僧帽弁疾患 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

僧帽弁疾患(そうぼうべんしっかん)

執筆者: 澤 芳樹 榊 雅之

概要

 僧帽弁は大きな前尖と小さな後尖から成り、それぞれ3つのscallopに分けられ、左心室の前、後乳頭筋および腱策により支えられています。僧帽弁の多くの疾患はこれらの弁尖および弁下組織がなんらかの原因で障害されることにより生じます。

病因

[病因と病態]

 僧帽弁疾患は狭窄と逆流に分けられます。狭窄症は、弁狭窄に伴い左房から左室への流入障害であり、左房圧、肺静脈圧の上昇から肺高血圧および右心系の拡大をも認めるようになります。逆流症は急性および慢性に分けて考えます。急性の場合は左室に急激な容量負荷がかかり、肺うっ血およびショックを呈することがあります。慢性の場合は左室、左房の拡大により容量負荷を代償するのでしばらく無症状にて経過します。



僧帽弁狭窄


 僧帽弁狭窄の原因の大部分はリウマチ性で、単独に存在することは稀で大部分で狭窄と逆流を合併しています。



僧帽弁逆流


 弁輪、弁尖、腱索、乳頭筋、左房、左室のすべてが僧帽弁の閉鎖に関係しており、一部でも異常があれば、逆流を認めるようになります。原因としてはリウマチ性、感染性心内膜炎、虚血性心疾患、拡張性心筋症、僧帽弁逸脱(検索断裂)、アミロイドーシスなどにより生じます。

臨床症状

僧帽弁狭窄


 労作時呼吸困難にて発症する場合が多いですが、稀に左房内血栓症から塞栓症を発症し診断されることもあります。重症で右心不全を呈すると肝腫大、末梢浮腫を認めます。



僧帽弁逆流


 急性の場合は強い息切れと呼吸困難を訴え、ショック状態となることがあります。一方慢性の場合は病状の進行はゆっくりで、労作時呼吸困難、動悸、息切れ、易疲労感等を訴えるようになります。重症になると発作性夜間呼吸困難や起座呼吸を呈するようになります。

検査成績

心臓エコー


 僧帽弁の性状および狭窄、逆流の有無および程度などを観察します。また、左房内血栓および肺高血圧、右心不全を評価することができます。

診断・鑑別診断

診断


 心臓エコー検査にて診断できます。僧帽弁前尖のドーム形成や交連部の癒合、弁下組織の変化を認めた場合、狭窄症と診断されます。左房は拡大し時に左房内血栓を認めます。逆流症の診断は、カラードプラー法により収縮期に僧帽弁から左房へ逆流するジェットにより可能で、器質性の場合は弁尖の逸脱、疣贅、切れた腱索などが認められます。また、右心系の拡大と三尖弁の逆流を認める場合には連続波ドプラー法を用いて三尖弁逆流血流の最大速度を計測することにより、収縮期右室圧(肺動脈圧)を測定できます。



鑑別診断


 経胸壁心エコーにて診断が困難な場合は、経食道心エコー検査の方がより詳細な情報が得られます。

治療

内科治療 (薬物治療)


 症状の進行がゆっくりなので、利尿剤等にて経過観察できる場合が多いですが、心房細動や、左房内血栓を合併している場合は抗凝血薬療法(ワーファリン)を施行する必要があります。



外科治療法


 手術適応は、狭窄および逆流の程度、心機能、血栓塞栓症の有無を考慮し、決定します。僧帽弁の肥厚、石灰化、可動性、弁下部組織の変性程度、逆流の程度を検討し、術式を検討します。



PTMC(経皮経静脈的僧帽弁交連切開術)


 バルーン付きカテーテルにて狭窄僧帽弁口を開大する治療法で1984年に井上らによって初めて臨床応用されています。適応は薬物療法を行ってもNYHA2度以上の症状があり、弁口面積が1.5cm2以下とされています。ただし、心房内血栓、3度以上の逆流、高度または両交連部の石灰沈着および他に手術を要する合併疾患の存在する場合は不適応となります。



直視下僧帽弁交連切開術(OMC)


 以下の僧帽弁の手術はすべて人工心肺装置を使用し心臓を一時的に止めて行います。

 僧帽弁の石灰化の程度および逆流が軽度な僧帽弁狭窄症がOMCの適応となります。狭窄を呈した弁口を開大することにより、臨床症状の改善を認めますが、術後の弁逆流が発生する場合には遠隔期に問題を残すこととなります。



弁形成術(弁輪縫縮術)


 僧帽弁閉鎖不全症の内、弁尖および弁下部組織の性状が比較的保たれている場合には、逆流部分を修復することによる形成術が可能で、多くの場合僧帽弁輪縫縮を追加することにより遠隔成績が向上してきました。糸の縫合のみで拡大した弁輪を縫縮する方法(Suture Annuloplasty)と人工リングを弁輪に縫着し弁輪の形状を形成する方法(Ring Annuloplasty)があります。弁尖が破壊された場合には自己心膜を補填し弁を形成する場合もあります。



弁置換術 (MVR)


 僧帽弁狭窄症において著明な石灰化や線維化、高度な弁下部癒合を認める場合、もしくは閉鎖不全症において形成術が困難な場合には人工弁置換術(MVR)の適応となります。人工弁には機械弁と生体弁がありますが、場合により適切な方を選択することができます。

予後

 初回施行例における単独MVRの手術危険率は3-5%、形成術は2-3%で、他の弁膜症手術を合併した場合は手術の危険率が高くなる場合があります。予後は左心機能や肺高血圧の有無に依存しますが、MVRの場合は人工弁機能不全により、形成術の場合は逆流の再発により再手術が必要になる場合があります。

参考文献

1) 2000-2001年度合同研究班報告: 弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン. Circulation Jounal 2002;66(Suppl.IV):1261-1350

2) Bonow RO, Carabello BA, Kanu C, de Leon AC Jr, Faxon DP, Freed MD, Gaasch WH, Lytle BW, Nishimura RA, O'Gara PT, O'Rourke RA, Otto CM, Shah PM, Shanewise JS, Smith SC Jr, Jacobs AK, Adams CD, Anderson JL, Antman EM, Faxon DP, Fuster V, Halperin JL, Hiratzka LF, Hunt SA, Lytle BW, Nishimura R, Page RL, Riegel B. ACC/AHA 2006 guidelines for the management of patients with valvular heart disease: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (writing committee to revise the 1998 Guidelines for the Management of Patients With Valvular Heart Disease): developed in collaboration with the Society of Cardiovascular Anesthesiologists: endorsed by the Society for Cardiovascular Angiography and Interventions and the Society of Thoracic Surgeons. Circulation. 2006 Aug 1;114(5):e84-231

3) Ueda Y., Osada H., Osugi H. Thoracic and cardiovascular surgery in Japan during 2005: Annual report by theJapanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2007, 55:377-399

(MyMedより)推薦図書

1) 新井達太 編集:心臓外科,医学書院 2005

2) 南淵明宏 著、茨木保 イラスト:ナースのちから (CABG手術編),三輪書店 2006

3) 中村治雄 著、主婦の友社 編集:心臓病 (よくわかる最新医学),主婦の友社 2004
 

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