MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。


執筆者: 今井 裕
口腔粘膜の比較的広範囲に及ぶ炎症状態を口内炎と称する。病態は多岐にわたるため、分類も一元的には難しく、形態ないしは原因に基づく分類がなされている。また、口内炎を症状からみて分類されているものも認められるが、それらは初診時の臨床診断として用いる場合が多く、最終診断として用いるべきではないと考える。
口腔粘膜は重層扁平上皮よりなり、唾液により湿潤され、唾液中の分泌型IgA抗体を主体とする免疫グロブリンおよびペルオキシダーゼなどの殺菌物質で保護されるが、角化層に乏しく、微生物の蓄積を剥離により防御する機能は乏しい。また、食物摂取や会話などの物理的および化学的刺激を受けやすく、局所の安静が保ちにくく、症状が変化しやすく、また常在菌の存在も認める。
口内炎の発生病態は
①口腔粘膜に限局した病変、
②他部位の粘膜疾患や皮膚疾患と関連した病変、
③全身疾患の部分症状としての病変、などがあり、
原因としては
①細菌、ウイルス、真菌による感染、
②義歯、う蝕などによる機械的刺激、
③原因不明なもの、などが考えられているが、原因不明なものが多いとされている。
口腔粘膜の病変形態は、病期や時間によって変化する。その形態がどのように推移したか、疼痛などの付随する症状の変化も重要である。また、機能的変化(嚥下障害、味覚異常、食事摂取困難)を認めることもある。
口腔カンジダ症、ヘルペス、帯状疱疹、ヘルパンギナ、手足口病、放射線性口内炎、褥瘡性潰瘍、急性壊死性潰瘍性歯肉炎、ベーチェット病
ヘルペス、帯状疱疹、ヘルパンギナ、手足口病、天疱瘡、類天疱瘡
アレルギー性口内炎、多形滲出性紅斑、エリテマトーデス
ニコチン性口内炎、口腔扁平苔癬、口腔カンジダ症
診断に際して、患者の年齢、部位、全身的症状、罹患歴、家族歴、嗜好品などを含む生活様式、臨床所見などを参考にする。しかし、部位的に物理的や化学的な修飾を受けやすいことも考慮する。
Candida Albicansの感染により引き起こされ、局所的発症要因としては、口腔用ステロイド軟膏の長期塗布や口腔乾燥、義歯の清掃不良、口腔の清掃不良なども誘因になる。粘膜の発赤、びらんを認める。診断には、細菌検査および病理組織検査を用いる。治療には、抗真菌薬を投与し、保湿剤や含嗽薬、義歯の清掃、口腔ケアなどによる誘因の除去も行う。
単純疱疹ウイルス(HSV)の感染により発症する。HSVは抗原性の違いにより1型と2型に分類され、口腔粘膜はHSV-1型が関与する。初感染は乳幼児期に起こるが、不顕性感染が多い。初感染後、ウイルスは神経細胞に移行し、潜伏感染する。症状は、発熱、食欲不振、全身倦怠感とともに口腔粘膜に多数の小水疱を形成し、その後破れてびらんとなる。接触痛、易出血性である。臨床症状から診断は比較的容易であるが、確定するにはウイルスの同定、抗原検査、PCR法、血清学的検査が必要である。治療は、安静、栄養補給とともに抗ウイルス薬の投与が必要である。坑ウイルス薬含有軟膏の塗布も有効である。
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染により発症し、それは、初感染後に神経節に潜伏したウイルスが再活性化し、脳神経あるいは脊髄神経支配領域に一致して、片側性に帯状の発疹を生じる。発疹は通常、丘疹、小水疱、びらん、痂皮、瘢痕をたどり、2~3週間で経過する。診断は臨床症状によって可能だが、確定するにはウイルスの同定、抗原検査、PCR法、血清学的検査が必要である。治療は、坑ウイルス薬含有軟膏の塗布が適応で、症状に応じて安静、栄養補給とともに抗ウイルス薬の投与が必要である。また、疼痛に対しては、鎮痛薬、三環系抗うつ薬、アミトリプチンの投与や星状神経節ブロックが有効である。
原因はエンテロウイルスのうち、大多数はコクサッキーウイルスA群の感染による。夏季に流行しやすく、乳児や小児に多くみられるが、年長児や成人に感染することもある。症状は2~4日の潜伏期後、38~40℃の発熱、頭痛、咽頭痛、咽頭粘膜の発赤、口腔内(軟口蓋、口蓋垂)に直径1~2mmの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。小水疱は破れ、潰瘍になり、疼痛を伴う。約1週間で消失する。診断は臨床症状によって可能だが、確定するにはウイルスの同定、血清学的検査が必要である。対症療法が行われ、小児は水分栄養の補給をおこない、脱水に注意する。
口腔粘膜疹と皮膚発疹を主徴とし、主にコクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71感染による。好発年齢は1~3歳で、夏季に流行する。高熱、その後口腔粘膜にアフタが生じ、手掌、足蹠、指趾などに3~7mmの水疱を形成するが、1週間以内に治癒する。対症療法が主体である。
放射線治療に起因するが、ブレオマイシン、5-FUなどの抗癌薬と放射線治療を併用した場合には、放射線単独の場合よりも線量が少ない時期から発症する。放射線線量により症状は変化するが、粘膜の発赤、浮腫に始まり、紅斑、びらん形成を認めるようになり、びらんから潰瘍形成に至ることがある。びらん、潰瘍の表面は白色あるいは淡黄色の線維性偽膜で覆われ、強い接触痛と灼熱感があり、易出血性である。味覚障害を伴うことが多い。
小唾液腺が放射線により損傷を受けて唾液分泌障害を起こすと口腔乾燥状態となり、自浄作用が困難となるため、口内炎が悪化する。重篤になれば、放射線治療を中止する。刺激性の少ない含嗽剤で口腔内の清掃に努め、疼痛に対してはキシロカインスプレーR、キシロカインビスカスR、で対応する。副腎皮質ホルモン含有(ステロイド)軟膏、あるいはネブライザーを使用する場合もある。また、全身を著しく消耗している場合もあるため、栄養管理も重要である。
慢性的な機械的刺激が加わることによって、循環障害が起こり生じる潰瘍である。歯牙鋭縁、歯列不正、不適合補綴物、咬傷、オーラルディスキネジアが刺激となる。潰瘍はやや浅く、表面は灰白色であり、接触痛や刺激痛は認めるが、自発痛は少ない。治療は、原因を除去し、経過をみる。また、口腔内を清潔にし、含嗽をおこない、口腔粘膜塗布用ステロイド含有軟膏を塗布する。2週間経過しても治癒しない場合は、癌との鑑別が必要である。
急速に潰瘍性、壊死性病変として経過する特徴的な疾患で、一般に歯冠乳頭部、辺縁歯肉から発症することが多い。初期病変は歯冠乳頭、あるいは辺縁歯肉に限局した壊死性の潰瘍であり、急性壊死性潰瘍性歯肉炎とよばれる。病変が口蓋、口底など隣接粘膜に広範囲に拡大すると急性壊死性潰瘍性口内炎、さらに口峡部に及ぶとVincent口峡炎という。
紡錘菌(Bacillus fusiformis)およびスピロヘータ(Treponema vincentii)などの嫌気性菌、グラム陽性球菌、グラム陰性球菌など多種類の菌の混在が関与しているが、背景に重症栄養障害、免疫能の低下、感染症などの誘因が重要視される。潰瘍を形成すると口腔内は不潔になりやすく、接触痛、出血、口臭などがある。また、病変が進行すると高熱、食欲減退などの全身的症状を伴う。全身衰弱、栄養失調などがある場合は病巣は深部にまで拡大し、筋肉、骨、皮膚などの壊死をきたし、壊疽性口内炎、水癌、ノーマなどとよばれる。治療は、全身的背景の改善が重要であり、同時に抗菌薬の投与を行う。接触痛があり、栄養管理、口腔内の清掃も必要である。
口腔内の再発性アフタ、結節性紅斑などの皮膚所見、虹彩毛様体炎あるいは網膜ぶどう膜炎などの眼症状、外陰部潰瘍が主症状である。原因は不明であるが、免疫遺伝学的因子の関与が考えられている。発症年齢は30歳代が多く、男性に多い。口腔内の再発性アフタはほぼ必発であり、約90%以上の患者で初発症状となる。治療は、抗菌薬、抗炎症薬などの対症療法であり、本疾患の治療としては、副腎皮質ステロイド剤の内服や血漿交換法、活性酸素除去剤、免疫抑制剤をおこなう。病変部位によっては、専門医の受診が必要である。
抗表皮細胞膜物質に対する自己抗体の関与により表皮内に棘細胞性水疱を生じる自己免疫性水疱症である。発症年齢は45~55歳に多く、女性にやや多い。口腔粘膜や皮膚に水疱を生じ、早期に破れてびらんとなり、痂皮に覆われ、それが乾燥して治癒となるが、一方では次々に新しい水疱が形成され、難治性の状態を呈する。一見正常な上皮が擦過すると、剥離や水疱形成を示すNikolsky現象が認められる。水疱は、大型のものが多く、病理組織学的に棘融解による表皮内水疱がみられ、Tzank細胞が検出される。治療は、副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤などの全身投与を第一とし、局所療法として副腎皮質ステロイド剤の噴霧薬、軟膏を用いる。
皮膚、粘膜の基底膜部の接着が脆弱になり、比較的大きな水疱を形成するまれな自己免疫性水疱形成疾患である。発症年齢は40~80歳に認められるが、特に高年齢者に発症しやすい。水疱を形成するが、ほとんどの場合では、摂食や外傷により水疱は破れて剥離し、その後は難治性びらんとなる。病理組織学的に表皮下水疱が認められるが、上皮全体が剥離してしまうと診断が困難な場合が多い。治療は、症状によって異なるが、軽症であれば副腎皮質ステロイド含有軟膏の塗布で経過観察をおこない、症状が拡大している場合は、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を使用する。
通常では発症しない量の特定抗原に摂食や摂取により抗原抗体反応が起きて病的症状が口腔粘膜に表れる炎症である。原因物質は薬剤、食物、歯科用金属や材料があり、症状は発赤、浮腫、小水疱、紅斑、歯肉炎、粘膜炎を呈する。アレルギー反応は即時型と遅延型に分類され、即時型には多形滲出性紅斑症候群、扁平苔癬様発疹、固定薬疹、中毒性表皮壊死症などがあり、遅延型は抗原の局所反応による接触性口内炎である。診断には問診により、十分なスクリーニングを行うことが重要である。
検査方法は、アレルギー検査(皮膚貼付試験、掻爬試験、皮刺試験、皮内試験)や血液検査がある。治療は、原因を特定し、その使用をすぐに中止させる。現症の処置として洗口、含嗽、軟膏塗布をおこなう。
口腔、眼、鼻、外陰などに紅斑、丘疹、水疱、びらん、潰瘍が生じ、口腔粘膜では浮腫性の紅斑から偽膜を有するアフタ性病変となる。病因は不明であるが、薬剤もしくは感染症などが誘因となるとされている。粘膜病変の病理組織所見は、上皮細胞の変性および上皮直下における高度の炎症性細胞浸潤により上皮内および上皮下に水疱が生じ、上皮は剥離する。治療は、薬剤もしくは感染症などの誘因を明らかにすることが重要であり、誘因の除去と同時に栄養補給、副腎皮質ホルモン剤の投与をおこなう。
膠原病疾患で、自己抗体が免疫複合体を形成し、それらが組織に沈着し、補体の活性化が生じて障害をきたす。病因としては、紫外線への曝露、ストレス、感染症などで発症することが多い。全身性エリテマトーデスでは、患者の90%は女性で、20~30歳代に好発する。口腔症状は、口腔粘膜の紅暈を伴う小紅斑、小潰瘍である。治療は、医科と連携しておこなうことが重要であり、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤が効果的である。口腔病変には、口腔内を清潔に保ち、軟膏や含嗽薬を使用する。
喫煙により生じる口内炎であり、発疹で表れ、灰白色を呈し、皺状となって肥厚化する。治療は、喫煙をやめさせるよう指導し、口腔内を清潔に保つようにする。
慢性炎症性角化病変であり、40歳以上の女性に多い。明らかな病因は不明だが、細菌やウイルスの感染、薬物、歯科用金属アレルギー、ストレスが考えられている。口腔粘膜全体に発現するが、特に両側頬粘膜に多く、所見は網状、びらん状、萎縮状にわけられる。難治性で前癌状態とされている。病理組織像は、口腔粘膜上皮下結合組織には帯状にリンパ球が浸潤している。治療は、副腎皮質ステロイド剤の局所使用が一般的であり、重症例では内服も検討する。
癌、特異性炎、全身的疾患の口腔粘膜への波及、ウイルスや細菌の感染、全身抵抗力の低下(疲労、免疫不全など)が挙げられる。特に潰瘍性口内炎では、癌性潰瘍との鑑別が重要である。1~2週間経過しても変化がない、また拡大傾向のある場合は病理組織診などが必要になる。
特異性炎では、結核、梅毒、淋病などが疾患として挙げられる。結核菌による口腔粘膜の潰瘍は浅く、有痛性で舌や口蓋に好発する。梅毒は、主に口唇に硬結の中央部が陥凹した無痛性の潰瘍やびらんが認められる。淋菌による口内炎は紅斑を伴った潰瘍が多発してみられる。まず原疾患の治療を行う。
1) 宮崎正 監修:口腔外科学-第2版:医歯薬出版株式会社、2005
2) 南雲正男 編著:口内炎、口腔乾燥症の正しい口腔ケア:医薬ジャーナル社、2001
3) 山根源之 編著:日本歯科評論 増刊チェアーサイドで活用する最新口腔粘膜疾患の診かた:(株)ヒョーロン、2007
1) 佐々木忠昭・今井裕 編:歯科医療 2004年秋号(Vol.18 No.4)「最新の歯科免疫学-口腔病変と免疫のしくみ」,第一歯科出版
2) 今井裕・夏目長門 編:言語聴覚士のための基礎知識 臨床歯科医学・口腔外科学,医学書院
3) 今井裕・日本口腔ケア学会 編:日本口腔ケア学会認定資格標準テキスト 問題と解説集 上巻,日総研出版
4) 今井裕 著:最新 チェアーサイドで活用する口腔粘膜疾患の診かた,日本歯科評論増刊
5) 今井裕 著:プライマリ・ケア即戦手引き,金芳堂
6) 今井裕 著:暮しと健康(2007),保健同人社
7) 今井裕 著:暮しと健康(2008)地図状舌 、保健同人社
8) 今井裕 著:心筋梗塞 ピンポイントで読む チームのための有病者歯科医療,クインテッセン出版株式会社
9) 今井裕 著:暮しと健康 63巻10号73 口腔内の水泡 ,保健同人社 10) 今井裕 著、日本口腔ケア学会 編:日本口腔ケア学会認定資格標準テキスト 問題と解説集 下巻,日総研出版
1) 宮崎正 著:口腔外科学、医師薬出版 2000
1) 照林社編集部:最新口腔ケア―エビデンスに基づくスタンダード技術 (ナーシング・フォーカス・シリーズ),照林社 2001
2) 日本歯科医師会, 静岡県歯科医師会:EBMに基づいた口腔ケアのために―必読文献集,医歯薬出版 2002
情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。