MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2008.06.11

多型浸出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)

Erythema Multiforme(EM)

執筆者: 奥山 伸彦

概要

多型浸出性紅斑は、四肢などに対称性に特徴的な標的状の紅斑を呈する予後良好な疾患である。単純ヘルペスウイルス(HSV)などの感染症や薬剤に対する過敏反応が原因と考えられ、病理学的にはケラチノサイトに対する免疫学的障害がみられる。多くは自然経過で軽快し、治療は対症的だが、反復例にはHSVに対する抗ウイルス療法や免疫的治療を要する場合がある。かつて、スティーブンス・ジョンソン症候群(STS)や中毒性表皮壊死症(TEN)と同じ病態の軽症例と考えられたが、現在は異なった疾患と考えられている。

病因

過敏反応の原因には、感染症と薬剤が考えられている。感染症としては半数以上でHSVの関与が疑われる。次にマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、真菌などである。他にジフテリア/破傷風ワクチン、B型肝炎ワクチン、水痘ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどの報告がみられる。薬剤としては、フェノバルビタールやヒダントインなどの抗痙攣薬、非ステロイド系抗炎症薬、ペニシリンやサルファ剤などの抗菌薬、フェノチアジンなどの報告が多い。

反復例では、やはり半数以上でHSVの関与が疑われるが、組織学的にHSVが証明されても、HSV感染症の症状との関連は必ずしも明らかではない。

病態生理

HSVによるものについては、末梢血単核球に取り込まれて播種されたHSVが皮膚のケラチノサイトに表出され、それがHSV特異的CD4陽性Tリンパ球に認識され攻撃されるという細胞性免疫機序による遅延型アレルギー反応が考えられている。一方で、必ずしもTh1反応による組織障害ではないとの考えもあり、すべてが明らかではない。

病理では皮疹の縁にあたる発赤部位では、真皮層の浮腫と単核球の血管外浸潤がみられ、中心部の蒼白部位ではケラチノサイトの壊死像や表皮化がみられる。

臨床症状

自覚症状

自覚的には関与する感染症の症状以上のものはなく、時に発熱、関節痛などの軽い前駆症状を伴うが、皮膚についても痒みや痛みなどの症状は軽度である。

他覚症状

対称性、播種性に、主に四肢伸側遠位部、顔面に出現する、はじめは赤色あるいはピンクの発赤疹が、扁平、標的状(虹彩様)の浮腫状紅斑に変化し、中心部に灰色の脱色部がみられ、紫斑、さらには水疱を伴うことがある。Nikolski現象はみられない。SJSやTENとの違いは、EMでは標的状紅斑がみられることの他に、水疱を含む皮膚剥離病変は皮膚の10%以下で、粘膜病変も口腔内など一部に限られることである。3〜5週で自然消褪し瘢痕は残さないが、再発もみられ、年数回、数年以上繰り返すことがある。

検査成績

原因となる感染症について以外に、多型浸出性紅斑として特異的な検査所見はない。

治療

原因の可能性のある薬剤は中止する。感染症については早期であれば有効である場合があり、マイコプラズマ感染症では治療を併用するが、一般的には、抗ヒスタミン薬の内服,ステロイド外用で対症的に治療する。ステロイドは症状に対しては有効とする意見はあるが、HSVによる反復発症を助長すると言う意見があり、明らかなエビデンスはない。HSVの関連が疑われても経口Acyclovirは早期、あるいは反復例についてのみ有効と考えられている。また、反復す難治例には、Azathioprineなどの免疫抑制剤が有効との報告もあるが、エビデンスは十分ではない。

予後

小児期では良好で、数週で自然治癒する。反復例はHSVの関与するものと原因不明のものがあるが、重大な合併症の報告はない。

診断・鑑別診断

特徴的な標的状皮疹がみられれば診断は容易である。皮膚生検では、組織的には非特異的で、診断的ではない。

鑑別診断に、薬疹、蕁麻疹、光線過敏症、ウイルス感染に伴う発疹、その他蕁麻疹性血管炎やアレルギー的皮疹がある。発症時は蕁麻疹と似ているが、蕁麻疹は短期間で出現、消退を繰り返すことで区別する。

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: