多発性神経炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.19

多発性神経炎(たはつせいしんけいえん)

執筆者: 高橋 寛

概要

 2ヶ月以上にわたる慢性に進行する運動・感覚障害を呈する脱髄性の多発ニューロパチーである。対称性に運動、感覚が侵される多発性根神経炎で、上下肢の遠位部または近位部に脱力と感覚障害が起こる。発症年齢は幼児から70歳代まで広く分布し、男女比は1.5〜3:1で男性に多い。(多発性神経炎と呼ばれる代表疾患には、ギランバレー症候群と慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)があるが、前者については別項にゆずり、ここではCIDPに関して記載する。) 

病因

 末梢神経の髄梢構成成分に対する自己免疫によって脱髄が起こるために発症すると考えられているが、原因はまだ解明されていない。症例によって経過や治療への反応性に差があることから、不均一な病因の疾患を包括した症候群だと考えられている。

病態生理

 上記(病因)の項参照。

臨床症状

 発症は急性、亜急性、慢性のいずれもある。小児では先行感染や発症前の予防接種歴を認める例がある。四肢の筋力低下はほとんどの症例で認められ、初期には異常知覚をしばしば伴う。表在感覚の低下は軽度のことが多い。通常振動覚、関節位置覚などの深部知覚も障害される。症状の多くは左右対称性であるが、非対称の場合も多く、特に病初期には注意が必要である。筋力低下は遠位、近位ともに認める。腱反射は低下あるいは消失。脳神経麻痺の頻度は低いが、複視などを認めることがある。呼吸筋障害や自律神経障害はまれである。経過が長い例では廃用性筋萎縮や神経原性筋萎縮をきたすことがある。凹足のみられる症例もある。階段状進行または寛解再発を繰り返す例もある。

検査成績

 検査・診断の進め方としては1996年厚生省ポリニューロパチー研究班の診断基準(別表)を参考に検査・診断を進める。髄液での蛋白細胞解離が半数以上で見られる。血清抗ガングリオシド抗体が陽性を示す例があるが、ギランバレー症候群に比し少ない。補助診断上重要なのは神経伝導検査による脱髄の確認である。末梢神経生検でも脱髄が確認できるが、侵襲が大きいため小児では行わないことが多い。緩徐に増大する脊髄腫瘍や膿瘍などでも、運動・感覚障害が慢性に進行することがあり、脊髄レベルに応じた症状分布が認められる際は、脊髄MRIを施行して鑑別する必要がある。急性に発症する場合は、病初期にはギランバレー症候群と鑑別不能であることがあり、注意深い経過観察の末、数ヶ月後にCIDPの診断に至ることもありえる。

診断・鑑別診断


治療

 免疫異常をターゲットとした薬物療法が主体。治療効果は神経伝導速度や髄液蛋白量が参考になるが、臨床症状、理学所見を重視する。また必要に応じてリハビリテーションも行う。

① ガンマグロブリン大量療法 
 現在は第一選択とされ、保険適応も認められた製剤を用いる。半数以上で有効で、10日までに効果出現。半減期を考慮し、3週間後に再投与する。

② 副腎皮質ステロイド内服 
 小児では成人よりも反応が良好といわれているが、長期投与による副作用が問題。効果発現に時間を要す。ガンマグロブリン療法不応例、奏功後の再発予防に使用することもある。

③ メチルプレドニゾロン・パルス療法  
 重症例、急性増悪期、ステロイド内服不応例に施行。施行後経口ステロイドに移行しても良い。

④ 血漿交換療法 
 上記治療に抵抗性の場合行う。

⑤    免疫抑制剤 
 確立したものはないが、上記標準的治療に抵抗性の場合、アザチオプリン、シクロフォスファミド、シクロスポリンを用いることがある。  

予後

 慢性の経過をたどり、再発を反復する例も多い。治療への反応性は通常良好であるが、薬物の長期投与が必要なことも多い。治療法の選択、投与方法等については、その長短をご家族に説明した上で選択していく必要がある。

最近の動向


参考文献

1) 五十嵐隆 編:小児疾患診療マニュアル,中外医学社 2005
 
2) Kenneth F.Swaimann,et al; Pediatric Neurology:Principles&Practice 4th edition  Elsevier;2006   

(MyMedより)推薦図書

1) ジョン ガーウッド・アマンダ ベネット 著, John Garwood・Bennett Amanda 原著、青木玲 翻訳、山田真 監修:小児科へ行く前に―子どもの症状の見分け方,ジャパンマシニスト社 2000

2) 山城雄一郎:新小児科学 (Qシリーズ),日本医事新報社 2005

3) 吉開泰信 編集:ウイルス・細菌と感染症がわかる (わかる実験医学シリーズ),羊土社 2003
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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