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最終更新日:2010.06.14

未熟児動脈管開存症(みじゅくじどうみゃくかんかいぞんしょう)

Patent ductus arteriosus in preterm infants

執筆者: 豊島勝昭

概要

この項は現在も執筆途上であることをご容赦下さい。日々更新していきます。

 動脈管は子宮内で胎児が成育するために必要不可欠な血管である。動脈管の存在により胎児・胎盤循環は成立している。動脈管は出生後は必要性はなくなり,満期産児では出生後の数日以内に自然閉鎖する。早産児では出生後も動脈管が開存しつづけることがある。在胎週数が少なく、出生体重が小さい早産児ほど、動脈管の自然閉鎖率は低下する。 早産児で動脈管が閉鎖しないと,未成熟な心筋から構成される左心室が容易にしをきたすとともに、他の全身臓器の未熟性と相まって全身症状をきたしやすい。この動脈管が閉じないための症状を有する場合を未熟児動脈管開存症(未熟児PDA)と呼ぶ。未熟児動脈管開存症は早産児の出生後の経過に関わる疾患の1つである。

病因

【動脈管の血管構造】1),2)

 ヒトの通常の血管は円周性に配列する弾性線維により構成されている。動脈管は通常の血管と大きく異なる血管で,動脈管の血管壁は中膜の大部分で平滑筋細胞が円周方向、縦方向、らせん方向と様々な方向に配列している筋性動脈である。このため、動脈管は他の血管と異なり、大きく収縮したり,拡張したりする。

【胎児循環における動脈管の役割】1)-3)

 胎児の総心拍出量の40%は酸素や栄養の摂取のために胎盤へ流れる。胎盤により酸素化された臍帯静脈血の40-60%は静脈管を経由して肝臓を還流しないで直接下大静脈に注ぐ。下大静脈から右房に流れ込む血流の方向と心房中隔は空間的には直交する位置関係にある。このため、胎盤で酸素化された下大静脈血流の大半は卵円孔を通過して左房-左室-上行大動脈を経て冠動脈や脳循環に供給される。下大静脈に比して酸素飽和度の低い上大静脈の血液は右房-右室-主肺動脈-動脈管-下行大動脈を経て胎盤に向かって流れる。動脈管は卵円孔・静脈管とともに酸素含有量の異なる上行大動脈と下行大動脈の血液を効率的にわけている胎児循環の成立に必須な血管である。

【胎児期に動脈管が開存している機序】1)-3)

 胎児動脈管を流れる血液の酸素含有量が少ない(PaO2:約18mmHg)に加えて、プロスタグランジンE(PGE)や一酸化窒素(NO)などの血管拡張物質が動脈管の拡張を維持している。動物実験の報告では妊娠中期は胎児の産生する一酸化窒素(NO)、妊娠後期では主に胎盤で産生されるプロスタグランジンE(PGE)が主要な動脈管の拡張因子となっていると報告されている。胎児の動脈管が胎内において開存し続ける機序は完全には解明されていない。多くの基礎医学者がこの分野の解明に日々奮闘している現状である。

【出生後に動脈管が閉鎖する機序】1)-3)

 動脈管の生後の閉鎖機序には、機能的閉鎖と器質的閉鎖の2段階がある。

 胎内で動脈管の開存に主因子である胎盤由来のプロスタグランジンE(PGE)は出生と同時に供給がなくなる。胎児期に胎盤から移行していたプロスタグランジンE(PGE)は呼吸開始により新生児の肺で代謝・分解されはじめる。満期産児では出生後3時間までにロスタグランジンE(PGE)の血中濃度は成人レベルまで低下するという報告もある。このため,満期産児の動脈管の多くは出生当日に閉鎖する。

 動脈管の閉鎖機序において,酸素の動脈管収縮作用も大きな役目を果たしている。出生後は肺血管抵抗が低下し、体血管抵抗が上昇する。このため、動脈管内の血流は胎生期とは反対方向の大動脈から肺動脈へむかって流れるようになる。このため動脈管を流れる血液の酸素含有量は増加する。動脈管内を流れる血液から動脈管の血管壁に届けられる酸素は,動脈管壁の平滑筋の細胞内Caイオンの増加を介して動脈管平滑筋を収縮する。

 胎児期の主要な拡張因子であるプロスタグランジンE(PGE)が減少するとこと強い収縮因子である酸素に動脈管がさらされることで,生後の動脈管壁の平滑筋が強く収縮して動脈管内腔を流れる血流がなくなる。これを機能的閉鎖と呼ぶ。

 機能的閉鎖の段階では動脈管は再開存する可能性を有する。平滑筋の収縮により機能的閉鎖した動脈管は、次第にアポトーシスによる動脈管壁の線維化と変性が生じて永久的な閉鎖を生じる(器質的閉鎖)。器質的閉鎖は動脈管の内腔が完全に消失した後に開始される。機能的閉鎖による動脈管内腔の完全閉鎖は内膜の変化であるintimal moundsを形成し、極度の中膜の低酸素状態が器質的閉鎖には必要となる。器質的閉鎖した動脈管はpO2レベルの変化やPGE2のレベルの変化にもはや反応しなくなり動脈管索という痕跡的な組織となる。器質的閉鎖した動脈管は再開存しない。

【早産児で動脈管が閉鎖しづらい理由】1)-3)

 早産児では,未熟性が強いほどに,機能的閉鎖も器質的閉鎖も起こりづらい。

 機能的閉鎖が生じづらい要因は複数ある。動脈管の平滑筋自体が未成熟であり収縮しづらい血管構造である。そのため,未熟動脈管においては酸素の動脈管収縮作用が極めて弱いことが示唆されている。また、成熟児で肺呼吸の開始とともにプロスタグランジンE(PGE)の血中濃度は数時間で成人レベルまで低下するが、未熟肺、新生児呼吸窮迫症候群や先天性肺炎などの肺疾患 の肺機能が低い児では,プロスタグランジンE(PGE)の代謝・分解が遅れる。このため胎盤から移行していたプロスタグランジンE(PGE)が体内に残存するため動脈管の閉鎖も遅れる可能性はある。そして、プロスタグランジンE(PGE)よりも一酸化窒素(NO)がメインの拡張因子であるより在胎週数の早い早産児では,胎盤分離に伴いPGEレベルが減少しても動脈管が閉鎖しづらい可能性もある。これらの複合要因で動脈管は機能的閉鎖しづらい。

 器質的閉鎖が生じづらい要因も複数ある。未熟児の動脈管は内腔を完全閉鎖するほど十分に収縮しづらい。動脈管内腔がわずかにでも開存し動脈管内血流が存在し続けることは、動脈管内血流から酸素がもたらされるため血管壁中膜は低酸素状態になりづらい。このため器質的閉鎖が生じづらい。また,少しでも内腔がある狭い動脈管でも閉鎖している動脈管とは大きく異なり、プロスタグランジンE(PGE)などの拡張因子の反応する可能性が残る。感染症罹患時や何らかの炎症でプロスタグランジンEの血中濃度が上昇する状況では動脈管は容易に開存しうる。早産児の動脈管は一旦収縮しても容易に再開存を繰りかえして治療に難渋する場合がある。

病態生理

 未熟児動脈管開存症の病態は肺血流増加型の心不全と体血流減少型の循環不全の病態である。心臓をはじめとした全身臓器の未成熟な早産児では成熟児に比して全身症状をきたしうる。

【肺血流増加型心不全】 1),2)

 左心室から拍出された酸素を多く含んだ動脈血は大動脈から全身臓器に届けられることが理想であるが,動脈管の開存が持続すると,全身臓器に届けられるべき動脈血が動脈管を介して右室から肺動脈に拍出される血流に再度合流してしまう。動脈管を介した体循環から肺循環への本来必要のない血液の流れを左右短絡と呼ぶ。左右短絡血流により肺血流量を増加し,体血流量は減少する。肺血流量の増加は肺から左房・左室への還流する血流を増加するので、左心室の拍出すべき血液量(前負荷)は増大する。早産児の未成熟な左心室は拡張能・収縮能にともに乏しく、前負荷の増大への代償能力は乏しい。前負荷が予備能を越えれば、左室ポンプ不全をきたす。

