側弯症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.12

側弯症(そくわんしょう)

別名: 脊柱変形

執筆者: 竹下 克志

概要

 側弯症とは脊柱が左右方向に弯曲した状態をいう。実際は前後への曲がりやねじれも起きている三次元的な脊柱変形である。(写真1)弯曲の程度を示す国際的な指標がコブ角(Cobb角)であり、10度以上が側弯ありとされている。発生頻度は2%で、25度以上が0.3%である。前後への曲がりは後弯症と呼ぶ。

病因

 さまざまな疾患に生じる。特発性側弯症の原因はメラトニンなどの松果体関連異常、平衡感覚異常などの神経組織の異常、椎間板など軟骨や骨の異常など多くの仮説が唱えられているが、実証されたものはない。

病態生理

 側弯症は年齢と原因によって将来の見込みや治療が大きく異なってくる。古くからの発症年齢による分類は3歳未満の乳児期側弯症Infantile Scoliosisと10歳未満の幼児期側弯症Juvenile Scoliosis、10歳から18歳までの思春期側弯症Adolescent Scoliosis、そして成人側弯症Adult Scoliosisである。

しかし、成長が比較的緩やかな幼児期に発症する側弯はわずかであり、幼児期側弯症は乳児期側弯症の未発見例と思春期側弯症の早期発症例の混在した群であると近年見なされるようになり、5歳以下を早期発症側弯Early Onset Scoliosis、6歳以上を晩期発症側弯Late Onset Scoliosisと2つに分類する考え方が広まりつつある。

 早期発症側弯は胸郭の成長や肺胞の形成を阻害するため、生命にも影響しうる重篤な疾患である。病因としては先天性側弯や症候性側弯が多く、他の器官障害を合併していることも多い。晩期発症側弯(思春期側弯症)は第2次成長期、すなわち女子では小学生後半から中学での成長期に急速に側弯が悪化する。多くの場合、痛みや呼吸困難などの自覚症状はないが、高度の胸椎カーブでは呼吸機能障害を、腰椎カーブでは成人後の強い腰痛の原因となるほか、感受性の高い思春期に精神的ストレスを引き起こすこともある。

 成人側弯症は未成年期の側弯が悪化した未治療側弯Untreated Scoliosisと成人になってから出現する側弯があり、後者は変性側弯Degenerative Scoliosisまたは de-novo Scoliosisと呼ばれる。高度の成人側弯は変形性脊椎症による背中・腰の痛みや足の痛み(坐骨神経痛)のため、日常生活や社会生活が困難となるが、体系的な研究があまりなされていない。これは背中・腰の痛みや神経痛は側弯がなくとも起こる症状であり、側弯からくる障害のみを分析することが難しいためである。実際、成人側弯症は腰椎疾患として治療されることも多い。

 原因による分類では原因不明である特発性側弯症が8割を占める。側弯症の病態・自然経過・治療などの大半の知見は特発性における研究に基づいている。8割は女性であり、多くは晩期発症側弯である。次いで先天性側弯症、キアリ奇形・脊髄空洞症が多い。先天性側弯症は胎児期の脊椎の形成異常により生じたもので、形成不全(あるべき骨のパーツが形成されない)と分節不全(分かれるはずの骨が一個のままでいる)、混合型の3つに大別される。肋骨癒合や心臓血管系・尿生殖器系の異常を合併することもある。

 もっとも頻度の高い先天性側弯は半椎Hemivertebraで、左右いずれかの脊椎の形成不全で生じる。キアリ奇形・脊髄空洞症は思春期側弯症では10%前後だが、10歳以下の側弯では25%程度ある。キアリ奇形・脊髄空洞症は頭痛や手足のしびれなどさまざまな症状を引き起こすこともあるが、側弯症が唯一の症状であることも少なくない。

 頻度は若干少ないが、治療が難しいものに神経線維腫、マルファン症候群などがある。

 神経線維腫症(レックリングハウゼン病) Neurofibromatosis(Recklinghausen)は神経・骨やその周囲、皮下などに腫瘍を形成する腫瘍性疾患である。側弯は特発性型 Idiopathic typeと骨の破壊の目立つジストロフィック型Dystrophic typeに分けられるが、特発性型が途中でジストロフィック型へ変化することもある。神経線維腫や硬膜拡張症Dural ectasiaによって骨が薄く、弱くなっていることも少なくない上に、手術では大量出血を起こすことも多い。

 マルファン症候群Marfan syndromeはFBN1と呼ばれる遺伝子の異常により大動脈解離や破裂、心臓弁の不具合、眼では水晶体脱臼など生じる症候群で、骨格系では長い四肢とともに側弯が特徴的である。骨が弱く手術による固定力が強くないこと、大量出血しやすいこと、手術をしていない部位で側弯が起こり再手術になりやすいことが知られている。

 神経・筋原性側弯症Neuromuscular scoliosisは麻痺性側弯症Paralytic scoliosisとも呼ばれる。脳性麻痺や小児期受傷の脊髄麻痺、二分脊椎、筋ジストロフィーなどの麻痺に起因する側弯症で、側弯の進行とともに骨盤の傾きやバランス障害も進行し、車椅子生活にも障害を来たす場合がある。装具などの保存治療は難しく、生活の質の向上が期待される場合に手術治療を行う。その他、脚長不等など下肢病変に伴った骨盤傾斜による側弯、椎間板ヘルニアや骨腫瘍などによる疼痛性側弯、心理的影響によるhysterical scoliosisなどがある。

