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meconium peritonitis
執筆者: 内田 広夫
胎便性腹膜炎とは出生前および周産期に何らかの原因で消化管が穿孔し、胎便が腹腔内に漏出することによって生じる病態を指す。出生後の消化管穿孔による腹膜炎とは異なる。 Morgagniが1761年に初めて報告したと言われており、手術の成功例はAgertyら1によって1943年に報告されている。
胎児は胎生3カ月ころから羊水の嚥下を開始し、胎便が作られる。腸管穿孔の原因としては腸閉鎖、狭窄、腸重積、中腸軸捻転、絞扼性腸閉塞、腸管膜血管障害、胎便性イレウスなどがさまざまなものがあり、腸管の拡張と穿孔がみられ、胎便が腹腔内に散布され無菌的、科学的な腹膜炎が起きる。膵嚢胞性線維症の消化管合併症としてメコニウムイレウスがあるが、胎児期に穿孔すると胎便性腹膜炎2となり、欧米では頻繁にみられるが、日本ではほとんど見られない。
胎便性腹膜炎の病型は腸穿孔が起きた時期によって異なっており、さらに穿孔部が閉鎖しているかどうかにもよる。 Lorimerの分類3
胎生期の比較的早めの時期に穿孔が起きた場合に起きるが、繊維形成とは異なり、穿孔部が閉鎖されなかった場合はこのようなtypeになると考えられる。大きな1つの仮性嚢腫がみられ、その嚢腫は大網や腸管壁などの周囲臓器と癒着して厚い線維性組織からなり、嚢胞壁にはしばしば石灰化がみられる。
胎生期の比較的早めの時期に穿孔が起きた場合に起きるが、胎便中の消化酵素による化学的刺激により腹腔内臓器が激しい線維性癒着を起こしており、腸管が厚い被膜で覆われている。その結果高率に繊維性肥厚部位に石灰化が起きる。穿孔部は閉鎖していることが多い。
周産期に穿孔が起きたため、胎便が混入した腹水が見られるが線維性癒着が軽度で、いわゆる消化管穿孔性汎発性腹膜炎と同様の所見を示す。しかし、炎症反応が軽度であることが多い。 Martin4は1; Meconium pseudocyst、2; adhesive meconium peritonitis、3; meconium ascites、4; infected meconium peritonitisの4型に分類している。 1,2,3はそれぞれLorimerの分類にほぼ対応する。4は出生後にも穿孔部位から便が腹腔内に漏れることで細菌性の感染が起きているものを指す。
Moore5の報告にある腹腔内を大部分占める巨大な嚢胞が認められるようなgiant cystic meconium peritonitis (GCMP)では分娩障害が報告されている。また、腹腔内の拡張した嚢胞や石灰化により胎児診断例が増加し、母体搬送され周産期から適切な管理、処置がされることも多くなってきている。
出生時には穿孔部は修復されている場合も多く、出生直後にいわゆる腹膜炎症状を示すことはあまりない。また、病型により症状が異なることもあるが、多くの症例は出生後より腹部膨満がみられ、胎便排泄遅延も認められることが多い。その後腹部症状は徐々に悪化し胆汁性嘔吐などの腸閉塞症状を示す。また高度の腹部膨満のため呼吸困難を示すこともある。陰嚢や陰唇に腫脹が見られ、黒色の胎便が透見される場合もある。
出生時には穿孔部が修復されている症例のなかには、軽度の腹部膨満、軽度の経口不良のみがみられはっきりした症状を示さない症例もあり、新生児期を過ぎてからはっきりした症状を示すものもある。
出生後も穿孔が残存しているような症例は出生後の細菌汚染から強い腹膜炎症状を示す。
腹腔内石灰化像および腸管ガスの変位、腸管ガスの減少もしくは拡張がみられる。まれに腹腔内遊離ガス像もみられる。
出生直後に腹腔内に石灰化が見られる疾患は、副腎出血や胎便と尿が混合し石灰化する直腸肛門奇形など限られた疾患なので、診断の決め手となることが多い。腸管ガスの減少や変位は大きな嚢胞性の腫瘤や腸管の癒着などによって引き起こされる。まれにみられる腹腔内遊離ガス像も癒着などの影響でいわゆるsaddle-bag signやfootball signを示すことはあまり無く、非典型的なものであることが多い。
大きな鏡面像や腹部全体のスリガラス様陰影は腹腔内の大きな嚢胞の存在を示し、giant cystic meconium peritonitisと呼ばれている(図1)。

(図1)膨満した腹部と下腹部を中心とした無ガス像が腹腔内の巨大な嚢胞を示唆している。この写真では腹腔内の石灰化像や小腸の明らかな鏡面像は認められなかった。
腹腔内の石灰化、大きな嚢胞、腹水、陰嚢腫大などにより出生前に胎児診断されることも多い。胎便が作られる妊娠後4ヶ月以後の検査で、胎児腹腔内の腹水や石灰化が見られる6。
出生後では、X線写真と同様に腹腔内の嚢胞性病変、石灰化像、肥厚した腸管像、腹水などがみられる(図2)。

