顆粒球減少症(好中球減少症) - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.29

顆粒球減少症(好中球減少症)(かりゅうきゅうげんしょうしょう(こうちゅうきゅうげんしょうしょう)

Neutropenia

執筆者: 菊田 敦

概要

 顆粒球減少症は通常、好中球減少症と同義語として用いられており、末梢血中の全白血球数に分葉核好中球と桿状球の比率を乗じた好中球絶対数の減少状態である。 生後2週から1歳の乳児では好中球減少症の判断はANC 1,000/μL未満であり、1歳以降は通常、ANC 1,500/μL未満の状態と定義される。感染に対する相対的危険度により、軽症1,000~1,500/μL、中等症500~1,000/μL、重症500/μL未満に分類される。重症感染症の発生率が高いのは、ANC 500/μL未満の場合であり、急性で重症状態が数日以上続く場合には致命的感染症のリスクが高くなる。

病因

 数日間で進行する急性好中球減少症は、産生障害か末梢での利用または破壊の亢進によることが多い。慢性好中球減少症は好中球減少が6カ月以上持続する場合であり、産生減少あるいは好中球の脾臓による捕捉過剰から生じる。 骨髄の骨髄系細胞に対する外因的要因に続発したものか、あるいは骨髄系細胞の内因的異常により発症したものかにより、外因性と内因性に分類される。



表1. 好中球減少症の分類

病態生理

 この病態群には多様な基礎疾患が含まれてくるので基礎疾患の相違により、それぞれの病態生理は異なってくるが顆粒球減少に起因する易感染性が共通する病態である。

臨床症状

 頻度の高い化膿性感染症は皮膚蜂巣炎、皮下膿瘍、フルンケル症、肺炎、敗血症である。口内炎、歯肉炎はしばしば慢性的であり、特に小児では、肛門周囲の炎症と中耳炎をよく認める。 しかし、好中球減少症のみでは、ウイルス感染、真菌、寄生虫および細菌性髄膜炎には罹患しにくい。内因性細菌が起因菌として最も一般的であるが、院内感染を起す種々の細菌もまたしばしば原因となる。 

 頻度の高い分離菌は黄色ブドウ球菌とグラム陰性菌であり、一般に局所所見は好中球減少がない者に比べて不明瞭である。つまり侵出液、波動、潰瘍形式、局所リンパ節腫脹などの局所の感染症に伴う症状、所見を認めることは少ない。重症好中球減少症の患者においても、細菌感染症の徴候は基礎疾患によりまちまちである。例えば、自己免疫が関与した慢性好中球減少症では、長年に渡り好中球数200/μLあるいはそれ未満であっても重症感染症の既往歴はないことが多い。これは、これらの患者の骨髄造血能が正常であり、多くの慢性好中球減少症の患者では単球数が増加しており、感染防御の役割を担っているためである。また症状出現の頻度と期間は重要であり、歯根膜炎、歯膿瘍、歯の喪失は慢性で、再燃性の好中球減少症の重要な所見である。

検査成績

 好中球単独の減少で他の血球系の異常がなく、何の臨床的症状もない場合は、すべての治療を中止し数週間経過観察することが最もよい方法である。発熱を有する中等症、重症の好中球減少症で急性細菌感染症が疑われた場合には、迅速な評価と治療が必要である。血液培養を含む各種培養検査を実施し、原因菌の同定に努め、抗生剤感受性を確認する。好中球減少が遷延する患者では、白血球数と分画を週2~3回、6~8週間測定し、周期性の有無を評価する。クームス試験、血清γ-グロブリン値、T細胞検査(CD4, CD8)、HIV抗体価を測定する。必要があれば骨髄検査も追加する。状況により抗好中球抗体、膠原病の評価を行い、身体所見により骨X-p、膵外分泌能を評価し、葉酸、Vit B12を測定する。

診断・鑑別診断

 好中球数1000/μL未満の場合は、図1に示したアルゴリズムに添って注意深く観察する。好中球減少症のある患者では、既往歴、奇形などの身体所見の評価を十分に行い、現時点の細菌感染症の有無、リンパ節腫大、肝脾腫、慢性炎症に伴う他の徴候について観察し、最近の感染歴と薬物への曝露について確認する。



