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patent ductus arteriosus
執筆者: 磯田貴義
動脈管開存症は動脈管が出生後も遺残している病態を指す。
胎生期には肺が酸素化に寄与することはない。このため、右心室が駆出する血液が肺へすべて流れないように、動脈管が生理的に開存し主肺動脈から下行大動脈へと血流をバイパスしている。動脈管は胎内ではプロスタグランディンEの生成により維持されているが、出生後の酸素分圧の上昇とプロスタグランディンEの血中濃度低下に伴って収縮し数週間かけて器質的に閉鎖する。何らかの原因でこの過程が阻害されると動脈管開存症が生じる。
未熟児動脈管開存症(別項参照)では動脈管の閉鎖過程の遅延が原因となっている。一方、成熟児の動脈管開存症は何らかの内因性異常が原因と考えられるが、原因が特定できることは少ない。その中で原因が明らかなのは、ある種の染色体異常症、先天性風疹症候群、胎児アルコール症候群などに付随するものである。また、高地の居住者に動脈管開存症の率が高いと言われている。
動脈管を介して大動脈から肺動脈へと全心周期に渡って短絡血流(左右短絡)が流れ、肺血流量が増加する。また、左心房→左心室→大動脈へと増加した血流が流れるため、左心系の容量負荷が生じる。高度の短絡血流があると左心系の負荷による心不全症状をきたし、多呼吸、頻拍などを呈する。拡張期の短絡が増加すると拡張期血圧が低下し、冠循環の低下、腸肝循環の低下、脳循環の低下などによる臓器不全症状をきたす。太い動脈管では肺高血圧症が生じ、放置すると肺血管閉塞性病変からEisenmenger化する。
PDAのもう一つの問題は感染性心内膜炎のリスク増加である。抗生剤のない時代のPDA死亡率は2-19歳では年間0.42%、20台では1~1.5%程度とされ、感染性心内膜炎のリスクが高いことが示唆される。ただし、心雑音がないPDAの感染性心内膜炎のリスクについて明らかなevidenceはない。
左右短絡量が少ない場合には自覚症状がみられることはない。短絡量が多い場合には、多呼吸、陥没呼吸、気道感染の増加、哺乳力低下、体重増加不良などの高肺血流にともなった症状をきたす。
左右短絡量が増加するほど左室心尖拍動は顕著となり側方に偏位する。
典型例では最強点を胸骨左縁第二肋間部に持ち、I 音の直後に始まり、 II 音にほぼ一致してピークを形成し、拡張期に渡って漸減する連続性雑音(machinery continuous murmur: Gibson雑音)を聴取する。短絡血流量が多い(およそ肺体血流比で2以上の場合)と相対的僧帽弁狭窄による拡張期ランブルを聴取する。I 音は正常であることが多い。 II 音は肺血流量の増加に伴って亢進し広く奇異性に分裂するが、雑音の最強時相に一致するため聴取しにくい。末梢動脈の触れは収縮期の駆出の増大と拡張期血圧の低下から顕著でありいわゆるbounding pulseとなる。肺血管抵抗が高くなると雑音は収縮期優位となり、 II 音の亢進が目立ってくる。Eisenmenger化した動脈管開存症では動脈管開存に由来する雑音は消失し、動脈管を介する右左短絡のため下半身の酸素飽和度が上半身よりも低下し、いわゆるdifferencial cyanoisisをきたす。このため下肢でのみバチ指などのチアノーゼ症状の所見を呈することがある。
左右短絡量が多い場合(およそ肺体血流比が2以上)、肺血流量の増加に伴って肺血管陰影が増強し、左房、左室の拡大による心陰影の拡大、上行大動脈の拡張を認める。Eisenmenger化すると心陰影は正常化し、肺血管陰影は中枢部では拡大、末梢で目立たなくなる。高齢者では石灰化した動脈管が観察される場合がある。
短絡が多い場合には左室肥大の所見として左側胸部誘導, II, III, aVFでの高いR, 深いQ波などの所見がみられる。肺高血圧症が合併していると両室肥大を伴う。新生児でT波の陰転化やSTの低下などの所見がみられることがあり、拡張期血圧の低下による冠動脈血流の低下を示唆する。
診断に中枢的な検査となる。PDAは胸骨傍短軸像や鎖骨上窩から直接描出することが可能である。PDAは左肺動脈-主肺動脈接合部と下行大動脈の間にある。カラードップラー法を用いると容易に肺動脈内に左右短絡血流を検出することができ、これをガイドにするとPDAが直接描出される。動脈管形態はカテーテル治療の際に重要な情報となる。短絡血流量の増加に伴って左房、左室、上行大動脈の拡大が観察される。ドップラー法で示される短絡血流の最大流速により肺高血圧症の程度が評価できる。
成熟児では偶然に聴取される心雑音で疑われることが多い。心エコー図検査で動脈管および大動脈から肺動脈へいたる異常血流が確認されれば診断は確定的である。
心不全症状を呈している症例に対しては強心剤、利尿剤などによる抗心不全治療を行い、早期に閉鎖手技を行う。薬物治療で心不全症状がコントロールされた症例、心不全症状がなく心雑音のみの症例でも、待機的な閉鎖適応になる。
閉鎖手段として、外科的治療(直視下結紮・切離手術、クリップを使用した胸腔鏡手術)およびカテーテル治療がある。
一般的には1歳未満で心不全症状がコントロール不可能な症例では外科治療を選択する。外科治療(開胸手術)の安全性、成功率は高いが、合併症として反回神経麻痺、乳び胸、脊柱側彎などが生じうる。胸腔鏡手術は肋間筋の損傷が軽微で術創を小さくできる利点がある。
1歳以上で動脈管の内径が2.5mmを超えない症例はカテーテル治療のよい適応となる。わが国ではGianturcoコイルや着脱可能型コイルを用いた塞栓術が行われている(1)。カテーテル治療ではコイルの脱落、遺残短絡、遺残短絡に伴う溶血、コイルへの感染などの問題が生じうる。コイル塞栓後の軽微な遺残短絡はほとんどの場合自然閉鎖することが知られている。一般に外科治療やカテーテル治療後、半年程度は感染性心内膜炎に対して注意する必要があるとされている。心雑音がないPDAに対して治療を行うべきかについては明確な指針はない。
閉鎖適応のある動脈管開存症に対する治療は安全性が高く、治療を終了した症例ではその他の合併症(僧帽弁逆流など)がなければ予後は良好である。
コイル塞栓による閉鎖術は3mm以上の径を有する動脈管開存の場合には困難であるが、海外では形状記憶合金であるNitinolで作成された動脈管開存用のAmplatzer閉鎖栓が開発使用され、良好な臨床成績を収めている。
1) Moore JW, Levi DS, MD, Moore,SD et al: Interventional Treatment of Patent Ductus Arteriosus in 2004. Catheter Cardiovasc Interv. 64: 91–101, 2005
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