尿路感染症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

尿路感染症(にょうろかんせんしょう)

urinary tract infection, UTI

執筆者: 蓮井 正史

概要

 尿路感染症(urinary tract infection:以下UTIと略す)尿路に細菌などの病原体が侵入して感染を起こす病態である。腎・尿管に感染をきたし発熱を認める上部UTI(急性腎盂腎炎、腎膿瘍など)と膀胱・尿道に感染をきたすが発熱を伴わない下部UTI(膀胱炎、尿道炎)に大別される。また、尿路に感染誘発の原因となりうる基礎疾患(膀胱尿管逆流現象vesicoureteral reflux: VURや水腎症)を有する場合 (複雑性UTI)と、有さない場合(単純性UTI)に分けることもある。小児では成人に比較して複雑性UTIの割合が高い。
 
 UTIは全男児の1%、全女児の3-5%が罹患するcommon diseaseである。乳児期においては男児に多く(女児の2-5倍)、幼児期以降は女児に多い(約10倍)。この理由は、乳児期は包茎やVURを合併しやすいため男児に多いが、幼児期以降は、女児の尿道の短さが上行性感染のリスク因子となり、女児が多く罹患すると考えられる(包茎やVURは自然治癒するものが多い)。UTIの起因菌は7割以上が大腸菌をはじめとする腸管内常在菌であり、感染経路としては外陰部からの上行性感染がほとんどである。 

病因

 Escherichia Coli(大腸菌)、Klebsiella (クレブシエラ)、Proteus(プロテウス)がUTIの三大起因菌である。尿路系に異常を合併しない単純性UTIでは80〜90%以上が大腸菌である。一方、尿路系に異常を有する複雑性UTIでは大腸菌の占める割合が低下しプロテウス、緑膿菌、クレブシエラ、腸球菌の頻度が増加する。したがって、大腸菌以外の細菌が検出された場合は尿路の器質的疾患が疑われる。

 下部UTIは幼児以降の女児に多く、細菌以外にアデノウイルスも出血性膀胱炎として原因になる。

病態生理

 感染経路のほとんどが外陰部周辺の大腸菌などのGram陰性桿菌が尿道を経由し膀胱に達し生ずる上行性感染症である。さらに尿路感染症が成立するには尿路上皮細胞に大腸菌が付着して増殖することが不可欠となる。大腸菌は線毛の先端のadhesionと呼ばれる蛋白が尿路上皮細胞のレセプターと結合し粘着することが感染の引き金となる。上部UTIは腎盂・腎杯の粘膜と腎実質まで炎症性変化が波及する。

臨床症状

 上部UTIは発熱(高熱が多く年長児では悪寒戦慄を伴うこともある)、側腹部痛、悪心、嘔吐、下痢などの症状を呈するが乳幼児では症状が非特異的(発熱、不機嫌のみ)である。加えて適切な尿(中間尿)採取が困難なため診断が難しい。尿路感染は呼吸器感染についで頻度が高いが、乳幼児では症状が非特異的なため見逃されることも多い。したがって乳幼児の発熱、特に3か月-2歳児で感染源の不明の高熱の患児を診た場合にはまずUTIを疑うことが重要である。

 下部UTIである膀胱炎では頻尿、排尿痛、下腹部不快感を訴えるが発熱は通常、認めない。

検査成績

尿検査

 UTIの正確な診断には中間尿、クリーンキャッチ尿(おむつを開けた時や啼泣時の反射的排尿を採尿コップで受ける)、カテーテル尿の採取が重要である。膀胱穿刺法は最も汚染の少ない採尿法であるが、侵襲的であり、尿が膀胱内に溜まるまで時間を要することもあり勧められない。バッグ(採尿用のビニール袋)による採尿では外陰部の汚染が多く疑陽性となりやすいので水道水でぬらしたカット綿で清拭すること、バッグ尿で膿尿を認めた場合は必ずカテーテルによる導尿を行ない、再度検尿と尿培養を実施することが重要である。年長の女児では中間尿でもコンタミネーションをきたすことがあるのでウォシュレットで外尿道口周囲を洗浄してから採尿する。

 膿尿の基準は採尿法にかかわらず10 WBC/μl以上、あるいは尿沈渣の400倍検鏡で5 WBC/HPF, high-power field以上である。また、UTIの初期には尿沈渣で白血球が見られないこともあり注意を要する。UTIの診断の進め方を図1にフローチャートで示した。近年、非遠沈尿を使用し尿1滴でUTIの診断が可能なKova Slide法が注目を集めている。細菌尿と膿尿の有無、桿菌か球菌の判別も即座に可能である。

図1. 小児尿路感染症の診断手順


起因菌の同定として、中間尿、クリーンキャッチ尿では105/ml以上、カテーテル尿では5 X 104cfu/ml以上の存在を有意とする。尿検体は60分以上室温に放置すると汚染菌が増殖するので培養検査は速やかに提出する。やむ終えない場合は冷蔵庫(4℃)に保管する。腎組織はLDH IV、Vを多く含むためUTIによって組織崩壊が尿中へ漏出するため尿中LDHの上昇(25mU/ml以上とIV、Vの増加)、β2-MG、NAGを指標とする。測定することも多い。しかしこれらはUTIの診断に有用なのではなく、UTIの患児において上部UTIか下部UTIかの鑑別の目的で用いる。

画像検査

 UTIの疑いがあれば腎尿路系の異常を検索するため全例に腎臓、膀胱を中心とした尿路系の超音波検査を施行する。腎盂・尿管の拡張変形や腎盂周囲のエコー輝度の増強は上部UTIを、また膀胱粘膜の肥厚は下部UTIを疑う。

上部UTIを起こした児の約半数にVURが合併するので乳幼児期に対してはVURの精査(排尿時膀胱尿道造影: voiding cystourethrography: VCUG)が必須である。米国小児科学会では2歳以下の上部UTIに対して全例、VCUGを行うことを勧めている2)。私たちは患児の負担を軽減するため、上部UTIで入院した乳幼児の場合、退院前にVCUGを施行している。腎瘢痕の評価には6ヶ月後にDMSA腎シンチグラムを行う。下部UTIでは通常は超音波検査以外の画像検査は不要だが、反復する症例は神経因性膀胱、尿道憩室を考慮してVCUGを行う。

血液検査

上部UTIではCRP陽性(2mg/dl以上)となるので下部UTIとの鑑別に有用であるが、発熱12時間以内の早期では上昇しない場合もあるので注意が必要である。乳児や複雑性UTIでは敗血症を合併していることもあるので血液培養も同時に実施する。

図1. 小児尿路感染症の診断手順

治療

 一般に上部UTIでは初期に抗菌薬を経静脈投与し、さらに7-14日間の経口投与を行うことが多い。近年のランダム化コントロール研究でも2-4日の経静脈投与後に経口投与に切り替える方法や初期から経口投与を行なう方法が検討されているが、いずれにしても合計7-14日間の使用が再発を防ぐためには重要である。1歳未満の乳児では敗血症の合併が多いので入院加療を原則とする。単純性UTI由来の大部分を占める大腸菌に対する感受性はセフェム系の各世代間で大差ないので各施設で使い慣れた第1-3世代セフェム系薬を使用する3)。有効ならば2日以内に解熱し、全身状態も改善する。治療期間は初期に2-4日の経静脈投与とその後の経口投与を含め7-14日だが,合併症のない年長児のUTIでは,多くは短期投与で治療に成功する。効果が明らかでなければ,治療開始2-3日目に尿培養を再検する。多くの抗菌薬は尿中に排泄され、その尿中濃度は血中濃度よりも遥かに高いので薬剤耐性が問題となることは少ない。複雑性UTIでは緑膿菌、クレブシエラの比率が上昇するのでアミノグリコシド系、カルバペネム系を選択する。腸球菌ではペニシリン系が有効である。膀胱炎ではセフェム系抗菌薬を3-5日間内服する。

 最終的な治療効果は、治療終了1週後の尿培養検査で判定する。再発の危険があるため診断直後1年は3-4回,次の2-3年も最低年に2回(または有症状時)は尿培養を施行する。抗生物質を48時間投与後も尿が無菌化しない場合は,耐性菌または閉塞性病変の存在か、服薬コンプライアンスの不良を疑う。

上部UTI

新生児では敗血症の合併を考慮し、アンピシリンとアミノ配糖体、新生児以降はセフェム系抗菌薬の経静脈投与を行う。治療開始後3日間で改善が無ければ緑膿菌、腸球菌などを考慮しカルバペネム系、アミノグリコシド系などに変更する。

新生児期

A.アンピシリン 50mg/kg(1日2回)とゲンタマイシン2.5mg/kg (1日2回)を併用、点滴静注する。

乳児期以降

下記のいずれかを症状や検査所見の正常化を確認まで点滴静注
A.セファメジン  30mg/kg  1日3回  点滴静注
B.パンスポリン  30mg/kg  1日3回  点滴静注
C.ロセフィン    50mg/kg  1日2回  点滴静注
症状や検査所見の正常化後は経口投与に切り替えて下記を投与する(合計14日間)。
D.経口セフェム(セフゾン、トミロン)  10~15mg/kg/日  分3  