図1. 好中球減少症のためのアルゴリズム

治療

 好中球減少症の管理は、原因と好中球減少の重症度により異なってくる。好中球減少患者において最も重大なことは重症化膿性感染症への進展であり、Kostmann症候群、再生不良性貧血および化学療法後など、骨髄造血の予備能低下を伴う重症好中球減少症(ANC<500/μL)は感染症の重症化や敗血症発症の高リスク群である。このような患者では好中球数が低下しているために炎症所見に乏しく、発熱が感染症の唯一の指標であることが多い。 

 造血予備能低下のために好中球減少症となっている場合には、速やかに広域抗生物質を開始し診断が確定するまで使用する。解熱し血液培養が陰性化しても、解熱後3日間はその抗生剤を使用する。広域抗生物質の投与にもかかわらず発熱が7日間以上持続する場合には真菌感染の可能性が高く、抗真菌剤による経験的治療を開始する。明らかな真菌感染または細菌感染があり、治療に対して反応不良であれば顆粒球輸血も考慮する。 慢性良性好中球減少症のように骨髄造血能が保たれている場合には、全身状態が良い限り外来治療が可能である。 

 自己免疫が関与している場合にはステロイド剤やγ-グロブリン療法が有効なことがあるが、効果は一定しない。脾摘の効果は一時的であり、さらに重症感染症のリスクを伴うので推奨できない。G-CSFおよび他の造血因子は、重症先天性好中球減少症、周期性好中球減少症および免疫性好中球減少症など、種々の好中球減少症において広く有効性が認められている。また、重症先天性好中球減少など骨髄造血能低下に由来する慢性好中球減少症で、重症感染症に進展するリスクが高い場合には、長期的な予防投与の有効性も認められている。しかし、G-CSF製剤の使用は、自己免疫性好中球減少症のように感染症があっても、全身状態に問題がなければ使用は控え、重症の場合に限られる。 抗生物質の予防投与の効果は議論の余地があるが、ST合剤は細胞性免疫不全におけるカリニ肺炎の予防に効果的であり、重症好中球減少が長期に続く場合は、細菌感染症の頻度も減らす。

予後

 悪性腫瘍、抗癌剤化学療法または免疫抑制療法に伴う後天性一過性好中球減少症においては時に敗血症が原因となり死亡することがある。感染症の早期診断と早期治療を行えば死亡は回避できると考えられている。慢性好中球減少症の軽症あるいは中等症の好中球減少症における表在性感染症は適切な抗生剤の経口投与により治療できる。しかし、致死的感染症の場合は広域抗生剤の速やかな静脈内投与が行われなければ死亡に至る場合もある。つまり、感染症に対する治療が予後を左右し、基礎疾患を有するものに対しては、それらに対する治療も同時に施行する必要がある。特に重症化膿性感染症を合併している場合には発熱性好中球減少症のガイドラインに準じ、速やかな治療開始が重要であり、治療の遅れは死亡率の増加に直結する。

参考文献

1) Nathan DG et al : Nathan and Oski’s Hematology of Infancy and Children 6th ed. Philadelphia, 2003.

2) Sill RH : Practical Algorithms in Pediatric Hematology and Oncology. Basel, 2003.

3) Hughes WT et al : 2002 Guideline for the Use of Antimicrobial Agents in Neutropenic Patients with Cancer. Clin Infect Dis 2002;34: 730-751.

4) 大坂顯通ら:安全な顆粒球輸血を目指したガイドライン案の作成.日本輸血会誌;50:739-745,2004.

執筆者による主な図書

1) 大戸斉・遠山博 編:小児輸血学,中外医学社,東京,2006

2) 松下竹次・萬弘子 編:小児生活習慣病,メジカルフレンド社 東京,2008

3) 大戸斉・大久保光夫 編:わかりやすい 周産期・新生児の輸血治療,メジカルビュー社 東京,2008

4)五十嵐隆 編:小児科臨床ピクシス10 小児白血病診療,中山書店 東京,2009

(MyMedより)推薦図書

1) 正岡徹 編集:発熱性好中球減少症,医薬ジャーナル社 2005

2) 田村和夫 編さん:発熱性好中球減少症の予防と対策,医薬ジャーナル社 2010

3) 岡部信彦 編集:小児感染症学,診断と治療社 2007
 

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