新生児低Ca血症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.19

新生児低Ca血症(しんせいじていかるしうむけっしょう)

neonatal hypocalcemia

執筆者: 安井 孝二郎

概要

 新生児低Ca血症は発症に2つのpeakがある。早期に起こるもののほとんどは外部(子宮外)環境への適応途中の生理的なCa低下の増強である。これは出生体重や在胎週数、あるいは分娩前後の児の内部・外部環境により様々な修飾を受け、発症の程度は一定しないが適切な管理で一過性に軽快する。一方で5-7日以降に発症するものは一次性または二次性副甲状腺機能低下症を示唆する。 

病因

子宮内で


 血清Caは胎盤における能動輸送active transportにより胎児の方が母体より高く調節されている。third trimester(29週から40週)では100~150mg/kg/dayの速度で胎児に蓄積し、この期間におけるCa総蓄積量は全胎児期の約80%に相当する。骨の重要な構成成分でありCaの生理機能とも深い関係を持つPも、Caと同様に経胎盤的に能動輸送を受け胎児側の方が優位に管理されている。この時期の胎児血液中のPTHは極端に低く、カルシトニンは高値の傾向がある。PTHもカルシトニンも共に胎盤は通過しないため、胎児自らがCaの貯蔵に励んでいると考えられる。

出生後


 出生直後にはまず新生児のカルシトニンが上昇し12-24時間後にピークを示し、その後漸減する。血清Caはカルシトニンの作用を受け減少する。血清Caの減少に対応して次にPTHが生後数時間から徐々に上昇するが、低出生体重児ではこの上昇速度は遅くなり、Caの上昇に影響する。また、分娩と同時に胎盤からのCaの供給が途絶えることによりCaの出納は一時的にマイナスになる。
 一方で出生と同時にPも供給が中断されるが、Caと異なり分娩後の組織グリコーゲンの分解や尿中のP排泄が少ないことなどにより生後数日は高値で推移する。体内のCaの99%は骨組織中に蓄積され残りの1%が細胞外液と細胞内液に存在している。

 細胞外液中の血清Caは
1.イオン化Ca(約50%)
2.蛋白結合型Ca(80%がアルブミン、20%はグロブリン)
3.複合型Ca(炭酸イオン・リン酸イオン・クエン酸イオンなど陰イオンとの結合)

の3つの分画に分けられる。この中で生物学的活性を持つイオン化CaはpH依存性にアルブミンと結合する。pHが下がると水素イオンがアルブミンと競合してイオン化Caが増加し、pHが上がると逆にイオン化Caは減少する。また、血清Pとイオン化Caの値が逆相関することはよく知られている。
 

出生後のCaのin-out 


 乳児期のCa必要量は尿や皮膚などの喪失分(40mg)と骨の発育や蓄積に使用される分(145mg)の和(185mg)である。Caの消化管からの吸収率は母乳で60%、人工乳で40-50%とされており、200mgのCaを得るためには母乳中Caでは約330ml、人工乳では400-500mlの哺乳が必要になる。Pの必要量は100-150mgとされるが腸管からの吸収はよく、通常の哺乳量で不足することはないと考えられる。

 しかし、胎盤からの供給が中断した出生直後からのこの量の哺乳は母乳であっても現実的にはほぼ不可能である(母乳分泌も軌道に乗るのは通常一週間以上経過した後である)。また正期産児であっても体内の総Caは成人の半分の10g/kgであり、早産児の貯蔵量は胎盤からの供給・貯蔵が十分でないままに出産を迎えるため非常に低値となる。

病態生理

 以上より出生後数日間は生理的に低Ca傾向にあるといえる。このような胎児-新生児期のCa代謝の特殊性と、早産児、特に極低出生体重児の経腸・経管栄養の確立・外部環境への適応にかかる時間、他の基礎疾患・合併症の臨床経過などにより低Caのベクトルが想定される。

臨床症状

 低Ca血症の主な所見は検査上のものであり、ほとんどが無症候性である。哺乳力低下、嘔吐、不機嫌、嗜眠、無呼吸、甲高い泣き声、易刺激性などの非特異的症状を認めることもあり、さらに低Caが進行すると痙攣が見られることがある。

検査成績

診断


 リスク因子や経過から本症が疑われた際には生化学検査を行う。評価のためにはイオン化Ca、血清アルブミン、P濃度の測定を行う。

低Ca血症の定義


a. イオン化Ca濃度で0.75~0.875mmol/l以下
b. 血清Ca濃度で成熟児8mg/dl(4mEq/l)以下、低出生体重児7mg/dl(3.5mEq/l)以下

とされるが、実際の臨床の場では低出生体重児、早産児、血圧の不安定な児、低血糖の児などで維持輸液を行っている場合、イオン化Ca1.0mmol/l以上を目標に管理することが多い。

治療

 治療の目標は低Caを改善し、痙攣や無呼吸などの合併症のリスクを回避することである。

予後

 適切な管理を行えば予後は良好と考えられる。

参考文献

NICUマニュアル第3版 新生児医療連絡会 編

(MyMedより)推薦図書

1) 新生児医療連絡会 編集:NICUマニュアル,金原出版 2007

2) 田村正徳 監修:日本版救急蘇生ガイドラインに基づく新生児蘇生法テキスト,メジカルビュー社 2007

3) 仁志田 博司 著:新生児学入門,医学書院 2003
 

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