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Sepsis and Meningitis in Neonates
執筆者: 高橋 尚人
新生児は弱毒菌でも感染症をきたす易感染性を持ち、特に局所感染にとどまらず、敗血症として全身感染症を発症し、急激に進行し死に至ることが稀でない。敗血症発症児は髄膜炎を併発することも多く、治療はその点も考慮する必要がある。
早発型(生後3日以内発症)ではB群溶血性連鎖球菌(GBS)、大腸菌が主で、遅発型(生後3日以降)は黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)、グラム陰性桿菌が多い。
GBSはいわゆる弱毒菌であり、成人にはほとんど病原性を示さないが、新生児早発型感染症の起炎菌として、現在最も頻度が高くなっている。妊婦の25%がGBSの保菌者であり、その新生児の1-2%が感染症を発症するとされている。血清学的分類では、Ia型、Ⅲ型の病原性が強い。GBS感染症は生後数日以内に発症すると非常に急速に進行し児が感染し発症した場合、重篤な敗血症、髄膜炎を起こし、死に至る可能性がある。また、極低出生体重児のGBSによる肺炎、敗血症は呼吸窮迫症候群respiratory distress syndrome(RDS)に似た胸部X線写真を呈するので、その鑑別が困難である。
大腸菌、クレブシエラなどのGram陰性桿菌による敗血症も重要である。これらの腸内細菌は腟内の常在菌でもある。なかでも大腸菌による感染症の頻度が高く、敗血症、髄膜炎、尿路感染症などを引き起こす。
また、新生児集中治療室(NICU)においては、菌交代現象により抗生剤の効かない緑膿菌やセラチア菌などのグラム陰性桿菌による院内感染も要注意である。
Listeria monocytogenesによる感染症で人畜共通感染症である。免疫不全状態で感染しやすく、母体が感染すると、経胎盤的あるいは上行性に胎児への感染を起こす。母体の感染は肉類、加熱処理されていない乳製品などの摂取によるとされるが、感染経路が明確でないことも多い。母体には発熱などの症状が見られ、胎児死亡・新生児仮死などの合併をきたし、児の予後は不良である。発症した児では肺などに白色の肉芽様の腫瘤が形成される。また、遅発型では髄膜炎の合併も見られ、やはり予後は不良である。
破水に伴って感染が発症する羊水感染(上行性感染)、出生時産道通過により生ずる産道感染、出生後の感染が主である。感染経路と児が発症する日齢とは関係がある。ただし、上行性感染は破水がなくても起こりうる。また、ごく稀ながら胎盤に感染巣をつくるリステリア、梅毒、結核のような細菌による経胎盤感染も存在する。
出生後3-4日以内に発症するものをいい、非常に進行が早く予後不良のものが多い。分娩周辺期の上行性感染か産道感染がほとんどである。起炎菌は、腟内の常在菌による場合が多く、B群溶血性連鎖球菌、大腸菌などのGram陰性桿菌などである。
生後4日以降に発症するもので、出生後の水平感染によるものが多い。比較的緩徐な経過をとり、敗血症のない髄膜炎単独の発症もありうる。起炎菌の主なものは、GBS、大腸菌の他に黄色ブドウ球菌(MRSA)などである。
臨床症状は低体温や無呼吸、not doing wellなどで、非特異的である。このほか、発熱、哺乳不良、腹部膨満、黄疸、出血傾向などの症状が見られる。髄膜炎を発症しても、乳児期以降の場合に比べ大泉門の膨隆や項部硬直などの症状は見られない。
CRPなどの炎症反応も発症初期は弱陽性の場合がある。白血球増多、血小板減少、高血糖なども見られるが、特異的な検査法は確立していない。
診断は容易ではなく、臨床症状、検査所見から総合的に判断する。症状は非特異的で、検査所見も早期から陽性にはならないことが多く、新生児の状態不良の際は、常に感染症は念頭におく必要がある。
上記のように、診断が困難であるが、リスク因子を考慮し確定診断がなくても、遅れないように治療に入る必要がある。
早発型敗血症のリスク因子は前期破水(24時間以上、早産前期破水)、母体発熱、羊水混濁・悪臭羊水、原因不明の新生児仮死、母体GBS保菌などである。
管理は新生児集中治療室で行われることが望ましい。抗菌薬が投与されると起炎菌の同定が困難になるので抗菌薬投与前に必ず血液培養を行う。血液培養のほか、髄液検査は児の状態が許す範囲で全例に行う。髄液糖低値は髄膜炎合併を示唆する。
起炎菌の同定のほかに、抗菌薬に対する感受性情報も必要である。細菌培養を提出し、その結果が判明する以前に抗菌薬の投与を開始し、培養による細菌の感受性が判明すればその後の変更を検討する。
大腸菌などのグラム陰性桿菌、GBS、リステリア菌等を念頭に置き、アンピシリンを中心に治療を開始する。重症例ないし細菌が特定されていない場合にはアミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシン)も併用する。
Empiric therapyとして使用される抗菌薬は、早発型敗血症の主な起炎菌がGBS、大腸菌であることから、アンピシリンが第一選択となる。
