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喉頭がん - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

喉頭がん(こうとうがん)

執筆者: 丹生 健一

概要

 喉頭は首の中央に位置し、いわゆる「のど仏」の部分にあたる。喉頭の内腔には左右一対の声帯があり、上方は口腔・咽頭につながり、下方は気管から肺へと続いている。

喉頭の働き

 肺から気管を通して吐き出される呼気によって声帯が振動し「音声」が生み出される。鼻・口から気管・肺へ続く空気の通り道(気道)の確保、食物が気管・肺へ流入すること(誤嚥)を防ぐ下気道の保護(誤嚥防止)も重要な喉頭の機能である。

喉頭がんの分類

 声帯の部分を声門がんと呼び、声門より上に発生したがんを声門がん、声門より下に発生したがんを声門下がんと呼ぶ。本邦では、声門がんが60~65%と最も多く、声門上がんは30~35%と次ぎに多い。声門下がんは1~2%と稀。

病因

喫煙と飲酒

 喉頭がんは、肺癌と並び、タバコが関連する最も代表的な悪性腫瘍であり、飲酒によっても発生のリスクが高くなる。罹患患者の97%に喫煙歴があり、 Brinkman指数(1日喫煙本数×喫煙年数)は平均約1000に上る。60歳以上が約65%を占め、高齢者に多い。男女比は10~12:1と圧倒的に男性に多い。

放射線

 以前に他の疾患に対して頸部に行われた放射線治療により、稀に誘発がんが発生する。

病態生理

 他の頭頸部領域、舌・咽頭・鼻副鼻腔などと同様、喉頭癌の95%以上扁平上皮癌が占める。その他、腺癌、腺様嚢胞癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、カルチノイド、肉腫などが稀にみられる。

扁平上皮化生

 本来、声帯の表面は重層扁平上皮で、その他の喉頭の内腔は線毛上皮で被われている。しかし、喫煙や飲酒などの慢性刺激により、線毛上皮で覆われた部分にしばしば扁平上皮化成が生じる。

白板症・異型上皮増殖

 更に慢性刺激が続くと、声帯を被う重層扁平上皮や扁平上皮化生を生じた上皮に、角化や肥厚がみられることがある。肉眼的に白く見えることから白板症(leukoplakia)と呼ばれる。

 白板症の中には、いわゆる上皮肥厚(hyperplasia)と、細胞の核や極性の乱れなどが認められる異型上皮増殖(dysplasia)とが含まれる。Dysplasiaは、更に、異型の程度によりmild dysplasia,,moderate dysplasia,,severe dysplasiaとに分けられる。Dysplasiaの約10%が経過とともに癌化するといわれている。

上皮内癌

 Dysplasiaの異型が更に進み、上皮全体にわたって異型細胞がみられるものの、未だ基底膜を超えた浸潤がみられないものを上皮内がん(carcinoma in situ)と呼ぶ。

扁平上皮癌

 更に、異型細胞が基底膜を破り粘膜下への浸潤をきたすと、扁平上皮癌となる。組織学的には、癌細胞の角化形成の程度により、高分化型扁平上皮癌、中分化型扁平上皮癌、低分化型扁平上皮癌の3つに分類される。

臨床症状

声門癌

 早期より、嗄声(声がれ)がみられることが多い。腫瘍の増大につれて嗄声は増強し、血痰や気道狭搾による喘鳴・呼吸困難、誤嚥・嚥下障害も生じる。早期正門癌の頸部リンパ節転移へは稀。


声門上癌

 声門上癌では早期に咽頭・喉頭の症状を来たすことは少ない。腫瘍の増大とともに嚥下時の咽頭痛や耳への放散痛などの痛み、持続する咳嗽・血痰などがみられる。更に進行すると、声門癌と同様に嗄声や呼吸困難がみられる。

 声門上癌では早期より頸部リンパ節への転移がみられ、しばしばリンパ節転移が唯一の症状となる。


声門下癌

 早期には無症状で、進行して初めて診断がつくことが多い。喘鳴・咳嗽・呼吸困難・血痰・嗄声などの症状がみられる。

検査成績

[検査]

喉頭内視鏡

 鼻腔から細いファイバースコープ(内視鏡)を挿入し、喉頭全体を観察する。腫瘍の進展範囲、声帯の可動性などを調べる。

CT

[computed tomography]
 放射線を用いた頸部と体幹の画像検査である。腫瘍の深部への浸潤、頸部リンパ節転移、肺転移などの有無を調べる。

MRI

[magnetic resonance imaging]
 磁気を用いた頸部の画像検査である。進行癌における腫瘍の進展範囲や頸部リンパ節転移の有無を調べる。

頸部超音波(エコー)検査

 主に頸部リンパ節転移の有無と性状を調べる。

PET

[positron emission tomography]
 放射線同位元素(アイソトープ)を用いた画像検査。頸部リンパ節転移や肺転移、肝転移、骨転移、重複癌などの有無を調べる。

診断・鑑別診断

[診断・病期分類]

病理診断

 喉頭内視鏡検査の際に行われる生検[biopsy]によって病理組織学的診断がなされる。内視鏡による生検が困難な場合は、全身麻酔下に喉頭微細手術を行い、組織を採取する。