再発時

VURの有無にかかわらず尿路感染の再発があれば6か月間再発がないことを確認できるまで予防投薬(少量予防投与法)を行なう。
A.ケフラール  1-5mg/kg /日     分1  眠前  
B.バクタ     0.01-0.025g/kg/日  分1  眠前

VURを有する患者

再発と腎瘢痕の予防目的で、半年を1クールとしてセフェム系抗菌薬を少量、予防的に内服する。再発があれば少量のST合剤に変更し、無効なら手術を考慮する。再発がなければ投薬継続し、1年後にVCUGの再評価を行う。尿培養は定期的に施行する。III〜IV度以上のVURは上部UTIを再発しやすく、腎機能予後が不良なため、逆流防止手術の適応となることが多いので早期に小児泌尿器科医を紹介する。
A.を用いて再発があればB.を半年—1年経口投与
A.ケフラール  1-5 mg/kg/日  分1  眠前
B.バクタ     0.025g/kg/日   分1 眠前

VURを伴う神経因性膀胱の患者

 脊髄髄膜瘤患児は神経因性膀胱やVURを合併することが多い。このような症例では腎機能を保ち、かつ膀胱機能を正常に近づけること目的に治療する。膀胱での残尿の多いタイプでは、感染がコントロール後にセルフカテーテルによる間欠的自己導尿を行う。

下部UTI

A.-C.のいずれかを3-5日間経口投与する。
A.ケフラール  30-50mg/kg/日  分3 
B.トミロン    9-18mg/kg/日   分3 
C.メイアクト   9mg/kg/日     分3 
外陰炎にはゲンタシン軟膏を塗布する。

家族への指導

 上部UTIを発症した児の約1/3に再発が見られる。特に発症後6か月以内が多く、この期間に発熱した場合は必ず尿検査を実施する。その際、排尿が自律していない乳幼児では、家族にあらかじめ採尿バッグを渡した上で清拭と貼り方を十分に説明し、発熱時に尿を持参するように指導する。

 日頃から5-10分の時間をかけた排便を指導する。ゆっくりと排便させることで排尿も2回、3回(2段排尿、3段排尿)となり、残尿を減らすことが可能となりUTIのリスクを減らせる。

合併症

VUR

 小児の上部UTIの原因疾患として最も多く30-50%を占める。VURとは膀胱内の尿が尿管や腎盂・腎杯、さらには腎実質にまで逆流する現象である。正常では膀胱内の尿は尿管膀胱移行部の逆流防止機構により尿管内に逆流することはないが、先天的な膀胱粘膜下尿管の短縮により逆流防止作用が低下する。患児の成長に伴い膀胱粘膜下の距離が延長するとVURも消失する。乳児のVURは自然消失しやすいが、6歳以上のVURは自然消失する可能性は低い。国際的分類で程度が軽いI度から高度のV度まで分類される。

逆流性腎症(reflux nephropathy)

 VURの存在により上部UTIによって生じた後天的に生じた腎実質の瘢痕、蛋白尿、腎機能障害、高血圧などを逆流性腎症と呼ぶ。腎瘢痕の診断は99mTc-DMSAが用いられ、超音波検査では腎実質の菲薄化や輝度の上昇により診断可能である。

参考文献

1) 平岡政弘:小児尿路感染症の外来診療マスターブック第1版, 医学書院(東京), 2003

2) American Academy of Pediatrics : Practice Parameter: The Diagnosis, Treatment, and Evaluation of the Initial Urinary Tract Infection in Febrile Infants and Young Children. Pediatrics 103: 843-852, 1999

3) 霜島宜子、金子一成:よくみる外来小児疾患の薬物療法. 尿路感染症. 薬局53: 2923-2928, 2002

(MyMedより)推薦図書

1) 松本哲哉 翻訳:CUMITECH 2C尿路感染症検査ガイドライン,医歯薬出版 2010

2) 寺島和光 著:小児科医のための小児泌尿器疾患マニュアル,診断と治療社 2006

3) 西原崇創 著・古川恵一 監修:そこが知りたい!感染症一刀両断! ,三輪書店 2006

4) 藤本卓司 著:感染症レジデントマニュアル,医学書院 2004


 

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