胆管炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.29

胆管炎(たんかんえん)

cholangitis

執筆者: 窪田 敬一

概要

 急性胆管炎とは肝内、肝外胆管の急激な限局性ないしび漫性の炎症である。何らかの原因による胆道閉塞機転により胆汁が感染した病態であり、その発症には、1)胆管内の著明に増加した細菌の存在、2)細菌またはエンドトキシンが血流内に逆流するような胆管内圧の上昇(20-25cmH2O以上)、の 2因子が不可欠で、その程度により様々な病態を呈してくる。特に、急速な胆道減圧を行わないと救命できないような最重症の胆管炎の病態を急性閉塞性化膿性胆管炎(acute obstructive suppurative cholangitis:AOSC)と呼ぶことが多い。

病因

 原因としては、胆管内の異物(総胆管結石、寄生虫など)、腫瘍による狭窄(胆管癌、膵癌など)、良性狭窄(術後胆管狭窄、膵炎、原発性硬化性胆管炎、など)、による胆管閉塞が多く、むしろ、不完全閉塞例に起きやすい。

病態生理

 高齢者に多く、炎症が進展すると肝膿瘍を併発する。また、Mirizzi症候群(胆嚢頚部、胆嚢管結石による機械的圧迫や炎症性変化による総胆管狭窄)、Lemmel症候群(傍乳頭部憩室による下部胆管圧迫ないし乳頭部機能不全)、などの特殊な病態も急性胆管炎を引き起こす原因となる。

 起因菌としてはグラム陰性菌が多く、感染経路として、1)十二指腸からの逆行性感染)内視鏡処置後に発生しやすい)、2)腸管からの経門脈性感染(細菌が経門脈性に肝内に運ばれ胆汁中に排泄される)、などが考えられている。前者に起因することが多いが、肝障害高度例では後者も考慮しなくてはならない。敗血症、エンドトキシン血症を併発し、ショック、多臓器不全を引き起こし重篤な症状を呈する。

臨床症状

 発熱、黄疸、右上腹部痛(Charcot3徴)が特徴的所見であり、50%~70%の症例で認められる。さらに腹部の圧痛、嘔気、嘔吐を訴えることもある。急性閉塞性化膿性胆管炎ではさらにショック、意識障害(Reynold5徴)を認める場合もある。特に胆管狭窄や結石を有する症例で経内視鏡的逆行性胆管造影(endoscopic retrograde cholangiography: ERC)など内視鏡操作に引き続き発症することがあるので注意が必要である。この場合、早急な胆管ドレナージが必要である。しかし、典型的症状を呈さない症例もあり、注意深い観察が必要である。

検査成績

一般検査所見


 白血球増多、核左方移動、CRPの上昇、などの胆道の炎症を示唆する所見や胆汁うっ滞を反映する血清ビリルビン、ALP, γ-GTP, GOT, GPT値の上昇、時にアミラーゼの上昇がみられる。アミラーゼの上昇が見られたら総胆管結石の存在を考える。また、血液検査でエンドトキシンが証明され (limulus反応など)、血液培養で起因菌が確認される場合もある。


画像所見


 直接的に胆管炎を示唆する画像所見はなく、腹部超音波、CTなどにより、胆管拡張、胆管内の結石、肝内膿瘍、などが描出された場合、急性胆管炎を考慮する。

診断・鑑別診断

 以上の所見を備えた症例で、胆汁うっ滞、感染の存在を示唆する検査所見が認められたら急性胆管炎と診断し、さらに検査を進めるとともに治療も開始する。しかし、急性胆管炎の患者が典型的症状を呈するとは限らないので、急性胆嚢炎、肝炎、肝膿瘍、膵炎、急性腎盂腎炎、などを鑑別する必要がある。さらに、黄疸、低アルブミン血症、急性腎不全、ショック、などが認められたら重症急性胆管炎を考慮する。

治療

 症状の程度により保存的治療にするか原疾患に対する外科的処置を施すか決定する。


保存的治療:


 輸液を十分行い、胆汁移行の良い適切な抗生物質を投与し、全身状態の改善を図りつつ、胆道減圧および感染胆汁誘導のため超音波ガイド下に肝内拡張胆管を穿刺しドレナージ・チューブを留置する(経皮経肝胆道ドレナージ:percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)。この際造影は行わず、先ず胆道内圧の減圧を計ることを優先すべきである。感染胆汁を十分に吸引し、造影剤の注入は必要最小限にする。胆道造影は胆道内圧を上昇させエンドトキシンショック(septic shock)を引き起こすので急性期には厳に慎むべきである。PTBDのかわりに経内視鏡的乳頭切開(endoscopic sphincterotomy)を施行する場合もある。これらの処置は治療と診断を兼ねると考えられる。重症例ではショックに対する集中治療が必要である。


外科的治療:


 保存的胆道減圧処置が不十分(たとえば胆泥でカテーテルがつまりやすい場合)と判断された場合、手術により結石などの閉塞機序を可及的に除去し、T -チューブなどを留置する。悪性疾患が原因と考えられた場合、侵襲の大きい手術が必要となる可能性が高いため、全身状態の改善を待ち原疾患に対する手術を施行する。

予後

 軽症例は保存的治療で軽快する場合が多いが、重篤な敗血症、エンドトキシン血症を併発した症例の予後は不良で死亡率も高い。

最近の動向

 急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドラインが作成され、治療の指針になっている。

(MyMedより)推薦図書

1) 急性胆道炎の診療ガイドライン作成出版委員会 編:科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン,医学図書出版 2005

2) 急性膵炎診療ガイドライン改訂出版委員会 編集:急性膵炎診療ガイドライン〈2010〉,金原出版 第3版 2009

3) 伊佐山浩通・吉田晴彦・椎名秀一朗 編集, 小俣政男 監修:肝胆膵診療エキスパートマニュアル,羊土社 2008
 
4) 糸井隆夫 編集:胆膵内視鏡の診断・治療の基本手技,羊土社 2008

5) 税所宏光 編集:防ぐ、治す 胆のう・胆管の病気 (健康ライブラリーイラスト版),講談社 2005

6) 白鳥敬子 著:膵臓・胆のう・胆管の病気 (よくわかる最新医学),主婦の友社 2007

免責事項

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