(図2)腹腔内に内部エコーのある大きな嚢胞が認められ、その背側には拡張した小腸が認められる。
単純X線撮影で石灰化がはっきりしない場合でもCTでhigh density areaが証明されることもある。
胎便性腹膜炎の多くは腸閉鎖状態となっており、その場合はmicrocolonの像を呈することもある(図3)。

(図3)GCMPの症例:microcolon像を示した。
術前診断は上で述べてきたような各種画像診断でなされるが、それほど困難なものではない。特に出生前診断が進歩している現在、かなり高率に診断されるようになっている(1998年新生児外科全国集計で72%)。しかし、一部出生後の穿孔性腹膜炎と鑑別することが難しい症例も存在する。
鑑別診断としてはリンパ管腫、限局性腸拡張症、水腎症などが挙げられる。
消化管の閉塞症状がなければ、胎便性腹膜炎と診断されても緊急手術の対象にはならない。 手術適応となるのは消化管の通過障害が著しいもの、全身状態不良や腹部膨満による呼吸困難、消化管穿孔の残存による腹膜炎症状がある場合は早期手術の適応となる。イレウス症状のみの場合は経過を観察しつつ改善が見られなければ、手術の適応となる。
術前管理は新生児穿孔性腹膜炎に準じて管理する。十分な輸液と多くの場合FFPなどの輸血が必要となる。
手術は1期的手術と多期的手術に分けられる7。
1期的手術は癒着剥離と病変の切除、端端吻合が行われる。全身状態が良好で、腹腔内の細菌汚染が軽度な場合に行いうる。また、大量の小腸切除が行われたような場合、著しい短腸症候群になることが予想される場合は、吻合を試みることもある。
多期的手術は、細菌汚染が強い場合に行われる。癒着剥離を行い病変腸管を切除するが、腹膜炎症状が著しく全身状態が不良の場合は小腸瘻造設の適応となる。癒着が高度で癒着剥離も難しい場合は、適切な位置に小腸瘻を造設し病変腸管にアプローチせずに腹腔内のドレナージのみを行うこともある。その場合には中心静脈栄養を行い、数ヶ月後に癒着剥離、病変部腸管切除、端端吻合を行う。

(図4-1)GCMPの症例:嚢胞壁は厚い繊維性の組織(→)からなり、嚢胞壁を切開し背側に達すると拡張した腸管が認められる。

(図4-2) GCMPの症例:線維性の被膜を可及的に切除し、腸管を剥離、精査すると小腸が捻転し穿孔している(→)のが確認された。穿孔部を切除後、口側に回腸瘻を造設した。術後経過は順調で体重増加を待って回腸瘻閉鎖を行うことができた。
手術の際に嚢腫の被膜を完全に切除、摘出することは困難であるが、多くの場合それらは膿瘍を形成することなく自然に消退する。
胎便性腹膜炎は他の合併奇形が比較的少ないため、周術期を乗り切れれば新生児消化管穿孔と比較して予後は比較的良好で救命率は80%以上となっている。しかし、胎便性腹膜炎の原因として膵嚢胞性線維症がある場合は他の場合と比較して予後は不良となっている。
超音波による出生前診断が多くの症例で可能となり、分娩様式も含めて計画的な治療が行えるようになってきた。
1)Agerty HA, Ziserman AJ, Shollenberger CL: a case of perforation of the ileus in a newborn infant with operation and recovery. J Pediatr 1943 22:233-8
2)Barrera QF, Vera CP, Maldonado MD, et al: Peritonitis meconial. Rev Chil Pediatr 1988 59:115-9
3)Lorimer WS Jr, Ellis DG: Meconium peritonitis. Surgery 1966 60:470-5
4)Martin L: Meconium peritonitis. In : Pediatric Surgery. 3rd ed, p.952-5, Year Book Medical, Chicago 1979
5)Moore TG: Giant cystic meconium peritonitis. Ann Surg 1963 157:566-72
6)Nuncarrow PA, Mattrey RF, Edwards DK, et al: Fibroadhesive meconium peritonitis ; in Utero sonographic diagnosis. J Ultrasound Med 1985 4:213-5
7)漆原直人、長谷川史郎、小倉薫、他: 巨大嚢胞性胎便性腹膜炎に対する一期的根治手術 一期的根治手術と多次手術の比較検討 日小外誌 2005 41:183-190
1) 松原茂樹 著:周産期救急シミュレーション―こんなときどうしよう?,メディカ出版 2006
2) 岡田正 監修、伊藤泰雄・福澤正洋・高松英夫 編集:標準小児外科学 (STANDARD TEXTBOOK),医学書院; 第5版版 2007
3) 自治医科大学総合周産期母子医療センター新生児集中治療部 編集:新生児ポケットマニュアル,診断と治療社 2010
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