進行性骨化性線維異形成症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

進行性骨化性線維異形成症(しんこうせいこっかせいせんいいけいせいしょう)

fibrodysplasia ossificans progressiva

別名: 進行性骨化性筋炎 | myositis ossificans progressiva

執筆者: 芳賀 信彦

概要

 進行性骨化性線維異形成症[Fibrodysplasia ossificans progressiva: FOP]は、小児期から全身の骨格筋や筋膜、腱、靭帯などの線維性組織が進行性に骨化し、このために四肢関節の可動域低下や強直、体幹の可動性低下や変形を生じる疾患である。先天性の母趾形態異常を伴うという特徴がある。有病率は200万人に1人とされている。

病因

 家系例の検索から本疾患は常染色体優性遺伝形式を取るとされている。BMP type Iの受容体であるACVR1の遺伝子変異(617G>A; R206H)が原因であり、日本人の罹患者でもこの変異が確認されている。この遺伝子変異が本疾患における進行性異所性骨化をはじめとした症状にどうつながるかは分かっていない。

臨床症状

自覚症状


 本疾患の主症状である異所性骨化は、乳児期から学童期にかけて初発することが多く、皮下軟部組織に腫脹や腫瘤を生じ、時に熱感や疼痛を伴うことがある(flare-upと呼ぶ)。これが消退を繰り返しながら骨化が進行し、四肢では関節の拘縮、強直、体幹では可動性低下や変形につながる(図1)。骨化は体幹(傍脊柱や項頚部)や肩甲帯、股関節周囲から始まり、徐々に末梢へ進行する傾向があり、移動能力は進行性に低下する。胸郭の軟部組織や咀嚼に関係する組織にも可動性の低下や骨化を生じ、呼吸障害、開口制限につながる。外傷や医療的介入(筋肉注射や手術など)が誘因となることもある。平滑筋と心筋には骨化を生じないとされている。

 異所性骨化以外の自覚症状として、聴力障害を伴うことがある。


(図1)

他覚症状


 異所性骨化は多くの場合、皮下軟部組織の硬結として触れる。

 異所性骨化以外の症状として、母趾の形態異常(外反を伴う短趾が多い、図2)、母指の短縮、小指の弯曲、長管骨骨幹端部(特に脛骨近位内側)の外骨腫、禿頭などが知られている。


(図2)

診断・鑑別診断

 進行性の異所性骨化と母趾の変形から診断は可能である。X線検査で大腿骨頚部が太く短いことがある。異所性骨化は筋肉、靭帯などの走行に沿い、関節をまたぐ。脛骨近位などの骨幹端部に外骨腫を伴う。脊柱は異所性骨化に伴い変形することがある。頚椎の椎間関節は先天的に癒合している。

 本疾患の診断がつかない場合、flare-upの状態で悪性腫瘍が疑われることがある。また小児に異所性骨化や石灰化を生じる疾患として、進行性骨性異形成症(Progressive osseous heteroplasia)、Albright遺伝性骨異栄養症(Albright hereditary osteodystrophy)がある。

治療

 現時点で本疾患に対して有効性が証明された治療法はない。Flare-upを生じた際に骨化への進行を防ぐために様々な薬剤が試みられているが、明らかな有効性が確認されたものはない。ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ビスフォスフォネートなどが使用されている。 Flare-upを予防するためには、外傷を避ける必要がある。特に転倒、転落はflare-upだけでなく、受身の姿勢を取れずに頭部外傷などにつながるので特に注意する。筋肉内注射は避けるべきであるが、皮下注射や静脈注射は問題がないといわれている。インフルエンザやインフルエンザ様のウイルス感染もflare-upの危険因子とされている。

予後

 呼吸障害と栄養障害が生命予後に関与するとされているが、50歳代~70歳代の生存者も確認されている。

執筆者による主な図書

1) 五十嵐隆、編集(芳賀信彦、共著):目でみる小児救急,文光堂

2) 藤井敏男、編集(芳賀信彦、共著):小児整形外科の要点と盲点,文光堂

3) 越智隆弘、総編集、藤井敏男、中村耕三、専門編集(芳賀信彦、共著):最新整形外科学大系 24巻 小児の運動器疾患,中山書店

4) 日本整形外科学会小児整形外科委員会編集(芳賀信彦、共著):骨系統疾患マニュアル、第2版,南江堂

5) 越智隆弘、総編集、中村利孝、吉川秀樹、専門編集(芳賀信彦、共著):最新整形外科学大系 21巻 骨系統疾患、代謝性骨疾患,中山書店
 

執筆者による推薦図書

1) Spranger JW, et al:Bone Dysplasias, 2nd ed,Oxford

2) Morrissy RT, Weinstein SL:Lovell and Winter’s Pediatric Orthopaedics,Lippincott

3) Herring JA:Tachidjian’s Pediatric Orthopaedics, 4th ed,Saunders

(MyMedより)その他推薦図書

日本小児整形外科学会教育研修委員会 編集:小児整形外科テキスト,メジカルビュー社 2004

免責事項

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