クループ症候群 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

クループ症候群(くるーぷしょうこうぐん)

croup syndrome

執筆者: 生井 良幸

概要

 喉頭ないしその周辺の粘膜の炎症性腫脹による気道狭窄によって生じる犬吠様(けんばいよう)の咳嗽・吸気性喘鳴、嗄声、陥没呼吸を主な症状とする急性疾患である。夜間に増悪することが多く、真性クループ(喉頭ジフテリア)と仮性クループに分けられる。現在わが国ではDPTワクチン接種の普及により後者によるものが大部分であるので、後者を単にクループまたはクループ症候群と呼んでいる。クループ症候群は、大きく感染性クループ(ウイルス性の急性喉頭気管炎、細菌性の急性喉頭蓋炎)と非感染性クループ(血管運動性浮腫、痙性クループ)に分類される。クループ患児のほとんどが3ヶ月~5歳の小児で、生後2年以内の小児に最も多い。クループの発症率は男児に高く、一般に冬期の発生が多いが、年間を通して発生する。再発は3~6歳までの小児に多いが、気道の発育・成長に伴い減少する。本項では主として感染性クループについて解説する。

病因

 急性感染に伴うほとんどのクループは、ウイルス感染が病因である。例外はジフテリア、細菌性気管炎、喉頭蓋炎である。パラインフルエンザウイルス(1,2,3型)は、クループの約75%の原因であり、その他の起因ウイルスには、A型・B型インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルスがある。A型インフルエンザウイルスは、重篤な喉頭気管気管支炎を引き起こす。肺炎マイコプラズマは、まれにクループの小児から分離され、軽症の疾患を引き起こす。急性喉頭蓋炎ではb型インフルエンザ菌が原因となることが多い。

病態生理

 声門下部の炎症性腫脹により気道の閉塞が起こる。その病態として、乳幼児期の声門下部の生理学的狭窄の影響や気道粘膜の未発達から生じる粘膜浮腫の亢進性が考えられている。 細菌性クループである急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋を含む声門上部の炎症性腫脹を主とした疾患で、前駆症状なく急速に重篤化する。

臨床症状

 ウイルス性クループでは、3ヶ月~3歳に好発し、1歳にピークがある。発症は比較的緩徐で、鼻の違和感や鼻汁、鼻閉で始まり典型例では24~48時間以内に38~40℃の発熱、犬吠様咳嗽、喘鳴、吸気性呼吸困難などの上気道閉塞症状が加わってくる。症状が進行すると顔面蒼白、チアノーゼ、さらには意識障害が見られる。また、発熱のない小児もいる。特徴として症状は夜間に悪化し、数日の間再燃する場合が多いが、次第に改善し、1週間以内に完全に消失する。興奮したり泣いたりすると、症状・徴候は非常に悪化する。小児はベッドの中で座るか、まっすぐな姿勢で抱かれるのを好む傾向がある。通常、年長児では重篤にならないことが多い。家族内の他者が、軽い上気道炎に罹患することがある。ほとんどのクループ患児は、stridorや軽い呼吸困難を示す程度で回復する。

 急性喉頭蓋炎の好発年齢は2~6歳と比較的高年齢である。急性喉頭蓋炎の半数以上の症例では先行する上気道炎がなく、突然38℃以上の高熱と咽頭痛で発症する。嚥下困難、流涎、呼吸困難、窒息感を訴え不穏状態になる。症状は急速進行性で24時間以内に気道閉塞症状をきたす。

検査成績

 クループの診断は臨床的なものであり、頚部X線写真は必ずしも必要ではない。頚部X線写真では、前後撮影でクループに典型的とされる声門下の狭窄またはsteeple signが見られることがある。また、X線所見は疾患の重症度と相関するわけではない。X線写真は症状・経過が典型的でない小児に対して、気道管理を確保した後にのみ撮影すべきである。X線写真は重篤な喉頭気管気管支炎と喉頭蓋炎との鑑別に有用であるが、気道の管理を常に優先する。ほとんどがウイルスによるため、炎症反応は軽度であることが多い。白血球数の著しい増加やCRPの高値がみられれば、混合感染または急性喉頭蓋炎を考える。

診断・鑑別診断

 ウイルス性クループは吸気性喘鳴、嗄声、犬吠様咳嗽などの症状から比較的容易に推測される。ウイルス性クループでは側面のX線写真で気管透亮像の狭小化と下咽頭腔の拡張を認める。

 急性喉頭蓋炎では高熱、咽頭痛、吸気性喘鳴、呼吸困難がみられ、喉頭部側面のX線写真で喉頭蓋の球状の腫脹と閉塞を認める。舌圧子の使用や口腔内吸引、また喉頭X線写真撮影時など、外的刺激によっても気道閉塞は容易に進行し呼吸停止に至る場合があるため、本疾患を疑ったら不必要に泣かせたり興奮させたりしないように心がけることが重要である。

