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最終更新日:2011.07.05

発達障害(はったつしょうがい)

Developmental Disabilities

執筆者: 平岩 幹男

概要

発達障害

1.発達障害とは

「発達」という言葉も「障害」という言葉も、昔からある表現ですが、これら2つの単語を組み合わせて「発達障害」という表現になると、とたんにわかりにくくなります。 最近話題になっている発達障害は、あとで触れます発達障害者支援法にもありますように、自閉症や注意欠陥多動性障害(Attention Deficit/ Hyperactivity Disorder: ADHD)、学習障害などを含む一群の障害として定義づけられています。英語では「developmental disability」と表現しますが、当初は主として知的障害者、あるいはそれに類する障害を「発達障害」と位置づけ、支援をしようという概念でした。すなわち発達障害の根幹は知的障害とされていました。  しかし現在広く考えられている発達障害は、知的障害というよりは、むしろ行動やコミュニケーションの障害が中心となっており、自閉症ではしばしば知的障害を伴なうとされることがありますが、ADHDや学習障害などのその他の発達障害では、知的能力や基本的な社会生活能力には著しい困難を伴いません。
 
現在考えられている発達障害とは、平成17年4月に施行された発達障害者支援法の第2条で「この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。」と定義されています。
注意欠陥・多動性障害は、注意欠如・多動性障害と呼ばれることもありますが、ADHDという表現が一般的です。この定義が障害名中心であり、質的な定義ではないことから、発達障害とはいったい何かということをしばしば質問されます。私は発達障害の定義としては、「発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーション、社会適応の障害で、根本的な治療は現在ではないものの、適切な対応により社会生活上の困難は軽減される障害」と考えています。
また発達障害を抱えている場合には「障害」の部分だけではなく、「障害特性」が「才能」となって将来を支えてゆくこともありますので、障害の部分だけを見るのではなく、どのように才能を見つけ、育てていくのか、そのためには何をすれば良いのかが大切になってきます。

2.発達障害はまれではない

発達障害は決してまれな障害ではあありません。理由はわかっていませんが、たとえば自閉症では、30年前には数千人に1人の頻度と言われていましたが、現在では100~150人に1人の頻度といわれています。すなわち数十倍に増加しています。ADHDも報告により異なりますが小児では5~10%を占めるとも言われています。専門家でなくとも、日常診療では、気づくかどうかは別としても、しばしば出会っていることになります。

3.発達障害の種類

発達障害として挙げられている障害について簡単にまとめて見ましょう。まず自閉症のグループがあります。このグループには知的な問題も含めてさまざまな障害が含まれています。従来は広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder: PDD)と呼ばれていました。しかし最近では知的な能力にも症状にも連続性があることから、自閉症スペクトラム障害、略してASD(Autism Spectrum Disorder)と呼ばれることが多くなってきました。
以前は自閉症では知的障害を伴なうと考えられてきましたが、知的障害を伴わない自閉症が多いこともわかってきました。現在ではASDのうち60~70%を知的障害を伴わない群が占めるとまで言われています。知的障害を伴わない自閉症は、従来ではアスペルガー症候群と呼ばれることが多かったのですが、最近では高機能自閉症と呼ばれることが多くなってきました。高機能とは知的障害を伴わないと言う意味です。知的障害を伴っていなくても、自閉症の特性としてのコミュニケーション能力の問題などは抱えていますので、適切な支援が必要です。

4.自閉症のグループ

自閉症の症状としては、社会性、コミュニケーション、想像力の3つに障害があることが知られており(これはイギリス流です)、これらがいわゆる自閉症の3つ組みです。知的なレベルに関わらず、自閉症の場合には社会生活上の困難を抱えやすいのですが、基本的な症状は変わらなくとも、社会生活訓練(social skills training: SST)などにより、社会生活上の困難は軽減され得ることがわかってきました。
ASDの症状自体に対して有効な薬剤は今のところありません。二次障害に対しては、しばしば薬物療法も行われますが、それだけではなく、SSTやカウンセリングは欠かせません。不登校、うつ病、パニック障害などの合併もしばしば見られます。
知的障害を伴う自閉症は、多くは幼児期に言葉の遅れがあることから発見されます。わが国でも言葉の遅れは知的な障害であり、改善することは少ないと考えられてきました。すなわち言葉の遅れは知的な障害、知的な障害は治らない、自閉症は知的な遅れを伴うので、治らない、そのように信じられてきました。しかし最近ではABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)による個別療育を行うことによって、目覚しい発達を見せることがあるなど、自閉症の療育も大きく進歩してきました。

