる傾向があります。血管柄付き骨移植の長期的な予後に関してはまだ十分にわかっていない面があります。

(MyMedより)推薦図書

1) S・テリー・カナリ,藤井克之,三浪明男 著:キャンベル整形外科手術書 第9巻 手,エルゼビア・ジャパン 2004

2) 堀内行雄 編集:手の外科 (整形外科専門医を目指すケース・メソッド・アプローチ),日本医事新報社 2005,

3) 三浪 明男 著・編集:手関節・手指II (最新整形外科学大系),中山書店 2007

 

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