脂肪腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

脂肪腫(しぼうしゅ)

lipoma

執筆者: 秋山 達

概要

 脂肪腫は、最もよく目にする良性の軟部腫瘍です。通常は単発性に見られます。多発性であることはまれです。皮膚のすぐ下に発生することが多いため、外見から腫瘤(しゅりゅう:こぶ)として認識できます。深い部分の筋肉の間などにできた場合は外からはわかりにくいことがあります。

 病理組織学的には成熟した脂肪細胞からなり、一見、正常脂肪組織と区別がつきにくいですが、細胞は正常よりやや大きいとされます。外から触れても境目がわかりにくい場合がありますが、脂肪腫自体は、薄い被膜をかぶり、境界は比較的はっきりとしています。割面は白っぽい黄色からオレンジがかった黄色を示します。いくつかの房に分かれているものもあります。脂肪腫は40~50歳代に好発し、女性に多いとされています。また、肥満者に多いとも言われています。背中、肩の周辺、臀部の皮下によく発生し、筋肉のなかに発生する場合は大腿部によく発生します。20歳以下に脂肪腫ができることは稀です。

病因

 全身に発生する脂肪腫の場合、遺伝子異常の報告や、飲酒やステロイド剤などの薬剤が関係するという報告がありますが、どのようなメカニズムで脂肪腫ができるのかということについては詳しくわかっていません。

臨床症状

 主な症状は腫瘤を自覚することのみです。疼痛や熱感などの症状はありません。長い経過で少しずつ大きくなる場合が多いようです。脂肪腫は直径5cmをこえる巨大なものもよくみられます。

 一般的に、直径5cmを超える腫瘍は悪性の可能性が高くなるといわれています。逆に言うと、良性腫瘍でここまで大きくなることは少ないということなのですが、脂肪腫は例外的に大きくなります。体重が増えると腫瘍も大きくなることがあります。

診断・鑑別診断

 軟部腫瘍は、臨床症状や画像検査では診断が困難なものがほとんどです。しかし、脂肪腫はCTとMRIで診断が比較的容易にできます。ただし、脂肪肉腫の一種である高分化型脂肪肉腫(こうぶんかがたしぼうにくしゅ)と鑑別することは難しい場合があります。その場合は、腫瘍の病理診断を確定し、治療方針を決めるために、切除生検術をする必要があります。生検術とは腫瘍を診断するために腫瘍の全部もしくは一部をとってくる処置のことをいいます。
 生検術には外来で針をさして腫瘍の一部をとってくる針生検術、腫瘍の一部を手術でとってくる切除生検術、手術で腫瘍をすべて取ってくる切除生検術の3種類があります。高分化型脂肪肉腫が疑われる場合は、腫瘍をすべてとってくる切除生検術を行う必要があります。腫瘍の一部分だけを取ってきても脂肪腫と高分化型脂肪肉腫の鑑別ができないことがあるからです。骨軟部腫瘍は専門性の高い分野ですので画像診断ならびに病理診断は骨軟部腫瘍の治療になれている医師に行ってもらったほうがよいでしょう。

治療

 脂肪腫であると診断されれば、見た目の問題だけですので切除する必要はありません。しかし、腫瘍は自然に消滅することはありません。脂肪腫も例外ではありません。そのため、見た目が気になる場合は手術する必要があります。ただし、部位によってはふくらみよりも、術後の瘢痕のほうが問題となることがありますので、よく考えた上で手術を行う必要があります。当院ではできるだけ早期に抜糸するなどの方法で、術後瘢痕に対応しています。また、画像診断で完全に脂肪腫であると言い切ることはできません。ですので、完全に病理診断をつけることを希望される場合も、手術が必要となります。

予後

 良性腫瘍であり、悪性化についても報告されていませんので、生命に影響は与えません。再発もほとんど起こしません。

*脂肪腫と脂肪肉腫の名前は「肉」一文字しか違いませんが、この二つは大きく違うものです。脂肪腫は良性腫瘍であり、脂肪肉腫は悪性腫瘍であるということです。脂肪肉腫についてはこちらの項をご覧ください。

(MyMedより)推薦図書

1) 森岡秀夫 編さん, 戸山芳昭・大谷俊郎 監修:骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 整形外科専門医になるための診療スタンダード 4,羊土社 2009

2) 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・軟部腫瘍診断ガイドライン策定委員会 編集:軟部腫瘍診断ガイドライン,南江堂 2005

3) 岩本幸英 編集:骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls),文光堂 2005

4) 中村利孝・内田淳正・松野丈夫 編集, 国分正一, 鳥巣岳彦 監修:標準整形外科学 (STANDARD TEXTBOOK),医学書院 第10版版 2008

5) 越智隆弘・菊地臣一 編集:骨・軟部腫瘍 (NEW MOOK整形外科),金原出版 2005


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