ファロー四徴症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

ファロー四徴症(ふぁろーしちょうしょう)

執筆者: 平田 陽一郎

概要

 ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot:以下TOF)は、大きな心室中隔欠損・大動脈騎乗・右室流出路狭窄・右室肥大を四つの特徴とする先天性心疾患である。広義のTOFにはファロー四徴症兼肺動脈閉鎖(TOF with pulmonary atresia)や肺動脈弁欠損症候群(TOF with absent pulmonary valve syndrome)なども含まれ、肺動脈狭窄をもつ典型的なTOFとは、解剖学的・臨床的特徴が大きく異なる。また典型的なTOFの臨床症状も、その肺動脈狭窄の程度によって、チアノーゼがほとんど認められないものから強度のチアノーゼをきたすものまで幅広い。
 本稿では、肺動脈狭窄をもつ典型的なTOFについて述べる。

病因

 TOFは、1672年にデンマーク人解剖学者のNiles Stensenによって初めて記載された。1888年に、Fallotが病理所見と臨床症状を併せて記載し、la maladie bleue と名付けている。TOFの発症頻度はおよそ1000出生に対して0.26-0.48人であり、全先天性心疾患のなかで占める割合は3.5-9.0%とされる。1981年から1989年まで行われたBaltimore-Washington Infant Study(BWIS)によれば、TOFにおいて男性の割合は56.4%であったが、男女比に統計学的な有意差はなく、また人種間での明らかな傾向は指摘できなかった。 

 TOFの病因については不明な点が多いが、現在までの研究によれば、遺伝的素因や環境因子など多因子の複合によるとされる。環境因子としては、母体の糖尿病、母体に対するレチノイン酸投与、母体のフェニルケトン尿症、母体に対するトリメタジオン(抗てんかん薬)の投与などが指摘されている。遺伝形式については常染色体優性遺伝と常染色体劣性遺伝の報告があり、一定していない。21トリソミー・18トリソミー・13トリソミーなどの染色体異常との関連や、DiGeorge’s syndrome、Alagille’s syndrome、CHARGE連合などとの関連が指摘されている。

臨床症状

 TOFの解剖学的特徴は上述の4主徴であるが、その鍵となるのは流出路漏斗部中隔の前上方偏位(anterior and cephalad deviation of outlet septum)である。これによって大きな心室中隔欠損・大動脈騎乗と肺動脈弁下部狭窄がおこり、心室レベルで動脈血と静脈血の混合が起こることによって、チアノーゼを呈する。右室流出路狭窄の程度によって肺血流量が決まり、チアノーゼの程度も変化する。右室肥大は、大きな心室中隔欠損と右室流出路狭窄による右室圧の上昇による二次的な変化と考えられる。

 TOFの臨床症状は、この肺血流と体血流のバランスによって幅広く変化する。通常は新生児あるいは乳児期にチアノーゼや心雑音を呈して診断されるが、動脈管が開存していて肺血流が保たれている間は、チアノーゼが軽いことがある。また、右室流出路狭窄がごく軽度の患者では、チアノーゼを呈さないこともある。逆に、啼泣などをきっかけに肺血流量が極端に減少して重度のチアノーゼが持続する低酸素性発作(hypercyanotic spell)が起こることがあり、重症の場合は死に至る。

検査成績

身体所見


 チアノーゼの期間と程度に応じてばち指(clubbed finger)が認められる。聴診所見では、ほとんどの患者でⅡ音が単一で亢進しており、胸骨左縁上部に収縮期雑音を聴取する。この収縮期雑音の強さは、右室流出路狭窄の程度と逆相関しており、hypercyanotic spellのときには雑音は極端に減少する。拡張期雑音は通常、聴取されない。動脈管や体肺側副血管が発達しているばあいには、連続性雑音を聴取する。

心電図


 典型的な症例では生後3カ月以降に、V1誘導でのR波増高やV6誘導での深いS波など右室肥大の所見が明らかとなる。未手術の若年例で不整脈を認めることはまれである。右脚ブロックなどの伝導障害は心内修復術後の症例に多く認められる。未手術の成人例などでは長期の右室圧負荷による心筋線維化などを反映して、心室性期外収縮などが認められるようになる。

胸部レントゲン


 心陰影全体の大きさは正常範囲であるが、左第2弓が陥凸し心尖が上方を向いた、いわゆる木靴心(coeur en sabot)を呈する。肺血管陰影はチアノーゼの程度に応じて低下する。約25%の症例に右大動脈弓を認める。 

血液検査  


チアノーゼによる酸素運搬能の低下を反映し、多血症を認める。ヘマトクリットが65%を超えると、いわゆる過粘調度症候群を呈する。 

心臓超音波検査  


 TOFの診断においては最も有用な検査方法である。Long axis parasternal viewでは、典型的な大きな心室中隔欠損と大動脈の騎乗の所見を認める。Short axis viewでは右室流出路および肺動脈近位部が観察され、肺動脈狭窄と順行性の肺血流の量が評価できる。Apical four-chamber viewでは、心室中隔欠損の位置および三尖弁・大動脈弁との関係を観察する。またparasternal/suprasternal viewにおいて、肺動脈の太さ・側副血管の有無・大動脈弓からの分枝する血管の形態などを注意深く観察する必要がある。 

心臓カテーテル検査  


 超音波検査などの非侵襲的検査の発達により、カテーテル検査の重要性は低下している。TOFの場合、カテーテル検査で得られる血行動態的な数値は比較的単純であり、主要な目的は、肺動脈や冠動脈の詳細な形態を把握することである。

診断・鑑別診断

 上記の各種検査所見による。

治療

 TOFに対する治療は、基本的には心内修復術である。近年の手術法の発達により、TOFはより低年齢で心内修復術が行われるようになった。その理由は、手術成績の向上のみならず、姑息手術を行ってチアノーゼや高い右室圧を長期間継続することによる合併症(脳膿瘍・右室心筋の線維化など)を避けることである。 

内科的治療  


 動脈管が自然閉鎖する前に肺血流の量を正確に推定するのは、困難なこともある。心臓超音波検査によって右室流出路狭窄の程度を慎重に判断し、必要であればプロスタグランジンE1製剤の投与を開始するが、多くの症例では動脈管依存性の血行動態ではない。出生後にチアノーゼが軽い症例であっても、低酸素性発作の危険性と対処方法について、家族によく説明する必要がある。
いったん発症した場合には、酸素投与・血管容量負荷・モルヒネなどによる鎮静・phenylephrineなどの血管収縮剤によって体血管抵抗を上昇させる、などの治療を行うが、反応が悪く発作が持続する場合には緊急手術の適応がある。Propranololなどのβ-blockerが、発作予防に推奨されている。心内修復術前でチアノーゼが残存しており、相対的貧血や小赤血球症を認める症例では、脳出血や脳膿瘍などのリスクがあり、血清鉄の量を評価して必要に応じて鉄剤を投与する。 

カテーテル治療 


 肺動脈狭窄の解除および側副血管の塞栓がカテーテル治療のおもな目的である。その適応や時期は施設ごとの手術成績などによって異なる。手術による合併症やBTシャント手術による肺動脈の変形などの危険を避ける目的で、心内修復術の前に肺動脈弁に対するバルーン拡張術を行うことがあり、これによって順行性の肺血流を増加させて肺血管の成長をうながすことが期待される。体肺側副血管のコイルによる塞栓術は、左室容量負荷を軽減するとともに、人工心肺手術中の肺動脈への血流を除く意味がある。 心内修復術後には、残存する肺動脈の狭窄病変に対するバルーン拡張術およびステント留置術が行われる。 

