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最終更新日:2010.02.10

小児水頭症(しょうにすいとうしょう)

pediatric hydrocephalus

執筆者: 伊地俊介 西原哲浩 鈴木一郎

概要

 水頭症とは脳脊髄液(髄液)が頭蓋腔内に過剰に貯留した状態(頭の中、特に脳の中心にある脳室という空間、ないしくも膜下腔に髄液という液体が余分に溜まった状態)のことで、髄液の産生から吸収に至る循環経路において、産生過剰、吸収障害、通過障害のいずれかの異常によって拡大した脳室に髄液が貯留し、種々の脳障害を生じる病態です。水頭症は交通性水頭症と非交通性水頭症に分類されます。交通性水頭症の治療は、髄液を腹腔内や心房内に導きそこで吸収を図るシャント(短絡)手術が有効ですが、非交通性水頭症の場合には、内視鏡による治療が有効で、シャント手術の必要がないことがあります。

病因

 水頭症は交通性水頭症と非交通性に分類するのとは別に、先天性と後天性に分類することができます。胎児期水頭症の診断と治療ガイドライン(厚生労働省研究班2005年3月)では、胎児期の異常が原因となって現れた水頭症を先天性水頭症と定義しており、多くは1歳ごろまでに診断されますが、それ以降の小児期や、まれには成人期に初めて診断されるものも含まれます。先天性水頭症の中で最も頻度が高いのが脊髄髄膜瘤に伴う水頭症ですが、その他、中脳水道狭窄、Dandy-Walker症候群や全前脳胞症などの先天異常に伴うもの、胎内感染に伴うものなどがあります。一方で後天性水頭症には、脳室内への出血で脳室系の循環路のどこかが閉塞するものや、髄膜炎によってくも膜下腔の髄液通過障害が起こるもの、外傷後に続発するもの、腫瘍による脳室系の閉塞によるもの、さらにはある種の腫瘍(聴神経腫瘍など)により髄液中のタンパク成分が上昇するためにおこる交通性水頭症などがあります。

 先天性非交通性水頭症の代表的な原因を挙げてみましょう。

 中脳水道狭窄症: 第三脳室と第四脳室を交通する中脳水道という細い通路が先天性に狭窄もしくは閉塞していることによる水頭症です。思春期以降、高齢になってから症状が出現することがあります。内視鏡的第三脳室底開窓術の最もよい適応です。


図1 中脳水道狭窄症による非交通性水頭症、第三脳室底開窓術前後MRI所見

右上; 術前MRI T1矢状断撮影 右下; 術前MRI T2矢状断撮影

左上; 術後MRI T1矢状断撮影 左下; 術後MRI T2矢状断撮影

術前MRIでは矢印のごとく第三脳室底のballooningを認める。(右上下)

術後MRIでは第三脳室底は直線化し(左上矢印)、T2強調画像では脳室と脳槽でflow voidを認める。(右下矢印)

 脊髄髄膜瘤: 脊髄髄膜瘤に伴う水頭症は髄液の循環障害と吸収障害の両方の要素が関わる多因性病態といわれていますが、非交通性の要因が大きい水頭症では内視鏡治療を行うことがあり、第三脳室底開放術により随伴する脊髄空洞症も改善する可能性があります。

 頭蓋内嚢胞: 鞍上部や松果体、後頭蓋窩の嚢胞が水頭症の原因となります。内視鏡的に嚢胞を開放する方法があります。


図2 鞍上部くも膜嚢胞による非交通性水頭症のくも膜嚢胞開窓術前後MRI所見

上段術前、下段術後MRI T2強調 左;矢状断撮影 中;冠状断撮影 右;水平断撮影

上段では鞍上部くも膜嚢胞が第三脳室内に入り込んでおり中脳水道を閉塞している。術後、くも膜嚢胞は縮小し中脳水道に交通を示す所見を認める。

 その他、モンロー孔閉塞、キアリ奇形、ダンディー・ウォーカー症候群、頭蓋底奇形、脳腫瘍(松果体部奇形腫など)、血管奇形(松果体部血管腫など)によるものもあります。

 これらの原因による先天性交通性水頭症は、治療の項で後述する内視鏡による治療が有効である可能性があります。

病態生理

 脳の中には脳室と呼ばれる髄液で満たされた空間がありますが、脳室の形は複雑で、左右の側脳室と第三脳室、第四脳室に分かれており、側脳室と第三脳室はモンロー孔という名の直径3−4mmの穴で交通しており、第3脳室と第4脳室とは中脳水道という狭い通路で結ばれています。成人では、脳室の中と脳と脊髄の周りの髄液の量は約150mlで、1日に500ml産生されています。正常では、髄液の多くは両側の側脳室の脈絡叢という組織で産生され、そこから第三脳室、中脳水道、第四脳室へと流れ、第四脳室下端のマジャンディー孔と左右のルシュカ孔から脳と脊髄の表面(くも膜下腔や脳槽)へ流れて、くも膜顆粒という組織から吸収され、上矢状洞という静脈系へと流れると考えられています。