5.ADHDとその周辺

注意欠陥・多動性障害(ADHD)も発達障害の一つに位置づけられますが、臨床的な診断は3つに分かれます。忘れ物が多い、作業を途中で投げ出してしまうなどの不注意の症状が中心であれば不注意型、会話や集団行動の際にすぐに割り込む、飛び出すなどの衝動性と、じっとしていられない、動き回るなどの多動の症状があれば多動・衝動型、両方あれば混合型となります。これらの症状が6か月以上続いていることと、社会生活上の障害になっていることも診断の条件です。
これらの症状に対して薬物療法が有効な場合もあります。methylphenidate製剤であるコンサータとatomoxetine製剤であるストラテラがわが国では使用可能です。コンサータは登録医のみが処方可能で、即効性がありまた持続性もあります。ストラテラには処方制限はありませんが、即効性はなく、効果が出るまでに数週間必要です。いずれも6歳から18歳未満が対象となっており、ストラテラはそれまでに使用していた場合には18歳以上でも使用可能ですが、コンサータは成人の方には使えません。薬物治療だけではなく、SSTも必要ですし、有効です。ADHDでは、適切な対応が行われないと、反抗・挑戦性障害や行為障害(素行障害とも言われます)などに移行することもあります。これはDBD(Destructive Behavior Disorder)マーチとも呼ばれ、思春期以降に大きな問題になることがあります。さらに多発性チックであるトウレット障害や強迫性障害を合併する場合もあることが知られています。

6.学習障害(Learning Disorder: LD)

学習障害は、学習を行なう上での障害ですから、幼児期に発見されたり問題になったりすることは多くはありません。読み、書き、算数の障害が代表で、文部科学省では小学校低学年では1学年以上。高学年以上では、読み、書き、算数、それぞれに2学年以上の遅れがある場合に学習障害を疑うことになっています。ですからわが国では、早期発見というよりも、遅れをきっかけにして発見される場合が多くなっています。その他にも図形のイメージが理解できない、漢字は読めないけれども、ひらがなとカタカナにはまったく問題がないなどの特殊な学習障害もあります。学習障害の原因は、読み、書き、算数などに対応する脳機能の障害と考えられています。現在のところ、症状を改善するための薬物療法はありません。読みの障害、読字障害がもっとも多く、試験問題が読んで理解できないために、学校の成績が上がらないことが、進学や就職に際して大きな問題になります。自分で読む代わりに、誰かが読んで聞かせる、特殊な定規などを使って字を追いやすくするなどの対応が役に立つことが多いのですが、わが国では理解されていないこともあって対応は不十分です。多くの学習障害では、代替機器を使うなども含めて、適切な対応によって社会生活上の困難は軽減されます。

7.発達障害を抱えている場合の目標
私は、発達障害におけるゴールは以下の2点であると考えています。
一つは自分に自信が持て、自分を肯定できる、すなわちセルフエスティームを高くすることです。そのためには、今できないことに焦ったり怒ったりせず、どうすればできるようになるのかを当事者と一緒になって考える必要があります。そこでは薬物療法よりも、SSTが重要になります。
二つ目は社会性を獲得し、社会で暮らしてゆけるようになろうということです。これは社会生活習慣を身につけるということだけではなく、自分で稼ぐことが出来るようにするということも含まれます。医療も教育も、すべての支援は、基本的に、この二つのためにあると考えています。

病因


臨床症状


検査成績


診断・鑑別診断


治療


予後


最近の動向


参考図書

【発達障害全般およびその関連】

1) 平岩幹男 著:発達障害 子どもを診る医師に知っておいてほしいこと,金原出版 2009

2) 平岩幹男 編・著:発達障害の理解と対応,中山書店 2008
 
3) 平岩幹男 著:みんなに知ってもらいたい発達障害,診断と治療社 2007

4) 平岩幹男 著:幼稚園・保育園での発達障害の考え方と対応,少年写真新聞社 2008

5) 平岩幹男 著:地域保健活動のための発達障害の知識と対応―ライフサイクルを通じた支援のために,医学書院 2008

6) 平岩幹男 著:いまどきの思春期問題 子どものこころと行動を理解する,大修館 2008

7) マシューRサンダース 著、柳川敏彦・加藤則子 監訳:エブリペアレント 読んで使える「前向き子育て」ガイド,明石書店 2006

8) 小枝達也 編・著:ADHD,LD,HFPDD,軽度MR児 保健指導マニュアル―ちょっと気になる子どもたちへの贈りもの,診断と治療社 2002 

9) 小枝達也:軽度発達障害児に対する気づきと支援のマニュアル 軽度発達障害児の発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究,平成18年度厚生労働科学研究報告書 2007 

10) 田中和代・岩佐亜紀 著:高機能自閉症・アスペルガー障害・ADHD・LDの子のSSTの進め方―特別支援教育のためのソーシャルスキルトレーニング,黎明書房 2008

11) リチャード・ラヴォイ 著、門脇陽子 訳:LD・ADHD・高機能自閉症のある子の友だちづくり,明石書店 2007

12)榊原洋一 著:脳科学と発達障害―ここまでわかったそのメカニズム,中央法規 2007

13) 小貫悟・名越斉子・三和彩 著:ソーシャルスキルトレーニング,日本文化科学社 2004

14) 道城裕貴・寺口雅美 著:発達障害のある子どものためのおうちでできる学校準備,Kid’s Power

15) キャロル・グレイ 著、服巻智子 訳:発達障害といじめ―“いじめに立ち向かう”10の解決策,クリエイツかもがわ 2008

16) 村石昭三・斎藤二三子・小谷隆真 著 :新・絵カードで遊ぼう,すすき出版  

【ADHD関連】

1) ラッセル A バークレー 著、海輪由香子 訳:バークレー先生のADHDのすべて,VOICE 2000
  
2) 岩坂英巳・中田洋二郎・井澗知美 編・著:AD/HDのペアレント トレーニングガイドブック,じほう 2004

3) シンシア・ウィッタム 著、上林靖子 ほか 訳:読んで学べる ADHDのペアレントトレーニング,明石書店 2002

4) 月森久江 著:AD/HD、LDがある子どもを育てる本,講談社 2008 

【(高機能)自閉症関連】

1) 佐々木正美 監修:自閉症のすべてがわかる本,講談社 2006

2) 佐々木正美 監修:家庭編 アスペルガー症候群・高機能自閉症の子どもを育てる本,講談社 2008

3) 佐々木正美 著:自閉症児のためのTEACCHハンドブック―自閉症療育ハンドブック,学研 2008

4) 佐々木正美 監修:TEACCHビジュアル図鑑 自閉症児のための絵で見る構造化,学研 2004

5) Mesibov GB, Shea V, Schopler E 著、服巻智子、服巻繁 訳:TEACCHとは何か―自閉症スペクトラム障害の人へのトータル・アプローチ,エンパワメント研究所 2007

6) ローナ・ウイング 著、久保紘章・佐々木正美・清水康夫 監訳:自閉症スペクトル―親と専門家のためのガイドブック,東京書籍 1998

7) トニー アトウッド 著、冨田真紀・内山登紀夫・鈴木正子 訳:ガイドブック アスペルガー症候群―親と専門家のために,東京書籍 1999

8) 佐々木正美 著:アスペルガー症候群(高機能自閉症)のすべてがわかる本,講談社 2007 

9) シーラ・リッチマン 著、井上雅彦・奥田健次 監訳:自閉症へのABA入門―親と教師のためのガイド,東京書籍 2003

10) モーリーン・アロウズ、テッサ・ギトウンズ 著、飯塚直美 訳:自閉症スペクトラムへのソーシャルスキルプログラム 幼児期から青年期までの統合的アプローチ,スペクトラム出版社 2005

11) 内藤祥子 著:高機能自閉症―誕生から就職まで,ぶどう社 2008

12) サイモン・バロン・コーエン 著、長野敬ほか 訳:自閉症とマインド・ブラインドネス,青土社 2002

13) 橋本俊顕 編・著:脳の形態と機能で理解する自閉症スペクトラム,診断と治療社 2008

14)  平岩幹男 著:あきらめないで自閉症:幼児編 講談社 2010

18) 海野健:ママがする自閉症児の家庭療育,HACの会 2008  

【学習障害】

1) 上野一彦 著:LD(学習障害)のすべてがわかる本,講談社 2007

2) 尾崎洋一郎 ほか 著:学習障害(LD)及びその周辺の子どもたち―特性に対する対応を考える,同成社 2000

免責事項

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