病期分類

 CT検査、MRI検査、頸部超音波検査、PET検査などにより、病変の広がり、すなわちがんの進行度が決定される。原発巣はがんの進行度により、1~4の4段階に分類され(T分類)。声門癌ではT1は更に、aとbとに分けられる。頸部リンパ節転移は大きさ、個数により0~3の4段階に分類される(N分類)。更に遠隔転移のない場合は0、ある場合は1と表記する(M分類)。T分類、N分類、M分類を総合的に判断して病期を決定する。

治療

 治療は放射線療法と手術療法とが中心となる。一般に早期癌は放射線治療、進行癌は手術療法の適応となる。年齢、全身状態、職業、性格、家庭環境など様々な要素を考慮した上で治療方針を決定する。

放射線治療

 60Coγ線かライナックX線(4~6MeV)を用いて、1日1回/週5回、総回数30~35回が標準的な放射線治療として行われている。近年、放射線療法の治療成績向上を目指して、1日に2回照射する多分割照射法[hyperfractionated radiation therapy]や、抗がん剤を同時併用した化学放射線療法[chemoradiotherapy]が行われるようになってきた。

手術療法

 原発巣の大きさ・進展範囲に応じて、LASERを用いて経口的に腫瘍を切除する喉頭微細手術、腫瘍の周囲に安全域をつけて切除し喉頭を温存する喉頭部分切除術、喉頭全てを切除する喉頭全摘術が行われる。

 頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術が行われる。特に声門上がんは頸部リンパ節転移を来たしやすいので、術前検査でリンパ節転移が認められなくても予防的に頸部郭清術を併用することが多い。

化学療法

 化学療法単独で根治を期待することはできないが、放射線療法や手術療法を行う場合に治療効果の向上を目指して抗がん剤を併用することがある。手術不応な進行癌や肺などへの遠隔転移では、各種抗がん剤による化学療法や放射線療法が治療の主体となる。

予後

 放射線治療による早期喉頭癌T1・T2の喉頭温存率は80~95%,50~80%と良好だが、進行癌ではT3・T4では15~60%、0~30%と芳しくない。一般に声門癌は予後良好で、T1T2の早期癌では85%以上、T3・T4の進行癌でも適切な治療により50~80%の5年生存率が期待できる。

術後の管理・生活指導

 喉頭摘出により音声を喪失した場合は身体障害者の3級に認定される。

 声帯による発声に代わる代用音声としては気管食道瘻形成術・ボイスプロテーシス・食道発声・人工喉頭など様々な方法がある。患者の年齢・体力・職業・性格・社会的背景・家庭環境・経済状態などを考慮して、適した代用音声を用いる。各地域で喉頭摘出者福祉団体が発声教室を開き、各種代用音声の指導を行っている。

 喉摘者は永久気管孔からの呼吸となるため、1)過度の暖房を避け、加湿器などにより部屋の乾燥を予防する、2)ガス漏れ警報機を設置する、3)(気道の括約機能消失により「いきめない」ので)便秘気味の症例では緩下剤を処方する、などの注意が必要である。

鑑別診断

 声帯ポリープ ポリープ様声帯 乳頭腫 喉頭肉芽腫

参考文献

1) 頭頸部癌取扱い規約 改訂第4版 東京 金原出版 2005

2) 国立がんセンター がん対策情報センター がん情報サービス 各種がんの解説 喉頭がん

3) 大阪府立成人病センター 病気の説明と治療成績 耳鼻咽喉科に係るがん 下咽頭がん

4) 丹生健一 第9章 喉頭癌 加我君孝 市村恵一 新美成二 編著 新臨床耳鼻咽喉科学 3巻—
   鼻・口腔・唾液腺・頭頸部腫瘍 東京 中外医学社 2003,478‐493

執筆者による主な図書

1) 野村恭也 編・著:新耳鼻咽喉科学,南山堂

2) 岸本誠司 編・著:耳鼻咽喉科診療プラクティス 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のための臨床解剖,文光堂

3) 加我君孝・市村恵一 編:新臨床耳鼻咽喉科学 第3巻,中外医学社

執筆者による推薦図書

1) 日本頭頸部癌学会 著:頭頸部癌取扱い規約,金原出版

2) 日本頭頸部癌学会 著:頭頸部癌診療ガイドライン,金原出版

3) 岸本誠司 他 著:耳鼻咽喉科診療プラクティス 頭頸部癌のDecision Making,文光堂

4) 林隆一 他 著:癌の外科―手術手技シリーズ,MEDICAL VIEW社

5) 癌研有明病院頭頸科 著:頭頸部手術カラーアトラス,永井書店
 

(MyMedより)その他推薦図書

1) Jack E. Thomas・Robert L. Keith 著、菊谷武・田村文誉・足立雅利・西脇恵子 翻訳:喉頭がん舌がんの人たちの言語と摂食・嚥下ガイドブック,医歯薬出版 2008

2) 中川恵一 著:がんの正体,PHP研究所 2010

3) 佐々木常雄 編さん:がん診療パーフェクト―基礎知識から診断・治療の実際まで,羊土社 2010
 

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