口唇口蓋裂 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)

執筆者: 鳥飼 勝行

概要

 先天的に上唇が割れているものを口唇裂、口蓋(お口の中の天井の部分)が割れているものを口蓋裂という。また歯の生えてくる歯肉歯槽部の割れているものを顎裂という。口唇裂・口蓋裂の発生頻度は日本では400~500人に1人といわれている。本疾患に対する最近の治療の進歩は著しく、適切な時期に適切な治療を受ければ、ほとんど障害を残さず通常の社会生活を送ることができる。

図1

病因

 遺伝的要因と母体内環境要因が関与し、多因子が相互に作用し発生すると考えられている。

病態生理

 口唇裂・口蓋裂は外表奇形の中でもっとも発生頻度が高い。口唇裂・唇顎口蓋裂・口蓋裂の3つの基本型に分類され、それらの発生率はおよそ1/4,1/2,1/4である。男女比は口唇裂では男女同数、唇顎口蓋裂は男性に多く、口蓋裂は女性に多い。裂側による発生頻度は左:右:両側の順で6:3:1である。唇裂・口蓋裂とほかの先天異常の合併率は10~20%と高く、口唇裂よりも口蓋裂の方が、合併率が高い。合併する先天異常は四肢領域が最多で、ついで小顎症、心奇形などである。

図2

臨床症状

 外見上の問題に加え、裂があるために哺乳に支障が生じる。発声・言語にも支障を生じる。発声や摂食時には軟口蓋(口蓋の後方の骨の支持のない部分)が後上方に持ち上がり、咽頭後壁(のどの奥)に接して鼻側とお口の中側に境をつくる。この機能を鼻咽腔閉鎖機能とよぶ。特に口蓋裂を伴う場合、鼻咽腔閉鎖機能が十分でなく開鼻声(鼻に抜けた声)になることもあり、2次的な構音障害と相まって会話全体が不明瞭になることがある。

治療

 完全唇顎口蓋裂の場合は生後できるだけ早く、哺乳と顎発育誘導を兼ね、ホッツ床と呼ばれる装置をお口の中に装着する。矯正歯科医が術前顎矯正を行なうこともある。年齢に応じ、手術を行なっていく。顎裂・口蓋裂のある場合は併行して歯科矯正治療を行なう。
 標準的には
① 生後3~4ヶ月頃 口唇形成術(割れた口唇を閉じる手術)
② 1~1歳6ヶ月頃  口蓋形成術 
③ 4~6歳      鼻・口唇修正術(就学前の整容的形成手術)
④ 7~12歳     顎裂部骨移植術(割れている歯槽部に腰骨の一部を移植する手術)
⑤ 15歳以降     鼻・口唇修正術 (最終修正術)を行なう。これらに加え、歯科矯正治療のみでは十分なよい噛み合わせが得られない場合は、顎矯正手術(顎の骨切手術)を行なうこともある。

図4

予後

 適切な時期に適切な治療を受ければ、ほとんど障害を残さず通常の社会生活を送ることができる。しかし、上顎の劣成長、鼻咽腔閉鎖不全、口蓋瘻孔(口蓋に穴が残る)や外見上の問題が残り、日常生活に大きな支障はないもののQOL(生活の質)が低下することもある。上顎の劣成長は硬口蓋部に口蓋形成後、骨のむき出しの部分(raw surface)があると硬い瘢痕組織が形成され上顎の成長を抑制するものと考えられている。上図は伝統的な口蓋形成術でpushback(プッシュバック)法といわれる。口蓋をM字型に切開し後方にずらし裂を閉じる方法である。裂を閉じる意味では有効であるが、前方にraw surfaceを生じ、上顎の裂成長を来たしやすいという欠点がある。切開部を後方にずらしたり、前方部に骨膜を残し頬粘膜を移植したりして上顎の発育抑制を緩和しようとする方法が工夫されてきている。

図5
図6

最近の動向

 口唇口蓋裂に対する標準的外科的治療は、上記のごとくであるがこの一連の手術プロセスは患者および家族に相当な負担を強いるものである。口蓋形成術に関しては、言語獲得のためには早めの手術がよいが、顎発育を考慮すると1~1歳6ヶ月の手術が望ましいとされてきた。しかし、著者らは顎発育を障害しない独自の新たな口蓋形成術の開発に成功したため、生後3~10ヶ月頃と早期の口蓋形成術が可能となった。その結果、口唇形成術と同時に口蓋形成術を施行できるようになり、さらにこれまで行なってきた口唇裂・口蓋裂手術の各手術の独自法を併用することにより口唇口蓋裂治療に必要な外科処置が一期的に(一度に)行なえるようになった。この全く新しい概念から成る口唇口蓋裂手術は口唇裂・顎裂・口蓋裂・唇裂鼻を一度に修復する方法である。まず、出生後早期から、術前顎矯正を行い歯槽弓形態の改善と、顎裂幅、硬口蓋裂幅の狭小化を図る。矯正科医による術前顎矯正はできるだけ早い方が容易であり、出生前診断を得たら、できるだけ出生直後から行なう。一期手術までの待期期間は、小児科医による患児の全身状態および併存疾患、耳鼻科医による浸出性中耳炎などの確認を行なう。一期手術では口唇に対しては小三角弁法、赤唇正中縫合、人中形成(独自法)を行い自然な口唇形態を形成する。また唇裂鼻形成も行い平坦化した鼻の形態の修正を行なう。顎裂部に対しては術中に硬口蓋および下鼻甲介から採取した骨を移植し、次に歯槽粘膜骨膜形成を行い、歯槽弓形態を回復させる。これにより歯槽部の骨の連続性が得られ、将来の2次的顎裂部骨移植術(多くは腸骨海綿骨「腰骨の一部」移植)を回避できる。口蓋裂部に関しては硬口蓋では骨がむき出しになるraw surfaceをつくらないようにして閉鎖する、軟口蓋部では鼻腔側を口腔側にZ形成術を行い、自然な形の筋を形成する。

図7
図8
図9図10
図11図12
図13図14
図15

参考文献

1) Perko,M.A.:Primary closure of the cleft plate using a palatal mucosal Flap : An attempt to prevent growth impairment. J
Maxillofac Surg. 2 : 40-43,1974
2) Perko,M.A.:Two-stage closure of cleft palate. J Maxillofac Surg. 7 : 76-80,1979
3) 上石弘:初回口蓋裂手術.形成外科.28 : 307-316, 1985
4) 鳥飼勝行ほか:粘膜移植粘膜弁法による口蓋形成術後の顎発育.日口蓋誌.22 : 124-131, 1997
5) 鳥飼勝行ほか:粘膜弁法によるRepushback 法,日口蓋誌18 : 155-158, 1993
6) 鳥飼勝行:口蓋粘膜弁法,上石弘編:口唇裂・口蓋裂の治療 最近の進歩,克誠堂出版,東京,pp111-116,1975
7) Furlow LT : Cleft palate repair by double opposing Z-plasty. Plast Reconstr Surg 78: 724-736, 1986
8)William Y. Hoffman, MD, and Delora Mount, MD : Cleft Palate Repair. Pediatric Plastic Surg. 95:294-269.1977
9) 鳥飼勝行ほか:口唇口蓋裂,周産期医学 第36巻 11号  : 1429-1434, 2006
10) 秦維郎,野崎幹弘 編:標準形成外科学 第5版:120-139,2008. 医学書院

(MyMedより)推薦図書

1) 高戸毅 監修、須佐美隆史・米原啓之 編集:口唇口蓋裂のチーム医療,金原出版 2005

2) 小林眞司 編さん:胎児診断から始まる口唇口蓋裂―集学的治療のアプローチ,メジカルビュー社 2010

3) 日本口唇口蓋裂協会 編集:口唇口蓋裂児 哺乳の基礎知識,口腔保健協会 2008
 

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