小腸閉鎖症・狭窄症 - MyMed 医療電子教科書

MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.11.26

小腸閉鎖症・狭窄症(しょうちょうへいさしょう・きょうさくしょう)

small intestinal atresia/stenosis

執筆者: 田中 潔

概要

概念

 腸管内腔の連続性が完全に絶たれている状態が閉鎖症、内腔が狭い状態が狭窄症である。後天性にも起こりうるが、この稿では先天性閉鎖症・狭窄症について述べる。

頻度、疫学

 十二指腸閉鎖・狭窄症を加えた頻度は新生児外科疾患の中で直腸肛門奇形についで多い。先天性小腸閉鎖・狭窄症では95%が閉鎖症である。空腸、回腸閉鎖症はほぼ同率にみられ、結腸閉鎖は少ない。

 発生頻度に性差や家族性を認めない。また、十二指腸閉鎖症と異なり、染色体異常や合併奇形を有することも少ない。

 閉鎖・狭窄は単発のことが多いが、多発することもある(図1)。 



病型 



小腸閉鎖症の病型には、次のものがある。

I型:膜様閉鎖 


II型:索状閉鎖



 IIIa型:離断型閉鎖 



IV型:多発閉鎖 (図6)

離断型閉鎖の一種にIIIb型:apple peel型(Christmas tree型)と呼ばれるものがある。 

病因

種々の成因により発生し、成因により発生時期が異なる。

1)recanalization障害説

 腸管内腔は一時上皮で充満閉塞するが、胎生8~10週頃に充満した内腔に空胞ができ、互いに癒合することにより腸管の内腔が再開通する。その再開通の障害によって膜様閉鎖が発生する。

2)メッケル憩室の過剰吸収に伴う小腸の消失

3)血管閉塞により栄養されるべき腸管が壊死消失する。Apple peel型の腸閉鎖はその一種であり、上腸間膜動脈の中結腸動脈分岐したあとの近位側の動脈閉塞により生じる。したがって、apple peel型の閉鎖症は空腸閉鎖症となる。

4)腸管の軸捻転、腸重責症、内ヘルニアなどによる血行障害。胎生12週以降

5)腸管穿孔後の修復過程に伴う消失

病態生理

 胎生期から発症している腸閉塞状態である。閉鎖部の口側の腸管は拡張し,閉鎖直前が最も太い。また,閉鎖部より肛門側の腸管は腸内容の流入がみられないため細い。

臨床症状

 閉鎖症では出生後数時間以内に気づかれることが多いが、下位小腸閉鎖では24時間以後に発症することもある.また,狭窄症では,乳児期以降に発症することもある.

嘔吐:

 胆汁性嘔吐である。高位での閉鎖ほど生後まもなくから嘔吐が見られる。

腹部膨満:

 下部小腸閉鎖ほど著明である。



 高位空腸閉鎖では上腹部に限局した膨満である。胃管による減圧により、高位空腸閉鎖ではむしろ腹部は陥凹するが、下位小腸閉鎖では、腹部膨満は解消されない。



 胎便排泄異常:胎便排泄遅延を認めることがある。胎便の便色は、閉鎖の発生が胎生の早い時期であるほど灰白色となる。胎生後期に発生した閉鎖症では暗緑色の正常胎便を排泄することもある。

検査成績

胎生期

 羊水過多:より高位での消化管閉鎖ほど著明である。小腸閉鎖では高位空腸閉鎖で著明な羊水過多を伴うが、回腸閉鎖では羊水過多を伴わないこともある。羊水過多の著明な例では早期産となる傾向がある。

 腸管の拡張:超音波検査、MRIで拡張小腸が描出される。高位空腸閉鎖では胃泡、十二指腸、閉鎖より口側の空腸のみの拡張であるが、回腸閉鎖では拡張腸管ループが多く観察される。





 胎便性腹膜炎合併例ではそれに伴う所見が見られる(他稿参照)。

 最近は、出生前に診断されることが多い。

出生後

単純レントゲン写真

 閉鎖症では、閉鎖部より肛門側には嚥下したガスが流入せず、閉鎖前の拡張した腸管のみがガスで描出される。高位空腸閉鎖では、胃、十二指腸、閉鎖前の空腸のみの拡張したガス像が認められる(triple bubble)。



 それより下部の閉鎖ではガス像が増え(multiple bubble)、回腸閉鎖では多くのガス像がみられる。



 なお、新生児ではレントゲンでの腸管ガスの形態による小腸と結腸の鑑別はできない。腹部に石灰化があれば、胎便性腹膜炎の合併を疑う。狭窄症では狭窄部以下の腸管にもガスが流入するが、狭窄前後で腸管の口径差が異なる。

 腸回転異常症に伴う中腸軸捻転でも閉塞が高度の場合は空腸以下にガスが流入せず、十二指腸閉鎖や高位空腸閉鎖と類似したレントゲン所見を呈するため、鑑別が重要である。


超音波検査

 出生直後は腸管内のガス流入がわずかで、超音波検査が有用である。腸液で充満した拡張腸管が描出される。その長さにより閉鎖部が推測できる。また、上腸間膜動脈と上腸間膜静脈の位置関係やwhirl-pool signの有無により腸回転異常症との鑑別を行う。

