骨肉腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.12

骨肉腫(こつにくしゅ)

Osteosarcoma (Osteogenic sarcoma)

執筆者: 河野 博隆

概要

 かつて「骨肉腫」は手足を切断しても治らない「不治の病」の代名詞でした。しかし、1970年代の全身化学療法の導入で生命予後は大きく改善しました。また現在、患肢温存術が主流となり切断が必要となることは少なくなっています。

 悪性腫瘍(がん)は、皮膚や消化器などの上皮細胞由来の「癌腫」と骨、軟骨、脂肪、筋肉などの非上皮性細胞由来「肉腫」に分けられます。骨肉腫とは、骨もしくは類骨を作る肉種です。骨肉腫は骨に生じる肉腫の中でもっとも頻度が高いものですが、日本では年間、人口百万人に2人程度の頻度です。

 学童期~青年期に好発し、男性が女性の約1.5倍多い病気です。パジェット病や放射線照射などのあとに発生する二次性のものもあります。大腿骨遠位部(膝の上)と脛骨近位部(膝の下)に発生することが多く、上腕骨近位部(肩の下)がそれに続きます。

病因

 多くの場合、原因はわかりません。P53やRbという癌抑制遺伝子の異常が関連するものもあることが分かっています。

臨床症状

 初発症状として局所の腫張(はれ)と痛み、熱感を訴えます。病院を受診した時には、腫瘍により部分的に骨が破壊され、外に張り出しているのが普通です。これらの症状は、骨肉腫のみに特徴的なものではなく他の病気でも見られることがあります。進行すると、運動時の痛みだけではなく安静時にも痛みが出てきます。

診断・鑑別診断

 受診時の単純X線写真で、骨膜反応や骨破壊像などの特徴的な所見から骨肉腫が疑われますが、似たような画像所見を示す疾患もあるため、確定診断には、画像検査ならびに血液検査を行った上で切開生検術が必要です。

 画像検査は単純X線写真、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)、骨シンチ、PETなどを行います。これらの画像検査は手術方法の決定や化学療法の効果判定のために必須です。タリウムシンチや血管造影を行う施設もあります。

 血液検査は他の疾患を除外するのに用います。骨肉腫では腫瘍性の骨形成を反映して血中アルカリフォスファターゼ値の高値を示す症例が多く、治療効果の程度をみるのにマーカーとして、ある程度有効です。

 以上の検査を行った上で、診断を確定するために病変部から組織小片を採取し病理組織検査を行います。この手術を「切開生検」といいます。悪性腫瘍の切開生検手技によって、その後の手術方法が大きく影響を受けるため、切開生検は専門的な知識と経験が必要です。骨軟部腫瘍を専門に扱っている病院を受診することをお勧めします。

治療

 骨肉腫治療の原則は、全身療法である化学療法と局所療法である手術(広範切除術)の組み合わせです。場合により放射線療法を加えます。

手術:

 骨肉腫は肉眼的に確認できる腫瘤の周囲に腫瘍細胞が浸潤して広がっているため、手術では、一見正常な周囲の組織を含めて切除する必要があります。この手術法を「広範切除」といいます。治癒的広範切除術を行った場合の再発率は通常10%程度といわれています。術前化学療法の効果によって切除範囲を縮小させることが可能となり、縮小手術への挑戦が続いています。血管や神経が巻き込まれている場合などは、患肢を切断せざるを得ない場合もありますが、現在は患肢を温存する手術が主流になっています。

 欠損した骨や関節部分は様々な方法で再建します。再建の方法にはいろいろな方法があり、その方法ごとに長所と短所がありますので、個々の症例ごとに適切な方法を患者様と相談の上で決定します。

化学療法:

 骨肉腫の治療には化学療法が非常に重要です。化学療法の出現で骨肉腫の治療成績は飛躍的に上昇しました。化学療法が出現する前には5年生存率は10%強でしたが現在は60~70%程度になっています。

 化学療法導入前でも、1割程度の方は治癒していました。この患者さんには化学療法は不要といえます。また、現在でも化学療法を受けたにもかかわらず不幸な転帰となる患者さんがいます。この患者さんには化学療法は無効といえます。しかし、化学療法実施前に、患者さんがどのグループに属するのかを予測することは現時点ではできません。従って、骨肉腫の診断がついた時点で、原則として全ての患者さんに化学療法を行っています。

 骨肉腫は悪性腫瘍であり、発生した場所で大きくなるだけではなく、主に肺などの他の臓器に転移を生じます。放置すれば主要臓器に転移し、致死的となります。化学療法導入以前は、患肢を切断しても多くの人が1年以内に肺転移をおこして死亡しました。これは、切断時には既に検査ではわからない小さな転移があり、それが増大するためと考えられます。このような微小転移巣に対する治療法としては全身の治療を行うしかなく、それは抗悪性腫瘍剤を用いた「全身化学療法」でのみ可能です。従って画像検査上明らかな転移巣が見つかっていなくても行う必要があります。

 通常、化学療法は手術前に3~4週間おきに3回程度行います。手術後は切除した組織で薬剤の有効性を評価し、さらに約1年間に渡って化学療法を継続します。

放射線療法:

 骨肉腫は放射線に反応しにくく放射線療法のみでは根治は困難です。また、放射線照射部分には時間がたってから様々な問題が起こることが知られています。放射線照射部に新たな二次性の悪性腫瘍が発生する可能性もあります。従って、根治を目指した場合に放射線照射のみを行うことはありません。しかし、手術不能な症例や手術の補助療法として放射線照射を行うことはあります。また、手術成績が不良な骨盤・脊椎発生症例や手術不能症例に対して「重粒子線」という新しい放射線療法が先進医療として使えるようになりました。重粒子線治療の局所コントロール成績は手術よりも優れており、合併症も少ないことから、今後の発展が期待されています。

予後

 1970年代以前は5年生存率10~15%でしたが、現在では60~70%以上(当院では約73%)と著しく改善しました。不幸な転帰をたどる症例の多くが肺転移によるものです。肺転移を起こした症例は、かつては予後不良でしたが、積極的に肺転移病巣を切除し、化学療法を追加することにより治療成績は改善してきています。

 現在は患肢温存術が主流となってきており、四肢発生骨肉腫の場合に、神経血管と腫瘍の関係から切断が必要となるのは20%程度となっています。

(MyMedより)推薦図書

1) 森岡秀夫 編さん、戸山芳昭・大谷俊郎 監修:骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4),羊土社 2009

2) 岩本幸英 編集:骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls),文光堂 2005

3) 中川 恵一 著:がんの正体,PHP研究所 2010
 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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