小児の子宮・膣の異常 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

小児の子宮・膣の異常(しょうにのしきゅう・ちつのいじょう)

執筆者: 世川 修

概要

 小児の子宮・膣の疾患には、先天性奇形(形態異常)、腫瘍1)、感染症2)、外傷3)、異物などがあり、頻度は少ないものの、将来の妊娠・分娩に影響を及ぼす重要な疾患も存在する。特に、先天性奇形の場合、子宮・膣のみに病変が限局するものから、尿生殖洞異常、総排泄腔症や鎖肛に伴う合併疾患として症状を呈するものなど、様々な疾患が存在する。また、これらの疾患に対する治療も、新生児期に緊急的な治療が必要な疾患から、初経までには治療が完了している必要がある疾患、更には性交渉前までの治療が必要となる疾患まで多岐にわたる。 
 本稿では、小児期の子宮・膣の先天性奇形を、他疾患の合併奇形としての形態異常も含めて解説し、他の後天性疾患は文献にゆずる。

病因

 胎生4週には、後腸と尿膜が共通の腔(総排泄腔)として認められる。胎生6週になると、尿直腸中隔の尾側への成長により、総排泄腔が腹側の尿生殖洞と背側の肛門直腸管とに分割される。胎生8〜12週頃には、内生殖器原基である左右のMuller管が癒合して、尿生殖洞の後面に結合し、子宮、卵管、膣上1/3が形成され会陰部に下降する。膣下2/3は尿生殖洞と会陰部の皮膚が陥凹して形成され、最終的には尿道、膣、直腸が形成される。この発育過程の障害により、子宮、膣に種々の奇形が発生する。
 子宮および膣上1/3は、左右のMuller管が癒合することにより1個の器官として形成されるため、この癒合が癒合不全や不完全癒合の状態であると、重複あるいは隔壁をもつことになり、重複子宮、双角双頚子宮、双角単頚子宮、不全中隔子宮、重複膣、膣中隔などの奇形を有することになる。また、Muller管の一側の発生不全や片側あるいは両側の部分的欠損、無形成などにより、単角子宮、痕跡状無腔子宮(盲角子宮)、子宮欠損、膣欠損などが発生する。
 一方、膣下2/3は尿生殖洞と会陰部の皮膚の陥凹により形成されるが、左右のMuller管が接着はするが尿生殖洞まで到達しない時期の異常であると、膣上1/3のMuller管部と膣下2/3の尿生殖洞との境界部で膣板の管状化不全がおこり、膣閉鎖症(膣横隔膜)が発生する。 鎖肛、総排泄腔症、尿生殖洞異常も、これらの発育分割過程での異常が原因で発生する。

病態生理

 子宮および膣の先天性奇形は、Muller管の癒合状態の異常とMuller管そのものの異常の組み合わせにより、病型は多岐にわたり分類も複雑である。これらの形態的異常の多くは、初経前の小児期に問題とされることはほとんどないが、膣欠損や膣閉鎖、他疾患に伴う膣病変は、診断および治療の両面から小児期における病態が重要となる。
 先天性膣欠損は、Rokitansky-Kustner-Hauser症候群と呼ばれているMuller管無形成症候群に認められ、Muller管由来である卵管、子宮、膣の欠損を認める。しかし卵巣は正常に存在し、臨床表現型は正常な女性(46, XX)である。子宮は欠損するか、または痕跡的な重複子宮として認められ、痕跡状の子宮内に子宮内膜が存在している場合もある。また、腎奇形(異所性腎や単腎)を合併する頻度が高い。
 膣閉鎖症は、ほとんどが膣上1/3と膣下2/3との境界部に好発し、しばしば辺縁に小孔が存在している。先天性膣欠損と異なり、上部の生殖器は正常に存在する。腎奇形も合併し、片側膣閉鎖を伴った重複子宮では、ほとんどが閉鎖膣盲端と同側の腎無形成を合併する。子宮頚部あるいは膣の上1/3の単独閉鎖、膣の下部欠損はまれであるが、この場合は、会陰部には膣口を認めないか、わずかな陥凹を認めるのみである。また、処女膜閉鎖症では処女膜に孔がなく、膣口が膜様に閉鎖されている。
 尿生殖洞異常は、尿道と膣が別々に開口せずに、共通の尿生殖洞として膣前庭部に一穴の状態で開口している病態をいう。先天性副腎過形成、副腎性器症候群、真性半陰陽、鎖肛などに合併して認められる。鎖肛(直腸膣瘻)は、女児の中間位または高位鎖肛で、直腸盲端と膣に交通を有する病型である。総排泄腔症は、女児の鎖肛の特殊な病型であり、尿道、膣、直腸が共通の総排泄腔に合流し、肛門が存在しないとともに、会陰部に総排泄腔のみが開口している病態である。

