スポーツ障害 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.29

スポーツ障害(すぽーつしょうがい)

Sports Injury

執筆者: 芳賀 信彦

概要

 スポーツ障害とは同じ運動を繰り返すことにより生じる障害であり、overuse syndrome(使いすぎ症候群)とも呼ばれる。スポーツ活動中のけが(スポーツ外傷)とは区別されるが、実際にはスポーツ外傷の誘因としてスポーツ障害が存在することもある。

 上肢、体幹、下肢のいずれの部位にもスポーツ障害は生じるが、スポーツの種目により障害を起こしやすい部位は一定している。症状としては障害のある部位の痛みと近接する関節の可動域制限を示すことが多い。痛みの性状は多様である。小児では身体的に未発達で、力学的に脆弱である骨や軟骨の障害が多い。

病因

 スポーツ障害はスポーツ特有の動作の繰り返しによる微小外力が組織に損傷を与えることにより発生する。ただし障害の発生には、個人的な要因と環境要因とが関与する。

 個人的要因は、個人の体格(身長、体重など)、筋力、関節弛緩性、筋腱の硬さ(tightness)、四肢・体幹のアライメントなどの他、スポーツにおけるフォームなどを含む。環境要因は、スポーツを行う際の天候、グラウンドやコートの表面の状態(グラウンド表面が土か人工芝か、コート表面の滑りやすさなど)の他、スポーツに用いる用具や靴などを含む。これらの関係が適切に保たれていないと、スポーツ障害を生じうる。

臨床症状

自覚症状

 疼痛が主たる自覚症状であり、運動で誘発される場合が多いが、病状が進行すると安静時にも痛みを訴えることがある。近接する関節の可動域制限が強い場合は、日常生活動作が制限される。下肢や体幹の障害では、立位保持・歩行が困難になることもある。

他覚症状

 障害のある部位の圧痛、運動時痛(pain on motion)があり、同部の炎症症状(腫脹、熱感)を示す場合もある。関節内の病変では関節水腫を示す。関節可動域の制限は、痛みによる場合、関節水腫による場合、関節軟骨の病変による場合、筋腱や靭帯の短縮による場合がある。 

診断・鑑別診断

 スポーツ歴に関する問診が重要である。種目だけでなく、練習時間と頻度、競技レベル(レギュラー選手か否かも含めて)を詳しく聞く。例えば野球の投手では、練習での投球数や球種も参考になる。必要であればフォームのチェックも行う。

 次に局所の視触診を十分に行う。関節可動域のチェックに際してはどの方向への運動で痛みが誘発されるかが重要である。画像検査は単純X線検査をまず行う。検査所見は疾患により異なり、筋腱付着部や軟骨下骨の不整などを特徴とする。軽症では異常所見を示さないことがあるが、その場合、CT、MRI、骨シンチグラムで病変を捕らえることができることがある。

 小児の代表的なスポーツ障害として、野球肘とOsgood-Schlatter病の診断・鑑別診断について述べる。

野球肘

 野球肘は、内側型(上腕骨内上顆の回内屈筋群付着部炎、内側側副靭帯炎、肘部管症侯群など)と外側型(上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎)に大きく分けられる。小児では上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎の形をとることが多く、肘外側の運動時痛、圧痛、関節可動域制限を認める。小中学生の野球選手、特にピッチャーに多い。単純X線写真で上腕骨小頭の不整や骨剥離像を認める(図1)。

 通常の肘関節2方向X線写真の他に、肘屈曲45度での前腕に対する正面像(tangential view)を撮影すると診断をつけやすい。精査を要する場合はCT、MRIや断層X線を撮影する。上腕骨小頭の骨端症であるPannner病を鑑別する必要があるが、Panner病は発症年齢が低く、スポーツ歴を必ずしも有しない。


(図1)野球肘

Osgood-Schlatter病

 膝蓋靭帯が付着する脛骨粗面に繰り返しの引張力が働くことにより、同部の圧痛、熱感、腫脹、骨性隆起を生じる。痛みのため膝を深く屈曲することができない。10歳代のジャンプを繰り返すスポーツ(バスケットボール、バレーボールなど)の選手、特に男児に多い。膝側面単純X線写真で、脛骨粗面の不整、骨剥離などの所見を認める(図2)。膝蓋骨と膝蓋靭帯の境界部に痛みを生じるものをSinding-Larsen-Johansson病と呼び、Osgood-Schlatter病とは区別される。


(図2)Osgood-Schlatter病

治療

 一般には要因となるスポーツ動作の制限が必要で、これにはスポーツの全面禁止から一定の動作のみの制限までを含む。患者本人に、要因としてスポーツによる繰り返しの外力があることを十分に説明する。スポーツ活動のコントロールが疾患の治療に必須であることを理解してもらうため、本人だけでなく親やコーチの理解を得ることも重要である。

野球肘の治療

 早期に発見できれば安静のみで治癒する。しかしこの場合でも再発の予防が重要で、投球数の制限、フォームの再教育、筋力強化を指導する。病期が進んだ例でスポーツの継続を希望する場合には手術が必要である。上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎では、関節内遊離体の摘出、骨釘移植などさまざまな方法が報告されているが、一定の見解はない。

Osgood-Schlatter病の治療

 運動量の軽減が第一歩である。また運動前の大腿四頭筋ストレッチ、運動後のアイシングの指導も行う。運動時に膝蓋靭帯の付着部をストラップで締める方法や消炎鎮痛剤軟膏の塗布も有用である。以上を行えば、数ヶ月から遅くとも骨成熟までにはほとんどの症例で症状は消失するが、脛骨粗面部の骨性隆起は残存することがある。手術を必要とすることはほとんどないが、骨成熟後に遊離骨片による疼痛が続く場合は、摘出術が有効である。

予後

 スポーツ障害がoveruse syndromeである以上、一旦症状が軽快した後でも再発することがある、再発を防ぐためには練習量の制限などが必要なこともあり、継続的な経過観察が必要である。

最近の動向

 スポーツ開始前などにメディカルチェックを行い、関節の弛緩性、筋腱の硬さ、マルアライメント(骨格の異常配列)などを知っておくことにより、スポーツ障害を予防するという考えがある。メディカルチェックは競技スポーツのみならず、学校やクラブチームにおける小児の運動においても、今後広がってくる必要がある。

執筆者による主な図書

1) 五十嵐隆、編集(芳賀信彦、共著):目でみる小児救急,文光堂

2) 藤井敏男、編集(芳賀信彦、共著):小児整形外科の要点と盲点,文光堂

3) 越智隆弘、総編集、藤井敏男、中村耕三、専門編集(芳賀信彦、共著):最新整形外科学大系 24巻 小児の運動器疾患,中山書店

4) 日本整形外科学会小児整形外科委員会編集(芳賀信彦、共著):骨系統疾患マニュアル、第2版,南江堂

5) 越智隆弘、総編集、中村利孝、吉川秀樹、専門編集(芳賀信彦、共著):最新整形外科学大系 21巻 骨系統疾患、代謝性骨疾患,中山書店
 

執筆者による推薦図書

1) Spranger JW, et al:Bone Dysplasias, 2nd ed,Oxford

2) Morrissy RT, Weinstein SL:Lovell and Winter’s Pediatric Orthopaedics,Lippincott

3) Herring JA:Tachidjian’s Pediatric Orthopaedics, 4th ed,Saunders

(MyMedより)その他推薦図書

1) 柏口新二 著:子どものスポーツ障害こう防ぐ、こう治す―親子で読むスポーツ医学書,主婦と生活社 2008

2) Chad Starkey・Jeff Ryan 著、中里伸也・鶴池政明・梶谷優 翻訳:スポーツ外傷・障害評価ハンドブック,ナップ 2005
 
3) 小山郁 著:子どものスポーツ障害とリハビリテーション (ラピュータブックス か・ら・だシリーズ),ラピュータ 2010

免責事項

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