胃腺腫 - MyMed 医療電子教科書

MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.11.26

胃腺腫(いせんしゅ)

執筆者: 市倉 隆

概要

 胃腺腫は通常隆起型を示す腫瘍性病変で、ポリープの一つとして分類されるが、まれに陥凹型の病変も存在する。過去にはIIa-subtype、異型上皮巣、ATPなどとも呼ばれていた。基本的には良性であるが、癌との鑑別あるいは癌の併存、また癌化リスクが臨床的に問題となる。

 病理組織像学的には異型性のある増殖腺管がみられ、生検標本の分類としてはGroup IIIと診断されるが、Group IIIと胃腺種は同一ではない。胃癌取扱い規約第13版の記載によると、胃生検のGroup IIIは「良性(非腫瘍性)と悪性の境界領域の病変」とされ、「細胞異型および構造異型の点で良性か悪性か鑑別が困難なもの」と説明されている。Group IIIには腺腫を中心として、再生異型(Group II)に近い病変から高分化管状腺癌(Group IV)に近い病変までが含まれることになる。

病因

 胃腺種の発生要因は明らかではないが、多くは萎縮性胃炎を背景にもつことからHelicobacter pyloriの関与も推測される。

病態生理

 胃腺種の多くは増大しないが癌化のポテンシャルを有し、癌化率は10%内外と報告されている。ただし、これが真の癌化であるのか、あるいは当初の生検診断が腺腫内癌の見逃しまたは高分化型腺癌の過小評価であったのかについては議論のあるところである。

 癌化のリスクとしては、表面が粗大結節状、大きさ≧16 mmあるいは経過中の増大、生検で高度異型成分の存在、等が挙げられる。陥凹型腺腫は癌化リスクが高いといわれるが、症例も少なく十分なエビデンスはない。免疫組織染色による形質を調べると、胃腺種では腸型を示すことが多く、胃型は少ないという特徴があり、癌の形質発現と異なっている。また完全腸型を示す腺腫は癌化リスクが低いという。胃上部にみられ胃底腺の幽門腺化生に関連して発生すると考えられる胃型(幽門腺型)腺腫では癌化ポテンシャルが高い可能性が示唆されている。

臨床症状

 自覚的にも他覚的にも、胃腺種による臨床症状がみられることはほとんどない。

検査成績

 胃腺種は通常、血液検査等の異常をきたす要因にはならない。

診断・鑑別診断

胃腺種の内視鏡診断


 胃腺種は褪色調ないし白色調の扁平な隆起性病変で、山田II型(6.2 参照)の肉眼形態を示すことが多い。表面は比較的平滑ないし粗大顆粒状(菊花状、表面結節状)、イモムシ状などの形態をとる。陥凹型の病変も5%程度存在するといわれる。 腺腫とは別の部位に胃癌を併存することもまれではなく、胃全体を注意深く観察する必要がある。

胃ポリープの鑑別診断


 胃粘膜上皮の異常増殖による隆起性病変をポリープと呼ぶ。肉眼所見の表現として山田の分類が用いられることが多い。

I型: 隆起の起始部がなだらかで明瞭な境界がみられない。
II型: 隆起の起始部に明瞭な境界がみられるが、くびれや茎をもたない。
III型: 隆起の起始部にくびれがあるが、茎は有さない(亜有茎性)。
IV型: 隆起の起始部にはっきりした茎を有する(有茎性)。

 ポリープの鑑別として腺腫の他に以下の病変がある。 
 過形成ポリープhyperplastic polypは、胃体部および幽門部の萎縮性粘膜を背景に発生する。表面発赤調のことが多く、形態は半球状、亜有茎性、有茎性など多彩である。頻度は少ないが癌化のポテンシャルを有する。 

 胃底腺ポリープfundic gland polypは胃底腺領域にみられ、周囲と同色調の比較的小さな無茎性または亜有茎性隆起を示す(山田II型またはIII型)。癌化はしないと考えられている。多発する場合は大腸腺腫症を念頭におく必要がある。 IIa型早期癌は腺腫に比べ、表面が粗い、顆粒の大きさが不揃い、発赤を伴う、易出血性、といった特徴を示すが、肉眼的鑑別は容易ではない。まれに存在する陥凹型の腺腫はIIc型早期癌と鑑別する必要がある。

生検診断

 
 胃腺腫の診断、とくに早期癌との鑑別には生検が必須である。生検による腺腫の診断の問題点として、腺腫内癌が見逃される場合がある、また分化度の高い癌を鑑別できない場合があることを考慮に入れなければならない。生検でGroup IIIと診断された病変の16~30%が切除後には癌と診断されたの報告がみられる。また生検で腺腫あるいはGroup IIIと診断された病変を経過観察すると、10~17%程度が癌と診断されたとも報告されている。

治療

 胃腺種あるいは生検でGroup IIIと診断された病変に対する方針として、経過観察を行っていくか、あるいは内視鏡的切除を行うかは議論のあるところである。10 mm以下、表面平滑、褪色調の病変で、生検で異型度が低ければ経過観察されることが多いようである。 経過観察する場合は、6ヶ月~1年に1回の間隔で内視鏡検査および生検を行う。肉眼的に悪性を疑う所見として、発赤調の変化、陥凹の存在、高い隆起、腫瘍径の増大あるいは≧20 mmなどに注意をはらう。

 肉眼的な悪性所見をともなわない腺腫内癌も少なくないこと、また前述のごとく生検診断に不確実性が残ることから、診断と治療を兼ねtotal biopsyとして積極的に内視鏡的切除を行う施設もある。内視鏡的切除の手技は近年飛躍的に進歩してきたが、合併症は皆無とはいえず、十分なinformed consentを要する。

予後

 腺腫の経過観察中に癌と診断された症例でも、癌は粘膜内にとどまっていることがほとんであり、適切な内視鏡的切除が行われれば予後は良好と考えられる。

最近の動向

 Helicobacter pyloriの除菌により胃腺腫が縮小あるいは消失したとの報告もみられるが、これに否定的な結果も報告されており、コンセンサスは得られていない。 内視鏡診断に拡大内視鏡あるいはnarrow band imaging (NBI)が用いられるようになり、胃腺種の診断にも有用との報告が散見される。 p53など分子生物学的なマーカーによる腺腫と癌の鑑別も試みられている。

(MyMedより)推薦図書

1) 幕内雅敏 監修、新井邦佳 編集:胃外科の要点と盲点 第2版,文光堂 (2009

2) 笹子三津留 著:胃・十二指腸 (みる・わかる・自信がつく!消化器外科手術ナビガイド),中山書店 2009

3) 跡見裕 編集:術式別 消化器外科術前術後 ケアの要点―イラストでらくらくわかる!,メディカ出版 2007
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷

診療科別


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: