血漿吸着 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

血漿吸着(けっしょうきゅうちゃく)

plasmaadsorption

別名: アフェレシス

執筆者: 中村 司

概要

 アフェレシス治療は近年飛躍的に進歩しアフェレシス療法に携わっている関係者には抵抗なくうけいれられてきてはいるが、一般医家にはまだ、なじみの少ない治療法である。アフェレシス治療の適応病態は
1.抗体・免疫複合体などを処理する免疫疾患群ー膠原病など 
2.血漿粘度に大きく作用する巨大血漿蛋白を処理する高粘度血症群ー原発性マクログロブリン血症など
3.肝性昏睡起因物質除去と凝固因子補充を行うことによる肝不全群である。
 しかしながら医療の進歩とともにアフェレシス適応が拡大してきており、現在保険適応拡大にむけ学会関係者を中心に努力している。
 これまでのアフェレシスは、便宜的に治療を目的とした治療的アフェレシスと血液成分の採取を目的としたドナーアフェレシスに分類されていた。現在、幹細胞移植や再生医療分野におけるドナーアフェレシス技術の治療への応用は拡大し、アフェレシス学会の演題もこの分野において飛躍的に増大し、シンポジウムでも熱心な討論がされている。アフェレシスの呼称は1986年に東京で開催された第1回世界アフェレシス国際会議から使用され、日本においても1992年に日本アフェレシス学会が誕生した。生体内の種々の血液関連因子を分離除去して治療する広範な医療技術を総称した「アフェレシス」という言葉、概念は定着しつつある。今回、日本アフェレシス学会編集の「アフェレシスマニュアル」にそって「血漿吸着」に関して概説する。

病因

 アフェレシスの対象となる疾患の特性は
1.病因、病態がはっきりしないことが多い。
2.病型や臨床経過が多種多様でアフェレシスの臨床評価評価が難しい。
3.難治性、治療抵抗性であり、倫理的にdouble-blind試験が施行しにくい。
4.疾患そのものがまれで、症例数が集めにくくrandomized, large-scaled研究が施行しにくいなどがあげられる。
 吸着方式のアフェレシス療法は種々の吸着材に血液あるいは血漿をかん流することにより、血液中の有害成分、毒素、免疫グロブリン、白血球成分などの病因、あるいは病因物質を除去する治療法である。吸着材にかん流する血液分画により、全血をかん流する直接血液かん流法(direct hemoperfusion, DHP), 血漿をかん流する血漿かん流法(plasma perfusion, PP)に分類され、近年、治療特性を反映させ、それぞれ血液吸着療法(hemoadsorption, HA), 血漿吸着(plasma adsorption)とも呼称されている。また、吸着療法の種類をまとめる。

1.血漿成分の吸着
   A.免疫吸着ー免疫疾患
   B.脂質吸着ー高コレステロール血症
   C.ビリルビン吸着ー肝性昏睡
   D.エンドトキシン吸着ー敗血症
   E.ベータミクログロブリンー透析アミロイド
   F.血液型抗体吸着ー血液型不適合腎移植

2.細胞成分の吸着
   A.白血球吸着ー潰瘍性大腸炎、関節リュウマチ
   B.リンパ球吸着ー皮膚疾患、免疫吸着
   C.T細胞吸着ー多発性硬化症

病態生理

 DHPは古くから活性炭が使用されており、血漿分離がないため操作が簡便で、血漿分離器も不要なため医療費も安いなどの利点があったが、血球成分が吸着材と接触する時に血球成分の捕捉・変性をきたすなどの問題があった。一方、PPは病因物質である大分子血漿成分を特異的・選択的に除去する方法として開発された。技術的に血漿分離操作を必要とするため操作が煩雑であり、臨床工学士が操作を覚えるの手間がかかるが、吸着材が血球と接触することによる副作用は回避され、血液適合性が悪い材料でも吸着材として使用できる利点がある。DHPとPPの代表的な病態整理をまとめる。

DHP

1.活性炭

 吸着原理は活性炭の微細孔に入り込む分子量100-5000の物質の可逆的物質吸着である。活性炭の炭素原子が腕を伸ばして疎水結合により物質吸着を行っている。代表的な疾患として睡眠薬中毒、農薬中毒、抗不整脈薬中毒に使用される。農薬中毒は都心では遭遇することはまれであるが、農村地域では時々あるが、2008年中国性餃子事件があり管理がさらに厳しくなり今後はかなり減少することが予測される。また、農薬の中でも特にパラコート中毒は重症であり、DHP+血液透析なども併用するが、最終的に肺線維症を合併しほとんど救命できない。著者らが過去15年でパラコート中毒患者20名のDHP治療を施行したが救命できたのは2症例しかいない。

2.エンドトキシン
 ポリミキシンBをリガンドとした線維状の吸着体トレミキシンが代表である。吸着原理はポリミキシンB分子内のアミノ基に由来する正荷電とエンドトキシンの活性中心であるリピドA部分のリン酸イオンの負荷電の静電結合や、ポリミキシンBの直鎖部位とリピドAの脂肪酸とのいずれも疎水性分子鎖間の疎水結合が主体をなしている。著者らはアフェレシス療法の中でもこの治療を特に専門としており、別項に詳細に治療成績などを総括する。

3.ベータ2ミクログロブリン吸着

 親水性多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化したリクセルはリガンドとベータ2ミクログロブリンの疎水的相互作用により吸着する。吸着表面の穴の大きさを調整し、アルブミンなどの分子量2万以上のたんぱく質は侵入できないようになっていて、分子量2万以下のベータ2ミクログロブリンや各種サイトカインを吸着するのが特徴であり、現在では透析アミロイド症治療に使用されているが、今後サトカイン除去を目的とした炎症疾患、敗血症に応用することが期待されている。

4.liposorbr DL

 デキストラン硫酸を多孔質セルロースビーズに固定した血漿かん流法のリポソーバーと同様にLDL表面の陽性荷電したアポタンパクBがデキストラン硫酸と静電結合することを利用したLDL吸着体である。家族性高脂血症、閉塞性動脈硬化症などの治験が施行された。

PP

1.疎水的相互作用による吸着材

 水溶液中で疎水性の物質同士が水との接触を少なくするように互いに接近する疎水的相互作用により吸着がなされる。抗アセチルコリンレセプター抗体(重症筋無力症)、免疫複合体、抗DNA抗体’SLE)、リュウマチ因子(RA)などの疎水性病因物質を吸着する。すなわち、自己免疫疾患や免疫性神経疾患に適応されること多い。

2.静電的相互作用による吸着材

 多孔質セルロースビーズの担体にデキストラン硫酸をリガンドしたセレソープとリポソーバーがあり、前者では吸着物質の分子量に合わせて多孔質担体の孔径が小さく、後者では吸着物質の分子量に合わせて孔径が大きくされている。セレソーブはSLE、リポソーバーは家族性高コレステロール血症、閉塞性動脈硬化症、巣状糸球体硬化症に適応があり、著者らの施設では閉塞性動脈硬化症に使用する頻度が多い。

3.抗原抗体反応による吸着材

 重症筋無力症の治療に使用されるメディソーバMGは多孔質セルロースビーズの担体に合成ペプチドをリガンドした吸着カラムである。血中のアセチルコリンレセプター抗体は、このペプチドとの抗原抗体反応により吸着される。

4.イオン結合による吸着材

 劇症肝炎や術後肝不全において胆汁酸やビリルビンの除去を目的とするプラソーバBR,メディソーバBLはスチレンジビニルベンゼン共重合体ビーズを吸着材とするカラムである。この吸着材は生体適合性が悪いため血漿吸着に使用される。
     

臨床症状

1.肝疾患

(1)劇症肝炎と重症急性肝不全
 劇症肝炎および重症急性肝不全は、急激かつ広範な肝細胞壊死を伴う高度の肝機能障害により、肝性脳症をはじめとする肝不全症状を呈する。劇症肝炎は、肝炎のうち症状発現後8週間以内に高度の肝障害による肝性昏睡II度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示す。発病後10日以内に脳症が発現する急性型と、それ以後に発現する亜急性型がある。日本では劇症肝炎はウイルス肝炎および薬剤に起因するものとされ、欧米に多いきのこ中毒、急性妊娠性脂肪肝およびwilson病などの代謝異常によるものは劇症肝炎とは区別されている。初発症状は全身倦怠、発熱、黄疸、食欲不振、腹部膨満などの急性肝炎の症状であり、薬剤性では発熱、皮疹などが多い。劇症肝炎ではこれらの初発症状に加えて、さらに意識障害、黄疸増悪、腹水、下血などの肝不全症状が出現する。図1に劇症肝炎の肝組織を示す。肝細胞が広範に壊死に陥っている。

(2)術後肝不全
 術後肝不全はオペを契機として高度に肝機能が障害され、黄疸、意識障害、血液凝固異常、腹水などの症状を呈する。術後肝不全は肝炎型と循環障害型の2型に大別される。肝炎型とは輸血による肝炎ウイルスや麻酔、抗生剤などの薬剤が原因で、術前肝障害の有無と無関係に発生する。急激かつ広範な肝細胞壊死により多くは術後2週間以内に発症し、GOT, GPTの著増に続いて黄疸と高度意識障害、消化管出血などの肝不全状態が急速に進行する。循環障害型とは、オペ中の大量出血や低血圧、心不全、感染症などが原因となることが多いが術前に肝障害を有する症例に発症しやすい。慢性肝炎や肝硬変を有する患者の肝細胞癌に対しては、術前に肝予備力を十分に評価してのオペ適応を考慮するので肝切除後の肝不全による死亡は減少しているが、肝切除以外のオペ、たとえば心臓手術後に肝不全を合併する症例はけっしてまれではない。

2.腎疾患

(1)急速進行性糸球体腎炎 (以下RPGN)
 詳細は別項にあるので簡単に概説する。RPGNは男性に多く、10歳代から80歳代までのすべての年代に発症するが、30-60歳代に多くみられる。1990年代では症例的にはそれほど多い疾患ではなかったが近年増加している。著者らの施設では、特に60歳以上にP-ANCA陽性のRPGNが増加している。上気道感染などの先行感染に引き続き全身倦怠、尿量低下、浮腫、血尿、高血圧などの症状で発症し、ネフローゼ症候群を呈することもまれではない。予後は不良であり数週から数ヶ月で末期腎不全に陥ることが多い。

(2)巣状糸球体硬化症 (以下FGS)
 FGSは組織学的には限られた糸球体の1部分に分節的に硬化性病変は発生する疾患であり、ステロイド抵抗性の難治性ネフローゼ症候群を呈し、腎機能が早期に低下し、末期腎不全に陥ることが多い。病因として糸球体上皮細胞の障害をきたす免疫学的機序、過剰濾過、高脂血症などが報告されている。全身浮腫などにより急激に発症し、1日10g以上の大量の尿蛋白を呈することが多く治療に苦慮することが多い。

(3)膜性腎症 (以下MN)
 MNは糸球体基底膜の上皮側にびまん性の免疫複合体の沈着をきたす疾患である。成因として原因が明らかではない特発性と、悪性腫瘍、薬剤、肝炎、膠原病などに伴う2次性がある。日本での腎生検の結果から原発性糸球体腎炎の約10%、ネフローゼ症候群の約30%を占めることが報告されている。ネフローゼ症候群を呈することが多いが、発症はゆるやかであり、検診などにより無症候性蛋白尿として発見されることもまれではない。尿蛋白量の変動も大きく、選択性もさまざまである。悪性腫瘍に伴うMNの症例が近年増加している。著者らの施設でも60歳代のネフローゼ症候群の患者が紹介入院となり、腎生検によりMNと診断され、腫瘍マーカーであるCEAが20のため(正常5以下)大腸ファイバー施行しS状結腸に癌が発見され、摘出術後1ヶ月で蛋白尿が消失した症例を経験した。

(4)糖尿病性腎症
 近年、透析導入患者の第1位であり、全透析患者の40%以上を占めている。ネフローゼ症候群を呈し全身浮腫を主訴に入院する症例も増加してきている。厳密な血糖、血圧管理、食事指導により改善する症例もあるが、ステロイド投与ができないため(糖尿病のコントロールがさらに不良になる)治療に苦慮する症例もまれではない。後に治療の項目で概説するが、アフェレシス療法が有効な症例も多い。図2に糖尿病性腎症の代表的な腎生検像を示す。

3.膵疾患

重症膵炎は膵臓局所の炎症により惹起される全身炎症性反応症候群(以下SIRS)が重症化した状態と考えられている。すなわち、膵臓の炎症によって、免疫担当細胞から過剰に産生されたサイトカインが血中で高値となり、サイトカインストームと呼ばれる状態となり、SIRSを発症する。さらにSIRSが重症化、遷延化すると多臓器不全へと進行する。敗血症性ショックを合併することもまれではない。図3に重症急性膵炎のCTを示す。

4.心疾患

(1)冠動脈疾患
 アフェレシスの適応の1番は家族性高脂血症(以下FH)に伴う冠動脈疾患である。最も多いのが狭心症や心筋梗塞で治療を受けている過程で難治性高コレステロール血症やアキレス腱肥厚などによりFHと診断される症例である。また、高コレステロール血症の治療過程で冠動脈疾患が発見される症例も多い。小児のホモFH患者症例もけっして少なくなく、国立循環器病センターを中心に患者ネットワークも整備され、患者、家族、医療スタッフで治療にとりくんでいる。小児期に重症の冠動脈疾患を有し、狭心症症状を頻発する症例もある。また、近年、心臓移植の適応がある拡張型心筋症において通常の治療だけでは死をまぬがれない症例において心筋抗体の吸着療法が開発されている。

(2)閉塞性動脈硬化症(以下ASO)
 ASOは動脈硬化により末梢血管の閉塞をきたす疾患であり、骨格筋虚血を主病態とする。四肢をかん流する末梢動脈に動脈硬化が進行し内くう狭窄が進行して、阻血症状が出現する。特徴的な自覚症状として一定距離を歩行後下肢に疼痛を感じ、休むことによって痛みが軽快する(間欠性は行)。虚血が進行し、側副血行の発達が不十分であると、安静時にも症状が出現する。下肢冷感、蒼白、しびれ、焼けるような感覚異常も起こってくる。さらに進行すると難治性潰瘍から壊死になり下肢切断する症例も増加している。

閉塞性末梢動脈硬化症の病期分類 (Fontaine)
I度:冷感、しびれ
II度:間欠性は行
III度:安静時疼痛
IV度:潰瘍、壊疽

アフェレシス療法適用基準
1.Fontaine分類II度以上の症状を有する。
2.薬物療法で血中総コレステロール値220mg/dlあるいはLDLコレステロール140mg/dl以下に低下しない。
3.膝か動脈以下の閉塞、または広範な閉塞部位を有するなど外科的治療が困難で、かつ従来の薬物療法では十分な効果がえられない時。
5.膠原病関連疾患

(1)SLE
 膠原病の代表であり、比較的若年の女性に多い疾患であり、原因不明であるが遺伝的要因、内分泌要因、免疫学的要因、環境要因などの関与が報告されている。多数の臨床症状を呈するので簡単に総括する。

全身症状:倦怠感、発熱など(特異性なし)
筋骨格:関節痛、関節炎
皮膚粘膜:80%以上にある。日光過敏、蝶形紅斑、ディコイド皮疹、脱毛、粘膜疹
腎:ループス腎炎は約50%ある、
精神神経:多彩である。躁鬱、痙攣、意識障害など
心・肺:心外膜炎、心筋炎、冠動脈疾患、不整脈、胸膜炎、肺臓炎、肺高血圧
消化器:潰瘍など
血液:貧血、出血傾向、リンパ節腫脹

(2)抗リン脂質抗体症候群
 抗リン脂質抗体症候群は血栓症を惹起する病態として1980年代に提唱され、その後1998年にSapporo criteriaが新たに提唱された。

臨床基準

1.血栓症
画像診断、ドプラー検査または病理学的に確認されたもの

2.妊娠合併症
妊娠10週以降で、他に原因のない正常胎児の死亡
重症子癇前症、子癇または胎盤機能不全による34週以前の形態学的異常のない胎児の1回以上の早産
妊娠10週以前の3回以上継続して原因不祥の流産
抗リン脂質抗体症候群の合併を認める疾患

1.自己免疫疾患ーSLE, RA, PSS他
2.薬剤性ループス様症候群
3.感染症
4.悪性腫瘍
5.血液疾患
6.その他

抗リン脂質抗体症候群との関連病態

1.静脈血栓症
2.動脈血栓症
3.習慣性流産
4.血小板減少症
5.その他

著者らの施設でもくりかえす早流産の既往があり、呼吸苦のため初診となり、肺血栓症と診断され、精査の結果当疾患であることが判明した症例もある。

(3)ANCA関連血管炎
 血管炎を基盤としてもたらされる多種多様の臨床病態を血管炎症候群と総称し、抗好中球細胞質抗体(以下ANCA)が病態形成に関連する疾患群をANCA関連血管炎と呼称する。この中には顕微鏡的多発血管炎(MPA)、Wegener肉芽腫症(WG)、アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA, CSS)が含まれる。ANCA関連血管炎の中約35%がMPA、約30%がWG、約10%がAGAと推定されている。MPAは発熱体重減少と、壊死性半月体性腎炎による急速進行性腎炎と肺出血を認め、紫斑、消化管出血、多発性神経炎などの血管炎症候を呈することが多い。WGは鼻、眼、耳、上気道、肺の壊死性肉芽腫、全身の中・小血管の壊死性肉芽腫性血管炎、壊死性半月体形成性腎炎を3徴とする。AGAは発症に先行して気管支喘息やアレルギー性鼻炎などを認め、その後種々の血管炎症候、肺病変が出現する。

(4)悪性関節リュウマチ(MRA)
 MRAは既存のRAに血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床状態を伴う。症状:1.多発性神経炎 2.皮膚潰瘍 3.皮下結節 4.上強膜炎 5.滲出性胸膜炎 6.心筋炎 7.間質性肺炎 8.臓器梗塞 などがある。

6.神経・筋疾患

(1)ギラン・バレー症候群(GBS)
 GBSは感冒や消化器症状などの前駆症状後数日から数週間以内に四肢末梢のしびれ感、両下肢の脱力にて発症し、進行とともに症状は上行する。以前はビールスが原因と考えられてきたが、現在Campylobacter感染による抗GM1抗体との関連が報告されている。神経症状は4週間以内にピークに達するが、ほとんどは2週間以内に完成する症例が多い。運動優位の神経症状であるが、一般的には遠位優位であるが、病変が末梢神経の近位に強い時は近位筋力が低下する。急速に進行する場合、呼吸筋の障害が見られ、自力呼吸が不可能となり、気管内挿管が必要な症例も決してまれではない。脳神経症状は高頻度で認められ、顔面神経麻痺、外眼筋麻痺が最も多い。四肢の深部腱反射は全般に低下、消失する。通常は3-12ヶ月で回復し軽快することが多いが約5%が死亡し約10%に重篤な後遺症が残る。著者らの施設でもでも入院ご3週間で呼吸筋が麻痺し自力呼吸困難のため気管内挿管し、その後四肢麻痺の改善も悪く、杖歩行にて退院できるまで約18ヶ月を要した症例を経験している。

(2)重症筋無力症(MG)
 MGは骨格筋の易疲労性と脱力、休息による回復を主徴とする神経筋接合部の自己免疫疾患である。臨床症状として眼瞼下垂、複視、嚥下困難、構音障害、呼吸困難、四肢脱力などがおこるが、日内変動が特徴である。成因は自己免疫異常にとって神経筋接合部の後シナプス膜のニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体が生じ、この自己抗体により神経筋伝達が障害されるためである。MGの約60%に胸腺過形成が、約10%に胸腺腫が認められ、オペにより胸腺摘出により筋無力症状が軽快することから胸腺が自己免疫疾患の発現に関与していることが示唆されている。

(3)多発性硬化症(MS)
 MSは中枢神経系の白質と視神経を障害する慢性脱髄性疾患であり、神経系に複数の病巣が認められる。また、再発とかんかいを繰り返すのも特徴の1つである。上気道炎などのビールス感染と分娩が誘引として重要視されている。しかしながら誘引が不祥な症例が75%前後をしめる。突然の発症が約15%、急性発症が約40%、ゆるやかな発症が約15%をしめ、急激な発症形式ととることが多い。視力障害で初発するものが約35%、運動麻痺約22%、感覚障害約20%をしめす。病巣が広範囲のため各種神経徴候が観察される。

7.炎症性腸疾患(IBD)

 IBDに対するアフェレシス療法の適応となるのは潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病であるが保険適応がとれているのは2008年現在UCであるのでUCを簡単にまとめる。図4にUC患者の腸粘膜の生検像を示す。UCは大腸粘膜から粘膜下層がびまんせい、連続性に侵される原因不明の非特異性炎症性疾患で、多数症例において直腸から上行性、連続的にびらん、潰瘍、浮腫、充血、炎症性ポリープなど多彩な所見が見られる。30歳以下の若年者に多く、自覚症状として下痢、腹痛、粘血便が見られる、中等度以上では発熱、貧血、食欲低下などが見られる。著者らの施設でも持続する発熱のため不明熱精査目的で紹介入院となり、軽度の下痢は存在したが、内視鏡所見ではかなり重症の所見を呈する症例を経験した。

8.血液疾患

(1)過粘ちょう度症候群
 血液粘ちょう度が増加し微小循環系の停滞、血管透過性の亢進などにより種々の臨床症状を呈する病態である。

臨床症状
自覚症状:倦怠感、脱力
出血傾向:皮下出血、歯肉出血、消化管出血
眼症状:視力障害、複視
神経症状:めまい、歩行障害、意識消失
循環器症状:心不全、手指潰瘍、腎不全

 代表的原因疾患として原発性マクログロブリン血症と多発性骨髄腫がある。粘ちょう度は免疫グロブリンの分子量が大きなものほど上昇しやすくIgM>IgA>IgE>IgGの順に上昇する。原発性マクログロブリン血症は高齢者に多く、初期症状は著明でないことも多く、いつ発症したかの同定困難な症例も多い。一般的にはM蛋白血症から発症まで約10年と言われている。多発性骨髄腫はゆっくりした進行で無症状の期間が長く、自覚症状がなく検診や偶然の外来受診時に蛋白尿などにて診断されることも多い。一般的には骨病変による症状が約50%以上に認められ腰痛などの疼痛を主訴にすることが多い。また、めまい、息切れなどの貧血症状から発見されることもまれではない。

(2)血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
 微小循環系の細動脈、毛細血管に汎発性に形成される血栓により引き起こされる疾患で溶血性貧血、血小板減少、神経症状、腎障害、発熱の5つを主徴とする。95%に神経症状があり、麻痺、精神症状、痙攣、性格変化などが起こる。

9.皮膚疾患

 近年、アフェレシス治療の対象となる疾患が増加し、自己免疫性水泡症、水泡症以外の自己免疫性皮膚疾患、中毒性表皮壊死症など多岐にわたっている。治療も単純血漿交換から、二重膜濾過血漿交換、免疫吸着に変化しつつある。順天堂大学のグループが皮膚科領域におけるアフェレシス治療の適応疾患を総括している。

アフェレシスが有効であることが確認されている疾患
尋常性天ぽうそう
落葉状天ぽうそう
水泡性類天ぽうそう
後天性表皮水泡症
皮膚筋炎
中毒性表皮壊死症

(1)尋常性天ぽうそう(PV)
 自己免疫性水泡症の代表的疾患であり、中年以降に好発する。口腔粘膜を含めてほぼ全身の皮膚に水泡が多発する。水泡膜は容易に破れびらん状態ちなり、滲出性、易出血性、有痛性であり、2次感染を合併しやすく治癒しにくい。一見正常にみえる皮膚をこすると容易に表皮剥離を生じる(ニコルスキー現象)。

(2)水泡性類天ぽうそう(BP)
 高齢者の四肢、体幹に好発する。かゆみを伴う紅斑の上に大型の緊満性の水泡が生じるが水泡はPVと比較し破れにくい。粘膜は通常病変はないことが多い。

(3)中毒性表皮壊死症(TEN)
 全身に突然びまん性潮紅を生じ、数日中に広範囲に熱傷のような水泡・びらん・表皮剥離を生じる。粘膜症状を伴うことが多く、ニコルスキー現象陽性である。

検査成績

1.肝疾患

(1)劇症肝炎と重症肝不全
血清逸脱酵素(GOT、GPTおよびLDH)の上昇
血清アルブミン、コリンエステラーゼの低下
総ビリルビン濃度の増加
血清尿素窒素低下
血漿メチオニン上昇
プロトロンビン時間またはヘパプラスチンテスト40%以下
血清肝細胞増殖因子 1ng/ml以上
 血清逸脱酵素は初期には急性肝炎と同様に著しい高値を示すが、急激に低下するものは予後が悪いことが多い。著者らの施設でもGOT:20000, GPT:23000で緊急入院し2日後にGOT:300, GPT:280に急激に低下し死亡した症例を経験している。また、劇症肝炎はビールス性が多いため起因ビールスを同定する必要がある。エコー、CTなどにて肝萎縮、肝内エコーパターンの不均一化、腹水などが見られる。脳波では脳症に先行して徐波、平坦が認められ、脳症の出現とともに三相波が見られる。著者らの施設でも入院2日後にすでに徐波が認められ、その後急速に脳症が進行した症例を経験した。

(2)術後肝不全
 臨床症状の項目を参照していただきたい。

2.腎疾患

(1)RPGN
 腎機能が発病初期から低下し血清クレアチニン値、尿素窒素も急速に増加し高窒素血症を呈する。腎機能は急速に進行し末期腎不全に移行することが多い。抗基底膜抗体、MPO-ANCA陽性症例が日常診療では多い。腎生検により半月体形成を呈することが多い。図5に腎組織を示す。著者らの施設でも近医に高血圧で通院中の患者が2週間前のデータでは腎機能正常であったが感冒症状後に全身浮腫のため紹介され、crea:15.0, BUN:160のため入院となり、Good-pasture症候群と診断し、血漿交換など施行したが血液透析からは離脱できんくなり、現在導入10年経過しているが、全身状態は良好である。

(2)FGS
 病態として1次性と2次性があり、2次性はヘロインなどの薬物中毒、HIV、逆流性腎症、片腎、肥満、出産後などが原因で発症するが、1次性の発症機序は未だ解明されておらず、糸球体透過性亢進因子と抑制因子の不均衡、ポドサイト障害性物質などが報告されている。尿沈さでは赤血球、顆粒円柱、赤血球円柱が頻回に見られる。尿蛋白の選択性が低下し、アルブミン以外にグロブリンも尿中に漏出する。病理所見として髄質近くの深部に巣状の糸球体硬化が見られる。硬化部に硝子様の無構造物や泡沫細胞が含まれることも多い。IgM、C3が硬化部位に沈着する。

(3)MN
 病理組織では糸球体毛細血管壁のびまん性肥厚が特徴であり、PAM染色ではスパイク形成や虫食い像が、免疫組織ではIgGのループにそったびまん性顆粒状沈着が観察される。血尿が約20%、高血圧が約30%に見られる。

(4)糖尿病性腎症
 基本的にアフェレシスが適応になるような糖尿病性腎症は種々の治療に難治性のネフローゼ症候群の症例が多くLDLアフェレシスを施行する。経時的な腎生検では糸球体への脂質沈着の軽減が報告されている。著者らも糖尿病性ネフローゼ症候群にLDLアフェレシスを施行し、血中脂質、蛋白尿、前述した尿中ポドサイト数の低下を報告している(Nakamura T, et al. Am J Kidney Dis 2005;45:48-53). 糖尿病性腎症から血液透析導入症例が増加しており、今後は導入遅延の意味でも保険適応を期待する病態である。 

3.膵疾患

膵炎の重症度判定基準
A: 臨床徴候
1.ショック、呼吸困難、神経症状、重症感染症、出血傾向
B: 血液検査成績
1.BE<-3mEq/l, Ht<30%, BUN>40 mg/dl
2.Ca<7.5 mg/dl, FBS>200 mg/dl, PaO2<60 mmHg, LDH>700 IU/l, TP<6.0 g/dl, PT>15seconds, platelet<100000
C: 画像所見
2.grade IV, V
CT, 超音波
重症は臨床徴候および血液検査成績から1.が1項目以上陽性あるいは2.が2項目以上陽性の時重症と診断する。

4.心疾患

(1)冠動脈疾患
 ホモ型FHは1歳未満でもすでに冠動脈病変を有する症例が多く、冠動脈疾患の有無に関わらずアフェレシスの絶対的適応である。ヘテロ型FHは通常のコレステロール低下療法では難治性の症例では適応となる。CAGにより明らかな多肢病変、著明な石灰化を伴う症例も多い。DCMにおいては心抑制性抗心筋自己抗体陽性が50-60%、抗トロポニンI抗体陽性が15-20%、その他新たな自己抗体KChIP2.6抗体陽性も報告されている。

(2)ASO
 足関節血圧と上腕動脈収縮期圧の比(API)が0.9以下であればASOを考慮する。足背部での酸素分圧の低下、pulse wave velosityの上昇、下肢皮膚温度低下、血管造影による閉塞、狭窄病変の確認による。

5.膠原病関連疾患

(1)SLE
 抗核抗体は90%以上陽性にでるがSLEに特異的ではない。dSDNA, Sm抗原に対する抗体はSLEに特異的である。補体、C3, C4低下はSLEの活動性、特にループス腎炎と強く相関する。血中クリオグロブリンや、免疫複合体も高値をとることが多い。貧血、白血球低下、リンパ球減少、血小板減少、赤沈亢進、リュウマトイド因子も約50%陽性になる。

(2)抗リン脂質抗体陽性症候群
 梅毒の生物学的偽陽性はSLEの約30%に認められる。前述したように血栓形成、血小板減少が発症しやすいがリン脂質そのものに対する自己抗体よりもこれに結合する抗血栓作用を有するベータ2GPIに対する自己抗体の重要性が指摘されている。

(3)ANCA関連血管炎
 MPO-ANCAはMPAの約50-70%、AGAや壊死性半月体形成性糸球体腎炎の約70%、PR-3-ANCAはWGの約80%に見られる。

(4)MRA
 リュウマトイド因子(RAHA)2560倍以上、血清補体値低値、血中免疫複合体陽性、生検により皮膚・筋・神経その他臓器中の中小血管に壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎、閉塞性内膜炎を確認する。

6.神経・筋疾患

(1)ギラン・バレー症候群(GBS)
 髄液所見として細胞増加を伴わない蛋白増加が見られることが多い。蛋白増加改善には時間を要することが多い。電気生理学的には運動神経伝導速度の遅延、運動神経遠位潜時の延長、F波潜時の延長が見られる。血液検査では免疫グロブリンの上昇、IgG抗GM1抗体、抗GD1b抗体陽性所見が約30%に見られる。

(2) MG
 薬理学的検査として抗ChE薬であるantirex 10mgを静注し眼瞼下垂、複視、筋脱力が改善されれば陽性と判定する。電気生理学的には誘発筋電図において反復神経刺激によりCMAPの減弱(waning)が起こる。単一筋線維筋電図では放電の時間的ずれ(ジッター現象)が高度になる。血清学的には抗AChR抗体が約90%に陽性になる。

(3)MS
 髄液では約40%に細胞増加、蛋白増加が起こる。海外では神経系内で産生されるIgGバンド(オリゴクローナルバンド)が約90%にみられると報告されているが日本では陽性率は約50%である。誘発電位は約60%に異常が見られる。MRIでは約70%にT1強調画像での低信号域、T2強調での高信号域を示す散在性の脱髄斑が見られる。

7.IBD

 血液検査ではWBC増加、赤沈値亢進、CRP陽性などの炎症所見、貧血、低蛋白血症、頻回の下痢による電解質異常がおこる。注腸、内視鏡検査では充血した易出血性の粘膜、潰瘍、びらんが上行性に連続する。ハウストラが消失し鉛管状の変形を示す。

8.血液疾患

(1)過粘ちょう度症候群
多発性骨髄腫
 マルクにより形質細胞類似の骨髄腫細胞が認められる。また、血清、尿中にほぼ100%近く単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)が認められる。M成分の免疫グロブリンの種類によりIgG型(約50%)、IgA型(15%)、IgD型(5%)、IgE型(1%)BJP型(15%)に分類される。著者らの施設ではBJP型が約50%を占め多い。約90%に骨の変化を認め骨融解像、打ち抜き像が認められる。尿細管に骨髄腫細胞がつまり腎不全状態で初診、紹介される症例も稀ではない。マルク所見(図6)、M-蛋白の免疫電気泳動所見(図7)、頭部レントゲンの骨打ち抜き像(図8)を示す。

原発性マクログロブリン血症
 血清IgMが高値を示す。IgMは分子量が大きく、多発性骨髄腫よりも過粘ちょう症候群をおこしやすい。

(2)TTP
 溶血を反映する貧血、間接ビリルビン、GOT、LDH上昇、ハプトグロビン低下、末梢血での破砕赤血球を認める。マルクでは赤芽球系の過形成を示す。凝固系の強い異常が認められ、PT、APTT延長、FI低下、FDP上昇、TAT上昇などが認められる。

9.皮膚疾患
 詳細は皮膚科の専門書を参照いただきたい。

(1)PV
 病理所見では棘融解性の水泡があり、免疫染色では表皮細胞膜部にIgGが沈着する。また、血清中にPV抗体が陽性となる

(2)BP
 病理組織では基底膜と真皮の間の水泡と著明な細胞浸潤が認められる。免疫染色では表皮基底膜部にIgGが沈着し血清中にBP抗体が陽性になる。

(3)TEN
 病理所見では表皮基底細胞の空ほう変性、液状変性、浮腫、変性壊死、水疱形成、表皮剥離が起こる。免疫染色では表皮ランゲルハンス細胞の著明な減少、CD8陽性T細胞の表皮内浸潤が特徴である。
 

診断・鑑別診断

1.肝疾患

(1)劇症肝炎と重症肝不全
 急性肝炎の発症時点で劇症化するかどうかの判断は困難であるが、凝固系の著明な異常、特にPTが40%以下の症例では劇症化しやすい。II度以上の脳症が出現すれば劇症肝炎と診断する。黄疸、腹水、消化管出血などの肝不全症状を伴う。鑑別診断として急性肝炎重症型があり、脳症がないのが特徴である。急性肝不全は主としてII度以上の脳症出現の有無と発症から脳症出現までの期間により鑑別される。

(2)術後肝不全
 術後肝不全を早期に診断することが直接救命につながる。術前の肝障害度、術中・術後の肝循環障害の程度と持続時間、残肝の状態などから術後肝不全のリスクはある程度は予測可能と考えられている(内科医には無理であるが)。術後に肝機能障害が遷延するときは門脈・肝動脈血流異常によることもあり、腹部カラードプラー検査が必要になる。

2.腎疾患

(1)RPGN
 感冒などの先行感染に続いて乏尿になったり、急性腎炎から乏尿が持続するような時は本症を考慮する。まら、特にあきらなか誘引がなく、突然乏尿になり、血尿や高度の蛋白尿が存在する時も本症を疑う。確定診断のためには腎生検が必要である。また、抗基底膜抗体、P-ANCA, C-ANCAのチェックも必要である。日常診療での鑑別として、急性腎不全との鑑別が重要である。本症では血尿、蛋白尿、尿沈さでの各種円柱の存在、CT,エコーなどの画像が重要な鑑別となりうる。

(2)FGS
 腎生検により上記に述べた所見を確認する。しかしながらFGS病変は深い部位から病変が起こるため、生検した部位が比較的浅いと全く正常と同じ所見を呈し、MCNSと鑑別できないことが多い。実際MCNSと診断され当初はステロイドが著効していた症例で1年後にステロイド抵抗性になり、再生検したところFGS病変が見つかることもある。これは当初からFGSであったのが、たまたま病変部位の組織がとれなかったのか、経過中MCNSからFGSに移行したのか鑑別が難しい症例もある。そこで著者らは尿中に剥離したポドサイトをFGSとMCNSを比較したところFGSでは多量の尿中ポドサイトがdetectできたがMCNSではゼロであったことを報告している(Nakamura T, et al. Am J Nephrol 2000;20:175-179). また、尿細管間質障害の新しいマーカーである、肝型脂肪酸結合蛋白(以下L-FABP)はFGSでは高い値を示し、MCNSは低値を示すことも報告している(Nakamura T, et al. Clin Nephrol 2006;65:1-6)。L-FABPと尿中ポドサイトの検査を組み合わせれば、FGSとMCNSの鑑別はかなり可能であると著者らは考えているが残念ながらL-FABPは保険適応がまだ許可されていない。

(3)MN
 確定診断は病理所見による。中高年の不顕性ネフローゼ症候群の鑑別として重要である。1次性以外では悪性腫瘍、肝炎、膠原病、RA治療の薬剤(金、D-ペニシラミンなど)などを考慮する。

(4)糖尿病性腎症
 糖尿病性腎症では尿中蛋白は多量に出現するが血尿や、活動性の円柱が存在する時は他の腎症の合併も考慮すべきである。最近ではIgA腎症の合併報告例が増加している。腎生検査により組織学的診断が必要となる。

3.膵疾患

 検査成績の項で述べたような診断基準をみたす時は重症膵炎と診断する。急性膵炎自体の臨床診断基準もあり、上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。血中、尿中あるいは腹水中に膵酵素の上昇がある。画像で膵に急性膵炎に伴う異常がある。上記3項目中2項目を満たし、他の膵疾患と急性腹症を除外できた時急性膵炎と診断する。重症急性膵炎の鑑別として急性胆のう炎、消化性潰瘍穿孔、麻痺性イレウスが重要である。

4.心疾患

(1)冠動脈疾患
 FHはLDLに対する選択的受容体LDL受容体の変異によって発症する。ホモは生後すぐに血清コレステロールが上昇するが(1000 mg/dl以上もあり)、ヘテロでも小児期から血清コレステロール値が高く(300-500 mg/dl前後)、男性では30歳、女性では更年期以降高頻度に虚血性心疾患を呈する。著者らの施設でも35歳で狭心症症状で初診し、総コレステロール値が1300mg/dlを呈し、CAGにて3肢病変を認めた症例を経験した。DCMに関しては、エコー、胸部レントゲン、心電図にて診断可能であるが、虚血心疾患を鑑別するためCAGが必要になることがある。

(2)ASO
 下肢の視診、足背動脈の触診、前述した検査により診断する。バージャー病との鑑別が難しいがASOは高齢者に多く、バージャー病は比較的若年者に多く、糖尿病や動脈硬化症の合併は原則的には認めない。

5.膠原病関連疾患

(1)SLE
 他のリュウマチ性疾患と鑑別するためSLEの分類基準が米国リュウマチ協会により作成されている(詳細は専門書を参照していただきたい)。蝶形紅斑、ディスコイド疹、光線過敏症、口腔潰瘍、関節炎、漿膜炎、腎病変、中枢神経障害、血液学的異常、免疫学的異常、抗核抗体以上の中から4項目以上を満たした時SLEと診断する。鑑別診断としては他のリュウマチ性疾患が重要であるが詳細は専門書wp参照していただきたい。

(2)抗リン脂質抗体陽性症候群
 診断基準は臨床症状の項目に前述したごとくである。

(3)ANCA関連腎炎
 検査成績、急速進行性糸球体腎炎、間質性肺炎、肺出血などの肺・腎症候群、紫斑、消化管出血、多発性神経炎などの血管炎症状などから診断できる。また、WGは耳鼻科領域の壊死性肉芽腫などの症状から鑑別する。

(4)MRA
 definite以上のRA基準を満たし、上記臨床症状、検査成績に示した項目の内3項目以上を満たすもの、あるいは1項目と組織所見があるもの。

6.神経・筋疾患

(1)ギラン・バレー症候群(GBS)
 米国での1978年のAsburyでの基準にのっとり診断する。詳細は専門書を参照いただきたい。必須項目、支持項目、診断を疑わせる所見に分かれている。必須項目はA.2肢以上の進行性運動麻痺、程度は警備な下肢脱力から四肢完全麻痺、くかん、顔面、外眼筋麻痺を伴うことがある。軽度の運動失調を伴うこともある。B.全深部反射消失が原則、他所見が矛盾なければ遠位部で消失、他は低下でよい。

(2)MG
 上記検査成績に胸部CT、MRIにて胸腺腫が確認できれば診断可能である。筋無力症状はLambert-Eaton筋無力症候群、薬剤、ふぐ中毒など多数の疾患群でおこるのでそれらとの鑑別の必要がある。

(3)MS
 診断基準として主要項目、診断分類、参考事項があり、主要項目として、1.中枢神経系に2つ以上の病巣がある。2.症状の寛解・再発がある。3.他の疾患による神経症状を鑑別しうる。これらの3つがそろえば診断確実なMSとする条件になる。

7.IBD

 厚生労働症の研究班による診断基準があるので専門書を参照いただきたい。慢性粘血便、血性下痢から本症を疑い、病歴から放射線や薬剤性腸炎などを除外する。便培養、寄生虫検査により感染症を除外して本症を確診する。海外旅行後に寄生虫に感染しIBDもどきの経過を呈する症例が増加している。鑑別としてクローン病が重要であり、クローン病の典型像は小腸に病変を有する症例が多く、大腸では敷石状外観、縦走潰瘍、skip lesionを呈し、病理学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める症例が多い。しかしながら、UCとクローンの鑑別が難しい症例もあり、クローン病として治療をうけていた症例で紹介されUCであることが後で判明することも稀ではない。

8.血液疾患

(1)過粘ちょう度症候群
多発性骨髄腫
 マルクによる形質細胞の腫瘍性増殖がを証明できれば確実である。著者らの施設でもマルクによりほぼ100%近く診断できている。鑑別として感染症、膠原病、肝疾患に伴う反応性の形質細胞増加、良性M蛋白血症、癌の骨髄転移などが重要である。

原発性マクログロブリン血症
 血清中の単クローン性IgM増加で診断可能である。血清蛋白の15%、または1日1g/dl以上を占めることが診断基準になっている。悪性疾患、感染症などに伴う2次性マクログロブリン血症、基礎疾患がない良性M蛋白血症などとの鑑別が必要である。

(2)TTP
 5徴候から診断する。各種溶血性貧血、血小板減少症との鑑別が重要であるが特異的な臨床症状、経過、検査所見などから鑑別は可能である。DICとの鑑別も重要であるがDICほど凝固因子系の変化はないが、血管障害が著明である。

9.皮膚疾患

 上記検査成績から診断および鑑別診断する。内科医がこれらの診断をするのは困難であり皮膚科専門医への御高診するべきである。

治療

1.肝疾患

(1)劇症肝炎と重症肝不全
 日本では90%以上の症例で血漿交換、70%以上に血液濾過透析が施行されるこれらの治療を総称してALS (artificial liver support)と呼んでいる。しかしながら基本は全身管理であり一般治療、肝炎に対する治療、高アンモニア血症、合併症対策が必要である。種々の治療によっても肝再生が得られない時は肝移植の適応となる。

(2)術後肝不全
全身管理ー人工呼吸器、循環血液量維持、中心静脈栄養など
腸管内因子の除去ーラクツロース、バンコマイシンなど
肝性脳症の改善ーアミノレバンなど
肝再生促進、肝細胞保護ーステロイド、プロスタグランジン、高圧酸素など
血液浄化ー血漿交換、血液濾過透析
合併症対策ー感染、消化管出血、腎不全、DICなど
 特にアフェレシスは効果的な症例が多く、アンモニアなどの肝性脳症惹起物質の除去・希釈にとる脳症改善、肝臓への代謝負荷軽減、過剰に蓄積した肝細胞毒性物質の除去。サイトカインなどの肝壊死や多臓器不全の進行に関与する物質の除去、血液凝固因子補充などの効果を有する。血漿交換に血液濾過透析を併用するのがよいとされている。アフェレシスの適応はT-bil:5 mg/dl以上で持続的に上昇するもの、ヘパプラスチンテスト:40%以下、coma grade II以上の条件のうち2項目以上を有する症例である。

2.腎疾患

(1)RPGN
 基本的にはステロイド剤、ステロイドパルス療法、免疫抑制剤、抗凝固剤、抗血小板薬の組み合わせるこ とが多い。血漿交換は血中病因物質の除去が最大の目的であり、抗基底膜抗体の除去には血漿交換が有効である。腎不全に対しては血液透析、持続血液濾過透析を併用する。MPO-ANCA陽性では免疫複合体とサイトカイン除去を目的としてアフェレシス療法を施行するがこれらの除去が直接病態の改善に相関するかどうかは議論がある。ステロイド、免疫抑制剤の補助療法としての治療法と考える方が良いという意見もある。

(2)FGS
 基本的にはステロイドと免疫抑制剤であり抗凝固剤、脂質改善薬を併用する。種々の薬物療法を施行しても、6ヶ月の治療期間内に完全寛解ないし不完全寛解に至らない難治性ネフローゼ症候群に、高コレステロール血症などの危険因子を合併した症例にアフェレシス療法が適応となる。しかしながら6ヶ月の経過観察は長いため4-8週の時点で薬物療法の変更およびアフェレシス適応を十分検討する必要がる。アフェレシスとして血漿j交換、DFPP、LDLアフェレシスがあるが著者らの施設ではLDLアフェレシス療法を主に施行し有効な成績を報告している(Nakamura T, et al. Clin Nephrol 2006;65:106)。LDLアフェレシスの施行は1連につき12回が承認されており著者らの施設では週2回X3週間+週1回X6週間を原則として治療している。

(3)MN
 治療は症状、年齢、合併症、2次性の場合は原疾患を考慮し方針を決定する。1次性で蛋白尿が1日2g以下の症例では自然治癒することも多い。ネフローゼ症候群を呈する時はステロイドを投与する。薬物抵抗性の時はFGS治療に順じ、LDLアフェレシス、DFPPを施行を施行し有効であるとする報告もある(Muso E, et al. NDT 1994;9:257-264). しかしながらMNに対する保険適応は認められていない。

(4)糖尿病性腎症
 検査成績の項目でのべたように基本的には徹底した血糖、血圧、脂質などを管理するが、ステロイドが投与できないため、難治性を呈する症例が少なくない。そういう症例には保険適応が許可されていないがやむをえずLDLアフェレシスを施行することによりかなりの症例で腎機能改善、透析への遅延が可能である。

3.膵疾患

 全身状態の維持、改善、膵の安静、消炎、逸脱膵酵素の不活性化と有毒物の除去、膵および周辺の合併症の予防と治療である。そのためには1.絶食、IVHによる補液、アルブミン補給、輸血、昇圧剤などの全身管理、循環改善、2.鎮痛剤にて鎮静、鎮痛、3.胃液、膵液分泌抑制、4.蛋白分解酵素、5.胆道感染の治療、膵壊死の予防のための抗生剤、場合によりドレナージなどである。
重症急性膵炎はサイトカインストームとよばれる状態となり、多量のサイトカインが血中に分泌された多臓器不全を惹起するため、サイトカインを速やかに除去する必要がある。PMMA膜ヘモフィルターを使用したCHDFが千葉大学平澤教授により提唱され有効であることが報告されている。特にIL-6はサイトカイン活性化の指標と考えられているが、PMMA-CHDFによりすみやかにIL-6が除去される。重症急性膵炎では敗血症性ショックを合併することが多く、著者らの施設では後述するPMX-F療法をCHDFに併用することが多い。

4.心疾患

(1)冠動脈疾患
 FHはアフェレシスの適応となる。急性冠症候群の血行が不安定期には適応とならない。基本的にはスタチン投与しても血清コレステロールが250mg/dl以上持続する時はアフェレシス導入と考えられている。2007年からスタチンとは異なる機序でのコレステロール低下薬剤であるゼチーアが発売されており、現在FHに使用されており、今後アフェレシス適応基準が変更になる可能性もある。DCMに関しては血漿交換、免疫吸着、DFPPなどが試みられ有効例がいくつかの施設で報告されてはいるが、今後の大規模治験が必要だろう。近年、金沢医科大学のグループが選択的抗心筋膜受容体抗体吸着カラムを開発したので今後の臨床データの解析に期待したい。

(2)ASO
 Fontaine II度以上の重症度の高い患者の治療は、カテーテルインターベンションや、外科的治療の進歩によりかなり臨床的改善が可能となってきたが種々の理由で外科的治療が困難で、薬物治療でも十分な効果がみとめられない症例ではアフェレシス治療を施行する。LDLアフェレシスには数種類のやり方があるが、日本ではデキストラン硫酸をリガンドとする吸着器を使用した血漿吸着法が主流である。

5.膠原病関連疾患

(1)SLE
 長期になるため患者教育が1番重要である。特に、定期的な検査、受診の必要性、治療薬剤と副作用、感染予防、日光を避ける、ストレス回避の教育が十分必要である。
薬物は基本的にはステロイド、免疫抑制剤、場合により両者のパルス療法施行もする。臓器障害を惹起する免疫複合体、抗二重鎖DNA抗体などの直接病態に影響を及ぼす自己抗体の除去、網内系のクリアランスの正常化、サイトカイン除去、免疫調整作用を目的に血漿交換療法も有効な治療法である。保険適応となっているのはSLE伴う急速進行性のループス腎炎とCNSループスであるが、薬物療法に反応せず難治性で疾患活動性が高い症例、抗DNA抗体や免疫複合体が高い症例なども血漿交換が有効であると報告されている。血漿交換の種類として単純血漿交換、二重膜濾過、免疫吸着などがあり、症状、病態にあわせて選択される。

(2)抗リン脂質抗体陽性症候群
 まず、ステロイド、抗血栓薬などを投与するが難治性の症例が多い。抗リン脂質抗体除去を目的としたアフェレシス療法としてDFPPが有用である。また、抗二重鎖DNA抗体、抗CL抗体、免疫複合体などの病因関連物質を選択的に吸着除去するカラムによる免疫吸着療法も応用されている。しかしながら現在まだ保険適応が認められていない。疾患活動性が高く、抗体値も高値を示し、薬物療法のみでは早急に病勢を抑えることが艱難な症例、従来の薬物療法に抵抗性の症例などがアフェレシスの適応としている施設が多い。

(3)ANCA関連腎炎
 まずステロイド大量療法、免疫抑制剤などの薬物療法を試みる。アフェレシスは保険適応がなく、また、明確な適応基準も決まっていない。RPGNや肺出血を伴う肺・腎症候群、65歳以上の高齢者、感染症のリスクが強く免疫抑制剤が使用できない症例での施行を推奨している施設が多い。また、MPO-ANCAなどの抗体値が高い症例、高サイトカイン血症を呈する症例でも早期のアフェレシス療法を検討すべきであるという意見も多い。アフェレシスとして病態やターゲットに応じ単純血漿交換、DFPP,L-CAPなどが選択されるが単純血漿交換が種々の抗体、サイトカイン除去には第一選択である。

(4)MRA
 RAの治療自体を継続する。ステロイド、免疫抑制剤、D-ペニシラミン、抗凝固剤などを投与する。薬物療法の効果不十分の症例、さらに生命を左右する症状の出現により原疾患の治療に緊急性を必要とする症例、肺線維症や消化管出血などの合併、治療薬による副作用が強い症例には血漿交換を施行する。その他、DFPP、血漿吸着、血液吸着などわあるが詳細は専門書を参照いただきたい。

6.神経・筋疾患

(1)ギラン・バレー症候群(GBS)
 薬物療法として免疫グロブリン大量療法がある。400mg/kg/dayを5日間静注する。血漿交換はGBS発症2週間以内に施行するのが効果的であり、週3-4回、臨床所見をみながら保険適応の7回まで施行する。血漿交換の適応はHughes分類のgrade III以上で筋脱力が急速に進行する症例、grade IV, Vや自律神経症状が高度な症例である。現在まで免疫グロブリンと血漿交換がどちらが有効であるか議論がつきないが、著者らの施設では免疫グロブリン投与しても効果が少ない症例には血漿交換を併用することが多い。症例により血漿交換を入院当初から施行することもある。

(2)MG
 胸腺摘出、ステロイド、免疫抑制剤、血漿交換、免疫グロブリン大量療法、抗ChE薬による対症療法がある。治療の原則は発症早期の胸腺摘出、その後の十分量のステロイド剤投与である。MGに対する血漿交換は寛解導入のための短期間の治療戦略であり、適応は胸腺摘出、ステロイド投与が無効の難治症例、胸腺摘出前、または、オペ後1年以内の筋無力症状が著しく動揺する症例、ステロイドが副作用や合併症のため使用困難な症例である。血漿交換はステロイドや免疫抑制剤投与下で10-14日に5-6回施行(intensive)、その後は臨床症状の改善と抗AChR抗体は持続して低下するまで2-3週に1回(intermediate)繰り返す。intensive血漿交換により抗AChR抗体の約60%が血中から除去される。

(3)MS
 ステロイド経口投与、または大量点滴静注によるパルス療法が基本であるが再発予防は難しく、免疫抑制剤、免疫グロブリン、血漿交換など併用する。血漿交換は発病・急性増悪期の病勢沈静化と寛解を促進するが、長期的予後には影響しないと考えられている。
MSにおける血液浄化療法の適応と方法(アフェレシスマニュアルより)

1.急性期に施行する。
2.パルス療法で明らかな改善がみられない場合には血漿交換を施行する。
3.血漿交換の第1選択として免疫吸着が望ましい。
4.免疫吸着が無効な場合はDFPPまたは血漿交換を施行する。
5.血漿交換はできれば週2回が望ましい。
6.以上でも治療効果がみられない場合、血漿交換とステロイド、免疫抑制剤との併用を検討する。
7.IBD

 重症では入院させ、絶食、IVH挿入し全身管理をする。薬物療法としてステロイド、サラゾピリン、ペンタサを投与する。近年白血球除去療法が進歩し、厚生労働省が「重症、劇症UC症例もしくは厳密な内科的治療下にありながら難治性の中等症である症例に対して活動期の病態改善および、寛解導入を目的として施行する」ことで保険適応となっている。白血球除去療法には白血球全体を除去するL-CAP, 単球・顆粒球を除去するG-CAP, リンパ球を除去するLCPがある。L-CAPは手技がやや複雑なため著者らの関係施設ではすべてG-CAPを施行している。現在インターネットの普及により患者さんはL-CAP, G-CAPのことはしっかり勉強しており。UCと診断がついた時点でステロイドよりもアフェレシスを希望する患者さんが増加している。確かに若年者が多く、ステロイドの副作用を考慮すると早期のアフェレシスがよいとする意見も多いが、現時点では厚生労働省の保険適応にのっとって施行することが好ましい。内科的治療で効果ない症例は外科的処置が必要である。G-CAP前後の著効を示した内視鏡所見を提示する(図9、10)。

8.血液疾患

(1)過粘ちょう度症候群
多発性骨髄腫
 化学療法が主体であり、現在でもmelphalanとステロイドを併用したMP療法を施行することが多い。必要に応じ3-5剤併用する。血漿交換、DFPPを施行することもあるがIgGが主体のためアフェレシスの効果発現は比較的遅い。
原発性マクログロブリン血症
粘ちょう度を測定しながら、臨床症状がとれるまで頻回にアフェレシスを繰り返す必要がある。症状の推移を観察しながら粘度、免疫グロブリン量をモニターしながらアフェレシスは継続する。貧血が軽度でM蛋白の少なく、臨床症状がなければアフェレシスは施行しないことが多い。化学療法として各種アルキル剤とステロイドを併用する。

(2)TTP
 症状が軽い症例では抗血小板薬、ステロイド、ガンマグロブリン大量療法が効果がある症例もあるが、血漿交換が1番の治療法である。TTPと診断した時点で早期に血漿交換が好ましく、有効率は約70%と報告されている。

9.血液疾患

(1)PV
 ステロイド全身投与が基本であり、免疫抑制剤を症例により併用する。反応が悪い症例にはアフェレシス治療を考慮する。特にDFPPが有効である。

(2)BP
 PV治療と同様にステロイド全身投与が基本であり、症例により免疫抑制剤を併用する。ミノマイシン、ニコチン酸アミドを併用することもある。これらの薬剤に抵抗性の時はアフェレシス療法を考慮する。特にDFPPが有効である。

(3)TEN
 ステロイド、ガンマグロブリン大量療法に血漿交換を併用する。

予後

1.肝疾患

(1)劇症肝炎と重症肝不全
 肝細胞壊死が広範に急激に進行し、肝炎発症後2週間以内に脳症が出現することが多い。黄疸、腹水、出血傾向も急激に出現する。種々の治療にもかかわらず数日以内にそのまま死亡する症例もあるが、生存する症例ではすみやかに改善し30日以内に退院できる症例も多い。一般的には救命率は50%前後と報告されている(著者らの施設では63%)

(2)術後肝不全
 全身状態および原因により異なる、肝炎型の方が予後がよく、循環型の方が治療に苦慮する症例が多い。内科的に改善しない時、手術が必要なこともある。

2.腎疾患

(1)RPGN
 発症後急速に腎不全に陥り、血液透析導入する症例が50%以上を占める。近年、発症早期に紹介されるケースが多く、著者らの施設では2007年度は26名のRPGNが紹介あるいは、当院初診症例がいたが、血液透析導入症例は12名であった。しかしながら透析導入にいたらなかった症例でも平均crea:4.0mg/dlであるので今後いずれ血液透析になる可能性が高い。また、本症ではステロイド、免疫抑制剤使用による日和見感染が増加している。著者らの施設でも2008年上半期に1名はヘルペス脳炎+クリプトコッカス肺炎、1名は粟粒結核に罹患し、その後腎不全増悪し血液透析も導入した症例を経験している。

(2)FGS
 従来は予後不良といわれており、近年の医学の進歩により日本での腎不全症例は約20%前後であり、透析移行例も以前より減少している。欧米では約50%が腎不全になるといわれているのは、おそらくコカインなどの薬物、HIV腎症、肥満などの2次性がかなり含まれていると推測されている。

(3)MN
 10年以内に腎不全になる症例は10%前後である。自然寛解する症例もある一方、急速に腎機能障害が増悪する症例もあり、治療指針選択が難解なことも多い。予後不良因子として60歳以上、男性、発症時の腎機能低下、高度蛋白尿、20%以上の糸球体硬化病変、20%以上の間質病変の存在が報告されている(堺秀人他、日腎会誌 2002;44:751-761)

(4)糖尿病性腎症
予後はやはり厳しく、透析移行症例は50%以上を占める。また、糖尿病そのものの合併症による心血管 系イベントで死亡する症例はかなり多い。詳細は岡山大学の四方先生の項目を参照いただきたい。

3.膵疾患

 一般的な治療のみであるとかなり予後不良であるが、CHDFを早期に開始することにより予後は改善され、PMX-F併用によりさらなる予後の改善が期待できる。しかしながら多臓器不全状態の症例が多く、急性膵炎と比較すると生命予後はかなり悪い。

4.心疾患

(1)冠動脈疾患
 FHに関しては、以前と比べ、スタチン、ゼチーアなどの薬剤の進歩、LDLアフェレシス開発によりかなり予後は改善されたが、急性冠症候群、不整脈死などは決して少なくはない。DCMに関しても前述したように種々のアフェレシス療法が施行されてはいるが予後は不良であり、最終的には心移植しか救命できない症例も多い。

(2)ASO
 重症度によっては下肢切断のみではなく、生命予後を左右する可能性がある。特に透析患者のASO合併が増加し下肢切断症例も増加し、敗血症を合併し後述するPMX-F療法を併用する症例が増加している。しかしながらLDLアフェレシスの普及によりバイパスオペなどを回避できる症例も増加しており、今後LDLアフェレシス治療が予後改善の鍵を握る可能性がある。

5.膠原病関連疾患

(1)SLE
 発症後5年生存率は約90%、10年生存率は80%でありSLE全体の予後はそれほど悪くはないが内臓合併症を有する症例は予後不良であり、感染症にて死亡することが多く、腎不全の合併も多い。その他予後不良因子として中枢神経ループス、高血圧などがある。

(2)抗リン脂質抗体陽性症候群
 臓器梗塞、出血傾向を認める症例が多く、多臓器に梗塞をおこすと生命予後にかかわる。妊婦ではくりかえす早流産をおこし、妊娠中に臓器梗塞を発症し死亡することもある。的確な早期診断が必要である。

(3)ANCA関連腎炎
 MPAの予後は不良で死亡率は約40%、特に診断1年以内の死亡率が多い。幸い著者らの施設では1年以内の死亡率は現在までゼロである。WGの予後は早期発見、早期治療により改善しているが死亡率は約20%である。AGAの予後は比較的良好で死亡率は約15%である。

(4)MRA
 感染症、間質性肺炎、消化管出血、腎障害の合併が多く、通常のRAと比較し予後不良である。

6.神経・筋疾患

(1)ギラン・バレー症候群(GBS)

 発症から極期に達するまでの期間が短い症例ほど予後不良である。一般的には3-6ヶ月以内に改善するが約5%が死亡、10%に重篤な機能障害が残ると考えられている。幸い著者らの施設では死亡者はゼロであり、後遺症が残らず平均約2ヶ月で退院している。

(2)MG
 早期の胸腺摘出とステロイド長期投与により、発症2年以内に約70%が寛解する。

(3)MS
 初発後、数回にわたる増悪と寛解を繰り返し、次第に慢性進行性の経過をとる症例が多い。再発の予防は困難である。完全に寛解して良好な経過をとる症例が約20%、寛解再発を繰り返す症例が約60%、慢性進行性の経過をとる症例が約15%である。発症15-20年で、約50%の症例が歩行に介助が必要になる。平均生存期間は約30年と報告されており、死因の1番は感染症である。

7.IBD
 大多数症例では内科的処置で寛解導入できるが再発症例も多い。白血球除去療法の開発により予後はかなり改善された。著者らの施設でも24歳、男性でG-CAP施行前は8回寛解・再発をくりかえしていたが、G-CAP治療後5年間再発がない症例を現在経過観察している。

8.血液疾患

(1)過粘ちょう度症候群
多発性骨髄腫
 3期に分類され、腎機能障害の有無により各病期をA,Bに亜分類しているが、病期が予後に関連している(分類の詳細は専門書を参照いただきたい)貧血、低アルブミン血症、高Ca血症、腎障害などが予後不良因子と報告されている。平均生存期間は約3年であり、死因は感染症、腫瘍死が多い。

原発性マクログロブリン血症
診断時期、治療に反応するかどうかにより異なる。生命予後は平均約5年と報告されている。死因は感染症、リンパ腫への移行、心不全、出血・血栓などである。

(2)TTP
 経過は急激で発症から約3ヶ月以内に以前は70%が死亡する予後不良疾患であったが、血漿交換療法の進歩により、現在では上記のように約70%が救命可能と考えられている。しかしながら、血漿交換ができない施設での治療後、改善しないため紹介されてくる症例では病態が進行し血漿交換する時期が遅延し救命できないこともある。

9.皮膚疾患

(1)PV
 一般的には予後は良好である。

(2)BP
 一般的には予後良好である。

(3)TEN
 ステロイドとアフェレシス併用により以前より予後は改善したが、皮膚科領域では予後不良の疾患であり、死亡率が約20%と報告されている。

最近の動向

1.呼吸器疾患とPMX-F

 間質性肺炎の急性増悪、敗血症ベースのARDSに関してはPMX-F療法が有効であるとする学会報告、英文論文が増加している。今後保険適応可能な治療法である。

2.糖尿病性腎症とLDLアフェレシス

 FGSにはLDLアフェレシスの保険適応があり有効な報告が多い。糖尿病性ネフローゼ症候群においても薬物抵抗性症例が増加している。他のネフローゼ症候群ではステロイドが著効する症例が多いが、糖尿病性ネフローゼ症候群ではステロイドは使用できないため治療に苦慮する症例も多い。著者らは、難治性糖尿病性ネフローゼ症候群にLDLアフェレシスを施行し(少数例ではあるが)有効性を報告している(Nakamura T, et al. AJKD 2005;45:48)。今後症例が増加することが予測され、薬物難治性の症例では考慮すべき治療法である。保険適応を期待した。

3.拡張型心筋症

 北里研究所の馬場先生を中心に研究成果が報告されている。DCMはビールス感染を契機として、ある種の遺伝的特性を背景とし、自己免疫異常が継続して発症することが報告されている。特に液性免疫異常は、病因・治療標的として、近年認められている。DCM症例においてベータ1アドレナリン受容体抗体陽性患者に対し免疫吸着が有効であることが報告されている。また、HD患者においてDCMパターンをとる症例においても当自己抗体陽性症例が多く、二重濾過血漿交換を施行している報告もある(日本透析医学会雑誌、2007;40:494).今後保険適応に期待したい。

4.ベーチェット病

 本症の発症にはHLA-B51などの遺伝子要因と環境要因の両者が関与する。主症状は口腔粘膜の再発性アフター性潰瘍、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍があり、副症状として関節炎、副睾丸炎、消化器症状、中枢神経症状などがある。上記症状が急性炎症として反復し、症状の出現と消退を繰り返す経過をたどるのが特徴である。一般的な治療としては、好中球機能抑制作用を有するミノサイクリン、コルヒチン、レクチゾール、関節痛に対しては非ステロイド性抗炎症剤が使用される。鹿児島大学のグループは難治性の好中球性皮膚疾患に対してG-CAPを施行し有効性を報告している (Kanekura T, et al. J Am Acad Dermatol 2004;50:242)。同グループは既存の治療に抵抗性のあるベーチェット病に対してG-CAPが有効であった症例を報告している(日本アフェレシス学会雑誌 2008;27:164)。

5.視神経脊髄炎

 当疾患は重症の視神経炎と横断性脊髄炎を主徴とし、多発性硬化症との異同が長期にわたり論議されてきた。東北大学のグループが、当疾患は抗aquaporin-4抗体に関連しアストロサイトを標的にした疾患であり、ミエリン障害が基本病態である多発性硬化症と異なる病態であることを報告している(日本アフェレシス学会雑誌 2007;26:52)。当疾患は血漿交換が有効であるが、液性因子の除去が有効であることを示唆している。

6.ASO

 難治性のASOに対してLDLアフェレシスが保険適応となっていて多数の有効症例が報告されている。しかしながら、血漿分離と血球分離など操作に手間がかかる。そこで新しく開発されたDHP型ASO治療用吸着カラム(AS-15, AS-25)の多施設臨床試験が開始され終了した。外科的治療が適応が困難な症例に試験が開始され約70%に症状の改善が認められた、性能面でもLDL-コレステロール、フィブリノーゲン、中性脂肪、血液粘度の有意な低下が認められた。安全面においても特に問題になる副作用はなく。今後の臨床応用に期待したい。

エンドトキシン吸着療法

 エントトキシン血症、敗血症性ショックは重篤な疾患であり、いまだ致死率が高い。エンドトキシンはグラム陰性桿菌の膜構成成分であり、体内に入るとマクロファージ、好中球などを介して種々のサイトカインなどを産生させ、組織障害、多臓器不全を惹起する。現在、エンドトキシン血症に対する治療法の代表としてエンドトキシン吸着療法(以下PMX)がある。エンドトキシン吸着カラムは東レと滋賀医科大学(現滋賀大学医学部)の共同研究で開発され、1994年に保険的になり、欧州の1部でも治験が終了し一般臨床応用可能となっている。著者らの施設でも多数の症例にPMX療法を施行し有効な成績を収めており、今回あえて、別項目として詳細に概説する。

1.PMX-Fカラム

 現在成人用の20Rと小児用の05Rがある。図11にカラムの概要を示す。成人においても高齢者、低体重者には体外循環の負担をなるべく少なくするために05Rうぃ使用する症例もあり、著者らの施設では80歳以上、あるいが体重40kg以下の症例には05Rを使用することが多く過去5年間に約25例使用している (Nakamuta T, et al. ASAIO J 2005;51:482)。図12にポリミキシンB固定化繊維の構造模式図と断面形態を示す。図13にPMXカラム内部での血液の流れを示す。図14にPMXの灌流吸着性能を示す。約2時間でエンドトキシン濃度がプラトーになり、当初の治療時間の設定が2時間と決められたようである。

2.ブラッドアクセス

 アフェレシス療法で1番重要でかつ1番難解な問題がブラッドアクセスである。潰瘍性大腸炎の顆粒球除去療法のように血流が30ml/minのように少ない治療は末梢の血管にアクセスがとれるが、PMX療法では20Rにおいては80-100ml/minの血流量が必要なため透析用のカテーテルを大腿部に挿入してアクセスをとることが多い。図15にアクセスの状態を示す。図16に実際の治療している状態の写真を示す。約2時間この状態にて治療が継続される。

3.保険適応
 図17にPMX療法が施行される代表的な疾患をまとめる。特に外科領域での下部消化管病変の穿孔、腹膜炎での症例が以前は多かったが、最近内科領域での重症肺炎、尿路感染症などの症例も増加している。図18にPMX療法の保険適応を示す。

4.最近の知見

(1)呼吸器疾患
 ARDSは呼吸器領域では致死率が高く治療に苦慮する症例が多い。現在PMX療法の保険適応はとれていないがARDSに有効であるとする報告も増加している(Tsushima K et al. J Clin Apher 2002;17:97, Nakamura T, et al. Blood Purif 2004;22:256).また、間質性肺炎の急性増悪症例、薬剤抵抗性間質性肺炎においてもPMX-F療法の有効性が多数の学会や論文として報告されている(Seo Y et al. Intern Med 2006;45:1033)。今後呼吸器疾患におけるPMX-F療法導入症例は増加することが予測されるが、保険適応を含め、研究課題も多い。

(2)大腸疾患
 潰瘍性大腸炎でのアフェレシス療法として白血球除去療法が保険適応されている。著者らは高エンドトキシン血症を伴う潰瘍性大腸炎にPMX-F療法を施行し臨床症状および血中エントトキシン値の改善、大腸所見および組織も改善した症例を報告している(Nakamura T, et al. ASIO J 2005;51:471)。潰瘍性大腸炎は大腸粘膜が破綻し血中に大量のエンドトキシンが流入する症例も多く、ショック症状を呈することもあり、今後PMX-F療法の保険適応になりうる疾患であると著者らは考えている。

(3)大動脈疾患
 近年、胸部外科領域におけるPMX-F療法施行例が増加している。上行大動脈と大動脈弓の置換術後の敗血症性ショックに陥り早期にPMX-F療法施行し血行動態が改善した症例(Ann Thrac Cardiovasc Surg 2007;13:287), 敗血症に伴う大動脈弓動脈瘤手術中にPMX-F療法を施行し血行動態が改善した症例報告もある(Circ J 2008;72:161). 縦隔炎から敗血症性ショックになる症例もあり、今後のこの領域での応用が期待される。

透析アミロイド

 透析アミロイドーシスはベーター2-ミクログロブリンを主成分とするアミロイド繊維が腱・滑膜・骨・軟骨などに沈着し、手根管症候群・透析関節症などの種々の症状を引き起こす疾患であり、10年以上の長期透析患者によく認められる。透析膜として合成高性能膜を使用した方が通常の透析膜ひ比べ発症、進展が抑制されることが報告されていたが、日本で開発されたベーター2-ミクログロブリン吸着カラム「リクセル」が1996年保険適応となった。適応として関節痛を伴う透析アミロイド-シスで高度の運動障害により日常生活に著しい制限うけている患者が対象である。

1.手術、または生検により、ベータ2MGによるアミロイド沈着が確認されている。
2.透析歴が10年以上あり、以前に手根管開放術を受けている。
3.画像診断により骨のう胞像が認められる。

 1年を限りに使用するが中断すると痛みが再発することも多くもう1年使用する症例も多い。臨床的にADL・関節のこわばり・痛みの改善、握力維持に有効である。また、他覚的にも神経伝導速度やつまみ力の改善も認められる。
リクセル使用により体外循環容量の増加に伴う血圧低下と残血によるHtの低下が発生することがあり、近年内容積が小さいカラムが使用可能となっている。PMXカラムと同様に高齢者、低体重患者にはよい適応と考えられる。
 透析アミロイドの治療には、リクセル以外にもHDFによりベータ2-MGを大量に除去する方法があり、実際に症状が改善する症例も多いが設備投資などを考慮するとリクセルの有用性が高い。現実問題としてHDFと併用の方が除去はさらに増加すると考えられるが、保険では認められていない。今後さらに新たな膜の開発に期待したい。

急性腎障害(AKI)とL-FABP

 AKIは急激な腎機能の低下により体液の恒常性が維持不可能になった病態であり、GFRの低下により高窒素血症や血中のクレアチニン値が上昇する。AKIは単なる腎臓だけの問題ではなく多臓器不全へとつながる。AKIを惹起する代表として敗血症性ショックがある。敗血症におけるAKIの発症機序としては、複数のメカニズムが関与する。敗血症早期には血行動態やGFRの変化が主体で、尿細管障害があまり見られない。腎血流量が低下し、その後血流が回復すると虚血再灌流が生じ、急性尿細管壊死がおこる。多臓器不全を惹起するmediatorとして

1.サイトカイン (IL-1, IL-6, TNF-alpha)
2.補体 (C3a, C4a, C5a)
3.アラキドン酸誘導体(プロスタグランジン他)
4.凝固因子
5.細胞(好中球、マクロファージ)
6.接着分子(ICAM-1, VCAM-1)
7.ホルモン(インシュリン、成長ホルモンなど)

 などがある。近年著者らの共同研究者である聖マリアンナ医科大学客員教授菅谷健先生らが開発した尿中肝型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)が敗血症性ショックの疾患活動性、予後診断の有力なバイオマーカーになりうる可能性が示唆されている。図19にFABPの産生臓器を示す。L-FABPは近位尿細管にて産生される。図20-22に近位尿細管細胞における、遊離脂肪酸、アルブミン、L-FABPの関係を示す。最終的には種々のストレスにより尿細管間質障害が惹起され尿中に多量のL-FABPが分泌される。既存の尿中マーカーが腎機能の破綻(結果)を検出しているのに対し、尿中L-FABPは腎疾患進行の原因となる種々のストレスを反映するものと考えられている。L-FABPはCKDに関しては聖マリアンナ医科大学木村健二郎先生のグループが多数報告している (Kamijo A, et al. J Lab Clin Med 2005;145:1215, Clin Chim Acta 2006;374:1). 著者らは敗血症性ショック、ショックに陥っていない重症敗血症、敗血症性ショック以外の急性腎不全患者の尿中L-FABPを検討した(Nakamura T, et al. Shock, in press). CKD患者の尿中L-FABPは100 μg/g.crea以上はまれであるが、敗血症性ショック患者では平均1800 μg/g.crea, 症例により10000 μg/g.crea以上を呈することもまれではない。重症敗血症では平均248 μg/g.crea, 急性腎不全では平均120 μg/g.crea, 正常者は4.2 μg/g.creaを示した。敗血症性ショックの重症度が推測されるデータである。また、尿中L-FABP値が高いほど予後不良であり、5000 μg/g.crea以上の症例では救命できないことが多い。また、PMX-F療法により尿中L-FABP値は約半分まで減少し、減少率が高い症例では予後がよいことも判明した。すなわち、敗血症性ショックでは虚血に伴う強い尿細管間質障害が惹起されPMX-F療法により血中エンドトキシンを除去、血行動態改善、虚血改善に伴い尿中L-FABPが減少することが示唆された。今後の敗血症性ショック治療の目安になる新しい指標になりうる可能性が示唆されている。
 

薬物中毒

 薬物による急性中毒に対しては血漿交換、血漿吸着、血液透析、血液濾過透析などの血液浄化療法が施行されるが。除去効率が十分でも必ずしも救命できるわけではない。その理由は、中毒の原因となった薬物の大部分が体内分布容積が大きく、血液浄化により除去できるのはその1部にすぎないからである。中毒を疑った時重症度の評価、原因物質の同定、毒性評価が原則であり、時間との戦いである。著者らはサリン事件の時某大学病院で外来中であったが、9時すぎに第1報としてガス中毒らしいという連絡があり、その後数百人患者がいるらしいと連絡があり、9時半すぎに救急車が数十台連続して到着した。初診時異様な臭気がただよい、何か特別な物質の中毒らしことはわかったが、患者数が異常に多く尋常ではないことはすぐにわかった。応急処置中、医療スタッフが流涙する人が多く、縮瞳者もおり、そのときはじめて有機リン中毒の可能性が高いことが予測され、10時すぎにサリンとよばれる今まで経験がない物質による中毒であることが判明した。当時約100名前後が入院し、50名以上に血漿交換療法が施行され、幸いなことに著者らの当時いた施設では全員救命できた。ここでも情報伝達の重要さがあらためてわかり、時間が救命につながることも理解できた。これは特殊であり、日本中のだれもが予測できない事態ではあったが、中毒に対しては血液浄化を常に念頭に入れておく必要がある。薬物中毒の初期治療の原則は

1.対症療法による生命維持(救命)、
2.未吸収薬物の除去、
3.既吸収物質の排泄、
4.解毒剤などである。

薬物中毒に対する血液浄化療法の適応基準

1.全身状態の進行性、急速な増悪
2.脳幹部機能低下を呈する重篤な中毒
3.昏睡に伴う合併症
4.肝不全、腎不全を合併し薬物排泄経路が障害
5.代謝物が毒性を発揮、遅発性に毒性が発現する可能性あるとき
6.肝・腎での代謝・排泄よりも速い速度で除去可能な時

 睡眠薬自殺未遂で緊急搬送される症例も増加しているが、著者らも過去10年で約150症例経験しているが100例は点滴および全身管理にて軽快、約50例にDHP施行、20例血漿交換併用、約10例血液透析併用しているが死亡者はゼロである。睡眠薬200錠服薬した症例はDHP、血漿交換、血液透析施行し、意識が回復したのは入院10日目であったが20日後、後遺症を残さず退院できた。薬物の特性をしり、十分な初期治療を併用しながら適応があれが積極的に血液浄化療法を併用した方がよいと考えられている。

図1図2図3図4図5図6図7図8図9図10図11図12図13図14図15図16図17図18図19図20図21図22

(MyMedより)推薦図書

1) 日本アフェレシス学会 編集:アフェレシスマニュアル―難治疾患の治療革命 (クリニカルエンジニアリング別冊),秀潤社 2004

2) 野入英世・花房規男 著:アフェレシス療法ポケットマニュアル,医歯薬出版 2010

3) 透析療法合同専門委員会 著・編集:血液浄化療法ハンドブック,協同医書出版社 2010
 

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