 水頭症とは、髄液が頭蓋腔内(主に脳室)に過剰に貯留した状態で、髄液が産生されてから吸収されるまでに、産生過剰(吸収できる能力の限界以上に髄液が作られる状態)、吸収障害(くも膜顆粒の機能低下による)、通過障害(髄液の通り道が狭くなったり塞がった状態)のいずれかの異常により拡大した脳室系に髄液が貯留することにより種々の脳障害を生じる病気です。

 脳室系の髄液循環路のどこか(モンロー孔や中脳水道、第4脳室の出口など)が狭窄または閉塞して生じる場合は、非交通性水頭症(閉塞性水頭症という場合もあります)と呼ばれ、髄液は脳室からくも膜下腔へ正常に流れることができません。その結果、脳室の形状は、閉塞部の上部の脳室は拡大し圧が高くなりますが、閉塞部より下流の脳室は拡大しません。これに対して、交通性水頭症と呼ばれるものは、脳室系の髄液循環路には閉塞がなく、脳室とくも膜下腔は正常に交通していますが、出血後のくも膜の癒着や髄膜炎後の炎症などのためくも膜下腔での髄液の流れが悪くなることや、くも膜顆粒の機能が低下し十分に髄液を吸収することができなくなるために髄液の産生・吸収のアンバランスが生じ、その結果、全脳室系が拡大する水頭症です。その他、脳室は拡大していなくても髄液が脳の表面に余分にたまる特殊な水頭症を外水頭症と呼ぶことがあります。

臨床症状

 小児の水頭症は、頭蓋縫合が開存している乳幼児期に発症する場合と、それ以降で症状が異なります。


自覚症状


 頭蓋縫合がまだ癒合していない乳幼児では髄液貯留による圧力が頭囲拡大によって代償されるため、頭痛、嘔吐といった一般的頭蓋内圧亢進症状は出現しにくいのですが、運動機能が鈍くなり児の元気がなくなります。これに対して、乳幼児期以降では頭蓋縫合が癒合するため、頭囲拡大がみられる頻度は少なくなり、比較的急性に水頭症が進行した場合には頭痛、嘔吐、眼底のうっ血乳頭をきたします。


他覚症状


 乳幼児では頭蓋縫合の離開によって頭囲が拡大し、顔面の成長に比べ頭蓋冠が拡大します。


図3 新生児水頭症の頭囲拡大

大泉門は開大。頭皮が菲薄化し、静脈が怒張、拡張している。

 頭皮は菲薄化し、頭皮の静脈が怒張し拡張します。大泉門は拡大緊満して膨隆するように触れます。一方、乳幼児期以降に比較的ゆっくりと頭蓋内圧亢進が進行した場合には、自覚的症状に乏しい一方、他覚的には発達遅滞や易刺激性、行動異常、学力低下、注意欠陥障害、二次性の視神経萎縮などによる矯正不能(眼鏡による矯正ができない)の視力障害や外転神経麻痺による複視(物が二重に見える)を呈することがあります。また、中脳水道狭窄症は成人以降に診断される場合もあり、高齢者にみられるような正常圧水頭症様の症状(歩行障害、認知障害、排尿障害の3つが主症状)を呈することがあります。

検査成績

 診断のためには、CTスキャンやMRIなどの画像検査が有用です。

超音波エコー検査: 新生児や乳児では超音波エコー検査が有用で、広く開いた大泉門から低侵襲で容易に頭 蓋内を観察することができ、側脳室や第三脳室までのテント上の観察は十分可能です。

 頭部単純X線写真: 頭部単純X線写真では頭蓋の拡大、頭蓋骨の菲薄化、縫合線の離開、拡大した第三脳室によるトルコ鞍の拡大と鞍背の脱灰の所見などがあります、縫合線がすでに癒合した年長児以降ではでは指圧痕がみられることがあります。