 左室の拡張末期圧は上昇し、つづいて左房圧、肺静脈圧も上昇する(肺うっ血)。早産児では毛細血管の透過性が成熟児に比して大きいことや肺血管床が未成熟であることから、わずかな肺うっ血であっても容易に肺間質の浮腫から換気能の低下につながる。肺間質の浮腫が進行すると肺胞内へ水分や血漿蛋白が漏出して,肺の表面活性物質であるサーファクタントの活性を低下する。これは新生児呼吸窮迫症候群(RDS)と類似の呼吸障害となりうる。

【体血流減少型循環不全】 1),2)

 動脈管を介する左右短絡血流は体血流量を減少し、全身臓器への酸素の供給不足(虚血)の原因となりうる。腎不全や壊死性腸炎などの虚血性病変の発症につながる可能性がある。 動脈管が開存している状態では心拍出量が増大している。しかし、動脈管開存による左右短絡血流量が増加していくと前負荷過剰状態に対応できずに体循環維持に必要な体血流量を拍出出来なくなる。早産児では成熟児に比して左右短絡の増加時にはより早期に必要な体血流量を維持できなくなると報告している。 腎血流量の減少は尿量減少や腎不全の原因となりうる。消化管血流量の減少は壊死性腸炎や消化管穿孔のリスクファクターと考えられている。

臨床症状

 未熟児PDAの初期症状はバウンディングパルス(脈圧の増加)、心雑音、心尖拍動である1)。動脈管を介する左右短絡血流量が増大していくと、初期症状に続いて全身症状が生じる。肺血流増加(肺うっ血)による呼吸症状や体血流減少による尿量減少や消化管機能不全が生じる。

 肺血流増加(肺うっ血)は,人工呼吸管理していない場合には多呼吸,陥没呼吸や呻吟などの原因になる。人工呼吸管理している場合には血中二酸化炭素の貯留の原因になる。未熟児動脈管開存症による呼吸症状は新生児呼吸窮迫症候群(RDS)の再燃症状と判別困難な場合がある。また、新生児呼吸窮迫症候群と未熟児動脈管開存症の症状は間隔なく移行していく場合もあるので鑑別が必要となる。

 高度肺うっ血は赤血球の肺胞内への漏出につながり、出血性肺浮(肺出血)となりうる。大量肺出血は呼吸循環状態の急速な悪化につながることがある。未熟児動脈管開存症に起因する呼吸障害と人工呼吸管理は肺損傷の原因となり,新生児慢性肺疾患(CLD)の発症要因になりうると危惧されている。

 未熟児動脈管開存症による体血流量減少は全身症状を生じる。腎血流量減少による乏尿は早期に生じる症状である。消化管血流量の減少は経管栄養の不調以外に,全身状態の急性増悪の原因になる壊死性腸炎・消化管穿孔のリスクと考えれている。動脈管が開存している間は,腹部膨満、胆汁様胃吸引、血便などの症状が生じないかの経時的観察が必要である。皮膚循環血液量の減少から皮膚色が青白くなることや,経皮的血中二酸化炭素モニターによるモニタリングが不正確になることがある。

 未熟児動脈管開存症の臨床像は在胎週数、出生時体重などにより異なる。在胎週数が少ない児、出生体重が小さい時ほどに,心雑音などの初期症状から肺出血などの重篤な症状を呈するまで期間が短い。心雑音や尿量減少が明らかになった後の治療では肺出血などの重篤な全身症状を予防できない場合がある。

検査成績

【X線検査】

 心拡大や肺血流増加の所見を認める1)。心拡大や通常は胸部X線による心胸郭比(CTR)の増大に表れるが,早産児においてはRDSなどの呼吸器疾患や人工呼吸管理による肺容積の変化がある場合にはわかりづらい場合がある4)。 また、心臓が時計方向に回転している新生児早期では左室・左房の拡大はCTRに反映されないこともある。早産児ではわずかな心拡大と肺血管陰影の増強しか所見がないこともあり、判断に苦慮する場合には心エコー検査を併用することが望ましい4)。

【心電図】

 未熟児PDAでは左側誘導でST低下,T波の平坦化や逆転が認められると清書の記載はある1)。しかし、検査の煩雑さと所見の少なさから早産児のおいては施行する臨床的意義は小さいと考える。

【心エコー検査】

 心エコーを用いることで未熟児動脈管開存症の発症を予測し、予防的な治療をすることが現在、期待されている1),4)。出生早期は肺血管抵抗が生後時々刻々と低下するため,動脈管を介する体循環から肺循環に注ぎ込む左・右短絡血流量も急速に増大することもある。 超低出生体重児、呼吸管理を要する極低出生体重児では動脈管の閉鎖を確認するまでは経時的な心エコー検査を必要と考える4),5)。未熟児PDAでは心エコー検査では左房左室の拡大と左心室の過剰収縮運動が特徴的所見となる1),4)。

 左房左室の拡大は胸部X線検査ではCTRに反映されないこともあるので心エコー検査での判断が望ましい。Mモード法を用いて大動脈径に対する左房径を測定すること(LA/Ao比)を測定することは左右短絡量を知る上で大変有用である1),4)。LA/Ao比は新生児期は通常は1前後である。我々は超低出生体重児においてLA/Ao比が1.3以上になれば,肺出血のリスクである左房拡大と考えている4)。

 動脈管の内径も治療方針を考える上では経時的な観察を要する。ドップラーエコー検査で動脈管内の左-右短絡を確認することは診断上も必要である。動脈管が分岐した後の下行大動脈の血流波形は体循環における左右短絡の影響をみるうえで有用である。動脈管の左右短絡が増えていくと下行大動脈の拡張期の順行性血流が減少し始める。さらに左右短絡が増大していくと,拡張期に収縮期の反対向きの逆行性血流波形となる。 逆に左肺動脈の拡張期血流の増加は動脈管を介する体循環から肺循環への流れ込む左右短絡量を反映している。

 当院では動脈管径(肺動脈側で計測)、LA/Ao比、左室拡張末期径、ドプラによる左肺動脈の拡張期平均血流速度/収縮期最大血流速度(LPA D/S)の増加,腎動脈の拡張期血流パターンを未熟児動脈管開存症の治療の適応を考慮する観察ポイントとしている。具体的には超低出生体重児では、LA/Ao:1.3以上、LVIDd:12mm以上に加えてLPA D/s:0.3以上、腎血流拡張期逆流パターンなどのエコー所見を基にインドメサシン静注療法の適応を判断している5)。 動脈管開存症の初期には左室収縮指標(EFやFS)はむしろ良好に見えることもある1),4)。左室収縮力から未熟児PDAの循環不全の有無を評価してはならないと考えている4),5)。 

【血液検査】
 
 近年、ナトリウム利尿ペプチドと未熟児動脈管開存症の関連性を報告が散見される。ナトリウム利尿ペプチドは心機能低下時に内分泌学的代償機序として心筋細胞から分泌するホルモンである6),7)。ヒト成人においては、心房性ナトリウムペプチド(ANP)は主に心房から、脳性ナトリウムペプチド(BNP) は主に心室から分泌される6),7)。循環血液量の増加や前負荷の上昇、さらには心筋障害などに伴いANPやBNPは分泌され、全身の血管床に存在する受容体に結合し血管を拡張する。血漿ANPやBNP濃度を測定は、心不全の重症度評価、治療効果の判定、予後の推測に有用な、心不全の生化学的マーカーとして普及している8)-10)。