注腸造影検査

 結腸閉鎖症の有無を知るために行う。多発閉鎖症の有無の確定診断は術中に行われるが、結腸閉鎖の検索は結腸が腹壁に固定されているため術中には困難である。そこで、術前に造影し、結腸閉鎖の有無を確認する。回腸末端まで造影されれば結腸閉鎖は否定できる。また、注腸造影検査は腸回転異常症やヒルシュスプルング病の鑑別にも有用である。小腸閉鎖症では通常結腸は細くmicrocolonといわれるが、胎生後期に発生した閉鎖症では必ずしも細くはない。





 腸回転異常症では結腸の走行異常が見られる。ヒルシュスプルング病では結腸までガスが流入していることが注腸造影検査で確認でき、結腸のcaliber changeが認められる。ガスの入った結腸まで造影剤が入り込むことで結腸閉鎖症は否定できる。しかし、全結腸型以上のヒルシュスプルング病やヒルシュスプルング病類縁疾患では結腸にガスが流入せず、microcolonを呈することがあるため回腸閉鎖症との鑑別が重要である。注腸造影にて、腸閉鎖症のmicrocolonでは直腸が比較的太いこと、ヒルシュスプルング病では結腸が比較的短いことがいわれているが、必ずしも鑑別は容易ではない。

診断・鑑別診断

 新生児期に腸閉塞症を呈する疾患が鑑別対象となる。主な疾患をあげる。

腸回転異常症、ヒルシュスプルング病、ヒルシュスプルング病類縁疾患、メコニウム関連腸閉塞症、腸管重複症、小腸軸捻転症、内ヘルニア

治療

術前管理

 高位での閉鎖ほど胃管での消化管減圧が容易であり、1,2日の待期が可能であるが、回腸閉鎖では減圧が困難であり、出生当日あるいは診断後すぐの手術が必要となることが多い。

 胃管により消化管減圧を図る。術前の輸液で、脱水の改善、電解質の補正を十分に行う。

手術

 多発閉鎖の有無を検索するため、閉鎖の肛門側腸管に細い針を穿刺し、生理食塩水を注入し、回盲部まで到達することを確認する。先述したように、結腸閉鎖の合併の有無の検索は術前の注腸造影検査で行っておく。閉塞部を含め閉鎖部直前の著明に拡張した小腸を切除し、端々吻合を行う。吻合径をそろえるため、肛門側小腸を斜めに切離したり、腸間膜対側に縦切開を加えることがある(end-to-back 吻合)。高位空腸閉鎖では閉鎖部口側の拡張空腸を切除できない。その際は、拡張空腸を細く形成したのちに吻合する(tapering jejunoplasty)ほうが、術後の吻合部の通過が良好である。



 多発閉鎖の場合は、途中の腸管を切除し、単一の吻合とすることが多いが、短腸が危惧される場合には途中の腸管を温存させ、いくつかの吻合を行う。Apple peel型の空腸閉鎖症では肛門側盲端近くの小腸は血行障害に陥っており、切除が必要なことがある。

術後管理

 回腸閉鎖では数日で経腸栄養を開始できることが多いが、空腸閉鎖症では1週間以上かかることもある。

 その間は静脈栄養を行う。

 新生児黄疸が高度となることが多く、綿密な管理が必要である。

予後

 合併奇形のない限り生命予後は良好であるsup1)/sup。多発閉鎖、apple peel型腸閉鎖、小腸軸念による腸閉鎖などでは短腸症候群に陥り長期静脈栄養管理が必要となることがある。また、高位空腸閉鎖症の術後では拡張が残存した十二指腸や空腸に腸内容が停滞し、嘔吐の原因となることがある。

最近の動向

 十二指腸閉鎖症や空腸閉鎖症において、臍帯潰瘍が形成され、子宮内や分娩時に致死的な出血を起こしたとする報告が最近増えている2),3)。周産期管理における対策が議論されている。

 治療においては、腹腔鏡補助下の小切開による手術が試みられている4)。

参考文献

1) 日本小児外科学会学術・先進医療検討委員会:わが国の新生児外科の現況 ―2003年新生児外科全国集計―.日小外会誌,40: 919-934, 2004

2) 大浜用克、新開真人、武 浩志、他:胎児上部消化管閉鎖症と臍帯潰瘍 ―腸閉鎖症周産期管理のPitfall―.小児外科,33: 1073-1077, 2001

3) 長屋 建、中村英記、竹田津原野、他:臍帯潰瘍を合併した先天性上部消化管閉鎖症の2例.日本周産期・新生児医学会雑誌,42: 684-688, 2006

4) Yamataka A, Koga H, Shimotakahara A, et al. Laparoscopy-assisted surgery for prenatally diagnosed small bowel atresia: Simple, safe, and virtually scar free. J Pediatr Surg 39: 1815-1818, 2004

5) Grosfeld JL, Ballantine TVN, Shoemaker R: Operative management of intestinal atresia and stenosis based on pathologic findings. J Pediatr Surg 14: 368-375, 1979

(MyMedより)推薦図書

1) 岡田正 著:系統小児外科学 第2版,永井書店; 改訂版 2005

2) 山城雄一郎:新小児科学 (Qシリーズ) ,日本医事新報社 2005

3) 山高篤行・下高原昭廣 編集:小児外科看護の知識と実際 (臨床ナースのためのBasic&Standard) ,メディカ出版 2010
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷

診療科別


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: