腎性低尿酸血症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

腎性低尿酸血症(じんせいていにょうさんけっしょう)

renal hypouricemia

執筆者: 関根 孝司

概要

 血清尿酸値が2.0 mg/dl以下のものを低尿酸血症と定義する。本邦における低尿酸血症の頻度は約0.15ー0.4%程度と推測されている1)。男女比はほぼ1:1である。低尿酸血症は尿酸の産生の低下によるものと、尿酸の腎臓からの排泄が亢進しているもの(腎性低尿酸血症)に分類される。尿酸の産生が低下している症例は極めて稀であり、腎臓からの尿酸の排泄が亢進している腎性低尿酸血症の頻度が高い 。

病因

 尿酸は腎臓の糸球体で濾過されたのち、近位尿細管で再吸収を受けている。腎性低尿酸血症は尿細管での尿酸の再吸収が障害された結果として発症する。腎性低尿酸血症は、Fanconi症候群、Wilson病、薬物による尿細管障害などに合併する続発性腎性低尿酸血症と、遺伝的に尿細管での尿酸転送のみが障害されている特発性腎性低尿酸血症に分類される。

病態生理

 霊長類の大半では尿酸酸化酵素(uricase)が欠損しているため尿酸をアラントインに代謝することができず尿酸が核酸(プリン体)の最終代謝産物である2)。成人においては毎日約700mgの尿酸が肝臓で合成され、約500mgが腎臓から、約200mgが腸管から排泄される。このように腎臓は血清尿酸値を決定する最も重要な臓器の一つである。

 尿酸排泄率(糸球体濾過を受けた尿酸のうち最終的に尿中に排泄される尿酸の割合:FEUA,Fractional Excretion of Uric Acid)は通常10%以下であるが、腎性低尿酸血症の患者ではFEUAが15~100%を示す。

 特発性腎性低尿酸血症は尿細管において尿酸の再吸収をおこなっている尿酸トランスポーター(URAT1:URic Acid Transporter 1)の遺伝子異常による。日本人では腎性低尿酸血症の頻度が比較的高いが、それはURAT1遺伝子の774番目のGがAに変異するナンセンス変異が日本人に多いためである。

臨床症状

自覚症状

 腎性低尿酸血症そのものは無症状であり、健康診断などで偶然に発見されることが多い。約17%の症例に尿路結石(尿酸、蓚酸カルシウム、リン酸カルシウム結石などの単一または混合結石)、約20%に高カルシウム血症、また47%に血尿を認めると報告されている1)。こうした合併症の他に、腎性低尿酸血症の患者が運動後に急性腎不全を起こすことが近年相次いで報告されており、注意すべき合併症である。

他覚症状

 他覚症状は特にない。

検査成績

 血液検査により低尿酸血症(血清尿酸値2.0 mg/dl以下)が認められた場合、腎臓からの排泄亢進によるものかを鑑別するためにFEUA(Fractional Excretion of UA)を測定する。FEUAはクレアチニンクレアランスと尿酸のクレアランスの比であり、一回の採血およびスポット尿から次式により計算できる。

 FEUA= UUA×SCr / SUA× UCr
(UUA:尿中尿酸濃度、SCr:血清クレアチニン濃度、SUA:血清尿酸濃度、UCr:尿中クレアチニン)

 FEUAの正常値は10%以下であり、10〜15%を越えれば、腎性低尿酸血症と診断できる。

診断・鑑別診断

 Fanconi症候群や薬物による近位尿細管障害などによる2次性の腎性低尿酸血症か、特発性低尿酸血症かを、病歴や家族歴、尿所見などから判断する。

治療

 腎性低尿酸血症そのものは予後も良好であり治療の対象とならない。ただし、運動後急性腎不全の合併率が高いため注意が必要である。

予後

 腎性低尿酸血症そのものは予後も良好である。

最近の動向

 運動後に急性腎不全を発症する疾患としてはミオグロビン尿症を呈する挫滅症候群が有名であるが、これとは異なる機序で運動後に急性腎不全をおこす病態の存在が金沢医科大学腎臓内科の石川らにより提唱され「運動後腎不全症候群(ALPE:acute renal failure with severe lin pain and patchy renal vasoconstriction)」という新しい疾患概念として提唱された 3)。

 本症における急性腎不全の発症は以下の様な特徴を有する4)。


 15歳〜25歳の若年男性の発症が大半である。
 100〜400m走などのトラック競技、サッカー、水泳の後に発症することが多く、横紋筋融解症後の 急性腎不全のように、マラソンや登山などの極めて激しい運動後におこることは稀である。
腎不全は通常非乏尿性腎不全であり、クレアチニン値の上昇は1.5〜7 mg/dl程度であり、 安静と輸液などにより自然に回復することが多い。透析が必要となるケースは稀(12%)である。
急性腎不全の発生時あるいはそれに先行して、著しい背部痛、側腹部痛、悪心・嘔吐などの症状を 呈する。
腎不全時のdelayed CT scanにてpatchyな造影剤の残存を呈する。
腎生検を施行されたケースでは急性尿細管壊死像が認められる。
風邪をひいている時の運動やNSAIDsの服用は運動後急性腎不全のリスクファクターとなる。

 重要なことは、運動後急性腎不全の患者の約半数に腎性低尿酸血症が合併していることである。腎性低尿酸血症に合併した急性腎不全発生時では、腎不全時も血清尿酸値は正常(8mg/dl以下)のことが多く、回復時に1.0mg/dl以下の著明な低尿酸血症を呈する。

 そもそも運動後急性腎不全の起こるメカニズム、また腎性低尿酸血症においてなぜ高率に発症するかは不明である。腎性低尿酸血症において率に発症する一つの仮説は尿酸のもつ抗活性酸素能である。尿酸は生体内物質の中でも強い活性酸素除去能を持っている。激しい運動後に発生する多量の活性酸素を腎性低尿酸血症の患者では消去しきれず、特に活性酸素の発生の多い腎臓において障害が顕在化するというものである。

 腎性低尿酸血症の患者を診た時にどのような対応をすべきか確立されてはいないが
1)風邪気味の時に運動会で全力疾走しない
2)運動時にNSAIDsの内をさける
3)脱水にきをつける
などの点を患者に説明するように石川は提唱している4)。

参考文献

1) 久留一郎、坪井麻理子、重政千秋:遺伝性腎性低尿酸血症、日本臨床54巻号 3337-3342, 1996

2) 赤岡家雄、鎌谷直之:尿酸代謝異常症-概念と分類、日本臨床54巻号 3243-3247, 1996

3) Ishikawa I. Acute renal failure with severe loin pain and patchy renal ischemia after anaerobic exercise in patients with or without renal hypouricemia. Nephron 91(4):559-70, 2002

4) 石川 勲:運動後急性腎不全(ALPE)金沢医科大学出版局, 2006v

(MyMedより)推薦図書

1) 五十嵐隆 著:小児腎疾患の臨床 改訂第3版,診断と治療社 2008

2) 衞藤義勝 著、Richard E.. Behrman・Robert M. Kliegman・Hal B. Jenson・五十嵐隆・大澤真木子・河野陽一・森川昭廣・山城雄一郎 編集:ネルソン小児科学 原著第17版,エルゼビア・ジャパン 2005

3) 五十嵐隆 編集:小児科学,文光堂 2004
 
 

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