 CTスキャン: CTスキャンでは拡大している脳室のパターンから閉塞部位の把握ができます。

 MRI : MRIは任意の断面による観察が可能であり、合併する奇形の診断にも欠かせません。またCTスキャンで観察が難しい後頭蓋窩の描出に優れています。特に矢状断では、中脳水道、第四脳室出口、小脳、脳幹などの形態が正確に観察できます。

診断・鑑別診断

 診断におけるポイントは、1)急性か慢性か 2)交通性か非交通性か、さらに非交通性の場合には閉塞部位はどこか 3)先天性か後天性か、原因疾患はなにかについて臨床的ならびに画像から診断します。頭部MRIは矢状断撮影による閉塞部位の診断が可能であることと、髄液腔のflow void(髄液の速い流れがある部位に一致してみられるMR信号)やcine-MRI(髄液の流れを調べることができるMRIの撮影法)により髄液循環動態を知ることができ有用です。また、中脳水道から第四脳室出口までの経路の閉塞の場合、第三脳室底のバルーニングの有無が内視鏡的第三脳室底開窓術 (endoscopic third ventriculostomy, ETV)の有効性の指標として重要な所見です。

 頭囲拡大を伴わない年長児で画像上の脳室拡大を認め、水頭症と脳萎縮の鑑別が難しい例には、髄液の循環と吸収の評価のためにRI(111In-DTPA)を用いた脳槽シンチグラフィーが有用です。

治療

[水頭症に対する治療]

 水頭症に対する治療は、その原因や病態、年齢や合併症の有無により選択される手術法が異なります。よって、個々の水頭症患者さんに合わせた手術法が適切におこなわれなければなりません。水頭症に対する治療法を以下に挙げます。

* 超音波や頭部CTスキャン、MRI などによる経過観察

 水頭症が軽度で明らかな症状を認めない場合に選択されます。

* 頭皮下髄液リザーバー設置(オンマイヤレザボア設置)による排液

 脳室にドレナージチューブを挿入し皮下に穿刺用のバルブを埋め込みます。必要に応じて、皮膚の上から細い注射針で髄液を排出します。後述するシャント手術や内視鏡手術が困難な症例(体重が小さすぎる、腹腔内に異常があるため腹腔へのシャントができない、髄液タンパク濃度が高いなど)や、シャント手術でなくても軽快する可能性のある患者さんにおこないます。髄液排出のための穿刺は、十分な消毒のもとで清潔に操作をおこなわないと感染を合併する可能性があります。

* 外ドレナージ術

 頭蓋内出血急性期の血性髄液や髄膜炎などによる感染性髄液を排液する場合に脳室や腰部くも膜下腔にチューブを挿入し、ドレナージを体外に行なう方法です。髄液リザーバーと比べて持続的な髄液排出が可能である一方、チューブが体の外に出ており常に感染の危険があるため長期間の留置はできません。一般的には1週間から2週間でチューブを入れ替えるか、他の方法に切り替える必要があります。

* 髄液シャント手術

 シャント手術は一言で説明すると、過剰髄液を髄液腔外の体腔へ誘導する方法です。外ドレナージでは感染の危険があり管理が困難であるため、皮下に埋め込んだチューブを通して脳室やくも膜下腔の過剰な髄液を腹腔内や静脈内に流すことにより、半永久的な水頭症の治療が可能となります。1950年代から普及しました。髄液リザーバーからの排液では水頭症の進行を止めることができない場合や、多くの交通性水頭症の場合などに適応となります。

 現在、一般に脳室-腹腔シャント(ventriculo-peritoneal shunt : V-P シャント)術が行われています。他に過剰髄液を髄液腔外の体腔へ誘導する方法として脳室-心房シャント(ventriculo-atrial shunt : V-A シャント)術、腰部くも膜下腔-腹腔シャント(lumbo-peritoneal shunt : L-P shunt)術などが用いられています。ただしL-P シャントは頭蓋内髄液貯留腔と腰部くも膜下腔に交通がなければ効果がありません。

 髄液シャント手術において、チューブで髄液を流すだけでは髄液が流れすぎてしまうために起こる障害(低髄圧症候群)が高率に起こります。軽度の症状としては頭痛やめまいなどが起こりますが、頭蓋内圧が低くなるために頭蓋内出血を起こすこともあります。このため、通常髄液シャントを行う際にはチューブの間に圧格差を持たせて髄液の流量をコントロールするバルブを組み込みます。このバルブとシャントチューブを合わせてシャントシステムと呼び、現在利用できるシャントシステムにはいろいろな種類のものがあります。頭皮下に置くバルブには、通常、低圧、中圧、高圧の3通りがありますが、低圧では流れすぎて低髄圧症候群を合併し、中圧ではシャントの効果が少ないといった問題が起こることがあります。このため、最近は圧の設定を皮膚の上から磁石で変えるバルブ(可変式差圧バルブ)も開発され、症状に応じて術後も圧設定の変更が可能となっています。また圧により内部抵抗が自動的に変化する機能を持たせたバルブ(自動可変抵抗バルブ)も利用できます。また、寝ていた患者さんが立ち上がるとき、サイフォン効果が働き脳室の脳脊髄液が急激に流れることがあり、硬膜下血腫・水腫の原因となるため、体位変換による急な髄液流出を防止する目的のアンチサイフォン装置を付けることもあります。可変式差圧バルブの中には MRIなどの高磁場で設定圧が変化するものがあります。このため、シャント術を受けられた患者さんはどのようなシャントシステムが使われているか知っておく必要があると考えられます。

 出生時体重が2000g未満の新生児水頭症に対するシャント手術は、合併症を来たす危険性が高いので、頭皮下に髄液リザーバーを設置し、経皮的にリザーバーを穿刺して髄液を間欠的に排液することで頭蓋内圧をコントロールし、体重増加を待ってシャント術をおこないます。合併症の危険を可能な限り低くするためには、手術時の体重は2500g以上が望ましいといわれています。またシャント治療の後も、小児の水頭症では術後1年以内に脳室管の閉塞などにより30~40%にシャント機能不全をきたすといわれており、治療後のフォローアップが重要です。

* 内視鏡を用いた水頭症手術

 近年の脳神経外科領域の手術は、脳や神経の侵襲を最小限におさえる低侵襲な手術を重視する方向になっております。神経内視鏡分野(脳神経外科のおける内視鏡手術領域)においても1990年代になり光学機器と周辺機器の技術的、工学的改良進歩も手伝い、年々発展しておりその適応疾患と手術法は拡がりつつあります。神経内視鏡手術の特徴を一言でいえば、これまで脳を大きく切開しなければ見えなかった病変部位を内視鏡を用いることにより観察し処置できるようになったことです。神経内視鏡を用いることにより、従来は開頭しなければできなかった手技を内視鏡を用いることにより穿頭術(シャント術の脳室チューブ挿入に必要な穴と同程度の頭蓋骨の穴)でおこなうことが可能です。その結果、手術時間を短縮しより低侵襲な手術が可能となりました。

 脳室内病変、特に非交通性水頭症では神経内視鏡が一番威力を発揮する疾患と言えます。内視鏡手術は内視鏡先端に空間がなければ病変や周囲の構造物を観察することはできませんが、脳室内病変では透明な髄液に満たされた脳室のおかげで視野が確保できるわけです。さらに水頭症によって脳室が拡大していればより広い術野となるのです。髄液の流れが脳室系のどこかでせき止められて髄液が脳室に溜まる非交通性水頭症の場合には、せき止められた脳室と脳室、または脳室とくも膜下腔(脳槽)の間にほんの小さな交通をつけることができれば治癒するわけです。しかし内視鏡手術が発展する以前は開頭術でこの手術をおこなわなければならなかったため、より低侵襲である髄液シャント術で治療をおこなっていました。現在は非交通性水頭症を内視鏡で治療することにより、髄液シャント術の合併症であるシャント感染によるシャント抜去術やシャント不全によるシャント再建術から患者が解放されるようになりました。

 後天性非交通性水頭症の原因の一つに腫瘍に合併した水頭症があります。水頭症の治療を行うだけでなく、脳室内にできた腫瘍を診断する場合にも内視鏡は有用です。脳の奥深くの脳室内で、鉗子で腫瘍を採取する場合や、嚢胞の膜を開放するような簡単な操作は開頭せずに穿頭術で内視鏡を用いて手術した方が侵襲が少なくなります。また、脳の表面や脳室内や脳の深部の脳槽に存在し薄い膜で覆われ水様透明の髄液が充満した嚢胞であるくも膜嚢胞は、水頭症やてんかん、精神発達遅延などで発症した場合、穿頭術で内視鏡により嚢胞と脳槽に交通をつけることにより治療が可能であり内視鏡のよい適応です。

 非交通性水頭症に対する内視鏡手術には以下のような手術があります。

1. 内視鏡的透明中隔開窓術(片側モンロー孔閉塞の場合に有効です。)

1. 頭蓋内嚢胞開窓術(鞍上部くも膜嚢胞による非交通性水頭症などに有効です。)

1. 内視鏡的第三脳室底開窓術(中脳水道以降の非交通性水頭症に有効です。)

内視鏡的第三脳室底開窓術の手術方法

 体位は仰臥位で、頭部を30度程度前屈します。内視鏡は外径4mmまたは4.8mmの軟性鏡を使用します。前頭部に3cm程度の皮膚小切開を置き頭蓋骨穿頭(直径8mm)をおこないます。試験穿刺針で試験穿刺後、側脳室前角へ16Fのピールアウェイシース(内視鏡挿入用の外筒)を挿入しその後に軟性鏡を挿入します。側脳室内では脈絡叢,中隔静脈,視床線条体静脈が観察できます。閉塞が中脳水道以降に存在する場合にはモンロー孔を経由し内視鏡の先端を第三脳室内へ進めます。第三脳室内では両側の乳頭体、漏斗陥凹、灰白隆起、視神経交叉、中脳水道が確認できます。(図4左)第三脳室底解放は、灰白隆起を生検鉗子の先端で鈍的に穿孔しバルーンカテーテルを用いて拡大します(図4右)。穿孔した対側は脚間槽であり、脳底動脈が観察可能です。脳室内腫瘍を伴う場合には生検鉗子を用いて腫瘍の生検を同時に行うことも可能です。



図4 内視鏡的第三脳室底開窓術内視鏡所見

M; 乳頭体 I; 漏斗陥凹

第三脳室底を鈍的に穿孔し(写真右)、穿孔部を、バルーンを用いて拡張している所見。

 手術適応については、非交通性水頭症の治療の第1選択となる可能性がありますが、原因疾患や、閉塞部位、年齢によって治療成績が異なるのでポイントのみを挙げます。

1. 非交通性水頭症のシャント機能不全の場合に内視鏡的第三脳室底開窓術によって80%以上の
症例でシャント抜去可能になります。
2. 非交通性水頭症であれば、出血の既往があっても61%で、髄液感染の既往があっても64%は
内視鏡的第三脳室底開窓術が有効です。
3. 年齢については、意見の分かれるところですが、内視鏡的第三脳室底開窓術による良好な治療
成績が期待できるのは2歳以上であるという意見が多いです。
4. 脊髄髄膜瘤に伴う水頭症の内視鏡的第三脳室底開窓術の成績は2歳以上であれば約80%です。
5. 開窓部の閉塞による急激な頭蓋内圧亢進症は、術後長期的にも発生することがあり、最悪の場合
には死亡することがあるため、長期にわたる術後の観察が必要です。

予後

 合併奇形や器質的脳障害のない単純性水頭症では、適切な時期のシャントなどの治療により50~70%程度に正常な知能発達を期待できますが、奇形や脳障害に合併する水頭症の機能予後は、術前の脳損傷の程度によってさまざまです。髄膜炎、新生児(未熟児)頭蓋内出血、高度の脳奇形に合併する水頭症では発達遅滞を残すことが多く、中脳水道狭窄や脊髄髄膜瘤に合併する水頭症では比較的良好な発達が期待できます。

参考:正常圧水頭症について

 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus; NPH)は交通性水頭症に属し、成人で認知障害、歩行障害、尿失禁の3徴候を呈し、脳室拡大を認めますが、腰椎穿刺で測定した髄液圧は正常範囲内であり、しかも髄液シャント手術を行うことによって症状が劇的に軽快する主に高齢者にみられる症候群であり、臨床症状、検査成績、診断等はその他の水頭症と区別します。

 正常圧水頭症の原因は、くも膜下出血(続発性NPHの原因として最も多い)、頭部外傷、髄膜炎など、クモ膜下腔に瘢痕性癒着を生じ髄液の循環障害の原因となる先行性疾患を有するもの(続発性正常圧水頭症)と、原因疾患のみあたらないもの(特発性正常圧水頭症)に大別されます。

