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最終更新日:2008.06.11

クラミジア感染症(くらみじあかんせんしょう)

執筆者: 織田 慶子

概要

クラミジアはグラム陰性の細胞内寄生菌で、ヒトに感染するものとしてはクラミジアトラコマテイス(Chlamydia trachomatis), 肺炎クラミジア (Chlamydia pneumoniae),オーム病クラミジア (Chlamydia psittaci)の3種類がある。C.trachomatisは母子感染が問題となり、産道を介し、新生児期の結膜炎、肺炎の原因となる。C.pneumoniaeは小児の肺炎、気管支炎、あるいは副鼻腔炎の原因となる。C.psittaciは鳥類より感染し、オーム病の原因となる。[表1]

病態生理

C.trachomatisは性感染症の原因菌の一つであり、母親の子宮頸管に感染した後、産道を介して児に感染する。妊婦での感染率は6-12%とされ、未治療で分娩した場合、結膜炎のリスクは25-50%, 肺炎のリスクは5-20%とされる。

C.pneumoniaeは飛沫感染を起こし、肺炎、気管支炎や咽頭炎、中耳炎、副鼻腔炎などの原因となる。家族内、あるいは施設内に流行を起こすことがある。年長児ほど気管支炎、肺炎の形態をとり、年少児は上気道感染となりやすい。感染者は無症状のものから軽症、中等症とさまざまな症状を取りうる。小児の下気道感染症の5-14%を占めるものとされる。気道感染以外にも多発性硬化症、動脈硬化、アルツハイマー病との関連が示唆されているが、はっきりとしたエビデンスはいまのところ示されていない。気管支喘息との関連では、喘息患者の鼻汁あるいは血清中に、本菌に特異的なIgE抗体が高率に検出されることが報告されており、本菌の持続感染により、気道過敏性を亢進させている可能性が示唆されている。

C.psittaciは罹患鳥の分泌物を吸入することによりオーム病と呼ばれる呼吸器感染症を起こす。本邦の愛玩用鳥類の30-50%がC.psittaciを保有しているとの報告がある。感染源はインコが最も多く、次いでオーム,ハトなどが多いとされる。最近鳥展示施設(松江、神戸)での集団発症が報告されている。哺乳類から感染することも知られており、ヘラジカの胎盤を扱った職員が感染した事例もある。

臨床症状

C.trachomatisによる新生児結膜炎は生後数日から数週間後に見られ、結膜充血、浮腫、膿性眼脂を認める。C.trachomatisによる肺炎は生後2-19週に発症するとされる。連続性の咳嗽、多呼吸、湿性肺副雑音などが認められるが、通常無熱である。胸部X線写真は肺胞病変と間質病変が混在した像を取るが、他の病原体との鑑別は困難である。

C.pneumoniaeはさまざまな呼吸器感染症を起こし(肺炎、気管支炎、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎など)、その程度も無症状から中等症まである。肺炎の場合、咳が遷延することが多い。主に乾性の咳で夜間に強いことが多い。胸部X線像はC.trachomatisと同様、肺胞病変と間質病変の混在した像をとる。

オーム病は,軽症型、全身型と肺炎型に分かれる。全身型は、高熱、全身倦怠感、筋肉痛などの敗血症様症状を呈し、呼吸器症状はあまり著明でない。肝機能異常や中枢神経症状などを伴うこともある。肺炎型は異型肺炎像をとり、時に血痰や胸痛を伴う。胸部X線像は肺門部から末梢へ楔形あるいは扇型に広がる陰影を呈することが多い。

検査成績

C.trachomatis, C.pneumoniae感染では白血球数、CRP値、赤沈値は概ね正常である。C.trachomatis感染ではしばしば好酸球増多を認める。C.psittaci感染ではしばしばCRP値の高値、赤沈値の亢進を認めるが、白血球数は正常のこともあり一定しない。 C.trachomatis感染の診断には咽頭、鼻腔からの抗原検査、あるいはIgM抗体の上昇が有用である。C.pneumoniae感染に関しては、鼻腔からの菌の分離は一部の施設において研究目的で行われているのみであり、抗体検査が主流となる。保険適応となっているのはヒタザイムC.ニュウモニエで、C.pneumoniae IgG, またはIgA抗体の有意な上昇によって診断可能である。しかし、小児、特に乳幼児では抗体の産生を認めないこともあり、感染例を全例把握することは難しい。また近年IgM抗体も保険収載されたが、IgM抗体陽性例を長期にフォローアップしてもIgG抗体が上昇しない場合や長期にIgM抗体を産生する症例もあり、臨床現場で混乱を招いている。肺炎クラミジア血清診断研究会の急性感染症診断基準案を表2に示す。[表2]

オーム病の診断は、鳥との接触歴の問診が重要である。血清診断は補体結合反応(CF)があるが、C.pneumoniae感染症でも初感染時にはCF抗体が上昇することを知っておくべきである。鳥もしくは患者からのC.psittaciの分離は特殊な施設でのみ可能である。

治療

クラミジア感染症の治療はマクロライド系抗菌薬の投与が中心となる。 C.trachomatis肺炎の患児にはエリスロマイシン30-50mg/kg/day,ロキタマイシン20-30mg/kg/day, クラリスロマイシン10-15mg/kg分2-3を10-14日間投与、またはアジスマイシン10mg/kg/day 分1を3日間投与する。結膜炎を合併しているときはエリスロマイシンやテトラサイクリン含有の点眼薬を併用する。

C.pneumoniae感染症ではエリスロマイシン、クラリスロマイシン10-14日間投与かアジスロマイシン3日間投与を行う。8歳以上ではテトラサイクリン系薬のミノサイクリン2-4mg/kg分2の投与も行われる。オーム病の治療にもマクロライド系、あるいはテトラサイクリン系薬が投与されるが、マクロライド系薬は治療効果にばらつきがあるとの報告もある。

予後

クラミジア感染症は オーム病をのぞき命にかかわることは稀である。しかし、クラミジアは自然に症状が改善しても適当な抗菌薬を投与しないと長期に渡り持続感染することが多いため、適切に診断して治療することが重要である。重症のオーム病では致死的になりうる。

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