臨床症状

自覚症状


 体幹の形態異常が主な症状である。脊椎および肋骨の回旋のため背中では非対称のコブ(ハンプHump)ができ、これは体を屈めたときにはっきり現れる。胸は左右の張り出しが異なるため、乳房の左右差も目立つことがある。さらにウェストが非対称となり、片側はへこみが消え、反対側は深くなる。首に近い側弯では肩のバランスが失われて、片方の肩の上がった状態となる。バランス異常の場合は骨盤の真上に頭がない姿勢となる。

 高度の胸椎側弯では呼吸機能が障害されることもあり、運動動作時などに息切れなどが出現することもある。

 高度の側弯ではハンプ周囲・首から肩、腰の痛みが強くなり、とくに成人になって変形性脊椎症の進行とともに強い疼痛が生じることがある。


他覚症状


 100°の胸椎カーブの場合、肺活量は予測値の50%程度となる。

検査成績

 本邦では学校保健法で健康診断において側弯症への注意が明記されている。最も簡易なスクリーニング法としては体幹の前屈することで強調するハンプなどで左右の不均衡を発見する方法が示されている。ほかにモアレ法など数多くのスクリーニング法が行われているが、確定診断はX線撮影である。

診断・鑑別診断

 特発性側弯症は除外診断で判断する。10歳以前の早期に発見される側弯症では先天性側弯症とキアリ奇形に伴う側弯症が少なくない。CTやMRI検査が有用である。

治療

 コブ角25°以上の側弯症で、骨年齢が成熟していない患者では装具療法が有効とされる。カーブの部位によって首から骨盤までの装具(ミルウォーキ装具; CTLSO)かBoston装具などに代表される体幹から骨盤までの装具(アンダーアーム装具; TLSO;写真2)の使い分けが必要であるが、特に前者は家族と患者自身の治療に対する相当な意識が求められる。一日中装着する23時間治療が最も効果が高いが、装着して通学することに強い抵抗を感じる学生も多いため東大病院では原則8時間着用としている。小さなカーブや成長終了後のカーブなどにサイド・シフトとよばれる運動療法も試みている。

 50度を超える側弯症は骨発育終了後も進行するため、手術治療が望ましい。後方からの脊椎インストルメンテーションを用いた矯正固定手術 (写真3)が代表的手術法である。胸腰椎カーブの側弯の場合には前方手術が行われることもある。椎間板切除による前方解離も兼ねるため矯正率が高く、後方手術に比して固定範囲を1ないし2上げられるのが利点である。

 特発性側弯症の矯正固定手術は出血量が多いこと、神経組織の近くに金属を入れること、側弯を矯正する際に神経組織にも同等の矯正が加わることから大手術であるが、充分な経験のある脊椎外科医であればかなり安全な手術といえる。重要なことは選択的固定を行うかどうかで、カーブが2つある場合は一方の固定のみで生体がうまく適応して他方のカーブが自然矯正されることがある。手術範囲を減らせるばかりでなく、せぼねの動きをより残せることになる。

予後

 骨年齢が低く、コブ角が大きいほど、進行する可能性は高い。身長の伸びる速度が最大の時期に最も変形が進行するので、第2次成長が要注意である。女性では初経後2,3年で進行が落ち着く。骨年齢が成熟後も30-50°のカーブは年0.25°、50-75°のカーブは年0.5-0.75°進行する。胸椎カーブで50度以上、腰椎カーブで40度以上の場合は骨成熟後も進行する例が多い。

最新の動向

 早期発症側弯では固定による体幹と胸郭の成長抑制がより懸念されており、成長を維持しながら矯正を図る治療法に注目が集まっている。そのアイデア自体は1960年代のHarrington博士にさかのぼり決して新しいものではないが、最近欧米で試みられている非固定矯正手術はDouble growing rod法とVEPTR法である。

 Double growing rod法は通常の後方矯正手術と基本的には同様な手技であるが、固定に関する操作を行わない。カーブの上端と下端に数箇所にスクリューやフックによる脊椎へのアンカーを作成し、上下別個に接続したロッドをtandem connectorと呼ばれる特殊な器具を介して連結して矯正する。数ヶ月ごとに創を一部開いてtandem connectorで長さを延長することで成長を促していく。成長終了を見計らった時点で、通常の固定手術を行う。

 VEPTR法は日本には未だ導入されていない。側弯症のみならず肋骨欠損症など胸郭不全症候群Thoracic Insufficiency Syndromeのある患者が最もよい適応となる。VEPTR法では上のアンカーを肋骨とすることで、胸郭の変形矯正を図る。それは同時に肺の成長を促し、側弯の矯正にもつながる。

(MyMedより)推薦図書

1) Hoppenfeld 著、津山直一 翻訳 :整形外科医のための神経学図説―脊髄・神経根障害レベルのみかた,おぼえかた,南江堂 2005

2) 星地亜都司 著:Critical Thinking脊椎外科,三輪書店 2008

3) 柳下章 著:エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI 第2版,三輪書店 2010

4) 日本側湾症学会 編集:改訂版 知っておきたい脊柱側弯症,インテルナ出版 2003
 

免責事項

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