鑑別診断として細菌性気管炎、異物誤嚥、アナフィラキシ-などがある。

治療

 クループ小児の治療の中心は、気道の管理である。呼吸窮迫症状の治療をいかなる検査よりも優先する。

 わが国において、クループ治療のスタンダードはいまだ確立されていない。治療にあたり、重症度を的確に判断すること、急速進行性の急性喉頭蓋炎とそれ以外の疾患とを鑑別することが重要である。

 来院時、嗄声、犬吠様咳嗽があるのみで呼吸困難が軽度の場合や、すでに症状のピークが過ぎていると考えられる場合は外来で処置する。呼吸器症状は夜間、悪化する傾向にあることや、致死的となりうる疾患であることなど、家族に十分な説明をしたうえで帰宅させる。呼吸困難が強い場合は入院治療は不可避であるが、判断に迷う場合も入院治療に踏み切るべきである。このさい、動脈血酸素飽和度を測定し、重症度の評価を行うことが重要である。呼吸困難の強い例では血液ガス検査も行い、アシドーシスの評価を行う。

外来での処置

エピネフリン吸入:

1000倍エピネフリン(ボスミン®)を、乳幼児では0.1~0.2ml、学童では0.2~0.3mlを、2~5mlの生理食塩水にて希釈し、ネブライザーにて吸入させる。劇的な効果が見られることが多いが、作用時間は2~3時間と短く、効果消失とともに呼吸困難が再発するため注意を要する。

ステロイドの投与:

副腎皮質ステロイドは、抗炎症作用により喉頭粘膜の浮腫を軽減させる。ステロイドは、入院回数の減少、入院期間の短縮、エピネフリン投与などの治療の必要性を減少させる点で有用であることが証明されている。デキサメサゾン0.15~0.6mg/kgの単回投与で有効であるという報告がある。

入院での処置

加湿、酸素投与:

ネブライザーを用いて生理食塩水を霧化し、フェイスマスクまたはヘッドボックス、酸素テント内で、気道に十分な加湿を行う。軽症例では加湿のみで改善する場合がある。呼吸困難を伴う場合は、フェイスマスクまたは酸素テントを用いて酸素投与を行う。酸素飽和度を観察し、SpO2ga95%以上を保つように酸素投与量を調整する。

輸液療法:

輸液療法は、静脈の確保や発熱、多呼吸、呼吸困難に伴う水分喪失、摂食不可の面からも重要である。

エピネフリン吸入、ステロイド投与:

エピネフリンの吸入量は外来治療に準ずるが、入院後、定期的に吸入させることが可能である。ステロイド薬はデキサメサゾンの静注が有効である。

気管挿管、気管切開:

頻度としては少ないが、チアノーゼ、高CO2血症、意識障害を伴う場合は気道確保のため、気管挿管を行うべきである。挿管が困難な場合には気管切開を行う。

急性喉頭蓋炎

 全例、入院治療を原則とする。気管挿管は熟練した医師が行うが、挿管困難や呼吸停止の事態を想定し、複数の医師の協力による監視体制の下、施行すべきである。挿管が困難な場合には気管切開を行う必要があるため、手術室やICUで行うことが安全である。抗菌薬の投与は速やかに行うが、近年インフルエンザ菌のペニシリン耐性化が進んでいるため、第3世代セフェム系抗菌薬(CTX、100~200mg/kg/日、分3~4、静注)を第一選択として用いることが多い。

予後

ウイルス性クループでは、呼吸困難をきたす期間は数日であることが多く、声門下狭窄は、本来、可逆的である。急性喉頭蓋炎では急性期の治療が重要で、治療開始が早期であれば予後は良い。急激な低酸素血症による脳障害や敗血症による臓器不全を伴う例では、予後はこれらの合併症に左右される。

参考文献

1)Nelson Textbook of Pediatrics、17th、W B Saunders Co 1436-1440

2)Geehoed GC,Turner J,Macdonald WB :Efficacy of a small single dose of oral dexsamethasone for outpatient croup: A double blind placebo controlled trial. BMJ 1996;313:140-42

(MyMedより)推薦図書

1) 清益功浩 著:咳事典 咳を科学する-その咳、大丈夫?危険!-,医薬経済社 2010

2) 山中克郎・北啓一朗・藤田芳郎 著:救急・総合診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ 10),シービーアール 2007

3) トニー ハート 著、Tony Hart 原著、中込治 翻訳:恐怖の病原体図鑑―ウイルス・細菌・真菌(カビ) 完全ビジュアルガイド,西村書店 2006
 

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