壊死性腸炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

壊死性腸炎(えしせいちょうえん)

Necrotizing enterocolitis

別名: NEC(ネック)

執筆者: 鈴木 則夫

概要

 壊死性腸炎(Necrotizing Enterocolitis:NEC)は、主に新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Units:NICU)に入院中の低出生体重児に発症し、種々の要因により主に回腸、結腸の循環障害による広範な腸管壊死を主病変とした重篤な疾患であり、低出生体重児の救命率向上に伴って、その発生率が増加したが、最近ではNICUでの極低出生体重児(出生体重

病因

病因・病態生理

 NECは重症心疾患合併の成熟児などにも見られるが、90%は低出生体重児に発症し、腸管の未熟性、循環不全、細菌感染が要因となる。低出生体重の未熟児では消化管免疫機構の未発達が要因の一つと考えられている。粘膜のBリンパ球、免疫グロブリンAの分泌が少ないため細菌抗原と結合できずに細菌の粘膜表面への着床を容易とし、また、Tリンパ球も少なく細菌が付着した細胞を監視・破壊できない。分泌性の免疫ロブリンAを含む母乳や、その他いくつかの免疫グロブリンがNECの発症を抑制する。腸管防御機能も未熟で、特に出生後最初の1週間は細菌毒素に対する抵抗性がなく傷つきやすい。腸管粘膜の透過性が高く細菌は容易に通過する(bacterial translocation)。(1)腸管損傷と原発性の虚血、(2)腸管内での細菌繁殖、(3)人工栄養などの基本的要因が相互に加わりNECを発症するが、腸管の壊死性変化に関与するメディエーターとして種々のサイトカイン、一酸化窒素(nitric oxide:NO)の作用などが指摘されている。

 NECの病変は遠位回腸や右側結腸に好発するが、進行すれば病変は全腸管に及ぶ。腸管拡張と腸管壁の菲薄化、出血があり、腸管は極めて脆弱となる。壁内気腫(pneumatosis intestinalis)は腸壁内のガスの貯留で、壁内に進入した細菌が発生するガスによりpneumatosisとなり、通常粘膜下層に発生し、腸管は粗いスポンジ様に見える。腸管壁内ガスが血中に入ると門脈内ガスとなる。

 病理学的には粘膜病変が主体で、浮腫と粘膜下・粘膜固有層の虚血・出血が認められる。

臨床症状

 NECの臨床症状は、初期には腹部膨満、経口摂取不良、胃内のミルク停滞、残量の増加、腸管虚血と腸管蠕動障害、胆汁性嘔吐や下血が見られるが、早期症状である腸管閉塞症状は新生児敗血症の症状と鑑別できない。進行すると腹部膨満が著明で、腹壁に拡張した腸管輪郭を認め、バイタルサインの悪化が顕著で敗血症からショックに移行することも多い。腹壁の発赤・浮腫は腹膜炎を示唆し、腹腔内遊離ガスは腸管穿孔を意味する。

 全身症状や消化管症状、レントゲン像でNECの病期を分けたBellの分類(表1)が用いられ、病期別での検査、治療が行われる。

表1: Bellの新生児壊死性腸炎の分類

検査成績

 初期の腹部レントゲン像は軽度の腸閉塞像で、びまん性の腸管ガス像、拡張腸管ループ、腸管壁の肥厚像などを示すが、Bellの病期分類stageⅠに相当する時期ではNECの確定は困難で、鑑別のため便・吐物・血液の細菌検査、血清電解質、生化学、血液・凝固機能検査を行い、レントゲン撮影を繰り返して経過観察する。

 白血球の顆粒球減少や血小板数の減少は病勢の進行を意味するが、レントゲン像で腸管内ガスに沿った線上あるいは円環状のガスpneumatosis intestinalisが認められれば診断が確定する(stageII)。門脈内ガス像が認められれば最重症新生児の状態で、一般的には高度の壊死を伴う。その他、腸管拡張と固定された腸管ループ(persistent loop)、腸壁浮腫、腹水などが見られ、拡張、固定された腸管ループは病変部を示唆する。腹腔内遊離ガスがあれば腸管穿孔の所見であり、手術適応となる。腹部超音波検査も腹水や門脈内ガス像の診断に有用で、NICU入院中の低出生体重児にはスクリーニング検査として行われる。

 診断は臨床症状にレントゲン所見を加えて行うが、疑診の段階からの治療、診断確定が重要で、経時的な変化に注意する必要がある。表2に厚生省研究班による診断基準を示す。

表2: 厚生省研究班による判断基準

治療

 NECは早期診断、早期治療が重要で、多くの症例では疑診の段階からの治療が必要になる。NECが疑われればまず内科的治療が主体となり、外科的治療は穿孔例や、内科的治療に反応せずに状態が増悪した症例に行われる。基本は腸管の安静と合併症や敗血症の予防で、状態の悪化を防ぐことにある。経口(腸)栄養の中止、経鼻胃管を挿入し消化管の減圧、電解質バランスおよび蛋白補給に留意した輸液、適切な抗生剤の使用、積極的な呼吸・循環管理を行う。保存療法で全身状態の改善を認めれば、症状、特にCRPの改善を目安にして慎重に経腸栄養を再開する。

 腸管穿孔あるいは腸管壊死がNECでの手術適応となり、腸管穿孔は腹部単純撮影での気腹像所見で確定される。穿孔性腹膜炎を来す前での早期の外科治療の介入が生存率向上に関与するとされるが、穿孔する前での腸管壊死の臨床所見は不正確であり、手術適応には議論がある。門脈内ガス、連続的な腹部レントゲン撮影での拡張腸管ループ、固定した腹部腫瘤、腹壁の紅斑、重度のpneumatosis intestinalisなどが腸管壊死の診断に特異性が高いが、NEC症例で必ずしも出現するとは限らない。

 手術の基本は壊死腸管の摘出と二次感染巣の除去で、最も病変の強い腸管の切除と一時的腸瘻造設が標準とされるが、一期的に腸吻合を行うこともある。切除範囲を極力少なくし、状況によってはドレナージのみとして24~48時間後の再開腹で切除範囲を決定するsecond look operationが有効な場合がある。

予後

 NECでの死亡率は30~40%とされ、救命率は病期、壊死範囲および出生体重で異なる。超低出生体重児で広範囲壊死の場合の救命率は10%以下で、日本小児外科学会、2003年新生児外科全国集計の結果でも低出生体重児での死亡率は壊死性腸炎が最も高い。

 救命例の長期予後でも、内科的治療後の腸管狭窄や術後の短腸症候群が問題となり、時に乳糖不耐性などの吸収障害をみる。

最近の動向

 最近では、NICUでの低出生体重児に対する治療法の改善、母乳の早期授乳、プロバイオティックスの投与などのNECに対する予防法が徐々に確立され、広範な腸管壊死を来すような典型例の発症は減少傾向にあるが、特に超低出生体重児の呼吸管理や頭蓋内出血などの治療中にpunched-out様の単発性腸穿孔で病変が限局する、限局性腸穿孔(localized intestinal perforation:LIP)の合併を認める症例が増加している。広範な腸管壊死や多発穿孔をきたす古典的な壊死性腸炎とは別の病態とする概念が提唱されているが、両者の区別は明確でなく、臨床所見や手術所見から総合的に判定される。LIPでは腹部の前駆症状なしに突然穿孔し、腹部膨満、腹水貯留、気腹像を示すことが多く、組織学的所見では粘膜の変化は軽微で、主に粘膜下層の浮腫、出血、うっ血が目立つ。

参考文献

1) 里見 昭:壊死性腸炎.岡田 正(監),伊藤泰雄,高松英夫,福澤正洋(編):標準 小児外科学 第5版,pp133-135,医学書院,東京,2007

2) Kosloske AM : Necrotizing enterocolitis. Puri P Ed. : Newborn Surgery, 2nd ed., pp501-512, Arnold, London, 2003

3) Bell MJ, Ternberg JL, Feigin RD, et al : Neonatal necrotizing enterocolitis: Therapeutic decisions based upon clinical staging. Ann Surg 187:1-7, 1978

4) Walsh MC, Kliegman RM : Necrotizing enterocolitis: Treatment based on staging criteria. Pediatr Clin North Am 33:179-201, 1986

5) 山崎 明:新生児壊死性腸炎.周産期医学 31(増刊号):545-548, 2004

6) 日本小児外科学会学術・先進医療検討委員会:わが国の新生児外科の現況-2003年新 生児外科全国集計-. 日小外会誌 40:919-934, 2004

7) 川上 肇,雨海照祥,毛利 健、他:超低出生体重児における壊死性腸炎に対する治 療と予後. 小児外科 38:81-85, 2006

8) 尾花和子,石田和夫,武村民子、他:壊死性腸炎(NEC)および特発性腸穿孔(LIP) の組織と病態. 小児外科 38:603-608, 2006

(MyMedより)推薦図書

1) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004

2) 甲田英一・伊川廣道・山下直哉 他 著、中島康雄・前川和彦 監修:臨床研修医のための画像医学教室―小児科領域,医療科学社 2009
 

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