耐性菌の問題および相乗効果の期待から、通常はアミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシン)も加え、ビクシリン注(250mg)1回50mg/kg、1日2回静注 、ゲンタシン注 (10mg)1回2.5mg/kg、1日2回点滴静注とする。
髄膜炎の合併が確認されれば、髄液移行の良さと長期投与になることを考慮し、ゲンタマイシンの代わりにセフォタキシムを使用しても良い。その場合、ビクシリン注(250mg)1回100mg/kg、クラフォラン注(0.5g) 1回50mg/kg、1日2回静注を併用する。
起炎菌の予測がたたない時はパンスポリン注 (0.25g) 1回30mg/kg、1日3回静注ないしファーストシン注 (0.5g) 1回20mg/kg、1日3回点滴静注を開始し、MRSA敗血症が疑われる時は、ハベカシン注 (100mg) 1回5mg/kg、1日1回点滴静注を開始する。
MRSA敗血症が確定したら、塩酸バンコマイシン注 (0.5g) 1回10-15mg/kg 1日2-3回 1時間かけて点滴静注ないしハベカシン注 (100mg) 1回5mg/kg、1日1回点滴静注を投与する。
菌の抗菌薬感受性に合わせて、ペントシリン注 (1g) 1回30mg/kg、1日3回静注、ないしモダシン注 (1g) 1回30mg/kg、1日3回静注、ないしファーストシン注 (0.5g) 1回20mg/kg、1日3回点滴静注、ないしカルベニン注 (0.25g) 1回15mg/kg、1日3回 30分以上かけて点滴静注などを使用する。
低ガンマグロブリン血症に対する補充や敗血症の予防としては使用せず、重症感染症時の抗菌薬の補助として使用する。免疫グロブリン製剤として、Fc部分を持ち、ほぼ正常な抗体の構造を保持しているintact型免疫グロブリン製剤が良い。ヴエノグロブリン-IH注 (500mg) 1回100mg/kg 1時間以上かけて点滴静注などを行う。
好中球減少合併時に使用を考慮する。骨髄での顆粒球の増殖を進めるだけでなく、末梢への顆粒球の動員およびその機能増強にも効果がある。敗血症のみでは保険適用外になっているので、病名に注意し症状詳記での説明が必要。
発症した場合は、非常に予後不良である。死亡ないし神経学的後遺症発症などの予後不良例は、発症例の内、早発型で16.9%、遅発型で29.2%とされている。
骨髄炎、関節炎osteomyelitis、arthritisが見られることがある。細菌が血行性に播種され局所で増殖し、骨髄炎、関節炎を引き起こす。ブドウ球菌(特にMRSA)感染によるものが多い。
GBSの母体保菌は日常遭遇しやすいボーダーラインリスクであり、それに対する新生児GBS感染症の予防策が古くから検討されて来た。米国では産婦人科医会と小児科学会が合同で、1996年に疾病管理防疫センター(CDC)を通して、統一ガイドラインが提出され、その後2002年に改訂され、現在妊娠35~37週の妊婦全例に腟ないし直腸のGBS保菌のスクリーニングを行う方法に統一されている。
この対策では、GBS陽性母体には、分娩時ないし前期破水発生時にPCG500万単位ないしABPC2g、以後4時間毎にPCG250万単位ないしABPC1gを投与するとされている。これにより、米国では早発型のGBS感染症が3分の1に減少したとされている。しかし、本邦では個々の施設の判断で予防法が施行され、統一されていないのが実情である。
1) Davis JK, Gibbs RS. Obstetric factors associated with infections in the fetus and newborn infant. In Remington JS, and Klein JO (ed): Infectious diseases of the fetus and newborn infant. 6th , pp 59-86, 2006.
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3) Centers for Disease Control and prevention: Prevention of perinatal group B streptococcal disease: Revised guidelines from CDC. MMWR 51: 1-22, 2002.
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1) 高橋尚人、仁志田博司・楠田聡 編集:超低出生体重児 新しい管理指針,メジカルビュー社、東京
2) 高橋尚人、堺武男 編・著:イラストで学ぶ新生児の生理と代表的疾患,メディカ出版、大阪
3) 高橋尚人、河野茂 編集:MRSA-基礎・臨床・対策-,医薬ジャーナル社、大阪市
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