手術治療


 前述したような理由で、心内修復術が低年齢のうちから積極的に行われるようになり、BTシャントなどの姑息手術の行われる頻度は低くなった。TOFのすべての患者に対して一期的に心内修復術を行うとする施設もある。 TOFに対する心内修復術の鍵は、右室流出路狭窄の解除にある。長期的な肺動脈弁の機能を考慮して、できる限りtransannular patchをさけて自己の肺動脈弁を温存することが推奨される。術前の評価で、肺動脈弁の大きさのZ valueが-2以下の症例では、心内修復術後の右室圧/左室圧比が上昇するというKirklinらの報告があり、これが肺動脈弁を温存できるかどうかの目安となる。
TOFに対する心内修復術の成績は、良好である。しかし、Michigan大学からの報告によれば、手術後平均24か月の追跡調査において死亡例は認められなかったが、25%の症例で何らかの再手術が必要であった。再手術が必要となる要因は、一期的か二期的か、あるいは手術時の年齢が1歳以下かどうか、などではなく、低年齢での一期的心内修復術を推奨する報告が多い。肺動脈狭窄型のTOFの症例の、手術後20年の時点での生存率は98%であり、肺動脈閉鎖型の症例ではこれよりやや低いとされるが、いずれにしても良好な長期成績が認められる。

予後

 近年の診断・治療技術の向上により、TOFの患者の長期予後は大幅に改善された。しかし、早期の心内修復術が患者の長期予後をさらに改善させるのかどうか、など検討すべき課題は残されている。

突然死と不整脈 

 
 近年、突然死の頻度は低下している。Silkaらの報告によれば、Oregon州でのデータで、突然死の頻度は10年で1.2%、20年で2.2%、25年で4%、30年で6%とされている。これは近年の手術技術の向上によっても、あまり変化は認められない。突然死およびその原因と考えられる心室性不整脈の原因については多くの研究があるが、より高年齢での手術、術後の肺動脈弁閉鎖不全の程度、右室拡大の程度などが危険因子であると考えられている。しかし、これらの因子に対する有効な治療法はまだ確立されていない。たとえば、抗不整脈薬の投与や植え込み型除細動器などには、その有効性を示すデータがない。現時点では、より低年齢での心内修復術が、心室性不整脈を減少させるというデータがあるだけである。

肺動脈弁閉鎖不全


 TOFのほとんどすべての症例では、術後に肺動脈弁の閉鎖不全が残存し、それが術後の運動能力や心不全の発症などを大きく左右する要因となっている。その正確な量を超音波検査で推定するのは困難である。肺動脈弁置換手術は、この問題に対する解決策のひとつであるが、その時期や適応については確立されていない。

運動能力  


 TOF術後の患者の大部分は良好な運動耐用能を有しているが、詳細に検討すると、低下している患者が含まれているのも事実である。WesselとPaulらが、3000人以上のTOF術後患者の運動能力についてまとめたところでは、健常人と比較するとTOF患者では運動時の最大酸素摂取量は81%、運動耐用能は85%に低下していた。これらの低下は、手術年齢が高く、術前の変化を長期間にわたって受けた患者に強く表れる傾向にあった。またTOF患者では運動時の心拍数の増加が不十分であり、これは洞機能不全がその原因の一部であると考えられている。

参考文献

Ernest S. Siwik, Chandrakant R. Patel, Kenneth G. Zahka, Elizabeth Goldmuntz. : Tetralogy of Fallot in "Moss and Adams' Heart Disease In Infants, Children, And Adolescents(6th ed)" (Hugh D. Allen et al. eds), Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 2001,p880~902

執筆者による推薦図書

1) 高橋長裕 著:図解 先天性心疾患―血行動態の理解と外科治療,医学書院

2) 中澤誠 著:先天性心疾患(新目でみる循環器病シリーズ),メジカルビュー社

3) 里見元義 著:心臓超音波診断アトラス 小児・胎児編 改訂版,ベクトル・コア

(MyMedより)その他推薦図書

1) 山岸敬幸・白石公 編さん:先天性心疾患を理解するための臨床心臓発生学,メジカルビュー社 2007

2) 高本眞一 監修、角秀秋編集:小児心臓外科の要点と盲点 (心臓外科Knack & Pitfalls),文光堂 2006
 

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