 正常圧水頭症の病態については、未だに十分に解明されていない点が多くあります。そもそも、髄液循環路障害が原因であれば頭蓋内圧は高くなるはずにもかかわらず、正常圧であること自体が不明です。これを説明する説としては、正常圧水頭症の発症原因には髄液循環障害だけではなく脳実質にも異常が存在するという説や、最初は脳圧が高かったけれど、脳室が拡大することで代償作用が働き、正常圧に下がった病態であるとする説があります。また、症状が出現する理由としては、髄液圧は正常範囲にあっても、脳室壁にかかる拍動圧が正常脳より強いため、脳室拡大が進行し症状が出現すると説明されています。

 歩行障害、認知障害、排尿障害の三症状が主症状とされています。特発性正常圧水頭症では歩行障害が最も重要な症状で、また、歩行障害がみられればシャント手術の効果が期待できるともいわれています。一方、くも膜下出血後の正常圧水頭症は、手術後の臥床期間に発症することが多いため、歩行障害が気付かれず、精神症状や意識障害が主な症状となります。

 歩行障害 : 歩行はゆっくりとなり、歩行が不安定となります。歩幅は減少し小刻みな歩行となります。障害が強くなると、立位を保持することができなくなります。

 認知障害(痴呆):持続的に注意を集中することが困難になり、思考や反応、作業速度の低下や記憶の障害を認めます。そのほか書字の障害や細かい作業が困難になります。

 排尿障害:3徴候の内で尿失禁は最も遅く出現する症状で、その出現頻度も他の二つの症状に比べるとやや少ないとされています。排尿が間に合わないための切迫性尿失禁のほか、無関心からくる失禁があります。

 正常圧水頭症において、CTスキャンやMRI検査は水頭症の診断に必要な検査であるとともに、他の認知症との鑑別にも有用です。CTでは脳室の拡大の所見と脳室周囲低吸収域(periventricular lucency, PVL)を認めます。特発性正常圧水頭症では、MRI検査で脳室拡大所見に加えてシルビウス裂の拡大や高位円蓋部(脳のてっぺんの辺り)の脳溝やくも膜下腔の狭小化所見を認めます。その他の検査としては、RI(アイソトープ)脳槽造影やCT脳槽造影検査により、造影剤の脳室内逆流と脳表での停滞所見が診断の手助けとなります。

 正常圧水頭症はCTやMRIで脳室拡大の所見があり、腰椎穿刺から髄液排出試験(30mlの髄液排出)または持続腰椎ドレナージ(腰椎から管を髄腔内に入れて持続的に髄液を排出します)により、症状の改善を認めた場合にはシャント術の効果が期待されます。鑑別診断としては、アルツハイマー病や脳血管性認知症などの疾患やパーキンソン病やパーキンソン症候群などが挙げられます。

 正常圧水頭症の治療はシャント術が主体となります。手術が実施できない患者さんには腰椎穿刺により髄液排除を繰り返すことで症状改善が持続する場合もありますが、長期の効果はあまり期待できません。余分な髄液を皮下のチューブでシャントを作り、脳室−くも膜下腔系以外の体腔に導入し、そこで吸収させる手術です。手術の方法は前述の通り、(1)脳室−腹腔シャント、(2)脳室−心房シャント、(3)腰部くも膜下腔−腹腔シャントの3通りです。どの術式をとるかは、各医療機関によって方針が異なりますが、最も多く施行されているのは、脳室から腹腔へとチューブを通し、髄液を腹腔で吸収させる脳室−腹腔シャント術)です。

参考文献

1. 西原哲浩.先天性閉塞性水頭症.CLINICAL NEUROSCIENCE. 24: 1231-1233, 2006.

1. 伊地俊介.水頭症.小児内科vol.38 増刊号:658-659, 2006.

(MyMedより)推薦図書

1) 後藤和宏 監修:図解入門 よくわかる最新「脳」の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book),秀和システム 2009

2) 株式会社医学映像教育センター・新井一(順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経外科 教授) 俳優:ドクターズ・アイ 医者がすすめる専門医 VOL.34―水頭症,医学映像教育センター 2005

3) 山崎麻美 著:子どもの脳を守る―小児脳神経外科医の報告,集英社 2007

4) 金森勇雄・井戸靖司 著:最新・X線CTの実践 [診療画像検査法],医療科学社 2006

5) 渡辺雅彦 著:みる見るわかる脳・神経科学入門講座 改訂版(後編)―はじめて学ぶ、情報伝達の制御と脳の機能システム,羊土社 2008

6) 千葉厚郎 監修:ナースのための早引き脳神経疾患ハンドブック,ナツメ社,2008

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