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執筆者: 大村 健二
我が国では、食道に発生する腫瘍は圧倒的に扁平上皮癌が多く、良性腫瘍は稀である。また、良性腫瘍の大半を非上皮性腫瘍である平滑筋腫が占める。非上皮性腫瘍の診断には、食道内視鏡検査に加えて胸部MR-CT検査、胸部CT検査、食道超音波内視鏡検査が有用である。しかし、粘膜下腫瘍の形態をとるものについては、術前に組織学的診断を得ることはしばしば困難である。
WHOの食道腫瘍分類から良性腫瘍を抜粋したものを表に示す。

これらのなかで平滑筋腫が圧倒的多数を占め、その他のものはいずれも極めてまれである。したがって、以後の年齢および性差は、食道平滑筋腫に関して述べる。
Georgeらは、1875年から1996年までに論文として報告された食道平滑筋腫の集計を行った。それによると、平滑筋腫の好発年齢は30歳代~50歳代であり、平滑筋肉腫の好発年齢が50歳代~60歳代であるのと比較して明らかに若年者に多い。特に平滑筋腫は20歳代にも相当数が分布しているのに対し、20歳代、30歳代の平滑筋肉腫症例は極めて少ない。 諸家の報告は、食道平滑筋腫は男性に多いことで一致している。その男女比は1.3~2.2:1である。
食道平滑筋腫の好発部位は(胸部)下部食道であり、いずれの報告でもおよそ50%が下部食道に発生する。
(表1)
臨床症状
食道良性腫瘍のほとんどは無症状であり、上部消化管の内視鏡検査や二重造影検査の際に偶然発見されることが多い。食道良性腫瘍の発育速度は一般に緩徐であるが、食道内容の通過障害をきたすほどに成長すると嚥下困難が出現する。その他、胸骨後部痛、悪心・嘔吐なども出現しうる。
食道良性腫瘍の診断には食道内視鏡検査、食道造影検査、食道超音波内視鏡検査、胸部CT検査、胸部MRI検査などが用いられる。
上皮性の腫瘍のうち、食道内腔に腫瘍が露出しているものは食道内視鏡検査による生検組織の病理組織学的検索で確定診断がなされる。粘膜下腫瘍は、表面を正常粘膜に覆われて食道の内腔に突出する腫瘤の形態をとる。その場合、腫瘍の表面を覆う粘膜が正常であるかを観察する(図1)。

食道造影検査で乳頭腫は、食道内腔への隆起として描出される。その表面には顆粒状の変化が認められる。
粘膜下腫瘍は、食道造影検査で表面が平滑な食道内腔への突出として描出される。腫瘍による物理的要因で粘膜に潰瘍形成をきたしていなければ、粘膜に不整像はみられない。
食道超音波内視鏡検査は、食道の粘膜下腫瘍と食道以外の臓器(器官)由来の腫瘍による壁外性圧迫の鑑別に有用である。また、平滑筋腫の発生母地の判定に関しても有用な所見を提供する。
正常の食道は、超音波内視鏡で5層に描出される。また、平滑筋腫は原則として内部均一な低エコー腫瘤として描出される。しかし、腫瘍の内部に石灰化を生じると音響陰影を伴った高エコーが描出される。また、腫瘍が増大して一部に壊死を伴うと、内部に高エコー領域が出現する。
食道平滑筋腫が固有筋層由来の場合、腫瘤像は固有筋層にあたる第4層に連続する。また、腫瘍が粘膜筋板由来の場合には第2層に連続する。後者はまれであるが、外膜側から核出術(後述)を施行する場合には粘膜の欠損がほぼ必発であるので注意を要する。
食道良性腫瘍、とりわけ食道の粘膜下腫瘍に対する胸部CT検査と胸部MRI検査は、腫瘍と周囲臓器、周囲器官との位置関係の把握に有用である(図2)。

食道の上皮性良性腫瘍は内視鏡的粘膜切除術(EMR)の良い適応である。食道の粘膜下腫瘍のうち、粘膜筋板由来の平滑筋腫や粘膜下層内に留まる食道腺由来の線種、顆粒細胞腫などはEMRで切除可能である。
一方、食道固有筋層由来の平滑筋腫は外膜側から核出する。食道腫瘍核出術は胸腔鏡下に施行することも可能である(図3)。

なお、腫瘍核出後に粘膜の穿孔を認めた場合には縫合閉鎖する。また、筋層の欠損部分が広範な場合、肋間筋弁を用いて補強・修復する。
1) 宇田川晴司 著:消化器外科手術ナビガイド 食道―みる・わかる・自信がつく! (みる・わかる・自信がつく!消化器外科手術ナビガイド),中山書店 2010
2) 田尻久雄・小山恒男 編さん:食道・胃・十二指腸診断 (症例で身につける消化器内視鏡シリーズ),羊土社 2009
3) 幕内博康 著:食道の病気がわかる本,法研 2008
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