臨床症状

1 自覚症状  

 形態的な異常が存在しても、初経前に自覚症状を訴えることは稀である。初経初来後、月経困難症、月経不順などの月経異常を呈することがあり、膣閉鎖症や処女膜閉鎖症では、月経血が体外へ排出されないために無月経(偽無月経、潜伏月経)となる。体内に貯留された月経血は膣留血腫、子宮留血腫、卵管留血腫を形成し、やがて定期的な腹痛(下腹部痛)を自覚するようになり、放置されれば巨大な腹部腫瘤として排便排尿障害や持続的腹痛の原因となる。先天性膣欠損症(Rokitansky-Kustner-Hauser症候群)で、痕跡子宮に内膜が存在している場合にも、この痕跡的子宮が周期的月経を繰り返すため、月経血の貯留による子宮留血腫をきたす。

  2 他覚症状

 鎖肛、総排泄腔症、尿生殖洞異常などの他疾患に伴う異常の場合は、ほとんどが幼児期以前に外科的治療が行われているため、自覚症状としては認められることは少なく、新生児・乳児期の他覚症状としてとらえられる。鎖肛(直腸膣瘻)で瘻孔が太い場合には、膣から排便排ガスが認められる。総排泄腔症で高位の尿道総排泄腔瘻の場合には、膣・子宮内の尿貯留による水膣・水子宮症をきたし、出生直後より排尿障害と下腹部腫瘤を呈する。尿生殖洞異常では外尿道口が確認できず、尿道カテーテル挿入が困難である。

診断・鑑別診断

 形態的な異常がほとんどであり、症状発現も遅いため、他疾患の検索時や検診時に偶然発見されることがほとんどである。新生児・乳児期や幼小児期に発見された場合、超音波やCT・MRIも有用ではあるが、小児期における骨盤内臓器の画像診断には限界があり、確定診断のためには腹腔鏡、膣鏡などの全麻下検査が必要となることもある。

治療

 子宮の形態的奇形に関しては、そのほとんどが成人期に手術的治療が行われるため、詳細は産婦人科正書にゆずる。
 小児期に治療が必要とされる疾患は、膣閉鎖症、処女膜閉鎖症、先天性膣欠損症(Rokitansky-Kustner-Hauser症候群)、総排泄腔症、鎖肛(直腸膣瘻)、尿生殖洞異常に限られる。膣閉鎖症は、膜様閉鎖では切開のみで問題ないが、閉鎖部が厚い場合には輪状切開を行なう。処女膜閉鎖症では十字切開を行なう。先天性膣欠損症(Rokitansky-Kustner-Hauser症候群)で、痕跡子宮に内膜が存在している場合には、月経開始前後に子宮切開または摘出が必要となる。また、成人期には造膣術が様々な方法4)で行われるが、性交は可能になるものの妊娠分娩は不可能である。総排泄腔症では、水膣・水子宮症に対して新生児期にドレナージ手術が必要であり、乳児期〜幼児期早期の根治術時には膣の延長が必要となる。膣の延長は、skin flap法、vaginal flap法、腸管代用法などが行なわれる。直腸膣瘻では、乳児期の鎖肛根治術時に直腸膣瘻が閉鎖され、直腸肛門形成術が行なわれる。尿生殖洞異常は、陰核形成術、陰唇・膣形成術5)が行われる。

予後

 子宮の形態的奇形の多くは、成人期の治療により正常な妊娠、出産が可能である。膣閉鎖症や処女膜閉鎖症は、小児期の治療で経血の排出が可能となれば、その後の月経も含めて問題はなくなるが、診断が遅れた場合には、卵管卵巣壊死や破裂による腹膜炎をきたすことがある。膣閉鎖症で輪状切開を行なった場合には、術後の瘢痕性萎縮に注意が必要である。
 先天性膣欠損症(Rokitansky-Kustner-Hauser症候群)では、造膣術により性交は可能となるが、総排泄腔症の造膣術の場合も含め、術後狭窄や萎縮が問題となることがある。また痕跡子宮であるために、自身の子宮で妊娠することは不可能であり、現段階で実子を得るためには体外受精と代理母による出産以外に方法はない。しかし将来的には子宮移植6)が現実となる可能性も残されている。

参考文献

1) 佐伯守洋、中野美和子、黒田達夫、嶋寺伸一、坂本浩一:外陰・膣・子宮の腫瘍性病変、小児外科31:68-73,1999

2) 野口昌良:性器の感染症とその治療、小児外科31:43-46,1999
 
3) 土屋博之、長島金二:性器の外傷とその治療、小児外科31:47-50,1999
 
4) 伊熊健一郎、松本 貫、 棚瀬康仁、安藤正明、大橋秀一:先天性膣欠損症に対する人工造膣術-腹腔鏡下S状結腸利用造膣術-、日鏡外会誌12:285-293,2007

5) 矢内俊裕、宮野 武:思春期女児の泌尿生殖器疾患、小児外科31:97-104,1999

6) 西田正人、岡本 一、林 陽子、他:子宮移植の試み、産婦人科マイクロサージャリー学会誌13:13-16,2001

(MyMedより)推薦図書

1) 寺島和光 著:小児科医のための小児泌尿器疾患マニュアル,診断と治療社 2006

2) 岡部信彦 監修、米国小児科学会 編集:最新感染症ガイド・アトラス 日本版RED BOOK ATLAS,日本小児医事出版社 2010

3) 寺島和光 著:小児泌尿器科ハンドブック,南山堂 2005
 
4) 岡田正 著:系統小児外科学,永井書店 2005

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