細菌性髄膜炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.10

細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)

Bacterial meningitis

執筆者: 小林 茂俊

概要

 細菌性髄膜炎は細菌感染による髄膜炎の総称である。重篤な疾患であり、抗菌薬療法の発達した現代にあっても侮りがたく、早期の適切な治療が必要である。5歳未満に多く全体の約半数以上を占め、それ以降の年齢では比較的少ない。未治療であればほぼ100%死亡する。治療しても死亡率は5~20%、後遺症が30%に残る。 

病因

 起因菌は年齢によって異なる。生後3ヶ月まではB群連鎖球菌や、大腸菌などの腸内細菌が多い。それ以降はインフルエンザ菌、肺炎球菌が増加する。乳児期後半まではリステリア菌も考慮する。髄膜炎菌はより年長児に多い。全体としてはインフルエンザ菌b型が約60%、肺炎球菌が20%と、両者で80%を占める。

病態生理

 細菌がくも膜、軟膜に進入し炎症を起こしたものが細菌性髄膜炎である。原因菌は咽頭炎、中耳炎、副鼻腔炎などの頭蓋に近接した感染巣から侵入し、血行性に髄膜に到達するとされている。その他、新生児のB群レンサ球菌感染症の場合は産道感染、リステリア菌の場合は腸管からの侵入が考えられる。カテーテルを挿入している場合や脳室シャントの術後などには、皮膚表面に存在するブドウ球菌などが侵入して感染を起こすこともある。

臨床症状

自覚症状

 多くは発熱、嘔吐、頭痛などの症状を示し、進行すると痙攣、意識障害が出現する。敗血症の形をとる場合、急速に進行する場合もある。特に乳児では症状が不明確な場合があり注意を要する。哺乳の低下、弱い啼泣、活動性の低下など「not doing well」の状態がある場合は髄膜炎を常に念頭におく。

他覚症状

 他覚所見としては項部硬直、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状、乳児では大泉門膨隆が認められる。髄膜刺激症状は、年少児や脱水のある時などに不明瞭なこともあるので注意が必要である。

検査成績

 髄液検査が最も重要な検査である。脳ヘルニアの危険性の除外、その他の疾患の除外のため、検査前に頭部CT検査を行う。髄液細胞数は5/mm3以下(新生児は30/mm3以下)が正常で、通常単核球である。細菌性髄膜炎では主に多核球優位(通常80~95%)の細胞数の増加が見られる。頻度は低いが単核球優位の場合もある。ウイルス性髄膜炎に比して細胞数の増加は高度で、時には数万/mm3にも及ぶ。検査時に明らかに髄液が白濁している場合もある。また髄液糖の低下(同時に測定した血糖値の40%以下)、蛋白の増加(正常では50mg/dl以下)が認められる。起因菌の同定も同様に重要である。容易に、迅速に行える方法としてグラム染色は意義が高い。ただし、抗生物質が先行して使用されている場合などは菌数が減少している場合もあることに注意する。菌体の可溶性抗原を検出するキットが便利であり、これも行いたい検査である。抗生剤治療が先行する場合でも検出できる。ただし、偽陰性も少なくないので、最終的には他の検査とあわせて判断する。起因菌の確定は髄液培養検査で行う。髄液培養は髄膜炎の診断・治療に必須な検査である。抗生物質が先行していても必ず試みる。敗血症をきたしていることが多いので血液培養も同時に行うとよい。その他、血液検査では細菌による高度な炎症の結果として白血球数の増加、左方移動、CRPの上昇などがみられる。

診断・鑑別診断

 上記の症状、検査から診断する。実際には、細菌性か無菌性か迷う場合も少なくない。症状および髄液細胞数、分画、髄液糖などの数値から総合的に判断するべきだが、どちらか判然としない時は、ひとまず細菌性の治療に準じて治療をスタートするべきであろう。小児科領域で頻度の高い熱性痙攣との鑑別は重要である。熱性痙攣と診断されたが、実は髄膜炎だったという場合もあるので注意を要する。痙攣重積(15分以上の長い痙攣)の場合、痙攣が複数回である場合、痙攣後に意識状態が正常に戻らない場合、全身状態の悪化が認められる場合などは、髄膜炎を疑う。

