精巣腫瘍 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

精巣腫瘍(せいそうしゅよう)

執筆者: 渡辺 稔彦

概要

 精巣および傍精巣組織から発生する腫瘍は、小児固形腫瘍の約2%を占め、2歳前後に最もよくみられる。人種によってその頻度は異なり、東洋人特に日本人男児に多いと報告されている。精巣腫瘍のリスクファクターとしては、停留精巣とエストロゲンの関与が注目される。

分類

 精巣腫瘍の治療方針を決定するにあたって、正確な病理診断分類は大切である。わが国においては、世界的に広く使われているWHO分類と基本的に同じ病理組織学的分類が使用されている。精巣腫瘍の90~95%は胚細胞を起源とした胚細胞性腫瘍(germ cell tumor)であり、5~10%は精索/間質腫瘍( sex cord/stromal tumor)、リンパ組織および造血組織由来腫瘍(lymphoid and haematopoietic tumors)などに分類される。小児の精巣腫瘍の大部分はgerm cell由来であり、組織学的には卵黄嚢腫瘍(york sac tumor)および良性奇形腫(teratoma)が最も多く、セミノーマなども見られるが稀である。非胚細胞性腫瘍はまれであるが、男性ホルモンを分泌するため性早熟をきたすLeydig cell tumorや女性化乳房を呈することがあるSertoli cell tumorがあげられる。また、白血病や悪性リンパ腫の精巣転移や神経芽腫の再発をきたすこともあり、転移・再発性の精巣腫瘍の可能性も忘れてはならない。本稿では、小児で最も頻度の高い胚細胞腫瘍について述べる。

胚細胞性腫瘍(germ cell tumor)

病態生理

 内胚葉・中胚葉・外胚葉の3胚葉成分の混在する腫瘍であり、多潜在能を有する胚細胞由来の腫瘍であるが、3胚葉成分を有しなくても胚細胞由来であればよい。奇形腫群腫瘍(teratoma)と同義語である。胚細胞性腫瘍は、胎生4週の卵嚢嚢内に初めて原始胚細胞が出現し、腸管膜を通じて胎生6週には後腹膜のgonadal ridgeの胚上皮に移行し、その後卵巣・精巣の性腺になる。性腺のほか、性腺外胚細胞腫瘍は、この胚細胞の異所性移動が原因と考えられており、体軸正中である仙尾部・後腹膜・縦隔・頭頚部・松果体付近の頭蓋内が主要な好発部位である。発生頻度は、卵巣・仙尾部が最も多く、精巣、後腹膜、縦隔の順である。発生部位が多彩であることから、部位により小児外科のほか、脳外科・泌尿器科・婦人科など幅広い診療科が関係し、小児期を過ぎても発生することがある。

臨床症状

 乳児期より5歳ごろまでに無痛性の陰嚢腫大、あるいは精巣腫瘤として発症し、悪性の頻度が高い。おむつ交換時の無痛性の精巣腫大としてきわめて早期に気づかれるため悪性でもその予後はきわめて良好である。小児の精巣腫瘍の大部分は胚細胞由来で組織学的には卵黄嚢腫瘍(york sac tumor)か良性奇形腫(benign teratoma)が多いが、まれなセミノーマでは小児頭大の巨大腫瘤をみることもある。進行すると腎門部リンパ節に転移するが、鼠径部には転移しない。

検査成績

超音波検査

 低侵襲であるうえ、原発巣の検索には最も有力な検査であり、辺縁が不整な低エコー像が特徴的である。

CT・MRI

 多くは限局性であるが、後腹膜リンパ節や肺に転移することがあり、CTなどで遠隔転移の検索が必要である。また、腹腔内停留精巣を放置しておくと腫瘍化する可能性が高くなることが知られており、MRIでの検索が有用である。

腫瘍マーカー

 最も重要な腫瘍マーカーとしてアルファフェトプロテイン(AFP)とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)がある。AFPは胎生期にまず卵黄嚢で、次いで胎児肝、消化管などの内胚葉器管で作られるため、1歳未満では生理的な高AFP血症となっているが、徐々に血中より消失し1歳前後には陰性になる。小児期悪性胚細胞性腫瘍はyork sac tumorの成分を有し、90%以上の症例で血性AFPの異常上昇がみられる。精巣腫瘍では、卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、悪性奇形腫でAFPが産生されるが、セミノーマや絨毛癌の単一組織型では産生されない。AFPの半減期は3.5~5日であるが1歳未満ではこの時期の正常値との対比が必須である。hCGはhCGβサブユニットが特異性が高く、半減期が45分である。生理的産生部位は胎盤合胞性絨毛上皮であるが、精巣腫瘍では絨毛癌成分と他の組織型に含まれる合胞体性巨細胞から産生される。これらの腫瘍マーカーは手術や化学療法の治療効果判定や再発の診断にも非常に有用である。


治療

高位精巣摘除術

 精巣腫瘍と診断されたならば、まず最初にすべきことは、高位精巣摘除術である。少しでも精巣腫瘍が疑われた場合には、針生検は血行性転移を起こす可能性があり禁忌である。摘出標本により組織型を決定し、他臓器転位の有無を検索して臨床病期を決定する。術後AFPが正常化した例では手術のみでよく後腹膜のリンパ節廓清や予防的放射線照射は全く不要である。

化学療法

 精巣腫瘍は早期に発見される例が多いため、化学療法が必要となるケースは少ない。後腹膜リンパ節転移がある例でも後腹膜リンパ節廓清のような局所療法より化学療法が優先され、ほぼ完治する。一般的な悪性胚細胞性腫瘍に対する化学療法として、CDDP・vinblastin・bleomycin併用療法(PVB療法)やその変法(BEP療法)が施行される。


予後

 良性胚細胞性腫瘍の場合は、完全摘出により予後良好であるが、不完全摘出の場合は再発をきたす。再発をきたしても再手術により完全摘出すれば治癒する。精巣原発悪性胚細胞性腫瘍であっても現在は、ほとんどが早期に発見され、その治療成績はほとんど100%である。

(MyMedより)推薦図書

1) 日本泌尿器科学会 編:精巣腫瘍診療ガイドライン 2009年版 構造化抄録CD-ROM付 (第1版),金原出版 2009

2) 日本泌尿器科学会・日本病理学会 編集:泌尿器科・病理 精巣腫瘍取扱い規約,金原出版; 第3版版 2005

3) 末舛恵一、下里幸雄:胚細胞性腫瘍の基礎と臨床 (厚生省がん研究助成金によるシンポジウム 第9回(1985),協和企画通信 2000

4) 石井勝 編集:腫瘍マーカーハンドブック,医薬ジャーナル社 2009
 

免責事項

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