MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.02.16

ダンピング症候群(だんぴんぐしょうこうぐん)

執筆者: 高金 明典

概要

 胃切除後症候群(postgastrectomy syndrome)のひとつで,胃切除後食事に関連してさまざまな血管運動性症状,腹部症状など機能障害をきたす症候群である.食後30分以内に起こる早期ダンピング症候群と食後2~3時間におこる晩期ダンピング症候群に分けられる.

病因

 胃切除後の食事内容,食事摂取方法等により種々の症状が出現するが,個人差も大きい。

病態生理

 早期ダンピング症候群の発生は,高張な食物が急速に小腸に入ることにより小腸への水分移動が生じ,急激な循環血漿量の減少が起こる.圧受容体刺激により末梢血管は拡張し,循環血漿量が減少するため血圧低下に伴う症状が出現する.また,上部空腸の伸展に対する反応として腸蠕動亢進や血管運動神経反射による症状が出現する.さらに空腸より消化管ホルモン(セロトニン,ヒスタミン,ブラジキニン,vasoactive intestinal polypeptide,ソマトスタチンなど)の過剰に放出による特有の症状が出現する.その他,ブドウ糖の吸収代謝による上腸間膜動脈血流量増加が,脳血流量の減少を引き起こすことにより症状が出現すると言われる.

 晩期ダンピング症候群は炭水化物を多く摂取したとき,または食事時間が短いために小腸から短時間に糖分が吸収され高血糖をきたす.これにより膵臓より反応性にインスリンの過剰分泌を引き起こすことになる.インスリン分泌はしばらく続き,これに拮抗するグルカゴン分泌が間に合わず食後2~3時間に低血糖による症状が出現する.

臨床症状

 早期ダンピング症候群の血管運動性症状は全身倦怠感,冷汗,動悸,息苦しさ,顔面蒼白,顔面紅潮,眠気,めまい,しびれ,頭重感,頭痛などで,腹部症状は下痢,悪心,嘔吐,腹痛,腹鳴,腹部膨満感などである.

 晩期ダンピング症候群では脱力感や無欲感が強く,一過性の意識消失を認める場合もある.冷汗,悪心,めまい,手指のふるえなど低血糖に基づく症状が出現する.

検査成績

 症状出現が頻回の場合は,食後血管作動性物質の血中濃度の上昇が認められる.晩期ダンピング症状発現時の血糖値は50mg/dl以下である.

診断・鑑別診断

 胃切除の有無,食事摂取量,食事時間,食事内容など詳細な問診により,上記症状の頻回発現との関連を認めれば確診となる.腸閉塞症,急性胃腸炎などとの鑑別が必要である.

治療

 早期ダンピング症候群の予防は一回の食事量を減らし,食事回数を増やす.ゆっくりよく噛むなどの食事指導により軽快することが多い.食事中の水分摂取は少量のみとする.また炭水化物の摂取量を減らし,高蛋白,高脂肪食を摂取することにより,十分なカロリ−補給とダンピング症候群の予防になる.これらは晩期ダンピング症候群の発生予防にもなる.

 外科的治療では幽門保存胃切除術や空腸(嚢)間置術等を選択することにより,食事の小腸への急速な流入を軽減しダンピング症候群の予防に有効とされる.

 薬物治療では抗ヒスタミン薬,抗セロトニン薬,抗コリン薬,自律神経機能調整薬などが有効なこともある.

 晩期ダンピング症候群の予防として食事療法の他に食後2時間頃に糖分を摂取する方法もある.症状出現時は安静にし,経口または経静脈的に糖分を投与することで軽快する.

予後

 食事摂取方法に起因することが多く,ダンピング症候群のメカニズムを理解し予防することにより良好な結果が得られることが多い.

執筆者による主な図書

1) 幕内雅敏 監修,荒井邦佳 編集:Knack & Pitfalls 胃外科の要点と盲点 第2版,文光堂,東京,2009年

2) 武藤徹一郎・幕内雅敏 監修:新臨床外科学 第4版,医学書院,東京,2006年

3) 東口髙志 編:NSTハンドブック 疾患・病態別の栄養管理,医薬ジャーナル社,大阪,2008年

4) 久保田哲朗・大村健二 編集:消化器癌化学療法,南山堂,東京,2009年

5) 胃癌術後評価を考えるワーキンググループ・胃外科・術後障害研究会 編集:胃癌術式と胃術後障害 そのコンセンサスの現状と解説,ヴァン メディカル,東京,2009年

執筆者による推薦図書

1) 高瀬浩造・阿部俊子 編集:エビデンスに基づくクリニカルパス,医学書院,東京,2004年

2) 内富庸介・藤森麻衣子 編集:がん医療におけるコミュニケーション・スキル,医学書院,東京,2007年

3) Jurgen Thorwald 著,小川道雄 訳:外科医の世紀 近代医学のあけぼの,へるす出版,東京,2007年

4) 財団法人先端医療振興財団・臨床研究情報センター 監修:患者・家族のためのがん緩和ケアマニュアル,日経メディカル開発,東京,2009年

5) 竹末芳生 編集:手術部位感染(SSI)対策の実践,医薬ジャ-ナル社,大阪,2005年

(MyMedより)その他推薦図書

1) 遠藤健 著:がんを切って生きる―日赤医療センターがん手術現場,音羽出版 2007

2) 平岩正樹 著:胃癌 あなたの癌治療の不安に答える,海竜社 2005

3) 中川恵一 著:がんのひみつ,朝日出版社 2008

4) 中屋豊 著:図解入門 よくわかる栄養学の基本としくみ (メディカルサイエンスシリーズ),秀和システム 2009

5) 香川 芳子 監修:胃手術後の人の朝・昼・夕献立カレンダー,女子栄養大学出版部 改訂新版 2003

6) 井清司 著:救急外来腹部診療スキルアップ CBRレジデント・スキルアップシリーズ (9),シービーアール 初版 2006

7) 日経サイエンス編集部 編纂:がんを知り、がんを治す―研究最前線と新薬開発 別冊日経サイエンス 160,日経サイエンス 2008

8) 澤田康文 著:標準医療薬学臨床薬物動態学,医学書院 2009

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: