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Anal Fissure
執筆者: 松島 誠
裂肛とは肛門の閉鎖する部分(肛門管)の皮膚に、硬い便などでついた傷であるといえる。乳幼児から成人にいたるまで性別を問わずどの年代にも起こりうる疾患で、急性裂肛といわれる初期の段階では非常に浅い傷で簡単に治癒させることができるが、充分に治療されずに繰り返されると慢性裂肛といわれる治りにくい状態に変化していく。
最も多い原因は便秘などで硬い太い便が排泄されることで傷ができる。そのほか、下痢が頻回に繰り返されたり肛門が狭いなども原因となる。また解剖学的に肛門管の皮膚の血流量や括約筋の伸展性が悪い場合は裂肛の慢性化のひとつの要因となる。
排便時や排便直後に肛門の痛みを自覚する。痛みの程度は個人差があり裂肛の程度とは必ずしも一致しないが入浴などで肛門部を暖めると痛みが軽くなる場合が多い。出血は時に滴下するものもあるが、ほとんどが拭いた紙につく程度の少量である。慢性化したものでは痛みが長引くことがあり、さらに肛門の縁に皮膚のたるみ(見張りいぼ)ができたりポリープ様の病変や肛門狭窄などの症状をきたすようになる。

裂肛の病態
裂肛が治癒遷延または慢性化した場合には、直腸肛門内圧検査を行う。慢性化しやすいタイプでは肛門静止圧が高い値を示す傾向がある。
痛みと出血の状態や、原因となりうる便秘や硬い便の排泄があったか否かを問診することでおよそ診断できる。肛門指診や肛門鏡でも診断できるが、急性の裂肛は指診で触れにくい。慢性化したものでは肛門の縁にできる見張りいぼを視診するだけで判断できるものもある。外痔核、浅い痔瘻、肛門癌、肛門ポリープ、クローン病に合併した裂肛、などとの鑑別を要する。
裂肛治療の基本は保存的治療である、食生活に注意して便秘や下痢などの排便に関するコントロールを行い、排便後には座浴や洗浄、入浴を行って座薬や軟膏による薬物治療をする。急性裂肛では1週間以内に治癒するものが多い。やや慢性化した症例でもまず保存的な治療を行い1~2週間で症状が改善しなければ外科的な治療法を考慮する。外科的な治療はポリープや見張りいぼがあれば切除を行い、肛門が狭くなる狭窄の症状があれば用手的肛門拡張法や側方皮下内括約筋切開術、有茎皮膚弁移動術を行う。
これらの治療で裂肛はほぼ治癒させ正常な肛門の状態にさせることが可能だが、便秘などの原因があれば再燃するため極力原因の排除と早期に治療することが大切である。
内括約筋の緊張が裂肛の発生および慢性化の要因になっていると考えられ事から、薬物によって括約筋の緊張を取り除き治療しようとするものである。ニトログリセリン軟膏の内括約筋弛緩作用により70%前後の治癒が得られたとの報告があるが肛門部の灼熱感と40%以上に頭痛の副作用が見られると報告されている。ボツリヌス菌の注射を括約筋に行って数週間括約筋を麻痺させて裂肛治療をする方法であるがまだ一般的ではない。
松島誠 著:「痔学」,悠飛社 2003
1) 岩垂純一 著:実地医家のための肛門疾患診療プラクティス,永井書店 2007
2) 幕内雅敏 監修、杉原健一 編集:大腸・肛門外科の要点と盲点 第2版 Knack & Pitfalls,文光堂 2005
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