治療

治療の原則

 基本的には、検出された菌の種類と抗生物質の感受性を参考に治療薬を選択するが、実際には菌が判明しないうちに治療をスタートする場合が多い。その際には、患者の年齢、基礎疾患などの背景、髄液への薬剤の移行性、耐性菌の動向などを考慮しつつ、抗生物質を選択する。起因菌が判明した後には、その感受性に応じて抗生物質を変更する。表に各抗菌剤の使用量と使用方法をまとめた。
 



 翌日に髄液中から菌が消失すれば著効だが72時間以上陰性化しなければ変更が必要である。投与期間は一般的に10~14日程度である。大腸菌などの腸内細菌、リステリアの場合は14~21日といった長めの投与が必要とされる。状態の改善、髄液糖の正常化(通常4日以内に正常化)、髄液中の菌の消失、CRPの陰性化などを指標にする。合併症がなければCRP陰性化後1週間というのも一つのめやすである。髄液細胞数は通常7~10日で100個以下になるが改善が遅れる場合もある。10日以上の発熱はdrug fever、硬膜下水腫、膿瘍などの合併症を考える。

治療の実際

起因菌判定前、起因菌不明な場合

 3ヶ月未満の場合はGBSと腸内細菌をターゲットにアンピシリン(ABPC)+セフォタキシム(CTX) またはセフトリアキソン(CTRX)の2剤を使用する。肺炎球菌やインフルエンザ菌が起因菌として増えてくる3ヶ月以降はパニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP)またはメロペネム(MEPM)+CTXまたはセフトリアキソン(CTRX)の併用がよい。

インフルエンザ菌

 β‐ラクタマーゼ産生(BLPAR)、β‐ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)、β‐ラクタマーゼ産生アンピシリン/クラブラン酸耐性(BLPACR)などの耐性菌が増加しており、CTX、CTRX、MEPMを使用する。

肺炎球菌

 ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)が増加しており、PAPM/BPを使用する。感受性試験でMICが0.1μg/ml以下であればABPCに変更する。バンコマイシン(VCM)が必要となる場合もある。

GBS

 ABPCを使用する。

大腸菌

 CTXまたはCTRXを使用する。

リステリア菌

 ABPCを使用する。セフェム系は効果がない。

髄膜炎菌

 ABPCを使用する。

その他の治療

デキサメダゾン

 神経学的後遺症の予防効果が期待できる。0.15mg/kgを1日4回、2日間または4日間使用する。2日間と4日間とは効果が同等であったという報告もある。使用終了後に発熱やCRPの再上昇がみられることがあり注意深く観察する。

支持療法

 基本的には重症感染症であり、敗血症と同等に考え、循環、呼吸の管理が必要である。脳圧亢進症状に対しては、グリセオール0.5~1g/kgまたはマンニトール0.5~1g/kgを30分で点滴静注する。輸液は電解質、脳圧亢進症状をチェックしつつ、脳圧降下薬や抗生物質などの量も含めて維持量の80%程度にする。また抗けいれん薬を投与する。脳圧が亢進している状態でステロイドを投与するので潰瘍の発生にも注意する必要があり、H1ブロッカーを投与する。

予後

 前述したように、未治療であればほぼ100%死亡する。治療しても死亡率は5~20%、後遺症が30%に残る。治療後も神経専門医のフォローアップが必要である。

(MyMedより)推薦図書

1) 日本神経感染症学会・日本神経治療学会・日本神経学会 監修、細菌性髄膜炎の診療ガイドライン作成委員会 編集:細菌性髄膜炎の診療ガイドライン,医学書院 2007

2) Karen L. Roos 著、湯浅龍彦 翻訳:髄膜炎の100章 (神経学の100章シリーズ),西村書店 2003

3) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004
 

免責事項

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