髄膜腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.25

髄膜腫(ずいまくしゅ)

meningioma

執筆者: 川原 信隆

概要

 髄膜腫とは、脳を包んでいる硬膜と言われる膜から発生した腫瘍の総称です。従って、脳腫瘍とはいっても脳そのものから発生したものではありませんが、脳を圧迫したり、脳神経、血管などを巻き込んで大きくなりため、脳腫瘍として扱われます。一部には悪性のものもありますが、基本的には良性腫瘍であり、その増大速度は非常にゆっくりしたものです。従って、様々な神経症状が出現した時には驚く程大きくなっていることも稀ではありません。
 最近では、脳ドックなども含めて脳の検査が行われる機会が増えてきており、比較的小さく無症状の段階で発見されることも多くなってきています。髄膜腫は様々な部位に発生しますが、特に頭蓋底部に発生した場合には様々な脳神経を巻き込んだり圧迫して成長するため、比較的早期から視力障害、複視、聴力障害などが見られます。
 一方、腫瘍が巨大になった場合には、頭蓋内腔全体の圧力が上昇して頭痛、吐き気などが見られます。治療は、これらの部位、大きさ、症状を考えながら、長期的視点にたって個別に適切なものを選択することとなります。

病因

 髄膜腫の原因は未だにはっきりしていませんが、遺伝子の異常と関係していることは、多くの研究で示されてきています。
 神経線維腫症2型といわれる遺伝性の病気では、中枢神経に神経鞘腫よばれる腫瘍が若年より多発することが知られており、染色体の22番の腫瘍抑制遺伝子(NF2)異常が原因であることが解っています。この病気では同時に髄膜腫も多発することから、一般の髄膜腫でもNF2遺伝子の異常が調べられましたが、全体の30-50%程度にしか異常が見つかっていません。
 しかし、多くの髄膜腫で22番染色体の異常は見つかっており、22番染色体上にあるNF2遺伝子以外の遺伝子も関係しているのではないかと考えられています。また、髄膜腫の悪性化には染色体1番の異常など、その他の遺伝子が関係していると考えられています。

 このように髄膜腫の発生は様々な遺伝子異常が原因と考えられていますが、神経線維腫症2型などの特殊な場合を除いて、特に遺伝性は有りません。腫瘍が発生した場所での遺伝子の異常であって、生殖細胞(遺伝)での異常では無いからです。しかし、小児例、多発例では、将来的には神経線維腫症2 型であることがはっきりしてくることがありますので、長期的な経過観察が必要です。

病態生理

 髄膜腫は、様々な成長、増大形式を取りますが、臨床上問題となる点は、いくつかにまとめることができます。


硬膜にそった浸潤


 髄膜から発生した腫瘍であるため、腫瘍周辺部の硬膜にそって有る程度の浸潤が見られます。手術の時にはこれらも同時に摘出することが理想ですが、場所によっては困難なことがあります。


血管や脳神経への圧迫、浸潤


 腫瘍が大きくなると神経や血管を圧迫したり、巻き込んできますが、一部の腫瘍では直接神経や血管の壁に浸潤するため、外科的手術を行う点で問題となってきます。


脳浮腫


 脳と癒着して周辺の脳に浮腫(むくみ)が見られることがあり、腫瘍本体よりも浮腫で症状が強くなることもあります。


頭蓋底髄膜腫


 頭蓋底部には重要な脳神経や血管が多数存在します。その為に、比較的小さくても上記の硬膜浸潤、神経や血管への影響、浮腫などが、常に治療上の問題点となってきます。


頭蓋内圧亢進


 腫瘍が巨大となると、一部の圧迫症状だけでなく、頭蓋骨内部の全体の圧力が上昇してきます。放置すると意識、呼吸などの中枢も障害されてきますので、早急な治療が必要となります。

臨床症状

 髄膜腫の症状は、腫瘍が発生した場所に関連した症状と、脳全体の症状とに分けることができます。


局所症状


 髄膜腫は様々な場所に発生しますので、その局所症状も多彩です。脳表面に接して発生した場合には、直下の脳機能の障害が現れ、手足の麻痺、言葉の障害、視野障害などが見られます。頭蓋底部に発生した場合には、様々な脳神経が障害され、視力視野障害、複視、聴力低下、嚥下障害などが出現してきます。


頭蓋内圧亢進症状


 腫瘍が大きくなると、全体の圧力亢進による症状が見られます。特に、頭痛、吐き気、視力障害などが進行します。


痙攣発作


 腫瘍が脳を刺激することで痙攣発作を誘発することがあります。全く自覚症状がなく、痙攣発作で髄膜腫が発見されることも稀ではありません。

診断・鑑別診断

 髄膜腫の診断は、画像検査で行われます。特にMRIが有効で、頭蓋底部に発生した小型髄膜腫の診断能力にも優れています。髄膜腫は、造影剤を注射して行う検査で、非常に良く造影され、硬膜(骨の表面)から突出している像が特徴的です。



 頭蓋底部に発生した場合には、MRIで血管の巻き込みも解るようになってきています。(図2)



 診断としは、ほぼMRIで可能ですが、他の検査としては頭部X線CT(骨の変化はMRIより鮮明)、脳血管撮影(腫瘍の血流評価、血管の異常の評価)も治療を行う上では必要な検査となります。

 他の脳腫瘍(特に悪性腫瘍)との鑑別が問題となり、PET検査などが必要となることもあります。髄膜腫と画像で診断されていても、他の腫瘍である場合も有り、最終確定診断は摘出した標本の病理診断によって行われます。

治療

 治療は、発生部位、大きさ、年齢などを考慮して決定します。表在性で小型、また高齢者などでは、経過観察も選択肢の一つです。経過中に増大傾向がはっきりしてから治療を選択しても遅くはありません。治療は、外科的手術、放射線治療が主体となります。


外科手術


 良性腫瘍ですので全摘出されれば治癒が望めます。しかし、脳、神経、血管との癒着などにより、全摘出を行うと重篤な合併症が発生することもあり、一部を残さざるを得ないことも稀ならずあります。


放射線治療


 放射線治療としては、多くの場合に定位放射線治療が行われます。特にガンマ線を用いたガンマナイフは非常に効果が高く、長期的な腫瘍の制御率は 90%程度と言われています。しかし、適応は3cm以内の小型腫瘍に限られ、場所によっては脳神経障害などを誘発するために適応外となることもあります。また、発生頻度は非常に低いのですが、長期的な悪性腫瘍誘発作用も懸念されています。しかし、全摘出困難な腫瘍には良い適応です。最近では、より大型の腫瘍にも適応可能なサイバーナイフなども開発されてきています。

予後

 髄膜腫の生命予後は良好で、日本脳腫瘍統計での5年生存率は93.7%となっています。逆にみると、一部の良性髄膜腫(6%、約20人に一人)では再発を繰り返して死に至ることもあることを示しています。しかし、一般的な治療の目標は、生活の質の確保であり、腫瘍の増大に伴って生じる様々な神経症状を予防することにあります。一方、悪性髄膜腫に対しては様々な治療法が試みられていますが、現状での予後は不良で、5年生存率は63%です。

(MyMedより)推薦図書

1) 有田憲生・永廣信治 編さん:髄膜腫手術のすべて―手技の工夫と要点が動画ですばやく理解できる,メディカ出版 2010

2)伊藤彰一 著:神経MRI診断学,シービーアール 2009

3) 児玉南海雄・峯浦一喜・新井一・佐々木富男・冨永悌二 編集、田中隆一・山浦晶 監修:標準脳神経外科学 (STANDARD TEXTBOOK) ,医学書院 2008
 

免責事項

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