急性小脳失調症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.19

急性小脳失調症(きゅうせいしょうのうしっちょうしょう)

執筆者: 高橋 寛

概要

 ウイルスや細菌感染症の回復後や予防接種後の一定期間(罹患や接種後10日程度、1ヶ月以内)をおいてから小脳症状を呈する症候群であり、急性小脳炎と同義といえる。小児に多く、大部分は自然軽快する予後良好の疾患である。

病因

 先行感染が約8割に認められ、多くは水痘帯状疱疹、EB、ムンプス、コックサッキー、エンテロウイルス等のウイルス感染である。細菌感染としては、サルモネラ、溶連菌が知られ、他にはマイコプラズマ感染もみられる。予防接種後としてはDPT、インフルエンザ、B型肝炎ワクチン等の報告がある。

病態生理

 発症機序は未だ解明されていないが、自己免疫が関与しているといわれている。ウイルスや細菌に対する抗体が小脳の細胞と交叉反応を起こし、神経細胞障害や脱髄が生じると考えられている。しかし病原体の直接侵襲を示唆する報告もある。

臨床症状

 ウイルスや細菌感染症などの先行感染や予防接種後、一定期間(罹患や接種後10日程度、1ヶ月以内)をおいてから発症することが多く、症状の発症は一般に急性である。病変部位によって症状は異なり、小脳半球病変では失調性歩行、企図振戦、眼振、構音障害などがみられ、小脳虫部病変では体幹失調が主体となる。ときに小脳から脳幹に病変がおよび、脳神経症状(顔面神経、外転神経、舌咽神経麻痺など)や錐体路症状を認めることもある。大脳病変でみられる意識障害、けいれんなどは一般には認めないが、頭痛などの髄膜刺激症状や行動異常を示す例もまれにはある。発熱は伴わないことが多い。症状のピークは1週間以内であることが多く、大多数は徐々に自然軽快して3週間までにほぼ改善、2ヶ月以内に治癒する。

検査成績

 一般血液検査、尿検査は正常である。血清抗体化の上昇により先行感染ウイルスが明らかになることがある。髄液所見では軽度の細胞増多や蛋白増加、オリゴクローナルバンド、IgGインデックスの上昇を認めることがあるが、疾患特異的なものはない。髄液のウイルス、細菌培養は一般には陰性である。頭部MRIでは異常所見を認めない例も多いが、一部の症例では小脳半球、小脳虫部、小脳脚、脳幹などに、T2強調画像やFLAIR画像で高信号域を認めることがある。拡散強調像での高信号検出の報告もみられる。造影MRIで病変部の増強効果が認められることもある。頭部CTでは小脳に低吸収域が認められることがあるが、MRIに比して感度は低い。
 脳機能の評価としては時にSPECTが有用であり、MRIで形態学的に正常な例で小脳の血流変化の報告がある。脳波検査では徐波化など非特異的な異常を認めることがある。しかし診断の決め手となる疾患特異的検査所見がないため、各種検査によって小脳失調を来す他の疾患(小脳腫瘍、脳幹腫瘍、多発性硬化症、ADEM、代謝性疾患、中毒など)の除外が必要である。  

治療

 一般的に投薬の必要はなく、十分に除外診断を行った上で診断が確定すれば、経過観察のみで良い。症状のピークが過ぎ、ある程度の改善をすれば退院して外来にて経過をみる。 症状が強い場合や遷延した場合は、免疫学的機序による炎症をターゲットにした積極的治療を行うことがある。副腎皮質ステロイド(メチルプレドニゾロン・パルス療法やプレドニゾロン内服)、γグロブリン大量療法、免疫抑制剤による治療があるが、有効性は確立されていない。 

予後

 予後良好な疾患であり、大部分は数週間から数ヶ月で自然軽快、治癒する。しかし症状の改善は緩徐であることが多く、ピークを過ぎて退院した後も完全に回復するまでには経過観察を必要とする。また、一部の症例で小脳症状や錐体路症状などの後遺症を残したり、再発したりする報告もある。

参考文献

・五十嵐隆 編:小児疾患診療マニュアル,中外医学社 2005
 
・Kenneth F.Swaimann,et al; Pediatric Neurology:Principles&Practice 4th edition, Elsevier;2006

(MyMedより)推薦図書

1) ジョン ガーウッド・アマンダ ベネット 著, John Garwood・Bennett Amanda 原著、青木玲 翻訳、山田真 監修:小児科へ行く前に―子どもの症状の見分け方,ジャパンマシニスト社 2000

2) 山城雄一郎:新小児科学 (Qシリーズ),日本医事新報社 2005

3) 吉開泰信 編集:ウイルス・細菌と感染症がわかる (わかる実験医学シリーズ),羊土社 2003
 

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