 新生児医療においては血中のANPやBNP測定は未熟児動脈管開存症(以下未熟児PDA)の診断と重症度評価、治療の予測に有用であることが報告されている11-17)。報告によって未熟児動脈管開存症の治療必要性の予測としてのカットオフ値はまちまちであるが、BNP 200-300pg/ml以上が治療の必要性の予測となる値としている論文を散見する。我々は絶対値よりも経時的変化が重要と考えている18)。動脈管が開存していて、ANPやBNPが経時的に上昇していく症例では治療介入が必要と考えている18)。

 我々は、動物実験においてANPに動脈管拡張作用があることを証明し、ANPやBNPの心不全による上昇は動脈管が閉鎖しづらくなる因子になっている可能性を報告している19)。

治療

 我々は未熟児動脈管開存症の治療戦略としては動脈管の収縮を促す治療、左右シャントの制御、心不全治療の3本柱と考えている。

【動脈管の収縮を促す治療】

 未熟動脈管の収縮を促す治療としては本邦ではシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬の1つであるインドメサシンが保険適応となっている唯一の薬剤である19)。インドメサシンはアラキドン酸からPGEをはじめとした各種プロスタグランジンの生合成を抑制することで動脈管の収縮を促す1)。副作用としては乏尿・腎障害、低血糖症、血小板機能低下、消化管穿孔などがある1),20)。インドメサシンの動脈管収縮効果は投与量依存性であるが、このような重篤な副作用も有する諸刃の剣というべき治療であるため、少量投与が原則とされている1),20)。

 我々はインドメサシンの投与のタイミングは治療効果に大きく関与すると考える。動脈管収縮の効果から考えると生後1週間以降、症状が発現した移行ではインドサシンの効果は減弱することが報告されている1)。日齢が経つとインドメサシンの効果が減弱する理由は明らかではない。1つは動脈管を介する左右シャントの増加後では動脈管の内圧が上昇するので、動脈管を収縮させるには強い力が必要になるためと考えられている1)。副作用の観点から考えると、インドメサシンを含めたCOX阻害薬はPGI2の生合成を抑えることで、早期投与では新生児遷延性肺高血圧症を惹起する可能性が危惧されている21),22)。早期に投与すると肺血管抵抗の減弱に関与するであろうPGI2の生合成を阻害する弊害が出るためと考えられている。また,虚血腎では腎性PGと呼ばれる腎保護の役目を担ってPGI2やPGE2が重要な役目を果たしている。虚血腎にCOX阻害薬を投与すると腎障害が強く出る可能性が指摘されている。したがってPDAで腎血流量が減少した後ではインドメサシンの腎障害は強くでる可能性がある。このようにインドメサシンの投与のタイミングは全身臓器への影響を考えて決める必要がある。 在胎週数が若いほどインドメサシンの動脈管収縮作用は弱くなる。また,在胎週数の若い早産児ではインドメサシンで一旦は動脈管が収縮しても数日から数週後に再開存することもある1)。Clymanは在胎26週未満の早産児の23%に,インドメサシンで動脈管が閉鎖したことを心エコーで確認した後の再開存を確認している1)。それに対して在胎26週以上では再開存率は9%と報告している。当院の自験例においても生後1週間以内に超低出生体重児の97%はインドメサシンで動脈管は一旦閉鎖しうるが、約1/4の症例は生後1週間以降に再開存している。再開存例ではインドメサシンの治療効果は減弱していく。

 動脈管開存症が症候化してからインドメサシンを投与するよりも,インドメサシンを予防的投与するほうが未熟児PDAの症候化や外科的治療の必要度、脳室内出血の頻度は下げられることが報告されている23)。本邦においても、インドメサシンの予防投与の有効性を証明する多施設共同研究が報告されている24)。 しかしながら,予防的投与では本来は自然閉鎖する動脈管に対して不必要にインドメサシンを投与している可能性も否定はできない1)。また,インドメサシンの未熟脳への影響については現時点では明らかでない部分がある。COX阻害薬の予防投与群は慢性肺疾患率が高いという報告もあり,肺への影響は懸念されつつある25)。したがって,予防投与の対象症例と投与方法についてはまだ検討の余地があると考える。 症状が発現した早産児に対するインドメサシンの投与方法についても施設によって異なっているのが現状である。当院は1時間静注としているが,本邦の全国アンケート調査では急速静注法から36時間持続投与まで投与時間に大きな施設間差異があった。時間をかけて持続静注する理由としては,急速静注時にしばしば認められる著明な体血圧上昇や脳血流や腎血流の急激な変動の予防を意図してである。インドメサシンの投与量についても0.1もしくは0.2mg/kgと投与量に施設間で差異がある。インドメサシンの血中半減期は生後1週間では21時間であるのに対して,生後1日の半減期は71時間であったという報告がある1)。生後1週間以内はインドメサシンの代謝が遅く,高い血中濃度が持続する可能性があるため,生後1週間以内の投与量は0.1mg/kgが好ましいという報告がる1)。副作用が生じなければ12-24時間毎に3回投与が基本となっている1),20)。インドメサシンの投与期間の延長が動脈管の再開存を予防することに有効ではないかという学説もあったが、近年のMeta-analysis研究ではインドメサシンを延長して使い続けることは手術率や再開存率を減少はせず、むしろ腎不全をはじめとした副作用をきたす率が増加するので推奨はされていない26)。

 インドメサシンを使用するに当たっては動脈管閉鎖のことばかりでなく,副作用の発現への注意が必須である。インドメサシンの慎重な投与が必要とされている対象としては消化管穿孔,壊死性腸炎,出血傾向,重症脳室内出血児,腎障害をきたしている早産児と考えられている。 このほか、動脈管の収縮を促進する治療としてはビタミンAが注目されている。動物実験において、ビタミンAがインドメサシンの効果を増強する27)、動脈管の酸素への感受性を高める28)、動脈管の成熟を促す29)などの報告があり今後の展開が期待される。臨床研究では明らかな効果は認められなかったが30),今後も検討の余地はあると考える。 また、ステロイドの併用治療がインドメサシンの動脈管収縮効果を増強することが動物実験では証明されている31),32)。ステロイドの動脈管収縮効果についての臨床研究は少ないため、今後の臨床的意義の検討が必要である。懸念事項としてはインドメサシンとステロイドの併用治療は消化管穿孔のリスクを高めるとの報告があることである33)。したがって、ステロイドの併用治療については慎重な判断が必要と考える。

 成熟児において強い動脈管収縮効果がある酸素であるが、未熟児においては酸素の動脈管収縮効果は弱い可能性が示唆されている1)。一方、酸素は肺血管抵抗を下げて左右シャントを増大するので、閉鎖しない未熟動脈管への酸素投与はむしろ肺血流増加型心不全を助長する可能性がある。当院においては未熟児動脈管開存症に対する酸素投与は必要最低量に限定している。

【左右シャント(体循環から肺循環への短絡血流)の制御】

 動脈管の開存中は左右シャント(肺血流量増加・体血流量減少)の制御が重要となる1)。人工呼吸管理においては肺血管抵抗を下げる誘因となる高酸素血症,低二酸化炭素血症には注意を要する。高めの終末呼気陽圧の設定とする人工呼吸管理(high PEEP療法)の呼吸管理は左右シャント血流の制御に有効であるが、胸腔内圧上昇から脳室内出血のリスクとなるので慎重を要する。投与水分制限は肺血流増加による心不全には有効であるが、体血流量減少に伴う虚血の原因となる可能性がある。過度な水分制限は全身臓器の虚血の原因となる可能性があるので限度がある。全てのカテコラミンは体血管抵抗を上げる作用か肺血管抵抗を下げる作用のいづれかを有するため左右シャントを増加させる可能性があることを念頭において適応を考えることが望ましい34)。体動や啼泣は体血管抵抗上昇・肺血流増加につながるので、肺出血のリスク時には鎮静が有効な場合もあるが,過度の鎮静によっても肺血管抵抗は低下する可能性があるので鎮静の功罪には注意を要する。

【心不全治療】

 心ポンプ不全が明らかな場合はカテコラミンの適応となる1)。カルシウム補充や高カリウム血症治療、赤血球輸血による貧血の是正などは心不全治療としても有効な場合がある。根拠・理由は明らかではないが、輸血により動脈管が収縮傾向に転じる経験は本邦の新生児科医で述べられている。 ジギタリス製剤はジギタリス中毒の問題があり,投与には注意を要する1)。早産児においてはジギタリスの腎代謝能が低いため房室ブロックを中心としたジギタリス中毒の報告があり、現在は推奨される治療ではないと考える。 利尿剤が肺うっ血を改善するのに有用である1)。最も使用されている利尿薬はフロセミドで1日2〜4回の0,5〜1mg/Kgの投与が報告されている。フロセミドは低ナトリウム血症や低カリウム血症を誘発しうるので投与前後の血清電解質のチェックは必要である。フロセミドは尿中カルシウム排泄を増加させるため,数週間にわたって多量フロセミド投与を続ければ低カルシウム血症や腎臓の石灰化の原因にもなる。血管拡張薬は未熟児の心ポンプ不全に有効な場合 はあるが35)-37),,動物実験では動脈管拡張作用を認めるため19),38),39),動脈管開存時の心ポンプ不全には使いづらい。

【外科的治療】 

以前は早産児における動脈管の結紮術は致死率が高かった時代もあった1。しかし,近年の未熟児PDAを含めた新生児心臓外科治療の成績はめざましく向上している1)。症例が集積されている施設においては合併症なく,極めて低い致死率で未熟児PDAの外科的治療は施行されている。したがって,内科的治療の効果が乏しい症候性の未熟児PDA児では、時期を逸せずに外科的治療に踏み切ることも大切である。 動脈管結紮術のデメリットしては手術室への移動に伴う状態の増悪,体温の低下などがあげられている。このためNICU内で手術を推奨している施設もある。 本邦では、動脈管結紮術が施行困難なNICU施設も多く、未熟児動脈管開存症の手術が必要な場合に転院をせざるを得ない場合は少なからずある。未熟児動脈管開存症の早産児の搬送の危険性は少なからずある。 また,皮膚切開や肋骨の損傷,反回神経麻痺や横隔神経麻痺などが術後の合併症として術後合併症としてあげられている。術後の創部感染症は致死的な転帰につながる可能性はある。

 近年は,Video-assited thoracoscopyを用いた内視鏡的手術法が報告されている1),40),41)。複数の皮膚切開部を肋間につくり,内視鏡を持ちながら動脈管を結紮する方法である。海外、本邦において良好な手術成績が報告されている40),41)。この方法は大きな皮膚切開を避けられるという利点がある。出血時の開胸手術への変更など判断と手技に精通した外科医によって行われることが前提の手術と考えるが,今後普及していく可能性はある。

 新生児科医にとって小さな早産児において手術は気が進まない治療法であるかもしれない。しかし,近年の未熟児PDAの手術による致死率・合併症率は極めて低い。そして,動脈管を結紮した後にめざましく呼吸状態・全身状態が改善することがある。インドメサシンなどの薬物療法は繰り返す間に副作用を生じる場合もある。手術を躊躇しすぎないことは大切であると考える。

予後

 未熟児PDA自体は必ずしも予後不良とはいえないが,全身状態不良な児において未熟児PDAとなることは合併症や死亡などにつながる可能性がある。早産児の生命予後、神経学的予後に影響を及ぼす因子の1つと考える。

最近の動向

 近年の海外の研究では,COX阻害薬の1つであるイブプロフェンはインドメサシンと比して、効果は同様以上で腎障害などの副作用が少ないという報告がある。(肺障害はインドメサシンより高頻度の報告もある)42)。イブプロフェンは本邦では臨床使用できない薬剤であるが今後導入は考える必要がある。

 動物実験では、未熟児ではPGE2よりもNOの方が動脈管の開存に役立っているという結果からCOX阻害薬と一酸化窒素阻害薬の併用の有効性が期待されてきた43),44)。未熟バブーンの実験ではインドメサシン単独では動脈管内腔の完全閉鎖は起きなかったが、NO阻害薬を併用した場合には完全閉鎖を生じ、組織学的にも成熟児でみられるような特徴的な解剖学的変化が生じていた44)。この興味深い事実は、インドメサシンでは動脈管の閉鎖が誘導されない場合や動脈管の閉鎖が続かない場合に一酸化窒素阻害薬の使用が効果的な可能性を示唆している点が興味深い。NO合成阻害薬の未熟児PDAへの臨床使用の報告はあり、インドメサシンと併用治療することで相乗効果の動脈管収縮作用と再開存症例の減少する可能性が報告されている45)。ただ,NO合成阻害薬は現在,製剤化されていないことや,他の全身血管の収縮もきたすことが予測されることから臨床現場に定着するにはまだ時間を要すると考える。

 我々は動物実験においてインドメサシン,イブプロフェンなどの従来のCOX阻害薬と異なり,より選択的に作用するCOX2阻害薬,COX1阻害薬などの動脈管収縮作用について報告している46)。また,プロスタグランジンE受容体拮抗薬であるEP4アンタゴニストの動脈管収縮効果も報告している47)。これらの薬剤は現在は動物実験レベルであるが今後,副作用の少なく、効果の大きい未熟児動脈管開存症治療薬になることを期待している。今後は臨床応用に向けての研究を期待している。

 一方,インドメサシンなどのCOX阻害薬は機能的閉鎖を促す反面、器質的閉鎖は起こしづらくする可能性が動物実験で報告されている48),49)。COX阻害薬は機能的閉鎖には有用である反面,機能的閉鎖には逆効果の作用を有する可能性がある。  胎生満期、出生前にすでに動脈管の内膜が肥厚し、出生後の閉鎖の準備をしているということが言われていた。PGEがこの内膜肥厚を作っていて、出生前には生後の解剖学的閉鎖の準備をしていて、かつ血管を拡張させ、出生後はPGEがいなくなることで血管の収縮を促し、すでにできている内膜肥厚と併せて機械的閉鎖と解剖学的閉鎖を同時に促し、不可逆性の閉鎖を導く、という仮説が報告されている。Yokoyama らの研究結果48)では,その仮説を証明しているといえる。つまりPGEは動脈管の拡張因子であると共に閉鎖機序にも一役を担っている可能性がある。このことは、未熟児動脈管にインダシンを使っても機械的閉鎖は得られても、またすぐに開いてしまうことがある、つまり解剖学的閉鎖に持ってゆけないことがあるということへの一つの機序の可能性がある。インドメサシン治療には限界があり、他の治療法の模索は今後も必要と考えられる。  動脈管の開閉機序には依然として不明な部分も多く,基礎研究も日進月歩である。今後も,未熟児動脈管開存症の治療方法も進歩していくと考えられる。早産児の救命と予後の改善も目指して,よりよい未熟児動脈管開存症の治療方法を模索していきたい。

鑑別診断

 心雑音やバウンディングパルス、高拍出性心不全などの病態の鑑別疾患としては、心エコー検査で他の先天性心疾患の鑑別が必要となる。特に、大動脈肺動脈窓、総動脈幹症などの大血管レベルでの短絡がある先天性心疾患は未熟児PDAと同様の病態で新生児期早期に心不全をきたす1)。また、再開存症例では体内のプロスタグランジンレベルをPDAが反映している場合がある。動脈管が再開存した場合に心臓以外に目を向け、感染症、体内の何らかの炎症、慢性肺疾患の増悪などを考えることが大切である。これらの原疾患の治療により動脈管は再閉鎖する場合もある。

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